その日は、随分と暑かった。だがそんな暑さも掻き消されるほどの大きな声が、アビドスへと響き渡る。
アビドス高校に着き、いつもの会議室のドアを開けると、シロコ、ノノミ、セリカ、アヤネが既に居た。
全ての始まりは、アヤネが学校に来た時、その時まではアヤネが一番初めに学校へと来ていた。
少しの不安が過ぎる中、アヤネはふと机の上にあるいつもなら見ないはずの白い紙とピンク色の手紙入れに無意識に目が向いた。
不可解な不安が渦く中、アヤネはその紙と手紙を取り出す。
そこからが、全ての始まりだった。
机の上に置いてあったのは、対策委員会の退部、退会届け。そして手紙には『アビドス対策委員会のみんなへ』と書かれたものだった。
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いつ、どこで間違ったのか。今の私には理解しようにも出来なかった。
また、大人に利用された。
嘘をつかれ、価値のない物事に関与させられる苦痛。
対策委員会のみんなには手紙を残してきた、だけどあんなことで納得できるはずがないと心の中では分かっていた。
でも、今の私に、みんなの前で謝るなんて……できなかった。
ずっと言えなかったこと。ずっと言えなくてごめんって、きっとみんなは許してくれる。許して抱きしめてくれる。
だけど、それは私にとっての幸せじゃない。
私のエゴのためだけに、みんなを巻き込む訳にはいかなかった。それは、もちろん先生にも言えることだ。
あの日、あの夜、少しだけ自分を吐き出せた気がする。先生なら、先生ならきっと、助けてくれるって。
言いたかった。『助けて』って、『私をあの闇から引きずり出して』って。
素直に言えばよかったのに、言えなかった。
だから、もし、もし私を助けに来たら、私自身から伝えよう。
きっと手紙を見ても受け入れられないだろうけど、私の口から言えば納得できるのかな。
これが最初で最後の私の生きるため、存在するための意思であり、行動。
どうか、先生のために、対策委員会のために。
どうか、私を助けに来ないで。
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事態はそう変わらない。
手紙を見終えたあと、セリカも、シロコも、その場の勢いで今すぐにでも助けようと言い出す。
そんな状況最悪の時、突然教室内に爆発音が鳴り響く。
「な、なに!?」
アヤネが咄嗟にタブレットでどこで爆発が起きたら調べると、その場所は市街地、今でもなお謎の攻撃は続いていた。
そして、進むロボットの肩には「カイザーPMC」と書かれた文字が浮かんでいた。
「っ……こんな時に」
「すぐに助けに行こう」
そんな中、会議室のドアが開かれ、数人のロボットたちが攻めてきた。
「シロコ、セリカ」
名前を呼ぶと同時に2つの銃弾がロボットたちに直撃し、ロボットたちはそのまま倒れた。
「もう既に、この学校にも複数人のロボットが侵入しているようです!」
「先にそっちを処理して、あいつの所へ行こう」
「了解!」
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市街地のロボットたちをそこそこ倒していると、奥から例の理事がやってきた。
「ふむ、学校まで出向こうと思ったが、お出迎えとはな」
「…なんの真似だ。お前たち、こんなことをしていいと思っているのか?」
対策委員会を守るように前に出ると、同じように理事も全員の前へと立った。
「……ホシノを返せ」
「さて、なんのことやら?」
「…とぼけるつもりなら、今ここで……!」
「ほう……ん…?貴様、なんだ、その眼は」
「は…?何言ってるんだ」
理事が私を指差すと、その眼はなんだと聞いてくるが、私の目はみんなと変わりない普通の目だ。
「その眼……もしや……?」
少し理事が取り乱すが、すぐに体制を立て直す。
「……まあいい、生徒会最後の生徒、小鳥遊ホシノが退学した。故に、もう誰も所属していないアビドスに価値など存在しないと言うわけだ」
「それがどうした?」
「だから、この我社が買い取ってやろうと……」
「それが、ホシノが帰って来る理由になるのか?」
「…なに?」
「お前がアビドスを買うって言うなら、お前たちはホシノを返せ」
「ほう…そういうか」
「絶対にアビドス渡さないし、渡す気もない…ホシノが帰ってきた時……ちゃんと、帰れる居場所があるように」
