星空の魔法少女 作:ヒィーィジヤロラルリーロロロー
「────
「────は?」
宣言するアトラの顔にはありありと自信が満ちていた。
「魔法使いに最も重要なのは強い想いでしたわね?」
「あ……あぁ。そうだ」
「でしたら問題ありませんわね。……わたくしにも夢は有ります。己に誓い刻んだ想いだって」
この状況でありながら強い意志を持ち、自然体で立つ彼女の周囲に薄らと魔力が収束しているのを感じる。
「────それにこのわたくしを誰だと思ってまして?世界に名高き金時グループその正統なる後継者たる一人娘!やってやれない事などありませんわ!」
どんどんと密度を増す魔力はいつしか指向性を持ち渦巻く様にアトラの衣服を揺らす。
「これが……魔力?なのでしょうか?ふふっ……これなら行けそうですわね!それではスバル様!刮目してごらんなさいまし!────わたくし【金時 アトラ】ショウタイムでしてよ!」
高まり続ける魔力は黄金色に輝きよってアトラの体を包み込む、その光量は薄暗い夢界の空をももはや目を開けていることすら難しいほどだ。
「────わたくしの願い。それは【震撼】いつの日かわたくしの力で世界を揺るがすこと!」
纏う衣服は宙へと溶けていきその端から新たに魔力で編まれた衣装が彼の肢体を飾る。
「────わたくしが誓った想いは【守護】 信じ付いて来てくれた部下を。言の葉を交わした友を。そして富める者、持つ者の義務として無辜の民草の住むこの地を守りたいと!」
熟れた果実の橙色、深く高貴な赤。サテンで織られた衣に繊細な刺繡を施して、ふわりと広がるスカートはフィッシュテールですらっと伸びる足、大胆にも肩まで見えるオフショルダーでその麗しき肢体を見せつける。
「────怯え震えよ悪鬼ども!貴様らを撃ち滅ぼし皆を守護する者のお出ましですわ!」
漆黒の御髪に黄金の林檎を模る髪飾り。服や髪の随所にリボンの様に結ばれた金の帯や珠の宝石を装飾に散りばめて、高貴でありながら乙女らしさとを見いださせる衣装が出来上がる。
「さぁ打ち震え、とくとご覧におなりなさい!この身、この姿は【セレスティア・アトラス】!」
地から生えるように現れた白と金の柄。ボコボコと隆起する大地ごと引き抜けば、それは余りにも装飾華美な芸術品と見まごうような戦槌
「────天を支え震わす者ですわ!」
威風堂々。絢爛にして優雅。今この地に新たなる魔法使いの誕生した。
「うわぁぁぁん!もうムリィィィィ!」
その姿に目を奪われ呆然としている俺の前に絶叫と共に飛び込んできた影。
それは今の今迄ヒトガタの足止めをしてくれていたスカイだった。
まだ元気そうでは有るが、よく見れば衣装も少しボロボロで感じる魔力も少なく感じる。
「倒しても倒してもキリがないよぉ!ヌシには近寄れないし……ってアトラちゃん!?なにその姿!?」
「あら?マイア様ではないですの。今のわたくしは【セレスティア・アトラス】。気軽に【セレス】とお呼びください。それと、ちょうど良いですし倒れてる方のこと、しばしお願いしますわ!その間にわたくしがヌシとやらを倒してまいりますわ!では!」
まだ事態の飲み込めていないスカイに言うだけ言うや【セレスティア・アトラス】……セレスで良いか。は飛び出して行ってしまう。
「あっちょっ待て!クソッ……すみませんスカイさんこの人達を頼みます!」
ひとりで活かせるわけにもいかないので俺もスカイへと倒れた人の事を頼んで追いかける様に駆け出した。
「えぇ!?なんなのぉ!?なんにもわかんないよぉぉぉぉ!」
ひとり残されたなんにも知らないスカイの困惑した叫びが木々の隙間に木霊する。
すみません……あとでちゃんと説明します。
「オーホホホ!体がとっても軽いですわ!最高の気分ですわー!恐れ戦きなさい悪鬼共よ!!この【ヘブンズ・ベアラー】で塵に返してやりますわ!」
追いかけた先で見たのは、高笑いしながら邪魔するヒトガタをバッタバッタとなぎ倒して直進するセレスの姿だった。
うわぁ……魔法使いになったことで完全に
近寄りたくねぇ……。
「おーい!ひとりで行くのは無謀だ!先ずは作戦をだな────」
「あら?スバル様ではありませんか!ヌシなど今のわたくしの前には敵ではありませんわ。パッと行ってぐっとやってくしゃくしゃ―っとしてやりますわ!とくとご覧に見せますわ!着いていらして!」
「────話聞けよぉ!」
話なんざ全く聞いていないセレスはグングンと速度を上げて林の外──ヌシめがけて疾駆する。
「あぁっ……クソォッ!!」
セレスの撃ち漏らしか戦闘の音を聞きつけたのか、散発的に襲ってくるヒトガタに対処しながら既に遠くに見えるセレスの背を追いかける。
ヒトガタだけならまだしもスカイに勝る膂力を持ったヌシが居るのだ。ひとりで行くのは危険すぎる……!
