星空の魔法少女   作:ヒィーィジヤロラルリーロロロー

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遅くなったのは単純に筆が進まなかったから
ちまちまと段落の調整や台詞回しに整合性の確認なんか考えてたらぜーんぜん進まねぇでやんの

世の早筆の方々はいったいどうしてあの速度で話が書けるのですか…?





連なる提灯に誘われて

 真夏の太陽が西の空へと消える頃。

 普段ならば街に子供は姿は既に無く、一日の仕事を終え家路に向かう人々がぽつぽつと増えてくる時刻。

 

 しかし、それは普段の話。今日という日に道を行き交う人々の様子は一味違う。子供は駆け回り大人たちもどこか浮足立っている。

 

 神社の入り口たる一の鳥居から拝殿の有る広場までを区切る二の鳥居までを結ぶ参道、その石畳の両脇にずらっと並んだ屋台に掲げられた赤く連なる提灯の列。

 普段は厳かなる神域も今日ばかりは賑やかな雰囲気に包まれている。油断すればあっという間に人々の波に飲まれてしまうだろう。

 

 今日は祭り。老いも若きもこの日ばかりは日常を忘れ一夜の夢を見る。

 

 

「アハハハ~! ほらほらスバルちゃん見て! 向こうの屋台! チョコバナナ!」

「まだ食べるんですか……? もう両手に沢山持ってるじゃないですか」

「もっちろん! 今日は屋台ぜーんぶ回って美味しい食べつくすよ!」

 

 ここは【須売流山(すまるさん)】の中腹に位置するこの街で最も大きい神社。なんでも街を挟んだ反対側に見える海まで見通す景色が素晴らしいと地元の観光ガイドにも載っているそうだ。

 なんだか難しい正式名称が有るらしいのだが地域住民は【須売流神社】と呼んでいる。

 先日、街の見回りの際に小型の夢界が発生していたのもこの神社だ。

 

 人が集まればそこに想いや願いが堆積する。そんな訳で此度の祭りで夢界が発生した際に備え、俺とマイアはテレーズの指令の元訪れていた。

 

「はぁ…落ち着かない。なんで見回りするだけなのに浴衣なんて……」

 

 空色の着物、頭にお面、両の手に大量の屋台グルメを抱え、一つ結びの茶髪を揺らしてご満悦なマイア。

 ────の隣に立つ、濃紺の生地に星柄。編み下ろした金の髪。着物衣装の金髪美少女。それが今の俺である。

 もう女の姿には大分慣れてきたが、着物を着て動じない程この姿を飲み込めてはいない。

 

 仕事だから何時でも戦えるように女の姿になるまではもう慣れたものなので良いのだが、何を思ったのか女になった俺をじっと見るなり「どうせお祭り行くのだから着物でも着ていきなさい。ちょうど一着だけ有ったと思うから貸してあげるわ」なんてテレーズに言いだしたのだ。

 

 着付けなんて分からないからと拒否したのだが、不運なことに居合わせたマイアに話を聞かれてしまい、着替え用の部屋に連れ込まれたと思えばすぽぽーんと着ていた服を剥かれ、気づけば浴衣に着替えさせられていた。

 

 そのまま興が乗ったのかヘアアレンジまで施されて今に至る。最初は拒否しようと思ったのだがあまりの勢いに何も言えなかった。俺は弱い……

 

「……はぁ」

「ふぉぇ~…あはひふぁひあっふぇるふぉふぉもふんひゃけどぬぁ」

「何言ってるか全然分かんないんで、食べるか話すかどっちかにしてください」

「…………」

「あっ、食べる方優先なんですね」

 

 ……まぁいい。いや、良くはないけど過ぎた事はしょうがない。

 態々着替えに戻るのも手間だし今は仕事が大事だ。席を外している間に夢界が発生するかもしれない。

 

 ……それに、半ば無理やりとはいえせっかくマイアが着せてくれたのだ。すぐに脱いでしまうのも彼女に申し訳ない。

 どうせ夢界に入ったら変身するのだ。その時に服装も変わるのだから仕事にはほとんど影響は無い。祭りが終わるまではこのままで居ればマイアも満足するだろう。

 

 

「えへへ…楽しいね! ……アタシ、実はここのお祭りに来るの初めてだったんだ。だから、今日はスバルちゃんが一緒に来てくれて安心したの!」

 

 いつの間にやら手持ちの食べ物を食べつくしたマイアが俺の歩幅に合わせてゆっくりと歩きながら語りかけてくる。

 

「へぇ…マイアさんなら友達多そうですし、てっきり何度か来てるものかと」

「うん。実はアタシこの街に()()()()()()()()()()()()()なんだ。このお祭りも()()に来てからできたお友達に話だけは聞いてたからすっごく楽しみにしてたんだよ」

 

 マイアがここに来たのは一年前…ということは、彼女の前にこの街を守っていた魔法使いも居たのだろうか。

 

「それでね、このお祭りは花火も打ち上げるって聞いたんだけど本当?」

「はい。本当です。……正確には同じ日に海の方で花火大会をしていて、その花火がこの神社からも見えるってだけですが」

 

