長めに作ろうと考えて長めに作ってたら1万文字超えたんで注意です。
それと誤字報告もありがとうございます。感謝します。
アビドスへと戻り、会議室の机の上に集金の書類を広げ、全員で確認する。
書類を確認し終えた瞬間、セリカは怒号と共に机を大きな力で叩きつけた。
「なっ、何よこれ!?一体どういうことなのっ!?」
「………!」
「現金輸送車の集金記録にはアビドスで788万円集金したと記されている。私たちの学校に来たあのトラックで間違いない」
「……でも、その後すぐにカタカタヘルメット団に対して「任務補助金500万円提供」って記録がある……」
「ということは……それって……」
アビドスがお金を渡した後すぐにヘルメット団のアジトに直行、任務補助金を渡していたことがこれで判明した。
そこで判明することは、なぜ「任務」という名でヘルメット団にお金が渡っているのかというところだ。
「ヘルメット団の背後にいるのは、まさか……カイザーローン?」
「ということになるね」
ノノミが疑問を飛ばした。
それもそのはず、もしカイザーローンがこの学校を破綻させようと貰った金額をそのままヘルメット団に流したとすれば、実際に学校が破綻すればカイザーローンからしても貸したお金は完全に回収できず、カイザーローンにとって利益なんか一つもないからだ。
「この件、銀行単独の仕業じゃなさそうだね。カイザーコーポレーション本社の息がかかってるとしか思えない」
「……はい、そう見るのが妥当ですね」
「……今考えても答えは見えてこなさそうだね。というか、ヒフミはずっとここに居ていいのかい?元々はトリニティのはずじゃ……」
「……え?」
そう聞くと、ヒフミは暫く考えた後、今までとは打って変わって表情が一変した。
「そ、そうでした!?私、すぐに帰らないと……」
「なら、玄関まで送っていこうか」
「みなさん、色々とありがとうございました」
「変な事に巻き込んでごめんなさい、ヒフミさん」
「今度遊びに行くから、その時はよろしくー」
「はい、分かりました」
「まだ詳しいことは明らかになっていませんが……これはカイザーコーポレーションが、犯罪者や反社会勢力と何かしら関連があるという事実上の証拠になり得ます」
「戻ったら、この事実をティーパーティーに報告します!」
ティーパーティー、お嬢様学校と言われるトリニティ総合学園の幹部、トリニティのトップが所属する場所。
「まー、ティーパーティーはもう知ってると思うけどねー」
「は、はい!?」
ホシノはそう言い、ホシノの考えを話す。
トリニティはキヴォトスの中でもゲヘナに並ぶマンモス校、そんな学園の首脳部、トップならそれぐらいはとっくに把握しているだろう。と語った。
「そ、そんな……知っているのに、みんなさんのことを……」
「うん、ヒフミちゃんは純真で良い子だねー。でも世の中、そんなに甘くないからさ」
「………」
そう語っている瞬間、ホシノの表情が突然と暗く、いや何かを考えているような、遠い所を見つめているような、そんな表情に変わる。
「ヒフミちゃんの気持ちはありがたいけど、そっちに知らせたところで、これといった打開策が出るわけじゃないし、かえって私たちがパニくることになりそうな気がするんだよねー」
「そ、そうですか……?」
「ほら、今のアビドスって廃校寸前じゃん?トリニティとかゲヘナみたいなマンモス校からのアクションをコントロールできる力がないんだよー。言ってる意味、分かるよね?」
それの答えは簡単であり、規模も思考も違う学校からの手助けなんて、いつどんなことをするか分からないし、何をするかも分からない、もしなにかアビドスにとって不利益な事をされても、それを阻止できるほどの力はない。
「そ、そうですね……政治って、難しいですね……」
そんな中、ノノミがホシノに問いかける。
「でも……ホシノ先輩、悲観的に考えすぎなのではないでしょうか?本当に助けてくれるかもしれませんし……」
その問に、ホシノはゆる〜い笑顔で回答した。
「うへ〜私は他人の好意を素直に受け取れない、汚れたおじさんになっちゃってねー」
だが、そんな緩い笑顔も、すぐにまたあの遠い目に変わった。
「「万が一」ってことをスルーしたから、アビドスはこの有様になっちゃったんだよー」
