あの日を過ぎ、廃校対策委員会の看板が掲げられた教室のドアを開ける。
「あ、こんにちは、先生」
「こんにちは、対策委員会はどう?」
「はい、アビドス対策委員会の一日は、今日も慌ただしいです」
「また、あの後、対策委員会は先生の公的な認証によって、アビドス高等学校の正式な委員会として承認されました。ありがとうございます」
「これで非公認から起こるようなことはなくなったね」
「はい、お陰さまで対策委員会は、正式にアビドス生徒会としての役割も担うことになりました」
「新しい生徒会を作る上で、生徒会長にはホシノ先輩になって欲しかったのですが、頑なに受け入れず……未だに生徒会長の席は空いたままです」
「他にも、いろいろなことがありました」
「柴関ラーメンは、屋台の形で再開し、セリカちゃんもそのバイトとして活動しています」
「大将もいつにも増して元気になって、引退はまた先になりそうです」
「それと、先生のおかげで、ホシノ先輩の件は解決しましたが、アビドスの借金は変わらず9億のままです。ですが、カイザーローンはブラックマーケットの不法な取引がバレ、連邦生徒会の操作が入るようです」
「カイザーコーポレーションの理事もあの後、生徒誘拐の主犯として指名手配されています」
「ざまぁねえ……おっと」
その後もアヤネの説明は続き、そこからだいぶ色々と変わっていると感じた。
アビドスとカイザーの砂漠の件に関しては正式ともありあまり関与されず、あの時助けてくれた便利屋は最後に助けてくれてから行方を晦まし、別の場所で活動しているらしい。
それと、黒服の件に関しては、ホシノも詳しく知らないらしく、ホシノから辿って調べてみたが、全ての情報が削除、もしくは曖昧に表現されており、情報という情報は出てこなかった。
「なるほど……」
黒服は何者なのか、知る必要がある。
それと、これは私情だが、あの理事の件から連邦生徒会から少し関わる機会が増え、そこで色々状況を説明していたら、ある所で疑問を持たれた。
私がどうやって『あの力』を使えるのか。
あの力、と言われても何か分からない。だが、私の目……に、何か関係があるらしい。
だけど、この話はまたどこかで知れるだろう。
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「……それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます」
いつもの日々が戻るかのように、アビドスの会議が始まった。
和気あいあいと普段の会議を続けている。
前のような莫大な利子ではなく、ちゃんとした利子に変わり、時間をかければしっかりと返済できる状態になった。
ホシノのお昼寝の提案に、ノノミが、賛成し、セリカがツッコミを入れる。
そんなセリカも明らかに詐欺の提案を出し、そこに便乗するようにシロコも犯罪ギリギリアウトの提案をする。
そこをホシノが却下し、最初に戻る。そこで怒ったアヤネが全部をリセットする。
こうやって見ていると、初めてアビドスに来た時のことを思い出す。
きっと、私が来るずっと前から、こうやってお互いの提案をぶつけ合いながらも、アビドスで生き続けようと決め、前を向いているのかと心身感じる。
そして、時間は過ぎ、夜。
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屋上、扉が開けられる。
「先生、急に呼び出してどうしたの?」
日常が帰ってきたその夜、私は屋上にホシノを呼び出した。
「ちょっと、話したくて」
「珍しい〜」
柵越しに夜の星空を見ていると、ホシノが私の横に来てくれた。
「それで、話って?」
「……ホシノにとって、今回のことは、正しい選択をしたとおもう?」
「……………今思うと、正しい…とは、言えないかもね」
「もっとみんなを頼っていれば、こうはならなかったと思う。いや、ならなかった」
「私は、別にホシノに何か言いたくて呼んだわけじゃないんだ。渡したい物があって」
「渡したい物?」
「これ」
私が左手を見せると、その薬指に指輪が嵌っていた。
「先生……これって……………」
「特に理由はないけど、オシャレとしてね。指輪の意味とか分かんないし」
「あぁ……良かった」
「それで、これを渡したいんだ」
左手から指輪を抜き取ると、ホシノの左手を掴んだ。
「私にとって大切で、手離したくない人に渡そうって思ってて……だから」
そのままホシノの左手の薬指に嵌める。
「これを渡したかったんだ」
「…………ぇ?」
すると、ホシノが反対側を向いてしまった。
「ホシノ…?どうかした?」
「い…いやぁ〜……先生、指輪の意味とか、どこに嵌めるとかの意味とか……なにも知らないんだよね?」
「え?うん」
「ふ、ふ〜ん……」
「意味、調べた方がいい?」
「い、いや!大丈夫!調べてなくていいから!」
「ホシノ、熱があるなら冷えるし早めに帰った方が……」
「こ、これはちが……ああもう!とにかく、私は大丈夫だから」
「……それじゃあ、大丈夫かな」
「はぁ……」
夜も遅い。もうそろそろ、帰らないと。
「……近いうち、トリニティとゲヘナの戦争が起きる可能性が高い」
「……うん」
「もし、本当に起きたら……その時、助けを求めたら助けてくれる?」
「もちろん助けるよ、先生のためならね」
「……ありがとう。安心した」
直ぐにでも対策を練らないと、不味いことになりそうだ。
それと、私の中にある力についても、調べる必要がありそうだ。
「それじゃあ、おじさんはもう行ってもいい感じ?」
「うん、ありがとう。来てくれて」
「うん……指輪、ありがとね」
「喜んでくれてるなら、嬉しい」
「それじゃ、また明日ね。先生」
そう言い、ホシノは笑顔で屋上のドアを閉じた。
「……さて、私も動くか」
次の話に繋げるために。
アビドス対策委員会 [完]
指輪って人によって指の大きさ違うし人に渡しても嵌められなくね?と思った人は静かにしててください。そういう世界です。
アビドス編はひとまずこれで終いです。見てくださいありがとうございます。お疲れ様でした。