虚弱先生の青春物語   作:不透明な水滴

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ちょっと戦闘。


戦場という名の記憶の地へ

 

 外に出ると、辺りに誰も居ない影響で吹き飛ばされそうになる程の迫る風と爆発音が私達を巻き込んだ。

 

「な、なに、これ!?」

 

 遮蔽物で身を隠しているにも関わらず、銃の連射音と実弾を風と共に肌で感じ取る。

 私が身を隠している間にも、ユウカ達は前線へと進み出しながら怒りの声を顕にした。

 

「なんで私たちが不良たちと戦わなきゃいけないの!!」

 

「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部屋の奪還が必要ですから……」

 

「それは聞いたけど……!私これでも、うちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど!なんで私が……!」

 

 そうユウカが喋っている内に、ユウカ達に向けられ放たれた銃弾の数発がユウカだけに直撃する。

 

「いっ、痛っ!!痛いってば!!あいつら違法JHP弾を使ってるじゃない!?」

 

 そう怒りの言葉を叫んではいるが、私にとってはなんで銃弾を喰らって痛いで済んでいるのかが疑問でしかない。まあ、今は気にし過ぎないでおこう。

 次の瞬間、私の隣でハスミが叫ぶ。ユウカは云われた通り直ぐに身体の体勢を低く伏せ、瞬間ユウカの真後ろから大口径のスナイパー弾が頭スレスレに通過していく。ユウカは通過した頭を何も無かったかと焦りながら押さえ付ける。それを見たハスミはユウカに一つ指摘を云う。

 

「伏せてください、ユウカ!それに、ホローポイント弾は違法指定されてはいません」

 

 ハスミの言葉が癪に触ったのか、ユウカは怒鳴りながら言い返した。

 

「うちの学校ではこれから違法になるの!傷跡が残るでしょ!」

 

「そうなんですか。そんな事より今は先生が一緒なので、その点には気を付けましょう。先生を守ることが最優先。あの建物の奪還はその次です」

 

「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトス人ではないところから来た方ですので………私たちとは違って、弾丸一つでも生命の危機にさらされる可能性があります。その点ご注意を!」

 

「ああもう!分かってるわ。先生、先生は戦場に出ないでください!私たちが戦ってる間は、この安全な場所にいてくださいね!」

 

「う、うん」

 

 今の私に…できること。

 この景色、昔にも見たことがある。皆んなの名前も、微かに覚えている。何かが足りない気がするけど、其でも、今ならやれる気がする。

 懐かしい感覚、離したくなかった記憶。私が、彼女たちを連れていかなければいけない。

 全員を一度戻し、皆んなの見える位置に着く。そして一言云った。

 

「皆、私が指揮をする」

 

 突然の私の言葉に全員唖然とし、困惑を隠せずにいるが、直ぐにその言葉の意味を理解した。だが、その上での困惑。思わずユウカは不安と納得の声を上げた。

 

「え、ええっ?戦術指揮をされるんですか?まあ……先生ですし……?」

 

「……分かりました。これより先生の指揮に従います」

 

「生徒が先生の言葉に従うのはごく自然な事、ですね。よろしくお願いします」

 

「よし、じゃあ行ってみましょうか!」

 

「それじゃあ、まずは……」

 

 皆んなや相手達の事、武器や能力なんて全く知らないのに、何故か身体が理解している。当たり前かの様に分かっている。それを思い湧き上がらせるだけ。難しいことはしなくていい。

 ただ個々の力を最大限活用し、如何に皆んなの体力を削らずに勝つかの話。

 

 それなら、私の一番得意なやり方だ。

 

「それじゃあ、まずはユウカ!出来るだけ前に行ってシールドの展開、あくまで注意と意識を持っていく事!」

 

「分かりましたっ!」

 

 指示を受けたユウカは物陰から飛び出し、同時に円形のシールドを展開する。

 

「で、出てきたぞ!撃て!撃てっ!」

 

