虚弱先生の青春物語   作:不透明な水滴

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突然の体調不良からの復活である。


最後の夜

誰もいない夜の学校、普段ならロマン溢れる空間だが、ここではそうはいかなかった。

 

普段いる会議室とは別の校舎には既に砂漠化がだいぶ進んでおり、校舎の床は結構砂があったり、元々使っていないため埃がだいぶ積んであった。

 

「けほっ、けほっ………うわぁ、ここも砂だらけじゃ〜ん」

「まあ、掃除をしようにも、建物が大きすぎて人手がね〜……」

 

「砂嵐が減ってくれればいいんだけど……」

「うへ〜、せっかくの高校生活が全部砂色だなんて、ちょっとやるせないと思わない?」

 

「……ホシノは、この学校が好きなんだね」

 

「…今の話の流れで、本当にそう思う?うへ、やっぱ先生は変な人だね」

 

「いやいや、私なら、こんな学校生活耐えられないな。それをみんな、必死に、全力で楽しみながらも生きてきている」

「というか、ホシノから見て、私ってそんなに変な人に見えるかな?」

 

「そりゃあ、こんな砂だらけの学校に自分から喜んでくる大人なんていないと思ってたからね〜。来た時はほんとに驚いたよ」

「でも、そんな大人も、体が弱くて、おじさんたちがいないと目も離せれない人が、おじさんたちの為だけに、命を張ってまで助けようとするって……変じゃない?」

 

「そうかな……?」

 

ふと気づくと、ホシノはある教室の中に入っていた。

その中に入ると、ちょうど今日は綺麗な満月が映し出される日だった。

 

ホシノは月を見たあと、私の方を見た。

そして、少し静かな時間が過ぎると、ホシノは口を開いた。

 

「……先生、正直に話すよ」

「私は2年前から、変なやつらから提案を受けてた」

 

「……提案?」

 

ホシノは少し躊躇ったあと、真面目な顔で話し始めた。

 

「…カイザーコーポレーション」

 

「えっ……!?」

 

「提案というかスカウトというか……アビドスに入学した直後からずっと、何回もね」

「そういえば、この前もあったな〜……」

 

ホシノが過去に言われた提案、それはアビドス高校を退学し、私共の企業に所属すること。そうすればアビドスの借金を半分近く負担するということ。

 

そんな提案、ホシノはもちろん断ったそうだが、相手もそう引かずといった風に状況は平行線だった。

 

「誰から見ても破格の条件、でも、当時は私がいなくなったらアビドスは崩壊すると思ってたから、ずっと断ってた」

 

「あいつら、PMCは使える人材を集めてる」

 

「……その人は、どんな人?」

 

もしかしたらと思い、その人物が誰かを聞いてみる。

 

「私も、あいつの正体は知らない……ただ、私は黒服って呼んでる」

 

「………!」

 

やっぱり……なら……。

 

「ここが……分岐点……?」

 

「……先生?」

 

「……ホシノ、この退部届けって」

 

「………まあ、1ミリも悩んでない…って言ったら嘘になるし…ちょっとした気の迷い…かな」

 

「……うん、もう捨てちゃおうか」

 

そう言いながらホシノは微笑み、手に持った退部届けの紙を両手で掴んでそのまま破った。

 

「ホシノ……?」

 

「うへ〜、スッキリした」

 

破り捨てた後、ホシノはいつものような笑顔でこっちを向いた。

 

「変な誤解を招いてごめんね〜。ただこんなことをした所で、みんなを心配させるだけ、こんなこと良くないね」

「でも、可愛い後輩にいつまでも隠し事は良くないし……明日、みんなにちゃんと話すよ」

 

「とはいえ、実際のところ、あの提案を受け入れるしか……」

 

「それは……」

「それは、私が何とかするよ!」

 

「……そう、だね。奇跡でも起きてくれれば良いんだけど」

 

「奇跡…もし、起こせなくとも……」

「私が、絶対にホシノを救ってみせる」

 

「先生……」

 

私の言葉に目を見開くホシノは、その後、何かから解放されたかのように緩やかな笑顔を私にみせた。

 

「……うん、そうだね」

「私も、ずっと待ってる」

 

その後、すぐに柔らかい笑顔へと戻り、この場を切り上げようと手を叩いた。

 

「じゃあ、この話はこれでおしまい」

 

すると、ホシノは私の横を通り過ぎ、廊下に出た。

 

「じゃあ、また明日。先生」

「……さよなら」

 

「っえ………?」

 

普段ならいつも通りの別れの挨拶のはずなのに、今この瞬間に聞いた別れの言葉は、私の体に重くのしかかるような言葉だった。

次の瞬間、私はホシノに向かって大きく叫んで………。

 

「ホシノ!!」

 

「な、なに……?」

 

「私が、絶対、絶対にホシノを安心させて生きれるようにする!こんな言葉…信用に値しないかもしれない……それでも!私はホシノを守りたいんだ…!」

 

「……うへへ、私、そんなに元気なさそうだった?」

「……でも」

 

「ありがと、先生」

 

そう言って、ホシノはこの場を去っていった。

 

「……ホシノ」

 

私は、どうするべきだろうか。

私ごときが、本当にホシノを救えるのだろうか。

少しホシノと話しただけでも、緊張で心臓が押し潰されそうだ。

 

「……どうして、こんなに必死なんだろう」

 

先生だから、生徒だからという枠では収まらないほどの大きな感情……これは一体なんなのだろう…か。

 

「……待ってて、ホシノ」

 

救われてばっかりの私じゃない。

 

「次は、私がホシノを救う番だ」




それでも!それでも!守りたい世界生徒たちがいるんだ!
ごめん、父さん……俺は、行くよ!
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