星空の魔法少女   作:ヒィーィジヤロラルリーロロロー

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やっと書きたいものを書き終えたので、初投稿です(初投稿)


星降る夜に始まって

 

 

 事実は小説よりも奇なりとはよく言ったもので、非日常とは容易く人の想像の域を超えて行くものだ。

 路地の小さな社に本当に神様が住んでいて超常の力を与えてくれる、宇宙人が密かに我々の社会に溶け込んで居るかもしれないだとか誰しも一度は想像したことが有るだろう。

 

 俺だってそうだ。

 小さな頃は傘を持てば伝説の剣と思い振り回し、玩具のベルトを巻いて変身ポーズを取ったりもする程度には夢見る少年だった。

 しかし、歳を重ねる毎に現実を知り、いつしかそういった物を鼻で笑うような普通の人間になっていた。

 人知れず悪と戦うヒーローなんて画面の中にしか存在しない。傘は伝説の剣なんかじゃない。そんなのは当たり前の常識だ。

 

 

 そう、ついさっきまでは。

 

 地響きのような唸り声を上げて10メートルは有りそうな翼を持つ竜のような化物が車や街路樹を吹き飛ばしこちら目掛けて突っ込んで来る。

 人間など当たればひとたまりもないだろうその姿に恐怖から足が竦む。

 それでも俺は恐怖を抑え身の丈ほど有る杖を構え迎え撃つ。

 ────なんと馬鹿げた光景だろうか。

 

「そのまま杖の先に集中するのよ」

 

 喋るゴールデンレトリーバー(・・・・・・・・・・・・・)の声に従い杖の先端に力を集中すると、にわかに光を放ち始める。

 

「今よ そのまま……ありったけぶつけてやんなさい!」

 

 溜めた力が限界を超えるその瞬間、脳裏に浮かぶ言の葉に乗せてその全てを解き放つ。

 

 

 

 

「【トワイライトォォォスーパーノヴァァァァァァァァ】!!」

 

 

 

 

 放たれた極光は寸前で避けようと勢いの緩んだ竜を飲み込んでなお衰えず。

 輝きは天へと昇り天頂で弾けた光が流星群のように降り注ぐ。

 

 極光の通り過ぎた場所にはその破壊力を示すように削り取られた道路やビルだけが残されていた。

 息を整えながらも、この光景を自分が作り出したのだと思うと未だに信じることができない。

 

「やるじゃない。初めてにしては上出来、見込み有りね」

 

 極光に押しのけられていた空気が戻ると同時に突風を巻き起こし。

 金糸の如き長髪《・・・・・・・》と夜空を押し固めたような服が風に泳ぐようたなびいていた。

 

「これからよろしくね。新人さん」

 

 

 あぁ、なんでこんな事になったのだろうか────

 

 仰ぐように見上げた夜空にはまるで降り注ぐように星が満ちていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ことの始まりは1時間程遡る──

 

 

 俺こと【星間(せいま) スバル】は夏の始まりが見えて来る今日この頃、暗い夜道の中を帰路についていた。

 学校からの帰り道、無事テストが終わったことも有り、偶のご褒美にと行きつけの喫茶店でゆっくりとケーキと紅茶を堪能していたらこんな時間だ。

 時刻は既に長針が水平に差し掛かる頃だ。人の通りも疎らになった住宅街を自分と湿った風だけが通り過ぎる。

 

「これでしばらくはテストも無いし一安心か。とりあえず平均点は取れたと思いたいな」

 

 独り言を呟きながらも足は止めない。

 最寄り駅から自宅までは歩いて10分程は掛かる距離だ。

 人気の少ない道を歩いていると独り言もポツポツと漏れてくる。

 宛先も無ければ受け取り主も居ない。

 

「去年は高校生活に慣れるのに精一杯で学校周辺の散策もできていなかったな……。

 あの喫茶店の味は格別だが、他にもいい店は有るのだろうか」

 

 取り留めの無いことを呟きながら気分よくゆっくりと歩みを進める。

 

 ────ぬるり。

 

 突如として頬を撫でる少し生暖かい湿った風の感触に現実へと引き戻された。

 ただの風だろうになんだか気味が悪いな。

 しかして急に引き戻された現実は代り映えが無く面白みに掛ける。

 そう思いながらも何の気なしに空を見上げた。

 郊外に位置するこの住宅街は都心部に比べれば星が良く見える。

 

 そのままぼうっと空を眺めていると少し違和感を感じる。

 よくよく見て見ると、月が少し欠けているような?

