Ragnarok Onlineアイテム物語 作:アイテム鑑定士
ウサギのヘアバンドに関するお話です。
ミッドガッツ王国海の玄関口
貿易の中心地アルベルタ
様々な国・地域との玄関口であり、ミッドガッツ王国の異文化交流最先端の地でもある。
近年の調査により、アルベルタ港に停泊する船は一昔前の3倍ほどになり
つい先日港の拡張工事が完了したばかりである。
商館”アクアリウム”もこの拡張工事際して多額の出資をしており、外洋貿易について
優先的に取引できるよう商人ギルドを通じて、ミッドガッツ王国から認可が下りている。
だが、古より続く商館アクアリウムでは、王国に献上品を納めることで、商人ギルドによる貿易より前から独自のルートにより、他国との貿易を先祖代々許可されてきた経緯がある。
また、商館”アクアリウム”の当主を代々担うエリス家では優秀であれば出自は問わないため、しばしば異国の血を受け入れることもあったようである。
そんな事情からか、エリス家の人々は多分に異国の文化に影響を受けていたりする。
そう・・・月が美しく見える秋の満月の時期に、みんなで集まって”お月見”をするくらいには。
現在の当主であるミリアよりさかのぼること20代前の先祖が、天津との貿易を開始した際に、現地で見た月見風景を大層気に入って、商館の年中行事として取り入れたそうである。
今回のお話はお月見とウサギのヘアバンドに関するお話。
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半月の頃
商館”アクアリウム”
「おね~ちゃ~~~ん!!」
ノックもせずにどばーん!とミリアの執務室の扉が開かれる。
「にゃにゃ!!?」
珍客の襲来に驚いて客人が声を上げる。
「こら!メルティ!ノックもせずに私の執務室に入ってきちゃダメって
言ってるでしょう!? 今お仕事中だから出ていきなさい!」
「ごめんなさ~い・・・・」
メルティはシュン頭を下げて執務室から出て行こうとするが、
見知った獣人の姿に足を止めて元気よく挨拶をする。
「あ!ヨグリさんだ!こんにちわ!!」
「こんにちはだにゃ!メルティちゃん。」
「ヨグリさん!今年もお月見団子持ってきてくれたの!?」
毎年この時期になると月見団子を売りに来る客人に
いかにも楽しみにしてます!という雰囲気でメルティが質問する。
「にゃにゃ~・・・それがだにゃぁ・・」
一方質問されたほうのヨグリは曇った表情で、質問に答えようとするが、
「はいはい!ストップ!ヨグリさん!。メルティお仕事中だから・・ね?」と
話が脱線したためヨグリの返答を遮り、ミリアがメルティに退室を促す。
「は~い・・・ヨグリさんあとでお話聞かせてね~」
といって退室していく。
メルティが出ていくのを確認した後、ミリアがヨグリに謝罪を述べる。
「ごめんなさいねヨグリさん。うちの妹が・・・」
「気にすることないにゃ~沈んでいたからちょうどよかったにゃ!!
・・・でもにゃ~このままだとメルティちゃんにはかわいそうなことを
してしまうにゃ~」
とヨグリの感情を表すかのように耳がぺたッと垂れてしまう。
「まさか、材料が手に入らなくてお月見団子が作れなかったなんてねぇ…
ところで、ヨグリさん何が足りなかったんです?」
「お月見団子に絶対必要な米粉と蜂蜜が全然手に入れることができなかったのにゃあ。
蜂蜜もプロンテラでさえ流通していなくてニャア・・いつもであれば蜂蜜だったら
手に入らないなんてことないのにおかしいにゃあ・・・」
そんなヨグリの発言を聞いて、ミリアはプロンテラ騎士団にいる母からの依頼を
思い出した。
近年多発しているモンスター襲撃・および新たに発見された異世界調査のために
騎士団で米粉と蜂蜜を大量に備蓄しているそうだ。なんでも米粉は糧食に、蜂蜜は強力なルーンを作成するのに大量に必要だとか。ミリアに依頼があり、10000ほど米粉と蜂蜜を買い付け・納品したのだった。
「あ~ヨグリさん。それうち<アクアリウム>のせいかもしれない・・」
「にゃにゃ!!ということはミリアちゃんが蜂蜜を持っているのかにゃ!?」
「実は違うんですよ・・・母からプロンテラ騎士団で備蓄するための買い付けを頼まれまして。大量に買い付けて納品したんです。」
「にゃにゃ~騎士団の備蓄かにゃ~それじゃあ市場には出回らないわけだにゃ~
・・・・これは蜂蜜は現地調達しかないのかにゃ~・・・」
「現地調達?」
「フェイヨンのビッグフットが集める蜂蜜はお月見団子に最適にゃ!