その表情と言葉に底なしの重みがかかり、誰もその言葉に反論も、肯定も、言葉を掛けることすらできなかった。
「…………」
「……では……その……」
「本当に……一日で色んな出来事がありましたね」
「そうだね、凄く楽しかった」
「……楽しかったのはシロコ先輩だけじゃないの?」
そうジト目で問いかけるセリカに、ヒフミは自分も楽しかったと答える。
「いやぁー、ファウストちゃん、お世話になったね」
「そ、その呼び方はやめてください!」
「よっ、覆面水着団のリーダーさん!」
そう茶化すホシノとノノミにアヤネが止めに入る。
「と、とにかく……これからも大変だとは思いますが、頑張ってくださいね。応援してます」
「それでは……みなさん、またお会いしましょう」
そのままヒフミに手を振って帰らせた後、対策委員会も解散の雰囲気が出始めた。
「みなさんお疲れ様でした。今日はゆっくり休んで、明日改めて集まりましょう」
「解散〜」
解散し、視点は便利屋68となる。
ムツキが元気よく事務所のドアを開け挨拶をした。
「おはよー」
「おはよう……」
入って早々、正面椅子に座る便利屋68の社長、陸八魔アルは今でとは違いげっそりした表情で椅子に座っていた。
「ビックリした!アルちゃん、徹夜でもした?」
「ううん、ちゃんと寝たわ……」
「社長、何か悩みでもあるの?」
そう事務所の真ん中の机とその両方にはソファーがある場所にカヨコが武器を手入れしながら聞いてくる。
「計画はしっかり立てたじゃん?人をこれまでの2倍雇って、地の利を生かせる戦場にアビドスを誘き出す」
「ハルカは爆弾を設置しに、朝早く出かけた。計画では、爆弾を数十箇所埋設したゾーンでアビドスをコテンパンにするって感じだよね」
そう言ったそばからドアが開き、ハルカが帰ってきた。
「ただいま戻りました」
「お帰り、ハルカ。お疲れ様」
「主要ポイントに爆弾を埋めておきました。あとは、このボタンを押すだけで……」
「よしよし、頑張ったねー。場所だけは忘れずに、しっかり覚えといて」
するとハルカは悪ぃ笑顔を浮かべながらボタンを取り出す。
「いつでも言ってください。私がこの手で、全部吹っ飛ばしてやりますから……この手で……」
「はぁ………」
そんな笑顔の後ろで、アルは暗い顔でため息を零した。
「なぁに死にそうな顔してんの?それなら最初から、例のクライアントからの手付金をもらって、それを資金に充てれば良かったじゃん」
「……手付金はもらわない。それがうちの鉄則よ」
「手付金をもらうと、クライアントの命令に従わざるを得なくなるから……って理由だったっけ?」
そう言うカヨコにアルはその通りと言わんばかりの顔で立ち上がる。
「その通り。華麗に仕事を終えてから依頼料を受け取る。この順番が崩れたら、私たちが追求するビジョンは達成できないの」
「ビジョン?そんなのあったっけ?」
ムツキは知らなかったようでアルに聞くと、アルは空回りしたかのように口を大きく開けて言う。
「あるわよ!!法律と規律に縛られない、ハードボイルドなアウトロー!それが便利屋68のビジョンでしょう!!」
そう言った後、ムツキは理解すると同時に、まるで最初から知っていた上でからかう為に聞いたかのような表情を浮かべた。
「そうだっけ?ああ、思い出した、思い出した」
「さっきカヨコが言ったように、クライアントの依頼も同じ。それが私たちを縛り付ける足枷になることもあるわ。私たちが望まない行動を強いられるかもしれないのよ」
「だから、依頼料は絶対に成功報酬として受け取るの」
そう嬉しそうに話すアルに、カヨコはある提案を出す。
「そこまでプレッシャーを感じてるなら、全部投げ出しててゲヘナに帰るのも手だよ、社長」
「は、はあ!?」
「ぷ、プレッシャーだなんて言ってないわよ!ただ……ちょっとだけ……」
「うーん、今更帰るのは無理なんじゃ?風紀委員のやつらが黙っちゃいないよ?」
「風紀委員会……か」
風紀委員会、トリニティと同等の大きさを持つマンモス校であり、キヴォトス1の治安の悪さを誇る。その均衡を保つ仕事を受けるのが、風紀委員会だ。
「確かに風紀委員会は、私たちを目の上のたんこぶみたいに思ってはいるけど……。今の私たちは、やつらから逃げてきたわけじゃない」