 

「あれ? 今日は確か満月じゃなかったか?」

 

 

 今日の朝に見たニュースでは満月だとか言っていたような記憶があった。

 なのに、どうして月が欠けているのだろう

 ニュースか俺の記憶、どっちがおかしいのだろうかと考えながら眺めて居ると、少しずつ欠けが大きくなっていく。

 

 

「まさか今日って月蝕か? ……調べてもそんなこと書いてるサイトは無いな」

 

 気づけば完全に月が消えてしまい、まるで新月のようになっていた。

 

「なんだこれ……しゃ、写真とか撮っとくか?」

 

 写真を取ろうとレンズを月の有った場所に向けると

 

 

 そこには夜空の穴からこちらを覗く巨大な瞳(・・・・)が有った。

 

 

 瞳はギョロギョロと見渡すように動いた後、呆然と眺めていた俺と目があった(・・・・・)

 

 

 ズン……

 

 

 世界が軋むような音と同時に空気が一変する

 肌で感じる空気は、ここが尋常ならざる場所で有るとしきりに知らせている

 

「ヒッ……うわぁぁぁぁ!!」

 

 竦んだ足を無理やり動かして俺は瞳に背を向けて夢中で駆け出した

 

(なんだこれは。どうなってるんだ! 俺が何をしたって言うんだ!)

 

 頭の中でぐるぐると思考が回る。

 夢を見ているのなら早く醒めて欲しいが、一向に目覚める予兆は無い。

 それでも恐怖から逃げる足は止められない。

 

 

「ハァ……ハァ……クソっ……クソっ……なんだってこんウグッ!」

 

 無我夢中で走り続けていたからか、何か大きな物にぶつかりもんどり打って転がる

 そこには見上げる程に大きな白い塊のような物が道を占領するように鎮座していた。

 

「なんだ……? 壁か? こんな道のど真ん中に壁なんて有ったか……?」

 

 形を確かめるように手で叩いて見ると、硬さの中に確かな弾力を感じた。

 まるで生き物の表皮のようだな───

 

 そう思ったその瞬間、塊はゆっくりと動き始めた。

 

 まず始めに長く太い首のような物が伸びて行き、その先に肉食恐竜の如き顎が有った。

 次に人など簡単に踏みつぶせる程の大きさの四肢を持って立ち上がり。

 最後に体と同サイズの翼を広げ空へと舞い上がる周囲に。

 その存在はこちらの存在を眼に映し、認識すると咆哮をあげた。

 

 

「グォォォォォ!!!」

 

 

 そうだ、この存在は、全てを蹂躙するかのような暴力的存在感は

 

 

 まさしく(バケモノ)であった──────

 

 あぁ、願わくばこのまま見逃してくれはしないかと願う。

 しかし、竜はその眼を三日月のように歪めると、こちらに飛び掛かって来た。

 

「うそだろ……クソォ!」

 

 手から零れ落ちた鞄を拾う間もなく踵を返し、俺は無我夢中で駆け出した

 たが、無情にも距離はグングンと縮まっていく。

 悲しきかな、地を這う者と空を舞う者、どちらが速いかなど一目瞭然だ。

 

「嫌だ……! もっと……もっと疾く……!」

 

 

 

 竜の顎が自分に喰らい付くその寸前に、俺の体は不自然に前に出た(・・・・・・・・・)

 

(なんだ……? 今の……? わからない……けど、今は気にしてる暇なんて無い……!)

 

 理由なんて気にしてる暇は無かった。

 ただ逃げることに夢中だった。

 

「い……いつまで追ってくるんだよ……!」

 

 

 

 今の所はうまく逃げおおせているが、これがいつまで続くのか分からないのでは限界が先に来るのは俺の方なのは明白だ。

 何か打開策は無いかと周りを見渡すが、竜をどうにかできるような物などそこいらに落ちているはずも無い。

 それでもと周りを探っていると、進行方向に人の腰ほどの大きさの何かが居るのが見えた。

 

 

「そこの貴女! 頭を下げなさい!」

 