「あぁぁぁ!もう!鬱陶しいですわ!倒しても倒しても湧いてきてぇ!」
俺が林を抜けて広場に出ると、既にセレスは交戦中でヒトガタの群れに囲まれていた。
四方八方から襲い来るヒトガタに対処が追い付かずどんどんと追い詰められている。
……仕方ない。突入して加勢する!
「────しゃがめセレス!ハァァァァ【スラッシュ・ギャラクシー】」
「……?キャッ!?」
ヒトガタの頭上を飛び越えて同時にセレスの頭を押さえ付け無理やり屈ませながら中心へと着地。
同時に魔力の刃を纏った杖で周囲の敵をなぎ払う。
一時的に包囲は緩まるが、すぐに補充されるだろう。
どうしたものか……。
「な……何しますのスバル様!わたくしが縮んだらどうしてくれますの!」
「知るか。人の話を聞かないからだ。」
頭を押さえ付けてしゃがまされたのがよっぽどお気に召さなかったらしい。
ぷりぷりと文句を垂れているが自業自得だ。それより────
「おい。ひとりで突撃したってことは何か勝機が有るのか?お前もヒトガタが大量に居るのは知っていただろ。……まさか無策とは言わないよな?」
少しづつ戻りゆくヒトガタの包囲を打開すべく迎撃しながらそう聞きながら顔を見れば、そこはちゃんと考えが有ったのかセレスは自信ありげな顔をしていた。
「もっちろんでしてよ!そのために、一瞬だけお力をお借りしたいのですが────よろしくて?」
「はぁ……とりあえず話は聞いてやる」
「話が速くて何よりですわ」
セレスの語る作戦は大雑把もいいところであった。
隙を作るから一発大技を撃って活路を開いてくれ。後は自分が決めるから眺めてなさい。
何とも粗雑でパワー全振りな作戦である。
「それでは、作戦通りに」
「分かったよ。そっちも失敗するなよ!」
「当然でしてよ!では、行きますわ!」
合図と共に大きく跳躍するセレス。
最高到達点まで至ったら、高く掲げた【ヘブンズ・ベアラー】と共に重力に引かれ落下する。その姿はまるで隕石。
「そこな者ども頭が高い!地べたに這って許しを請いなさいな!【メテオ・クエイク】!」
凄まじい勢いで叩きつけられる槌頭によって地面が大きく揺れる。
天変地異の如く揺れる大地に立っていることもできずに体勢を崩していくヒトガタ達。
「
「道を開く!今度こそ決める!【トワイライト・スーパーノグァ】!」
放たれた極光は直線状のヒトガタ達を纏めて飲み込み消し去っていく。
光が収まればそこには
「────完璧ですわね。これで決めますわ!!」
先ほど【メテオ・クエイク】で地面へと叩きつけた衝撃の反動で回転するように大きく飛び上がったセレスがヌシの頭上へ至る。
「喰らいなさいな!【ウルトラプリニー───」
叩きつけられた【ヘブンズ・ベアラー】を刀で迎撃を試みたヌシだが、それすらも容易く食い破り、地面へと凄まじい勢いで叩きつけられ、衝撃の反動で体が浮かび上がる。
「────イラプション】!成層圏までカッ跳びなさい!!」
ヌシがバウンドし無防備な状態になって落ちて来る。
そこへ先に着地し待ち構えたセレスが【ヘブンズ・ベアラー】を全力でフルスイングし打ち上げた。
「完全勝利────ですわ」
瞬間的に叩き込まれた破壊的な衝撃によって偽りの空の彼方まで飛んだヌシは上空で爆発四散。
天まで飛んで四散したヌシの魔力がキラキラと光って降り注ぐ。
────それはまるで空に咲いて消えゆく花火の様に儚くも美しかった。
その後の話なのだが、マイアと共に花火を見る筈だったのだが……
ヌシに襲われ魔力を奪われた人の介抱。
テレーズへの報告。
新たに魔法使いになったアトラの今後について。
襲い掛かった多数のタスクにてんてこ舞いで、遠くに音羽は聞こえても終ぞ花火そのものを見ることは叶わずという顛末になってしまった。
次は見れるといいなぁ……花火。