「それと、そもそもうちの風紀委員会が時にキヴォトス最強とも言われてる理由は……」
「風紀委員長、ヒナの存在があるから」
風紀委員会委員長、ゲヘナの治安の悪さから生まれる被害を最小限に抑える組織のトップ、空崎ヒナ。
その実力は、ゲヘナに止まらず、キヴォトス最強の一角とまで言われるほどであり、カヨコ曰く、風紀委員会の戦力の大半は、ほぼ全て彼女一人の力と言っても過言では無い。その力はヒナの名前を出すだけで逃げ出す者もいるほどである。
「だけど、逆に言えば……」
「ヒナ以外の風紀委員は、大したことないってこと」
「計画さえきちんと練れば、十分勝算はある」
「そうなの?カヨコっち、そこまで考えてたんだ」
「いつか必ず相まみえることになるだろうから。ヒナ抜きの風紀委員会なら今のアビドスにかけてる労力を考えれば、難なく戦えるよ」
「逆に言えば、アビドスはそれぐらい侮れない相手ってこと。生徒の数が少ないってことが最大の弱点だけどね」
「え?そんなに強いかな?」
「……強いよ、絶対」
そんな会話の中、アルは皆の前に立つ。
「……いえ、今更ゲヘナに戻るっていう選択肢はないわ」
「かといって………はあ」
「……一体何がひっかかってるの?」
「分かった分かった。つまらない話はこれぐらいにして、アルちゃん、ご飯食べに行こうよ。お腹空いたし」
「ラーメン屋にする?柴関?」
「また?」
「気にしない気にしない。バイトちゃんは午後から入るみたいだし。鉢合わせなきゃ問題ないじゃん?」
「まあ……美味しかったしね。とにかく、社長を元気づけないと……」
「じゃあ決まりー。行こ行こ♪」
そしてムツキを筆頭に、皆で柴関ラーメンへと向かった。
同時刻
エレベーターが動き出し、暫く待つと、ほぼ最上階の場所へと止まり、ドアが開く。
「……おや、随分と……早いですね」
「……そう、なのかもな」
全面ガラス張りの部屋には、出てすぐに社長が座るような机と椅子が置いてあり、奥で下の景色を見ている人物が一人。
「本来なら、もう少し遅い出会いのはずでしたが……なぜこの場所が?」
「あの時、ブラックマーケットで未来のような、嫌な世界を予知……いや、見えたんだ。その時、数々の景色の中で、この場所と、お前が見えた」
「……なるほど、では、せっかくですし挨拶でもしましょうか」
そいつは椅子に座ると、肘を置き、こっちを見た。
「私は、『黒服』と申します。仮の名ではありますが、これが私の名前だと思ってください」
「……私は」
「いえ、大丈夫です。先生……ですね。ずっとお会いしたかったです」
黒服と名乗る男……?は、何故か私の立場を知っていた。
「特に話すことはないと思いますが、記憶が見えたとして、なぜここに?」
「……ここに、ホシノがいた」
「……ほう?」
「こんな場所、ホシノは1人で行くわけが無い。何かを隠してるような雰囲気で、お前と話してた……何を話してたから分からなかったが。明らかに普通じゃなかった」
「……お前は、ホシノに何をしようとしている?」
そう聞くと、黒服は静かに笑いながら答えた。
「気にする必要はありません。もし仮にあの小鳥遊ホシノと私が会話をしていたとしても、それは必ずと断言出来るほど、お互いの了解を取った上での話でしょう。貴方の思っているような事はしていません」
「…なら、なぜホシノだけを連れていた」
「…人数まで分かるんですか?」
「ああ、見えたからな。早く答えろ!」
強く聞くと、黒服は突然と立ち上がり、私の目の前に立つ。
「……貴方、一体どこまで見えているんですか?」
「どこまでって……知るわけないだろ」
「……なるほど」
黒服は少し考えた後、リモコンを取り出す。
「小鳥遊ホシノを一人で連れ出した理由も、今は分かりません。貴方が見ている景色は、未来の世界でしょう。今の私は小鳥遊ホシノに接近すらしていない、私には答えかねます」
「……そう、か」
すると、黒服はリモコンを壁に向けボタンを押すと、街の景色が映し出される。
「そんなことより、先生?貴方はこんな所でこんな事をしていていいんですか?」
「……は…?何を言って……」
黒服がある場所を指さすと、そこは柴関ラーメンだった。
