虚弱先生の青春物語   作:不透明な水滴

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実質これがプロローグ


第一章――――補習授業部の青春記録(ブルーアーカイブ)
見た星、それは流星群


キヴォトスに夜が降る。

 

 

まるで人が居なくなったかのように静かな世界へと変わる。

 

トリニティにも黒い帳が落ち、そこには見とれるほどの光る星々が辺りを照らしていた。

 

「……エデン条約」

 

長く黄色い髪が夜風に揺れる。

 

彼女は独り椅子に座り、そう語った。

 

「「憎しみ合うのはもうやめよう」という条約」

 

一体それは誰のため、何のために作られた条約なのか。

トリニティとゲヘナにとっての長きに渡る敵対関係、それを終わらせるための最重要の鍵。

 

「それはつまり、ゲヘナとトリニティによる平和条約だ」

「ただ、連邦生徒会長の失踪と同時に、この条約も意味はなくなってしまったね」

 

エデン楽園……その意味を込めた悪趣味と言える理由は、失踪した連邦生徒会長にしか分からないことだろうね」

 

彼女は椅子から立つと、ゆっくりとした足取りて夜空を見上げる。

 

「……いや、こんな堅苦しいことは言わなくていいか」

「先生……きっと言っても無駄だろうが、私からの小さな願いだ……どうか、聞いて欲しい」

 

「このエデン条約……先生には出来ることなら来て欲しくない。その理由は今は言えない……いや、言うことが出来ない」

「完全に確定化されていないが、私の中から、別の誰かがそう言っているんだ」

 

「先生は……このエデン条約で……」

 

その時、彼女はある異変に気づいた。

 

「これは……」

「…震えているのか」

 

彼女が自身の掌を見た時、その掌には微かでは無い、大きな震えが浮かび上がっていた。

 

「この現象は……ただの恐怖や興奮ではない……安心感か……?」

「そうか……先生には……あれがあったのか」

 

そう言って彼女はどこか安心した表情を浮かべ、再び椅子に座った。

 

「先生……それを持ってしても戦い、真実を見つめる覚悟があるのなら、この先へと進んでくれ」

「この先、誰も経験したくないような、苦しく、悲しく、絶望を失望が入り乱れる……だが、そんな真実の話だ」

 

「大人として……先生としての覚悟と信念を忘れず、全うすると決めたのなら……どうか、最後の時まで必ず目を背けず、見ていて欲しい」

「大人のしての責任……先生としての義務、そして……見守る者としての『この先』を選んだ、君の選択を……私は、心から全う出来ると願っている」

 

そう言い終わった彼女は、静かに目を閉じる。

その眠る彼女の姿は、まるでこの先の可用性を秘めたような、そんな雰囲気を漂わせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

︎✦︎︎✦︎︎✦︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう嫌っ!!」

 

高い声が教室中に響き渡り、黒い服装にピンク髪、黒い帽子を被り小さな黒い羽をパタパタとさせながら少女が立ち上がる。

 

「ま、まあまあ……そう言わず……ね?」

 

「いや!こんなことやってらんない!分かんない!つまんない!めんどくさい!」

「それもこれも、全部先生のせい!!」

 

「え、えぇ……?」

 

「コハルちゃん。そんなことを言ってしまっては、先生が困ってしまうでしょう?」

「あくまで先生は私たちを助けるために来てくださったんですし……そもそも勉強が分からないのも試験に落ちたのもコハルちゃん自身のせいで……」

 

そう隣に座る白い服装を着こなしたピンク髪の少女、ハナコが隣に立ち上がったコハルを冷静に言い返す。

 

「うぅ………!」

「わ、私は正義実現委員会の一員だから!それで…授業に出れなくて……そ、そう!そのせい!そのせいなの!」

 

「その他の正義実現委員会のメンバーも同じ、でもここに来てるのはコハルだけだ」

 

黒い服に白い服を羽織った白く長い髪の少女、アズサがコハルと違少し大きめで花で装飾してある白い羽を落ち着かせながら言い返す。

 

「………………」

 

そう言われたコハルは遂に何も言い返せずに黙り込んでしまった。

 