 突然の事に身体を引く不良達は咄嗟に銃を構えた。狙い通り、見事に不良達の意識はユウカに集中する。その隙を逃す筈も無く、次の指示へと移る。

 ユウカが不良達の真後ろまで行き、私達から背を向けた。スズミとチナツに準備をして貰い、タイミングを見計らう。

 

「スズミ、後ろから出て不良達の視界に入る様に閃光弾の投下、その間にチナツはスズミの閃光弾が光る間に、障害物を使って反対側で待機!」

 

「了解!―――閃光弾、投下します!」

 

「ユウカ、目を閉じて!」

 

 私の声に目で合図を送ったユウカが手で目を塞ぐと、不良達の真上に飛んだ閃光弾が辺り一帯を光に包んだ。閃光弾を受けた不良達はヘルメットで守っていたとは云え、無論、目が潰れ前が見えなくなった。

 

「ユウカ、チナツは前から、スズミは後ろから徐々に詰めて行って!」

 

 三人が前線に出る間、未だ指示を受けていないハスミに次の指示を出す。

 

「ハスミは、ただ一点に集中して」

 

「……は、はい。分かりました」

 

 あの不良達は後ろで私と同じ様な指示を出すリーダーが居るからこそ成り立っている。ならそのリーダーを最初に潰せば倒さずとも直ぐに逃げてくれるはずだ。

 三人で徐々に詰めて行くと、不良達のリーダーらしき人物が一瞬前へと出た所が見えた。恐らく位置が悪いのか、仲間達が見えていないのか、身体を前に出し隠れているハスミの直線上に現れた。

 ハスミに事情を話し、理解したハスミはその場から辺りを見渡し、リーダーが見えた瞬間、スナイパーを構えた。

 

「ハスミ、あの人だ、あの人を撃ち抜いて!」

 

「―――はい!」

 

 ハスミの言葉と共に撃たれた銃弾は戦っている不良達の頭をすり抜け、やがてリーダーの頭に直激で入ると、当たった事にすら気付かなかった不良達のリーダーはその事を知る事も無く意識を飛ばし、その一瞬で勝負は着いた。

 

「よしっ!」

 

 ユウカ、スズミ、チナツもその瞬間、気を取られた不良達の不意を突き次々と制圧していく。変わらない戦況を三手で抑え、結果として全員の確保を成功させた。

 戦闘を終えたユウカ達は戻ると、皆んな疑問を持つ様な顔をしながら呟く。

 

「なんだか、戦闘がいつもよりやりやすかった気がします……」

 

「………やっぱりそうよね?」

 

「先生の指揮のお陰です、普段よりもずっと戦いやすかったです」

 

「……良かった。私も力になれて嬉しい」

 

「なるほど……これが先生の力……ま、まあ連邦生徒会長が選んだ方だから当たり前か……」

 

「それでは、次の戦闘もお願いしますね、先生」

 

「うん、よろしくね」

 

 首を振りながら呟くユウカをよそ目に、ハスミからそう聞かれると、私は一言で返答し、リンに伝えられた次の行くべき場所へと向う。

 

︎ ✦︎︎

 

「もうシャーレの部室は目の前よ!」

 

 目的地へと向かう途中、持っていたタブレットと通話からリンが現れ、報告と云いシャーレ周辺の情報を伝えられた。

 

「今、この騒ぎを巻き起こした生徒の正体が判明しました。生徒の名は『孤坂ワカモ』。百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です。似たような前科が幾つもある危険な人物なので、気を付けてください」

 

 そうリンが言った瞬間、建物の方から爆発音が聞こえると、中から大量の不良達が銃を構え、私達の元へ現れた。

 不良達は容赦無く私達に向け数十人の銃弾が飛ぶ。

 

「ユウカ、シールドの展開をお願い」

 

「はい、分かりました!」

 

 不良達から受ける銃弾を全てユウカのシールドが守り、その間に次の対策を練る。まずはこの戦いで必要となる武器の残量、状況に応じて使い分けなければいけない。

 

「スズミ、閃光弾の数は?」

 

「残り四つです」

 

 スズミから聞いた閃光弾の数は四。ならば一回の戦闘につき使えるのは最大で二個まで、戦闘の難易度と比較しなければそれ以上に使う事も視野に入れておかなければ――――

 

「っえ……?」

 

 そう考えを纏め、作戦を始めようと声を出した瞬間、ある景色が浮かんだ。

 

︎ ✦︎︎✦︎︎✦︎︎✦︎︎✦︎

 

 ―――雨が降っている。

 雨が冷たい―――ここは、何処だ?