「もう少しで、運命が動き出します」
その瞬間、突然柴関ラーメンが轟音と共に赤い光を出し、赤い球体がラーメン屋を包んだ。
「は……?」
「な、何が起き……て……?」
「ラーメン屋が爆発してしまいました。犯行をしたのは、恐らく例の便利屋でしょう」
そう言っている間に、爆風の中から便利屋が、その後に対策委員会が走って行っている姿を見た。
「っ!みんなが!」
すぐにでも向かおうと後ろを向いた時、腕が動かなかった。
「っ、!?」
「行かせはしませんよ」
黒が私の腕を掴み、そのまま壁に打ち付ける。
「っぐ……!?」
「貴方のその力、気になりますね。未来予知ですか……」
黒服はじっとこちらを観察する。
「っ!離せ!」
「離すわけにはいきません、すぐにでも貴方を使って研究を……」
そう言いながら段々と力が腕に入っていき、痛みを走る。
「っい''!?」
「その体と体制じゃ力を入れずらいでしょう。そのままだと折れてしまいますよ」
そう言いつつも段々と入っていく力に、痛みは皆の所へ行けない怒りへと変わっていき、黒服を睨みつける。
「……っ離せ!」
その瞬間、黒服の動きが止まり、力も突然無くなり、黒服を突き飛ばした後すぐに皆の元へと向かった。
その後、先生が居なくなり、今この部屋には黒服しかいなかった。
「……クックック、なるほど…先生、貴方はそこまでのりょういきにいるのですね」
黒服は立ち上がり、ガラス張りの方へと歩く。
「先生、貴方はただの人間ではない。常軌を逸した、この世界の住人とも引けを取らないほどの力……だが、その力はあまりに強すぎる」
玄関から出ていく先生を上から見下ろし、後ろで手を組む。
「……先生、貴方は近いうちに、その力が無意識に覚醒し、見たくもない世界と、貴方が死よりも苦しい事が待っているでしょう」
「だけど、貴方は選択を続けなければいけない」
「貴方は、気づいていないだけで、生徒たちを狂愛しており、それは生徒から貴方自身へとも言えます」
「次に出会う時は、改めて話をしたいものです」
そう言い、黒服は部屋を後にした。
突然の爆発が街中で起き、現場に向かってみると便利屋と遭遇した。
爆発をしたのは私たちだとアル直々に告発し、その怒りから便利屋68との戦いが勃発し、状況は平行線だった。
そんな中、突然の弾砲が対策委員会たちを襲った。
やった犯人はゲヘナの風紀委員会。便利屋68を捕らえるという目的で、無差別的な攻撃を行い、やがて対策委員会も標的の1つとなった。
「先生は来ないの!?」
「先生には……突然の襲撃で電波が悪くて中々繋がりません!」
「っ、先生さえいれば……」
「はぁ……はぁ……もう少し」
皆のいる柴関ラーメン屋まで走っていると、突然爆発音のようなものが聞こえた。
「っ!まずいっ!」
角を曲がり、皆んなの姿が見える。
「皆!!」
皆の姿が見えたと同時に、奥の方では大量の人たちが待ち構えていた。
「あれは………」
「お前が先生か?」
銀髪のツインテールで赤いライフルを持っている子はこっちにライフルを向け、私に問いかける。
「そうだけど……」
「なら、都合がいいな」
すると、彼女は突然ライフルのトリガーに指を置いた。
「っ!」
この態度に後ろにいる子たち……明らかに味方ではないということは分かる。
「待ってくださいイオリ、まだ私たちの目的を……」
「そんなこと説明しなくても、私たちのやるべき事は決まってる。そこに私情なんて挟めるわけないだろ」
今いるのは、対策委員会、近くには便利屋が隠れている。それに向かいにいる子たちには「風紀」と書かれた赤い物が腕に付いていることから、恐らくゲヘナの風紀委員会だろう。
先生になってから大体の学校の部活やらを調べていて、風紀委員会は特に目に止まっていた。
恐らく、理由は分からないが聞いた限りでも、目的のためなら最悪武力にでも手を出せる組織。今でも私を撃とうとしている。
だけど。対策委員会に便利屋もいる、十分勝機はある。
「……っよし!」
次の瞬間、私は彼女たちに向かって走り出し、タブレットを取り出す。
「っ!来い!」
「待ってください!イオリ!」
その言葉も虚しく、トリガーからは銃弾が放たれる。だが、その銃弾は私には当たらなかった。