 始めは花火大会も祭りも別日で開催していたのだが、どこかの年に偶々花火大会が本来の日程で開催できず、予備日として設定されていた日がこの祭りと同じ日付だったことが始まりらしい。

 その時にこの神社からも花火が綺麗に見えるのに加え、毎年お祭りも花火大会も周辺地域の混雑が問題となっていたことも有り、どうせ混雑するなら両方同時に開催すれば二度手間にならなくて良いじゃん! なんて理由で翌年からおんなじ日に開催するようになったのだとか。

 ちなみに、花火大会の方には隣町から魔法使いが派遣されているらしいので、俺たちはこっちの祭り会場周辺だけ注視していれば良いそうだ。

 

 

「よく考えたら花火見るのも久しぶりかも。今から楽しみだねスバルちゃん!」

「そうですね俺も結構楽しみです。…このまま何事も無ければ良いんですが……」

 

 テレーズが前に言っていたが今この街で夢界現象が頻発する状況は前例の無いイレギュラーな事らしい。

 大型の夢界とは本来ひと月に一度発生するかどうかで、発生する際も数時間前には予兆が観測できるようなのだが、最近は発生するまで場所が分からないどころか、発生した夢界が何処に有るかの特定すら難しくなっているそうだ。

 

 つい最近魔法使いになったばかりな俺にはよくわからんがこの街に何か良くないことが起きているのは確かだろう。

 何が起きるか分からないの以上、せめて警戒だけでもしておくべきだろう。

 

 そんなことを一人考えているのが顔に出ていた様で、それを見たマイアがなんだか不満げな顔でこちらを見つめていた。

 

「むぅ…スバルちゃんなんか難しい顔してる!」

「へ…いや、ちょっと考え事を……」

「駄目だよー! せっかくのお祭りなんだから楽しまないと! あっ、ほら! あっちで射的やってるんだって! 行ってみよ!」

 

 ……せっかくここまで来たのだ。確かに心配事は有る。しかし、今この瞬間を楽しむのも悪くない、か。

 先に屋台の方へと走って行ったマイアに追いつくべく少し歩みを早める。

 

「おっ! 来た来た! どっちが大きなものが取れるか勝負だよ! スバルちゃん!」

「……ふふっ、良いですね。先に言いますが射撃には少し自信が有るんですよ。絶対負けませんからね!」

 

 

 その後は俺も難しいことを考えるのをやめ、マイアと今この瞬間の祭りを遊びつくすことにしたのである。

 スーパーボール掬いや欲しい物も無いのにヒモくじをしてみたり、割高で特別な部分も無いのに何故か美味しく感じる焼きそばやたこ焼きなんかの屋台グルメを食べて回ったりもした。

 ちなみに、射的の結果だがマイアは景品の中で最も大きなぬいぐるみを当てて落としてご満悦だ。

 対して、俺が落とせたのは1つ数十円のチョコ菓子だけ。大見得切ったわりに非常に情けない結果である。

 

 ……弁解させてほしいのだが、これはコルク銃の威力弱いのが悪いのであって俺の狙いは悪くなかった。……その筈である。

 

 

「えっへへ……遊んだ遊んだ~!」

「そうですね……。もう少しで花火の時間ですし、高台に移動しますか?」

 

 祭り中にこの周辺で夢界が発生した場合に対処するのが俺たちに任された仕事だが、そこまで遠くに行かなければ問題ないとテレーズも言っていたので大丈夫だろう。

 この神社の裏手に有る高台からは海が良く見える。なので当然、花火も良く見える。

 

「そうだねぇ…アタシもちょっと疲れてきたし、早めに行って時間までゆっくり待ってようか」

「はいっ! それじゃあ案内しますね」

 

 祭りも終盤に差し掛かり少しだけ人の波も引いた参道を並んで歩く。

 ご機嫌な様子で歩くマイアの横顔をチラと見る。

 

 歩みに合わせてフリフリと左右に揺れる茶髪。整っていながら快活さとどこか人懐っこさを感じさせる顔。女性にしては少し高めな身長。

 俺なんかが隣を歩くのもおこがましいほどの美少女である。

 いや、不服なことに()()()()美少女なのだが……。

 

 とにかく、あの日夢界に巻き込まれて成り行きで魔法使いになって無ければ一生交わることの無かった縁だ。

 ────分からない事や不安も有るが、こうして祭りを共に楽しんでいるこの瞬間だけでも、まぁ、悪くはなかったんじゃないかと思える。

 

「ねぇねぇスバルちゃん! あっちに面白そうな屋台見つけた! ついでに寄って行こうよぉ!」

「どこですか? …すみません。自分の背丈だとちょっと見えないですね」

「そっか…それじゃあ、近くまで行ってみよっか!」

 

 そう言って俺の手を引くマイアに連れられ彼女の見つけたという屋台まで二人歩く。

 ……いったい何を見つけたのやら。

 

 

 

「ここ! 珍しいでしょ!」

「……。そうですね…確かに珍しい」

 