 急に掛けられた声に驚きながらも、命令に従うように頭を下げた。

 すると、ちょうどさっきまで俺の首が有った辺りを何か光の筋のような物が通り過ぎたのが見えた。

 

 

 ドン

 

 

 後方で爆発するような音が響き、続いて竜の悶えるような声が聞こえてくる。

 

「そこの路地を右に曲がりなさい!」

 

 

 

 声に従い路地を右に曲がると、竜はこちらを見失ったのか追ってくることは無かった。

 

 

 

「た……助かった……のか?」

 

 息を落ち着かせるように呼吸を繰り返していると、路地の奥、暗がりから足音と共に何者かが近づいて来る。

 先程自分を助けてくれた人だろうか、礼をしなくてはいけないと首を上げてそちらを見る。

 

「なんでこんな所に一般人が紛れ込んで……それにあの子はどこをほっつき歩いているのかしら……

 あぁ、貴女、無事だったかしら? 中々見事な走りだったわ。あの走りなら世界にだって通じるんじゃないかしら」

 

 

 暗がりから現れたのは、1匹のゴールデンレトリーバーゴールデンレトリーバー(・・・・・・・・・・・)だった。

 

「い……犬? なんで喋って……? ドッキリか……?」

 

 ただでさえ訳の分からない状況だってのに、ここに来て犬が喋るだなんてこれは幻聴なのだろうか。

 混沌とした状況に脳が正常な判断をしてくれない。

 

「私の名前は”テレーズ・アン・タン・ゲント” 。皆はテレーズ(・・・・)って呼ぶわね。組織だとか肩書だとか色々有るけど、とりあえず妖精みたいなものよ。

 無界現象の予兆が合るからって先んじて来てたけど、マイアはどこに行ったのかしら……」

 

 組織? 妖精? 無界現象? 知らない単語がズラズラと出てきて結局何も頭に入って来ない。

 

「それにしても、貴女どこから入ってきたのかしら? 一般人はこの段階では入って来れない筈なのだけれど……それに、不思議な格好ね。せっかくかわいい顔してるのに、男物の制服なんて着て……流行ってるのかしら?」

「はぁ……? 男なのに男物の制服来てる何がおかし……なんか声が変だな、俺の声ってこんなに高かったか?」

 

 

 1つ違和感に気づくと他にもおかしな所が見えて来る。

 

 こんなに声は高かっただろうか? 声変わりなんて中学校でとっくに済んでいた筈だ。

 

 こんなに視線は低かっただろうか? 少し周りより成長は遅かったが、それでも160の後半に届く頃であった筈だが、地面がいつもより近く感じる地面がいつもより近く感じる。

 

 頭が重いと感じ、髪を掬い上げればキラキラと輝くような金色の髪が目に映る。鬱陶しいと襟足に掛からない程度にしていた髪の毛は気づけば腰の辺りまで伸びていて、オマケに無個性な黒髪も高級な繊維のように輝く金色に染まっていた。

 

 それに、なるべく意識しまいと思っていたが股の辺りに喪失感を感じる。

 

 

「あはは……あは……なんなんだよ……コレ……」

「落ち着いたと思ったら青褪めたりと愉快な子ね。話ぐらいなら聞いてあげるわよ?」

 

 

 藁にも縋る思いでお座りするゴールデンレトリーバーに話をする俺は、傍から見るとさぞ滑稽に映った事だろう。

 しかし、訳の分からない状況でであった唯一己を助けてくれた存在に全てを話してしまうのも、仕方ないだろう。

 それ程までに俺は追い詰められていた。

 

 

 

「ふーん……空に瞳が現れて、逃げた先で竜に追いかけられて、気づけば女になっていた。ねぇ……なかなか面白い境遇ね」

「こっちは笑い事じゃないんだよ! なぁアンタ、元に戻る方法って無いのか? それに竜もなんとかしてくれよ! さっきのビームみたいなやつでさぁ!」

「解決してあげたいのはやまやまで、それが私の仕事なのだけれど……実は、さっきのやつで魔力、無くなっちゃったのよね」

 

「はぁ!? どどっどうすんだよそれぇ! このまま喰われて死ぬなんてそんな最期は嫌だぞ!」

「あぁ……大丈夫よ、あの化物に喰われてもこの空間内なら死ぬことは(・・・・・)決してないわ」

 