「アロナ!」
『はい、任せてください!』
本来なら真っ直ぐ飛んでくる銃弾に当たるはずだったが、その銃弾は本来なら有り得ない動きをし、私の横を通り過ぎた。
「な、この距離で外すわけ……!」
予想外の動きに戸惑いつつも、すぐに彼女は方法を変え、ライフルを反対向きに持つ。
「なら、直接殴るまで!」
私と彼女の間には、まだ相当の距離がある。
だが、そんな中でも彼女に向かって走っている私に向かってはしりだした。
だが、そこで私は走ることを辞め、逆に後ろへ逃げるように走り出した。
「なにをして………っ!」
だが、彼女はすぐに異変に気づいた。
なぜ突然逃げるように走り出したのか、その答えはすぐに分かる。
「今だ!」
「っこれは!?」
私が叫ぶと、彼女の走っていた真下が突然大爆発を起こす。
今の会話の中で私は建物、地面、空、空間を理解し、すぐ行動に移した。
最初は狙ってくるだろうと予想し、アロナの力を使って銃弾を避け、すぐに逃げる。
そうすると彼女は銃弾は当たらないと理解し、近接戦に持ち込むはずだ。
そこで、何故か地面が光っていることに気づいた。
それは誰かが仕込んだ爆弾だった。誰かは知らないが、風紀委員会じゃなければさっき来たばかりの対策委員会でもなければ、恐らく便利屋だろう。
だったら、合図を送れば期待通りの動きをするだろう考え、一か八かの作戦に出た。
「セリカ!真上の看板の根元!」
「っ了解!」
追跡を許さぬよう、今にも落ちそうな看板を標的にし、落とす。
その看板はそのまま彼女がいる煙に直撃した。
「はぁ……はぁ……はぁ……これで……少しは……」
そう思ったのも束の間、すぐに看板が吹き飛び、煙が晴れた。
「これしきの事で!私は止まらない!!」
彼女がライフルを構えると、誰かが彼女の名前を呼んだ。
「そこまでにしなさい、イオリ」
「この声は……」
すると、ホログラムが映し出された。
「こんにちは、先生、アビドスの皆様。私はゲヘナ学園所属の行政官、アコと申します」
「今の状況について少し説明させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか?」
「あ、アコちゃん………その……」
「イオリ?反省文のテンプレートは私の机の、左の引き出しにあります。ご存知ですよね?」
「っ………うん」
さっきとは打って変わって何も言えず焦った表情をする。
「行政官ということは……風紀委員会のナンバー2……」
「あら、実際はそんな大したものではありませんよ。あくまで風紀委員長を補佐する秘書みたいなものでして……」
「本当にそうなら、そこの風紀委員たちがそんなに緊張するとは思えない」
そうシロコが指摘する。
「だ、誰が緊張してるって!?」
「そんなことより、用件はなに?」
「そうですね、では、早めに本題へと移りましょうか」
「私たちゲヘナの風紀委員会はあくまで、私たちの学校の規則違反をした方々を逮捕するために来ました」
「ここまでの武力を働いて、それでも規則違反だからって言うのかい?」
「ええ、あくまで私たちの生徒の規則違反、対処は私たちゲヘナの風紀委員会が行います。ですので、ご協力頂けると嬉しいのですが……」
「先程も言いましたが、そうはいきません!」
そこでアヤネが反撃に出る。
「他の学校が別の学校の敷地内で、堂々と勝手に戦闘行為をするなんて!」
「自治権の観点からして、明確な違反です!」
「便利屋の処遇は、私たちが決めます!」
「……なるほど」
「……まさか、これほどの兵力を持ってしても、怯みすらしないなんて」
「これだけの自信は、やはり信頼出来る大人がいらっしゃるからでしょうか?ねえ、先生?」
「…………」
「シャーレの先生。あなたも、対策委員会と同じご意見ですか?」
「そうだね、今回は便利屋独自で動いた行為、同じ学園だからといって、生徒一人一人全員が風紀委員会に縛られてる訳でもない。それで、今回はアビドス内で起きたこと」
「いくら言っても、今回無関係な風紀委員会は、私たちアビドスに手出はできない、アヤネの言っている事が正しいと思うな」
「それに、便利屋も悪い子じゃないしね」
「いやいや!悪人に決まってるでしょ!ラーメン屋を爆発させたのよ!?」