「なるほど、つまりアズサちゃんが言おうとしていることは、コハルちゃんがただのおバカさんだからですよ、ということですよね?」

 

「まあ、強ち間違っていない。仕方のないものは仕方ない。人生とはそういうもので……」

 

「確かに、人生には苦難や苦痛が付きものですからね……」

 

「ああもう!うるさいなぁ!?そんなこといったらあんたたちもみんな一緒でバカじゃん!バーカ!」

 

「あ、あはは……えっと、それは……」

 

「な、何も間違ってないでしょ!バカだからここにいるんでしょ!?」

 

「あんたも!」

 

そうコハルはヒフミに指を指し。

 

「あんたも!!」

 

ハナコにも指を指し。

 

「あんたも!!!」

 

アズサにも指を指し。

 

「あんたもっ!!!!」

 

私に指を指した。

 

「いや……私は先生で……」

 

「こ、コハルちゃん……落ち着いて……」

 

「落ち着けるわけないでしょ!このままだとみんな仲良く退学よ!こんな状況で……!」

「こんな状況じゃ……退学になったら、正義実現委員会のメンバーじゃ……なくなって……うぅ……」

 

そう泣きそうになるコハル。

 

「私は退学になるつもりはない。何をしてでも、例え惨めな思いをしても乗り越えてみせる」

 

アズサは前向きな感想を述べる。

 

「まあまあ、退学になったからと言って何もかも終わるわけではありませんし、気楽に……むしろ……」

 

そうハナコはコハルに近づこうとする瞬間、ヒフミが叫んだ。

 

「あ、あの!!」

 

「………」

 

「…………」

 

「……」

 

「あ……えっと、その……こうして集まっているのは、そもそも退学しないようにするためであって……取り敢えず、みんなで知恵を寄せ合って何かいい方法を探さないと……」

「そうしないと、一週間には本当に仲良く全員退学……なんてことに……」

 

「「知恵を寄せ合う」……なるほど、悪くないのですが、あまりグッと来る感じではありませんね……もう少し……こう……」

「ここは例えば……「弱くて敏感な部分を寄せ合う」という形でいかがでしょう?」

 

ハナコは笑顔でそう提案すると、アズサとヒフミはよく分からないような表情をしているが、コハルが即反応した。

 

「い、いきなり何言ってんの!?下ネタはダメ、禁止!死刑!び、敏感な部分をどう寄せ合うっていうの!?」

 

「ああ、ちょっと分かりにくかったですか?では実際にやってみましょうか。もう少しこう、脚を開いていただいて……」

 

そう笑顔でコハルに近づくハナコに、コハルはどんどん後退っていく。

 

「……え?えっ!?ちょ……!?」

「や、やめて!近づかないで!知らないし分かりたくもないから!まだ早いからっ!!」

 

「えい♪」

 

「や、やめ………!」

 

「はい、そこまで」

 

ハナコとコハルの間に割り込み、ギリギリで阻止する。

 

「あら、残念♪」

 

「助かった……」

 

「あまり虐めないようにね?分かった?」

 

「あら、先生は優しいのですね……私は、先生でも良いのですが♪」

 

「え?いや、私はそういうのじゃ……」

 

そう気づいた時にはハナコに腕を掴まれていた。

 

「先生なら、良いでしょう?」

 

「い、いや……ちが……っ!ダメだって!?」

 

ギリギリで腕を振り払うこうに成功した。助かった。

 

「なるほど、そういう制圧術もあるのか。色々な場面で使えそうだ……勉強になった」

 

「いや……参考にしなくていいよ」

 

「ん?そうなのか」

 

ハナコから離れ、ヒフミの隣へと立つ。

 

「私……やっていけるかな」

 

「せ、先生!?」

 

「……やれるだけやってみようかな」

 

「…は、はい!よろしく、お願いします……」

「このままだと、本当に私たち……退学に……」

 

なぜ退学になってしまうのか、なぜこのおかしなメンバーなのか。それは、私がトリニティに着いた数週間前に遡る。




エデン……始まっちゃいます
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