お月見団子のおいしさは蜂蜜できまるといっても過言ではないにゃ・・・
だから、メルティちゃんのために・・とても怖いけど・・・勇気を出して・・・
び・・びっくふっとをー・・・!
にゃにゃ~!!!でもやっぱり怖いにゃあ!!・・・」
半分泣きながら説明するヨグリの姿に申し訳ないと思いつつも、可愛いなあと
思い顔がにやけてしまうを抑えながらミリアは返答する。
「なるほど~。そういうわけですか・・・半分はこちらのせいでもありますから
お月見団子の材料調達は我々にお任せください!」
「にゃ!いいのかにゃ!?」
「ええ。ヨグリさんのところのお月見団子じゃなきゃ、うちのお月見は始まりませんし。・・(それにそのほうがうちのお月見らしいので。)」
「そうかにゃ!じゃあ材料集めはお任せするにゃ!とりあえず
蜂蜜を5瓶と米粉を2俵を用意してほしいにゃ!」
「承知しました。お月見に間に合うように用意しますので2日ほど待っていてください。」
「わかったにゃ!楽しみに待っているにゃあ~」
「はいそれでは2日後に。」
とよほど安心したのかメルティとの約束を忘れて
ヨグリは<猫ワープ>で執務室から帰ってしまった。
すると執務室の扉がノックされた。
「どうぞ~」
「お仕事終わった?おね~ちゃん?」
「終わったわ。ヨグリさんは急用ができて帰って行っちゃったけど。」
ヨグリの名誉のため、ちょっとした嘘をついておく。
「え~・・・お話しできるの楽しみにしてたのに~」
「まあしょうがないのよ・・・お月見団子が・・・」
ミリアはメルティにはわからない程度にワザと深刻そうな顔しながら
言葉を切る。
「え? お月見団子がどうしたの!?」
「材料が手に入らなくて作れなくなっちゃたんだって。」
「ええええ~~!!!すごく楽しみにしてたのに…今年は食べられないのかなあ…うー」
すごく落ち込んでいるメルティに苦笑しながらミリアは続きを話す。
「落ち込むのはまだ早いわよ?メルティ。」
「え?」
「なければ集めればいいの。」
「あつめるの?」
「そ、さてうちのお仕事は何かな?メルティ?」
「うーんと・・・・お店!」
「もやっているけれど、お店で売るものを買ったりもするのよ?
ちなみにこれを仕入れと言います。」
「仕入れ!」
「そう。というわけで今回はメルティにお月見までにお月見団子の材料を
仕入れてきてもらおうと思います。ドンドンパフパフー」
とミリアは謎の擬音を口にしながら宣言する。
「おおーー!」
気配に当てられてメルティもノリノリである。
そんな末の妹の様子をほほえましく感じながらも、ミリアはお使いの内容を伝える。
「というわけで~メルティには米粉2表と蜂蜜5瓶を集めてもらいます。
まあまだメルティは小さいし初めての仕入れだからちょっと難しい
お使いだと思ってくれていいわよ。出来るかしら?」
「うん!やる!」
「じゃあお使いに必要な許可証とメモを渡すわね?」
といってミリアは<ウサギのヘアバンド>とメモを渡した。
「うさみみだーー!! つけていい?」
新しい玩具をもらったようにはしゃぐメルティ
「つけていいわよ~」
「うさうさ~ぴょんぴょん!」
とウサギが跳ねる真似をする妹の姿にミリアは心の中で鼻血を噴出しながら
注意事項を伝える。
「(ああ~メルティなんてかわいいの!・・・とそうじゃなかった
いい?メルティ。そのウサ耳はそのメモに書かれているところに入るの必要な
大事な許可証でもあるの。だからちゃんとつけて外しちゃだめよ?」
「わかった!はずさない!」
「よし!じゃあいってきなさい!・・・あ!そうだ!わからないことがあったら
WIS(念話)しなさいね~」
「うん!いってくるね~!」
ミリアは元気よく執務室を出ていく妹を笑顔で見送る。
「さてと・・・いろいろ準備しますか・・・・兄さんに連絡しなきゃ」
数刻後
アルベルタ港 倉庫街
港のすぐ近くにあり、船から降ろされた貿易品を保管できるようにまとまって設置された倉庫群。
そのうちの一つのに開かずの倉庫とよばれている一際大きなものがある。
出入り口には警備員が立っているが、倉庫が空いているところは誰も見たことが
ないという。アルベルタでも変な意味で有名な倉庫である。
メルティも話だけは知っていたが、実際に目にするのは初めてだった。
それに、ミリアから渡されたメモに記された場所は間違いなくこの開かずの倉庫だった。
とりあえず入口の警備員に声をかけてみる。
「あ・・あのぅ」
「なんだお前さん・・!!・っとお客人か。何がほしい?」
警備員はメルティのウサ耳を見て、態度を変えた。