「え?そうなの?」
それは予想外………。
「……とにかく、今回は便利屋単独で行った行為だから、処罰は私たちが決める。お引き取り願えるかな?」
「……なるほど、これは困りましたね……仕方ありません」
「………やるしかなさそうですね」
そう言った瞬間、突然奥から銃声が鳴り響いた。
だが、これは対策委員会への攻撃じゃない、奥のゲヘナ生徒が一人一人倒れていく。
「な、なんだ!?」
「ハルカ!?」
ゲヘナ生徒の中からハルカが飛び出し、イオリの目の前に立ち、ショットガンを連射する。
「ぐっ!?うぅ……っ、」
その衝撃でイオリの倒れ、立っているゲヘナ生徒も少なくなった。
「嘘をつかないで、天雨アコ」
ハルカの後ろから、知らぬ間に後ろにまわっていた便利屋が現れる。
「偶然なんかじゃない、最初からあんたが狙ってたのはこの状況だった」
「カヨコさん………」
「ハルカちゃんナ〜イス☆」
「ス、すいません!助けに来るのが遅くなりました……!」
「……最初はどうして風紀委員会がここに現れたのか、理解できなかった。風紀委員会が他の自治区まで追ってくる理由、それも私たちを狙って?」
「こんな非効率的な運用、風紀委員長のいつものやり方じゃない。だからアコ、これはあんたの独断的な行動に違いない」
「……………」
「それに、私たちを相手にするにはあまりに多すぎる兵力。他の集団との戦闘も想定すれば説明がつく」
「アビドスの全校生徒を集めても5人しかいない……なら結論は一つ」
カヨコは指を指し、鋭い目つきで言い放つ。
「アコ、あんたの目的はシャーレ。最初から、先生を狙ってここまで来たんだ」
「え、私…?」
「……ああ、便利屋にカヨコさんがいることをすっかり忘れていました。のんきに雑談なんてしている場合ではありませんでしたね」
「まあ、構いません」
次にアコが指を鳴らすと、全方向からゲヘナ生徒が現れ、私たちと取り囲む。
「………増員」
「まだいただなんて……それに、こんなにも数が……」
「うーん……少々やりすぎかとも思いましたが……シャーレを相手にするのですから、これくらいあっても困らないでしょうし……」
「まあ、大は小を兼ねると言いますからね☆」
「アコ…………!!」
「話を戻しましょう。私たちがこうするきっかけは、ティーパーティーでした」
「もちろんご存知ですよね、ゲヘナ学園と長きにわたって敵対関係にある、トリニティ総合学園の生徒会のことです」
「そのティーパーティーが、シャーレに関する報告書を手にしている……と、そんな話がうちの情報部から上がってきまして」
「そんな話……あ」
そう言えば'……ヒフミがアビドスの件をティーパーティーに報告するって言ってたな……。
「……それで?」
「当初は私も「シャーレ」とは一体何なのか、全く知りませんでしたが、ティーパーティーが知っているとなれば、私たちも知る必要があります」
「そこで、チナツさんの報告書を確認しました」
「連邦生徒会長が残した正体不明の組織……大人が担当している、超法規的な部活」
「どう考えても怪しい匂いがしませんか?」
「それで私を?」
「はい、シャーレ自体、トリニティとの条約に、どんな影響が及ぶか分かるようなものではありません」
「ですからせめて条約が無事締結されるまでは、私たち風紀委員会の庇護下に先生をお迎えさせていただきたいのです」
「ついでに、居合わせた不良生徒たちも処理した上で……といった形で」
「断る」
「……そうですか」
「こっちとしては、ゲヘナ学園に行って何されるか分かったものじゃない、提案はありがたいけど、私にも生徒たちがいるからね」
「では、やはり仕方がありませんね」
「……本気でやるのか?」
「ええ、私たちは、一度決めたら辞めるなどという選択肢はありませんので」
「……そうか」
「それなら、私も容赦はしない」
その時、奥の方から誰かが歩いてくる事に気づいた。
まだ誰も気づいていない、私しか見えてない……ん?あれは……。
白くて長い髪に、同じ風紀と書いた物、私にはその姿に見覚えがあった。
……なるほど〜。
今回の勝負、あっさりと終わりそうだ。
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