 なんで私は、ここに居るんだろう。

 

 人が居る、とても不愉快で、気持ち悪い。人では無い様な、『ヒト』のカタチをしたナニカ。

 そうだ。思い出した。私は、捨てられたんだ。

 暗くて冷たくて、悲しくて。皆んなは死んで、私だけを無慈悲に生かす。

 

 そんな暗くて消えない――――憂鬱なお話。

 

︎ ✦︎︎

 

「っげほ!げほっ!?」

 

「せ、先生!?」

 

「大丈夫ですか、先生?!」

 

「げほっ……だい、じょうぶ……」

 

 今の記憶は、記憶……?

 記憶。なんで、誰かの記憶って分かったんだ?

 

 今の私は……一体何なんだ?

 

「そうだ……私は………先生、だったんだ。スズミ、不良たちの閃光弾の効果が切れるのはどれぐらい?」

 

「え……?えっと……大体、三十秒程です」

 

「なら、感覚でいいから、三十秒感覚で数の多い所に閃光弾を投げ込んで」

 

「それで……二人……は………?」

 

 ………?あれ……?意識が……とぶ…………。

 突然視界がボヤき、グラつき、倒れそうな所を寸前でユウカが受け止めてくれた。目を閉じる間もない私を、抵抗も無く正面から。

 そんな瞬間、心臓が少し速まった。

 

「先生…?」

 

「……っ!はぁ……はぁ……はぁ」

 

 これ以上考え込むと脳を掻き回されてる様に気持ち悪くなって今にも吐きそうだ。だけど、今は目の前の事に集中しなければ。

 ユウカに感謝の気持ちを伝えながら、私は自分の脚で立ち上がる。

 

「ありがとう……ユウカ」

 

「……はい。こちらこそ……?」

 

「とにかく、相手は攻めに慣れてない……閃光弾を投下したら、三人で詰めて、ハスミは、後方支援をしながらゆっくりと近づいて」

 

「「「「―――了解」」」」

 

 指示と同時、ユウカのシールドが切れた瞬間、タイミングを見計らいスズミが閃光弾を投下。太陽に近い光が不良達の視界を一気に塞ぐ。

 

「っぐぅ!?目が!?目がぁ!?」

 

「見えなくてもいいっ!撃てぇ!」

 

 乱射される銃弾が当たるはずも無く、光が消えるその間に三人が距離を詰め、どんどん気絶させていく。少し遠くに居る影響を余り受けていない生徒を中心にハスミが辺りを冷静に見て狙う。すると、先程リンから云われた通り、ワカモを発見した。

 

「騒動の中心人物を発見!対処します!」

 

 云った瞬間に引き金は引かれ、銃弾が正確にワカモの頭へと向かう。だが、そう簡単に当てられる訳も無く、銃弾は頭を少し傾けると簡単に躱され、避けたワカモは上品に笑った。

 

「フフッ、連邦生徒会の子犬たちが現れましたか。お可愛いこと」

 

 その云う瞬間にも数発ハスミの銃弾が飛ぶが、ワカモは未来を見ている様に付けているお面の鼻先ギリギリで躱し、私達をまた上品な笑いを零す。

 私はお構い無しに指示の続きを行い、スズミを二歩先に走らせる。次の瞬間、私の声が届く。

 

「スズミ、閃光弾!」

 

「っはい!投下します!」

 

 タイミングを伺いスズミに指示を出し、スズミは閃光弾をワカモの目先に放り投げた。

 お面を付けているワカモに効くかは分からないが、今やらなければ次のタイミングは現れないだろう。

 