 死ぬことは無いと聞いて、少し肩の力が抜ける。

 じゃあ元に戻る事と脱出する事だけ考えれば良いだろう。

 

「ただ、ちょーっと昏睡状態になって半年位目覚め無くなるだけよ」

「大問題じゃねぇか!」

 

「あと後遺症で記憶障害とか不眠症になったりもするわね」

「なおさら駄目じゃねぇか!!!」

 

 

 なんだこの犬……

 

 

「うーん……このままだと打開策が無いのは困ったものよね。流石の私も昏睡はしたくないし……」

 

 ゴールデンレトリーバーは考え込むように腕(前脚?)を組んでウンウンと唸りながら何やら思考しているようだ。

 絵面だけなら非常に滑稽だ。

 

 

「……今の状態で私に戦闘は無理だし、誰か代わりに戦ってくれれば……新しく増援を呼ぼうにも夢界の中からじゃ外へ連絡するのも難しいし……んん? …………よく見たら貴女、中々素質ありそうじゃない?」

 

 急にコチラを見たかと思えば、突然おかしな事を言い出した。

 

 

「見た感じ、結構魔力とか有りそうだし? 実際さっきも魔力使ってたっぽいし? 私の見立て通りなら、あの竜ぐらいならひと捻りできると思うのよね」

 

「無理無理! 俺は一般人だぞ!? 喧嘩すらまともにしたことの無い現代っ子! あんなビル位有りそうな化物相手に戦うなんてできるわけないだろ!」

 

 

 人並み程度にはゲームも漫画も愛好してきたし、特別な力だの武器だのを夢想したことも無いとは言わないが、それはあくまで想像の話だ。

 実際にやってみせろと言われてもできる訳がない。

 

「大丈夫よ。倒せはしなくても、最悪もう一人私の相方がこちらに向かって来てるわ。だから、それまでの時間稼ぎしてくれるだけでもいいわ」

「んなこと言われたって……」

 

 

 グォォォォォ!!!!! 

 

 

 どうやら竜は俺を見失った後もしつこく探し回って居たようだ。

 あの竜は一度目をつけた獲物を絶対に逃してくれない性分のようだった。

 

 

「見つかったみたいね……。時間が無いわ。なんでもいいけど、次目が覚めたら季節が2つも変わってました〜だなんてことになりたくない無いなら、ここで覚悟を決めなさい!」

 

 急に覚悟を問われても、ハイそうですかと言える訳も無いが、それでも昏睡なんてこっちも真っ平ごめんだ。

 

 

「あぁ……もう! わかったよ! どうすれば良いんだよ!」

 

 こうなってしまえばもはや自棄である。

 なるようになってしまえと全てをこの得体のしれない犬(?)に賭ける。

 

 

「集中してイメージしなさい。貴女の思う力を。心の奥底に眠る願いを。後は私がサポートするわ!」

 

 言われるがままに目を閉じて集中する────

 

(イメージ……! イメージ……! 力……? 願い……? 全然わからん……でも、何か……何かある筈だ!)

 

 

 

 

 それはいつかの記憶。

 仕舞い込んだ記憶の底。

 

 ────絶対に忘れないよ! 君と話した事も! 約束も! 君と流れ星に願った夢も! 絶対に、絶対に忘れないから! だから……

 

 

 降り注ぐような星空の夜。

 

 小高い丘の頂上で見た景色。

 

 一緒に誰か居たような気がする。

 

 

 その子は確か……金色に輝いて、お姫様みたいに美しい服を着て、とびきりの笑顔を─────────

 

 

 

 

「凄い魔力……これは想像以上の素質だったかも……」

 

 体の端から光が漏れ出ていき周囲を照らし、輝きはどんどんと勢いを増し、そのまま爆発的な光量が炸裂する。

 

 ギャゥゥゥ!? 

 

 竜すらも輝きに目を眩まされ、空から叩き落とされる。

 炸裂した光がゆっくりと身体の周りを包み込み、次第に新たなる形を作り出していく。

 

 光が収まるとそこには、深い宇宙の如き黒に星を散りばめたドレスに、身長程もある杖の先に天球儀を付けた美しき少女の姿があった。

 

「これが……奥底から力が湧いてくる……相変わらずまだ何も分からないけど、今ならできる!」

 

 グォォグォォォォォ!!!! 