不思議に思ったメルティは警備員に尋ねた。
「え~とおじさん。ここはお店なの?」
「んー確かに店だが一般人には売らない。特別な証もってる奴にだけ売る・・・
たとえば嬢ちゃんの頭についてる奴とかな?」
「ふーんじゃあ私にとってはお店ってことでいいんだね?」
「まあそういうこった。で何がほしい?」
店主?は再びメルティに問いかけた。
「じゃあお月見団子ようの米粉2ひょうと蜂蜜5びんください!!」
「わかった米粉2俵と蜂蜜5瓶だな?少し待ってろ・・・」
といって倉庫のカギを開け中に入っていった。
しばらくすると店主?が戻ってきた。
「米粉2俵と蜂蜜5瓶だ。」
店主が渡したのは木の板である。
「え?これただの木の板だよ?」
「そいつを持って商人ギルドへいくと依頼の物品と交換できる。」
「うん!それじゃあ大丈夫だね・・って!私お金払ってないよ?おじさん!」
「お!久しぶりすぎて忘れてたぜ!嬢ちゃんこの店はな金では
物の売り買いはしねえんだ。」
「え?じゃあどおするの?」
「今嬢ちゃんに渡した木札は”アルベルタ商人ギルド取引手形”というやつでな
商人ギルドで物品を交換したら、2日以内に商人ギルドの取引所に買った物品の代金
を払わなきゃなんねえ。
もし収めることができない場合は本人を含め一族全員が商人ギルドとその
ギルドメンバーとの取引ができなくなる。」
「そっか大事な木札なんだね!でも商人ギルドにお金を払うの?
それだとおじさんが損しちゃうんじゃ?」
「代金が払い込まれた後、俺は商人ギルドから金を受け取るんだ。」
「おお―!それなら大丈夫だね?なんでそんなめんどくさいことをするの?」
「ああ~この辺はな余計な金を持っていると盗まれたり・危ない目にあうんでな
連中にとってはただの木の板でしかないそれで取引をするんだ。」
「そっか・・危ないんだねこのあたり。気をつけなきゃ!」
「おう・・じゃあ気を付けて行けよ?」
「うん!わかった~!」
数刻後
商館”アクアリウム” ミリアの執務室
ノックとともにメルティが入ってくる。
「ただいま~おねーちゃん」
「どうだった?メルティ」
「おじちゃんからねー”アルベルタ商人ギルド取引手形”っていうのをもらったよ!!」
「!(メルティはやっぱりそっちか。)見せてごらん?」
「はい。おねえちゃん。」
受け取ると確かに本物の取引手形で物品も間違いない。
「お疲れ様メルティお使いは完了よ!」
「え!でも商人ギルドで品物とお金の交換はしないの?」
「ふ・ふ・ふ~ここは”商館”なのよメルティ
だから商人ギルドの取引所も併設されているの。
というか私が取引所ね?」
「おおー!でもどうやって品物とお金を払うの?」
「じゃあ特別にメルティには見せてあげましょう!」
といってミリアが大きな扉の倉庫を見せた。
「倉庫?」
「倉庫だけどちょっと違うのよ?この倉庫は勝手に開けられないようにできているの。」
「そうなんだ?」
「そうなのよ。まずココのくぼみに手形をいれるとここに代金が表示されるでしょ?」
ミリアが木札を倉庫にハメて、表示された価格を指さしながらメルティに説明する。
「うんうん」
「それでこのボックスに代金を入れると・・・」
がちゃ!!という音が響き目の前の倉庫の扉が開いた。
「それで中を見てみると・・・」
「あ!・・米粉と蜂蜜!」
「代金を払うと物品が取り出せる仕組みなのよ?・・・・これでお月見団子の材料は
手に入ったわね~メルティ!お疲れ様~!よくやったわね!」
ミリアはメルティを思いっきり撫でながらほめたたえる。
撫でられているメルティも、こそばゆそうに目を細めているがが満足そうだ。
「あ!忘れていたわ。ウサ耳返してちょうだいね?」
「え~・・・・
(ん~でもおじさんも特別な証だって言ってたから返さなきゃダメなんだよね)
わかった~。」
メルティは名残惜しそうにミリアに<ウサギのヘアバンド>を返す。
「(なんだかかわいそうなことしちゃったかな。そういえば確かヨグリさんが・・!) まあまあメルティ、このお使いのご褒美はまた別なのを上げるから待っていなさいね?」
「わかった!おね~ちゃん。」
元気になったメルティが嬉しそうに返事をする。
こうしてメルティの初めてのお使いは完了した。
数日後 満月の夜
商館”アクアリウム”庭園内 月見会場
ミリアが開始のあいさつをする。
「みなさん今年もお集まりいただいてありがとうございます。
毎年恒例のハプニングがあり、開催が危ぶまれたエリス家のお月見ですが、
今年はなんと!一番末の妹が頑張ってくれて、無事開催することができました!