「対策委員会は非公認の部活だ。そんなものに本気になってなにになる?」
『それは……』
「非公認だからなんだ?」
「なに……?」
『先生……』
「非公認だと言うのなら、私が今、今この瞬間に対策委員会はシャーレ公認の組織だと立ててやる。これで満足だろ」
「そんな暴挙、許されるわけ____」
「今お前たちが起こしているのは、これと全く同じことだ」
「な……っ!?」
「ホシノが最後のアビドス生徒?ホシノが辞めたからアビドスは無人で、対策委員会は非公認だから認められない?ふざけるな!そんな言葉ごときでアビドスを捨てろって言うのか!?」
「お前の言う通り、確かに対策委員会は非公認の組織かもしれない。だから4人の居場所と思い出を踏み躙ってまでやることなのか?その宝探しごときが!?」
「そんなことをするのなら、私は今すぐに全権力を使ってお前たちカイザーを皆殺しにする!」
「貴様……!言われておけば!!」
理事の言葉を聞く耳持たず対策委員会の方を向き、アビドス高校へと歩いていく。
「良いだろう…ならば今すぐにでも!」
そんな理事の脅しよりも先に私自身が口を開く。
「今すぐにでもアビドスを奪うのなら、この場にいる全員を殺せばいい。だがその場合、シャーレの先生を殺した犯人を探すために、全存在がお前を必死に探しに行くだろう」
「私が今からシャーレに戻って、連邦生徒会からシャーレの名で申請を送れば、1日も経たずに対策委員会はアビドス正式の組織になるだろう」
「私たちは、本気でホシノを取り返しに行く」
「貴様……なぜ無関係な奴らにそんなにも手を貸す!」
そう本来なら当たり前の質問を投げかけられ、私は唖然とした。
その後に、ゆっくり微笑んでからこう言い返してやった。
「生徒たちの青春を邪魔しないようにすることが、そんなにおかしい?」
「そんな……ことのために私たちを……!」
「お互い様だろ。お前たちの宝探しになんで合わせなきゃいけない」
「ただ、私たちは邪魔してくるやつらを徹底的に潰しに行くだけ」
さて、ここからは私たちのターンだ。
「シロコ、ノノミ、セリカ、アヤネ」
1人ずつの名前を呼び上げると、誰も言葉を発しないが、目線だけで十分に伝わるほどの目線を私にくれた。
「こんなことを聞くのはなんだけど……付いてきてくれる?」
そう聞くと、4人は何も喋らないが、すぐに優しい笑顔で応えてくれた。
『私たちは、先生のために戦います』
「覚悟なんてとっくに決まってるわよ!」
「みんなホシノ先輩が大好きですからね♡」
「ん、大丈夫」
「じゃあ、一度私たちの場所へ帰ろうか」
カイザーたちや理事を置いて行き、私たちはその場を歩いて離れていった。
「っく……貴様ら……!」
「理事、どうします?このまま街を襲いますか?」
「いや………あそこまでの宣戦布告を突き付けられれば……私たちの本気で応えてやらんとな」
「待っていろ……対策委員会………!」
そんな言葉すらも砂吹雪に覆われ、その言葉の先では全霊をかけた戦いが勃発しようとしていた。
〈おまけ〉
かっこよく登場予定だった便利屋68
カヨコ「なんかこのまま話終わりそうだけど」
アル「え?」
ムツキ「ほんとだー、みんな帰っちゃってるね」
アル「あれ?」
ハルカ「どうします?今からでも爆発させますか?」
ムツキ「いや〜、このまま行っても冷めるでしょ」
カヨコ「どうする?社長」
アル「え、えっと……」
アル(どどど、どうしよう……!せっかくかっこよく登場して対策委員会を見返してやろうと思ったのに……これじゃあ私たちの印象最悪のままじゃない!?)
アル「う、うぅ……えっと……」
ハルカ「アル様、どうしたんでしょう」
ムツキ「あれは思ったより上手くいかなくてそれ以外の方法を思いつかない時の顔だね」
カヨコ「まあ社長、活躍するのは今じゃなくてもいいんじゃない?」
ムツキ「確かに、どうせこの後凄い戦っちゃうんだし、先生なら頼ってくれるんじゃない?」
ハルカ「そ、そうですよアル様!今じゃなくても……」
アル「そ、そうね……そうよね……きっと……」
カヨコ(想像以上に落ち込んでる)
ムツキ(そんなアルちゃんもかわいい)
ハルカ(アル様…大丈夫かな……?)
妄想なんていくらでもできますからね、こんな便利屋があってもいいんじゃないかな。
優しく優秀な部下に囲まれてる優しくて面白い社長の話でした。めでたしめでたし。