 

 姿の変わったコチラを威嚇するかのように吠えた竜は、その勢いのまま突進してくる。

 きっと、あの巨体に追突されればひとたまりもないだろう。

 

「こっちでもサポートするわ! 今はただ戦闘に集中しなさい!」

 

 漲る力のままに、まずは回避しようと、コンクリートの地面を踏みしめて空へと飛び上がる。

 それだけで地面には大きく窪みができ、自身の身体も20メートル以上は飛んでいた。

 

 

「なんて身体能力だよ……でも、これならイケる……!」

 

 そう思った束の間、竜の首がコチラに向いたと思うと、飲み込むような動作をし始めた。

 

「強力な攻撃が来るわ! なんでもいいから防御しなさい!」

「防御って言われてもどうすれば良いんだよ!」

「杖に願いなさい! ソレ(・・)は貴女のイメージを力にする物よ!」

 

 

 竜が一瞬首を下げたかと思えば、そこからコチラを向く勢いのままに火炎を吐いてきた。

 このままでは、数秒とせずに俺は消し炭になるであろうイメージが浮かんでくる。

 死ぬことは無いとは言われても、炎に巻かれるのは御免である。

 

(防御……防御……! 防ぐもの……盾だ! 盾よ出ろ……!!)

 

 イメージするのは中世の騎士が使うような盾、大きくてなるべく硬く、凧のような形をした盾だ。

 そのイメージのままに、脳裏に浮かぶ言葉と力を杖を通して放出する。

 

「プロテクション!!!」

 

 間一髪俺と業火の間に生み出された不透明や盾は見事にその炎から主の身体を護り抜いた。

 そのまま地面に着地すれば、竜はこちらを完全に敵と認識したのか憤怒に染まった表情でこちらに向かって突っ込んで来る。

 

 

 地響きのような唸り声を上げて10メートルは有りそうな翼を持つ竜のような化物が車や街路樹を吹き飛ばしながら迫って来る巨体。

 人間など当たればひとたまりもないだろうその姿に恐怖から足が竦む。

 それでも俺は恐怖を抑え1.5メートルは有りそうな杖を構え迎え撃つ。

 なんと馬鹿げた光景だろうか。

 

 

「そのまま杖の先に集中しなさい」

 

 喋るゴールデンレトリーバーの声に従い杖の先端に力を集中すると、にわかに光を放ち始める。

 

「今よ! そのままありったけをぶつけてやんなさい!」

 

 溜めた力が限界を超えるその瞬間に、脳裏に浮かぶ言の葉と共に、その全てを解き放つ。

 

 

 

 

 

「トワイライトォォォスーパーノヴァァァァァァァァ!!」

 

 

 

 

 

 放たれた極光は寸前で避けようと勢いの緩んだ竜を飲み込んでなお衰えず。

 輝きは天へと昇り天頂で弾けた光が流星群のように降り注ぐ。

 

 極光の通り過ぎた場所にはその破壊力を示すように削り取られた道路やビルだけが残されていた。

 息を整えながらも、この光景を自分が作り出したのだと思うと未だに信じることができない。

 

「やるじゃない。初めてにしては上出来、見込み有りね」

 

 極光に押しのけられていた空気が戻ると同時に突風を巻き起こし。

 金糸の如き長髪と夜空を押し固めたような黒いスカートが風に泳ぐようたなびいた。

 

 

 

「これからよろしくね。新人さん」

 

 ゴールデンレトリーバーがこちらにゆっくりと歩いてくる。

 天にヒビが入り、夢界とやらが崩壊していく。

 崩壊を全て見届ける前に、俺の意識は極度の緊張から開放された反動かゆっくりと薄れていく。

 

「ちょっと? 貴女、少し様子が変よ?」

 

 喋るゴールデンレトリーバーの声も少しずつ遠のいていく。

 

 あぁ……これで終わりか……次目が覚めたらきっとベッドの上で目を覚ますのだろう……本当におかしな夢だ───────

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん! 他の仕事に手間取った! 無事!? てうわ!? 君大丈夫!?」

 

 意識を失い、倒れ込むその寸前に誰かに抱きとめられた様な感覚が有ったような気がした。

 

 

 




続きはまた思いついたら
その日がいつ来るかは分からないけど、できたら早めに続きを出したい所存
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