四話 あなたの本が見つかりますように
「…でっか」
俺は目の前にあるL社にも負けず劣らずの大きさを持つ建物に圧倒されていた。今日はL社と12協会、五本指、翼、頭との超巨大共同プロジェクトである新しい職場、図書館へ来ている。やっぱこの世界は元々の都市と比べてノリが軽く、アブノマ祭の時と同じ感じでなんかデッカいプロジェクト作ろうぜみたいなノリで話がドンドン進んでいき。
「現在に至ると…図書館って確かLobotomy corporationの次の作品だったっけ?俺はそれをプレイする前にレリックの体に居たから詳しいことは分からんけど…」
今までの人生考えると原作知ってたところで意味ないから気にしなくても良い気がする。これ絶対こんな共同プロジェクトでやるようなもんじゃなかったでしょ。
確かに目の前にあるのにどこかぼんやりとした印象を受ける図書館を前に立っていると突然腕が伸びてきて肩を組まれた。
「お、誰か居ると思ったらかの有名なL社支部の支配人トラベラー様じゃないか!元気してましたか〜?」
「揶揄うのは止めろってローラン、それに今日から同僚だろ?」
「俺も思っても見なかったよ。ただのフィクサーである俺がこんな大出世するなんてな」
ただのフィクサー?お前が?……
「ないない、お前がただのフィクサーならその他のフィクサーたちはどうなるんだよ」
「大袈裟だなぁ、ま、程々に頑張っていこうか。事前に話は聞いたけど中々に骨が折れそうだしな」
「だよね〜」
このプロジェクトを計画するのに本部に一番近い支部の長って事で呼ばれたんだけど。それぞれの組織から一名、人材を派遣して図書館の司書をやっていくらしい。選ばれたその人物はそれぞれの階層の指定司書になりその分野の本を管理して纏める、でここからが問題なんだけど図書館と言うだけあって本の貸し出しもやるけれどその場合ゲストの人には接待か料金を払うかを選んでもらう。接待を選んだ場合そのゲストと図書館が指定する階層の司書と戦わなくちゃいけない。
「ゲストが負けたらゲストルームに飛ばされてゲストの情報が書かれた本が図書館に現れる…ねぇ?何度聞いても意味が分からないな。これも特異点の一種なんだろうけどさ」
「しかも俺たち司書はゲストの強さに合わせて能力をセーブしないといけないしね」
コアページってのでその能力調整は簡単に出来るから心配はないみたいだけど。
「……そもそも此処に来るのに大分と迷ったけどゲストなんて来るの?」
「さぁ?それは俺たちのことを中で待ってる館長様に聞くしかないんじゃないか?」
「それもそっか」
共鳴の鏡で見に行った図書館が、こっちの世界でも建てられるなんてね。図書館が建つことは確定事項だったのかな?
「よく来たね。待っていたよ」
「あれ?ジェナさん?」
「…調律者が直々に出迎えるとかほんとどうなってんだよ」
ローランが天を仰ぎ始めた。そうだよね。都市のお偉いさんが出迎えるとかどんな状況なのさ。
「それは私がこの図書館の館長だからだよ。ローラン…多くの組織が携わったこのプロジェクトを取り纏めることが出来るのは『頭』だけだろうからね」
「あぁ、胃が痛くなってきた。館長でこれなら俺とトラベラー以外の指定司書ってどんな奴が来てるんだか」
気持ちは分かる。俺よりも立場の上の人が俺の同僚になるかもしれないんでしょ?怖いわ…因みにアビスとレリックは支部で俺の代理支配人をやることになってる。しょうがないね、俺がL社の派遣社員に選ばれちゃったから。二人と離れるのは不安があるけど家でいつでも会えるし、二人も時々こっちに遊びに来るって言ってたし問題はない。
「では、二人には先に何をするのか説明をしておこうか」
「説明って、図書館に来る前に事前説明されたあれじゃなく?」
「あぁ、現在、図書館は不安定な状態になっていてね。館長である私と指定司書しか訪れることが出来ないんだ」
「おいおい、それでどうやってゲストを呼び込むんだよ?まさか俺たち司書が連れてくるとかじゃないよな?」
うん、ちょっと無理があるんじゃない?下手したら司書と逸れて迷子になるかもしれない上に俺たちも此処に来る時ちょっと危なかった。
「それはこの招待状を使うのさ」
「招待状?この小さな紙がゲストを連れてくるのか?」
「その通り、図書館には様々な特異点が組み込まれている。図書館で生成された招待状をゲストが受け取ることで招待状を受け取ったゲストを此処に転移させるのだよ」
「…色々と聞きたいことはあるけどその招待状があれば客に困らないってのは分かった」
多分うちの会社のエレベーターにも使われてるW社の特異点かもね。図書館がぼんやりした感じってのも強ち間違ってないのかも、色んな組織の特異点が入り乱れてるからぼんやりとボケて見えるんだわ。
−−−こんな事なら司書やってる俺に図書館ってどんな場所なのか聞けば良かった。新しい職場に不安を隠しきれません