「甘いですわ!」

 

 お面の事を考える暇も無く、ワカモは空中に浮く小さな閃光弾を短刀の付いた銃を片手に構え、迷いの無い引き金は容易に当てて魅せた。銃が閃光弾を貫通した瞬間、強い光が辺りを、空中を真っ白に光らせる。

 ほぼアドリブでやったこの行為、私達もこれで視界が見えなくなってしまった。だが、それは同時にワカモも同じ状況だと言えよう。この閃光弾の影響を直で受けているのは前線に出ていたユウカ、スズミ。影響を受けずらいのはチナツと私。そして最も受けずらい場所に居るのはハスミだ。私は視界がボヤける中、見えなくなりつつもハスミに声を上げた。

 

「ハスミ、今だ!」

 

「はい!」

 

 閃光弾が暴発すると予想してハスミは事前に目を閉じ、効果の続く今、狙って貰う他無い。

 そして撃った弾は確かにワカモに当たる―――はずだった。

 

「それを、私が想定していないとでも?」

 

 ワカモは本来見えないはずだ。それをワカモは迫る音と風を受ける感覚だけでその銃弾を避けてしまった。

 次の瞬間、ワカモはその場から消え、音の速さで一番遠いハスミの元へと走り出した。ハスミが応戦するも、先端の短刀を取り、ハスミの喉元へ目掛け突き刺す。

 

「っ!?」

 

 ハスミは反射的に左手を出すと、短刀はそのままハスミの左手を貫いた。痛みが走る。ワカモもその瞬間で一人を落とした、そう云うかの様により強く押していく。ハスミは突き刺さった短刀を左手でそのまま掴み、銃を上へ投げるとそのまま右手で拳を繰り出した。手を離さざる負えなかったワカモは瞬時に腕で防御を固め、直撃を受けながらも最大限のダメージを抑えてみせる。

 それを理解した上、防御したにも関わらずハスミの拳は辺りを歪ませ、ワカモの元いた場所まで一瞬にして吹き飛ばされた。 拳が当たった周辺は地面すら破片が裏返るほどの衝撃が伝わる。

 一瞬の熱がワカモの腕に蒸気を与え、それでも余裕の姿を魅せるワカモに『作戦は失敗』そう思うしかなかった。私達を見渡し、状況の不利を感じたワカモは動きを止め、そして落ち着いた声で数歩後ろへと下がり云った。

 

「……私はここまで、後は任せます」

 

 その言葉を最後、ワカモは再び消え、気付けば建物の壁を走り抜け私達の元から姿を消していた。私達に残る疑問は一つ。何故、突然逃げ出したのか。

 

「逃げられてるじゃない!追うわよ!」

 

 逃げられた事に激怒したユウカは言葉を荒くする。それを落ち着かせるかの様にハスミは冷静に言葉を返した。

 

「いいえ、生半可な行動をしてはなりません。私達の目標はあくまでもシャーレの奪還。このままシャーレのビルまで前進すべきです」

 

「うっ……ま、まあいいわ。あいつを追うのは私達の役目じゃないってことね」

 

「そうですね。それに罠かもしれませんし」

 

「……はい。建物の奪還を優先で。このまま引き続き、進むとしましょう」

 

 ハスミの言葉に気持ちを落ち着かせ、何とか納得すると、改めてシャーレの奪還について動きを始める。

 ワカモも逃げたとは云え、その先はシャーレと同じ方向。出会う可能性だって有り得なくは無い。だが、それに弱音を吐いている時間も無い。私達なら勝てる、その言葉を胸に続きの軍を上げた。

 

「うん。それじゃあ、行こうか」

 

 ✦︎︎

 

 途中に居る不良達を片付けながら進んでいくと、シャーレ部室の建物前まで着き、私達は安堵の息を零す。

 

「よし!建物の入口まで到着っ!」

 

 ユウカがそう云い、同じ様に安心していた私達は同時に『もうゴールだ』と思っていた。すると、ゴゴゴゴゴ――――重厚な音が地面を引き摺る音となって聞こえる。云わばそれは戦車の様な音――――