 辿り着いたその先に有った屋台。その看板には【世界でここだけ! 黄金のりんご飴!】の文字。

 ぱっと見は奇をてらった一発ネタのB級グルメ的な雰囲気だが何故だか()()()()()()()がするんだよなぁ。

 

「りんご飴なら食べながらでも花火見れるし買って行こうよぉ! それにめちゃくちゃ写真映えしそうじゃん!」

「……まぁ、別に俺は良いですけども」

 

 うーむ。この悪寒は()()()()()()()()ような気も……。

 

「すませーん! この【金のりんご飴】? ってやつ二つください!」

「まいどありですわー!」

 

 あー……。

 

「お待たせいたしましたわ! こちら世にも珍しき黄金色のりんご飴! お二つですわ! ふふふ…それにしても、数多有る屋台の中でここに目をつけるとはなんとお目が高い! この黄金色のりんご飴は我が金時グループが総力を挙げて開発した新品種【ヘスペリデスの黄金】を使用した世界で、今はまだここでしか食べられない貴重なものですの! 現在は実地で顧客の皆様の反応を見て聞いて流通戦略を練っている段階ですが、通常のりんごサイズの物も含めていずれはお近くのスーパーや百貨店、ネットショッピングで皆様がお手軽にお手に取れるようにしていく予定ですわー! あっ食べ終わりましたらこちらのサイトからアンケートにお答えいただけますと助かりますわ」

「なんかめっちゃ面白い子居る―!!」

「そんな予感はしてた……」

 

 そこに居たのは、世闇に溶ける様な艶やかな漆黒の長髪。曇り一片たりとも浮かばぬ自身に満ちた整った顔。

 ────それに不釣り合いなねじり鉢巻きと青い法被。

 不服なことにもはや顔なじみとも言える少女。この国で五本の指に入るであろう超大企業である金時グループのお嬢様【金時 アトラ】であった。

 ……ぶっちゃけ押しが強すぎて苦手。

 

「あら…そちらのお方は……」

「うげ…」

 

 やっべ…こっち見やがった。

 

「あれ? スバルちゃん知ってる子?」

「………………まぁ」

 

「そういえばお名前はお聞きしていなかったですわね。スバル…と申されるのですか? 良いお名前ですわね!」

「………………ども」

「アタシの名前はマイア! 【琴壇(きんだん) マイア】です!」

「あら、これはご丁寧にどうもありがとうございます。わたくしの名前は【金時(きんじ) アトラ】ですの。どうかお見知りおきを」

「金時って…もしかしてあの金時ですか?」

「えぇご明察ですわ!」

「すごーい!!」

 

 なんか意気投合してる……

 元気いっぱいのガールズには付いていけないので一人だけ少し離れてりんご飴を齧る。

 言うだけあって結構うまいのが微妙に腹立つな……。

 

 ボリボリしゃくしゃくとりんご飴に齧りついていると端末が突如として震え出した。……まさか! 

 慌てて端末を取り出すと予感の通りに画面にはテレーズの名前。

 

「やぁ、スバル。お楽しみのところ申し訳ないけれど緊急事態よ。その神社の周辺に大型の夢界発生したわ」

「了解です。もう少し詳しい場所とか分かりませんか?」

「そうね……確認できたわ。正確にはそこから少しだけ北の方角…神社の裏手の辺りに夢界が有ると思われるわ」

「ありがとうございます! はい。それでは。……マイアさん!」

 

 恐れていた事が起きてしまった。発生場所は神社の裏手側。そっちには()()()()()()()()()()が有る。

 この高台は混雑する程ではないが現地住民なら存在をを知っている程度には有名なスポットだ。放っておけば夢界に迷い込む人が出るかもしれない。

 早急に対処をしなければ! 

 

「なーにー? スバルちゃん? ……もしかして」

「はい。そのもしかしてです」

「……分かった。すぐに行こう! ゴメンねアトラちゃん! これ、連絡先! また今度ゆっくりお話しようねー!」

「ほぇ? え…えぇ! また機会が有りましたら是非とも!」

「それじゃあ、案内してスバルちゃん!」

「はい!」

 

 現場へと向かうべく俺とマイアは走り出す。

 ……クソッ! 浴衣のせいで全然走れん! 

 しかし、まだ発生場所が近場で良かった。この距離なら浴衣でも数分と掛からずに着くだろう。祭りに俺たちを派遣したテレーズの采配に助られたな。

 

「むぅ…せっかくのお祭りなのにタイミング悪いなぁ! 花火が始まるまでに終わらせちゃうんだから!」

「そうですね。俺も楽しみにしてたんで、さっさと片づけて最高の花火を見ましょう!」

 

 

 祭りの喧騒を掻き分けて俺たちは進む。

 ひとつは人々の安寧の為に。

 もうひとつは最高の花火を見る為に。

 夜空照らす大輪の華。その輝きの邪魔など絶対にさせぬと誓って。

 

 

 

 

 

 

 

「…行ってしまいましたわね。もう少しお話ししたい所でしたが……あら? これは確か…マイア様がお持ちになっていたぬいぐるみ…でしょうか?」

 

 

 

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