メルティ!ありがと~!!」
参加者から拍手と声援が起こる。
「よくやった!メルティ!」
「メルティちゃんがんばったね~」
「ということで頑張ったメルティにご褒美を上げようと思いま~す!!
メルティ!おいで~」
「おおお~!」
会場からの歓声の中を
とことことメルティがミリアの前にやってくる。
「なにかなーなにかな?」
期待に満ちた瞳で姉を見つめるメルティ。
ミリアはそんな妹の様子を愛らしく思いながら、
「じゃっじゃーん!」といってメルティの頭の上に何かを置いた。
お月見参加者から声が上がる。
「おおお~月見にウサギたぁいいシュミしてるじゃねえか!ミリアちゃん」
「がはは!もっと褒めてもいいのよ?」
「・・・ウサギ?」
「メルティ。ほ~ら」
ミリアが鏡を取り出してメルティに見せる。
「わぁ!!うさみみだ~~!!」
メルティが嬉しそうに歓声を上げる。
「ヨグリさんに話したら作ってくれたわ。お礼いいなさい?」
会場で月見団子作っているヨグリに向かってメルティが叫ぶ。
「ヨグリさんありがとーー!たいせつにするね~~!」
「メルティちゃんが頑張ってくれたお礼だにゃ!
だいじにしてくれたらうれしいにゃ!!」
その日の月見は、優しい月の光と同様に温かい雰囲気で終始談笑が絶えない楽しい時間となったそうだ。
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とまあ表の話はここまでである。
この月見会、実はエリス家の子供たちの適性試験を兼ねているのだ。
8歳を過ぎた家族がいたら月見会の時に課題を出して、解決させるのが習わしでどのように解決するかで将来性を見極めるというもの。
そのため、エリス家の大人たちは月見の準備には全力をかける。
いわゆる初めてのお使いも兼ねていおり、危険を伴う可能性があるため監視や準備は必須である。
また、今回監視役はミリアの兄がクロークキングですぐ横について見守るという内容だった。途中メルティに絡んできそうなチンピラを一瞬で排除したり等相当頑張った様子。
ちなみに歴代の月見会の結果
フェリス(ミリアの母)⇒ウサ耳はつけたままで取引は行わず、蜂蜜はビッグフットを 倒して取得、米粉は熊の足を売った金で購入。
ついたあだ名が首狩りウサギ<ヴォ―パルバニー>
ミリアの兄⇒ウサ耳なんてつけてられっか!と速攻ではずして蜂蜜はビッグフットから スティール、米粉もすてぃ・・もとい善良な市民から分けてもらった。
ミリア ⇒ウサ耳の恥ずかしさに耐えきれず外してしまったため、手形取引が
できず、近くの森で拾った木くずを元手に露店で資金を稼ぎ
蜂蜜と米粉を購入
<目録1>
・ウサギのヘアバンド(手形取引許可証)
装備可能者 エリス家の人間
・エリス家の先祖が月見を試験にしだしてから商人ギルドがノリノリで作った
手形取引許可証 作成者は遊び心100%の持ち主だったに違いない(悪乗りともいう)
管理者:商館”アクアリウム”歴代当主
<感想>
・男だろうと女だろうと恥ずかしいものになんでこんな重要な役割が―!
<目録2>
・ウサギのヘアバンド<衣装>
装備可能者 すべての職業
・マラン島の月見団子職人 ヨグリの裁縫技術で生まれ変わったウサ耳のヘアバンド
※ただし手形取引の許可証とは別のものを調達しヨグリに作成してもらった。
管理者:メルティ・E・ゼファーシルト
<感想>
・メルティがだいぶ喜んでくれたみたいで良かったわ。ずっと大事にしてくれると
うれしいな。
<十数年後の追記>
・でもだからって二十ピー歳になるまでずっとつけるのはどうなのかしら・・?
まかり間違ってこんな月見が伝承される・・・訳ないかw
2018/05/29 微修正
2019/05/26 誤字修正