 

「……うん?この音は………?」

 

「気をつけてください、巡航戦車です……!」

 

 ハスミの警告に反応する間も無く放たれた大砲は敵味方関係なく地面を、建物を、周辺を破壊した。無差別に破壊を繰り返す戦車に気を取られていると、シャーレの入口らしき所からワカモが侵入する所を発見した。

 

「あれは……っ!?」

 

 追いかけようとしたその瞬間、私の知らない幾つもの記憶が流れ込む。

 また見た事の無い記憶。そして、ふと、一つの答えに辿りついた。ワカモが『あれ』と関与してしまえば、この世界は――――

 

「……………」

 

「先生……?」

 

︎ ✦︎

 

 『―――■■は……■■の、やるべきことを……げほっどうか、■■だけは!死なせたくない、死なせてやれないんだ!』

 

 そんな言葉を幾つも聞いて、叶えられた事は無かった。

 次は私の番。もう一度見させてあげたい。いや、見させないといけない青春の物語を―――私達は、そんな物語を歩まないといけないんだ。

 

 それが、世界を滅ぼそうとも。

 

︎ ✦︎

 

「ユウカはシールド展開後、戦車がユウカだけを狙える位置に移動して耐久、スズミ、チナツは二手に別れて攻撃の選択を狭めて意識の分散、戦車による一点狙いを出来なくする。そこにハスミが急所を狙って。出来る?」

 

「は、はい!勿論です!」

 

「よし……なら、ここは任せたよ!」

 

 笑顔を向け、私はすぐさま走り出す。私はそのまま戦車の横を通り過ぎ、突然の事に戸惑う皆んなへ言葉を叫ぶ。

 

「私はやらなきゃいけないことがある!だから……げほっ、ここは任せたよっ!」

 

「―――了解しました!!」

 

︎ ✦︎︎

 

 入口のドアを開け、地下室に向かう。

 既に視界がボヤける中、階段を急いで降りドアを開けると、そこには先に辿り着いたワカモがシャーレの棚を漁っていた。

 

「うーん……これが一体何なのか、まったく分かりませんね。これでは壊そうにも……」

 

「わ、ワカモ……」

 

 やっとの思いで辿り着き、声を絞り出す。その瞬間の私は今にも吐きそうだ。なんで体力無いって分かってたのに走っちゃったんだ私。

 

「あ、あれは……」

 

 私の眼に映った先、ワカモが何か薄い板の様なものを手に持っていた。それを見た私は、私にとっての大切な記憶なのか、曖昧だが、心の何処かでワカモが持っているその『何か』を欲している。

 

「……あら?」

 

 欲しがっている。それも分からない程無意識に手を伸ばした。すると、ワカモが私に気付き、意識がワカモに向いた時気付かれたと悟った私はひとまず挨拶から始めようと少し掠れた声を上げた。

 息を切らし、汗を落とす私に、ワカモはただただ私を見つめ切りの悪い言葉を繰り返す。

 

「あの、えっと……とりあえず、こんにち……は……?」

 

「あら、あららら……」

 

「………?」

 

「あ、ああ……」

 

「あの……?」

 

 ワカモは暫く黙り込む、身体は小刻みに震え、声を絞り出す様に云った。

 

「せ、先生………?」

 

「え……?う、うん………そうなの、かな……?」

 

「ぁ………し、失礼いたしましたっー!!!」

 

 そう云った瞬間、私では到底追い付く事の出来ないスピードで全ての持ち物を置いていき、風の様にドアから出ていってしまった。

 

「………?な……んだったんだろう……?」

 

 今は、気にしてても仕方ないのかな?

 

 こうして、遅れて来た皆んなは不良達の対処も完了したと云い、シャーレの部屋も特に損傷は無かった。地下室も取り返せた。だが、なにか心に残るような感覚がある。これは一体なんなのか、リンが地下室に現れるまでに、その答えは見つけ出す事は出来なかった。

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