虚弱先生の青春物語   作:不透明な水滴

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昨日早めの段階で作り終えてたのに投稿するのを忘れてて慌てて投稿した愚者は私です。


運命の歯車

誤解を解き、改めて状況を整える。

 

「……なるほど。先生と一緒に、これからについてのご相談を……」

 

「ハナコちゃんも先生に相談したいことがあって……」

「て、ですがどうして水着で来るんですか!?パジャマが水着ってどういう事ですか………!?」

 

ヒフミから出るのは当然の疑問だった。それを聞いたハナコは笑顔で答えた。

 

「心が落ち着くんですよね。ですので私は礼拝堂での授業にも水着で参加しましたよ?一度もっと、色々と柔らかく考えてみましょう♪」

 

「あうぅ………」

 

返答を聞いてみればハナコらしい返答。ヒフミもこういう人だったと再認識させられる様に、先程の勢いは無くなっていた。

それよりも、誤解を解いたなら話の続きをするかしないかを聞かないといけない。

 

「ハナコ、さっきの話の続きは今じゃない方が良い?」

 

「……アズサちゃんの件、ですよね」

「……いえ、大丈夫です。ヒフミちゃんも一緒に聞いていただければと思います」

 

「実はアズサちゃん……毎晩の様に、どこかへ出かけては夜明けまで戻って来ない事が続いていて」

 

その話はヒフミやコハル、私も知らない情報だった。

毎晩どこかへ出かけては夜明けまで帰ってこないという事は、ただ単純にこの補習から逃げている訳でも無さそうだ。だったら、やはり予想に出てくるのは、裏切り者としてのアズサだろう。

 

本来の目的を持っているアズサは、このエデン条約を壊そうとしている。ならば裏でアズサを操っている人物が居ても不思議じゃない。

 

「そう、だったんですか……」

 

「最初は慣れない場所で眠れないのかと思ったのですが、そうでは無いようです」

「……私はアズサちゃんが夜にちゃんと眠っている所を、ほとんど見た事がありません」

 

「確かに私も……アズサちゃんはいつも先に起きてますし、私より早く寝てる事も無かったような……」

 

実は私も一度だけ夜風に当たっていた時にどこかに行くアズサの菅田を見た事がある。あの時は珍しいと思ったが、そこまで頻繁に居なくなっていると考えると………。

 

「……アズサちゃんが一体何をしているのかは分かりません。ですがそろそろ、多少無理矢理にでも寝かせてあげないといけないのでは、と」

「何だかアズサちゃん……どこか、凄く不安そうで」

 

「どんな事情なのかは分かりせんが、どうにかその不安を少しでも軽減してあげたくって……」

「このままですと、いつかは倒れてしまいます」

 

「………先生とヒフミちゃんも、ですよ?しっかり寝ないとダメです」

「確かに試験も大切ですが、ただ落第というだけです。身体の健康と比べられる様なものではないと思いませんか?」

 

「………うん」

 

強く押すようにハナコは私達の事も心配してくれる。それは正しい事であり、生徒であり、補習授業部の友達としての大切な心配だった。

 

「……普通だったら、そうかもしれません」

 

「………ヒフミちゃん?」

 

ヒフミは切羽詰まった顔で立ち上がり、本当の事を話そうとする。私と、ヒフミしか知らない事だ。

 

「ただ、ただ「落第」で済む話では無いんです……!後二回、どちらの試験も不合格だったら………っ!」

「退学……なんです!私達は、トリニティを去らないといけないんです……!!」

 

その真実の言葉を聞き、普段の余裕のある表情から一変し、驚きの表情と、その「退学」という言葉が何なのかを問いかける。

 

「……退学?ヒフミちゃん、それはどういう……?」

「そ、そんなこと、校則的に成り立ちません。退学は色々な手続きと理由が必要で、そんな簡単には………」

 

「……ハナコ、本当の話を見せるよ」

 

「先生……?」

 

力を使い、右手に力を流し込むと、ハナコを引き寄せ抱きしめる。右手で頭を優しく抑え脳に私の記憶を流し込む。

暫くの間、静寂だけが辺りを支配していた。その数秒後、ハナコは自身の手で私から離れ、再びベッドに力が抜けたかの様に座り込んだ。

 

「……なるほど、そう……だったんですね」

「全て不合格であれば、全員退学……もう信じれるのは……先生のみ、という事ですか」

 

下を向くハナコに、何も言う事は出来なかった。だが、ある事をきっかけに今夜の話は打ち切られてしまう。

私も力を解除しようとした時、突然頭に猛烈な痛みが走った。

 

「っ!な……ぐぅ……!?」

 

「先生?どうかしましたか……?」

 

ただただ痛みが続く中、微かな右眼から昔話のように、景色が映された。

手を引く彼女と、背中を押してくれた彼。だがその姿に、私は見覚えが無かった。

 

「はぁ……はぁ……痛み……これは、一体……君達は……誰?」

「違う―――見えているんだ」

 

その時、何かが蘇った。

何がかは分からない。だけど、名前も、景色も、居場所も、何がどうなって、どんな結末となったのか。だからこそ、声が震えた。

 

「止めなければいけない………止めなければ………そこに残るのは、壊滅」

「運命の歯車は完成されている………壊れる前に回さなければ……自身の国は崩壊する」

 

「先生……?何を言って――――」

 

「止めなさい……崩壊……破滅……死……エデンへの道は……断ち切ら……れ……る」

 

「先生!?」

 

その瞬間に、私の意識は朦朧とし、自分が何を言っているのかすら分からなかった。最後は意識が途絶え、私は死んだようにベッドへと倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

︎✦︎︎✦︎︎✦︎︎✦︎︎✦︎

 

月明かりだけが辺りを照らし、壊れた校舎の中に数人、座り込んでいた。

そこの中へと入り、数歩歩くと私の目の前で一人が立ち上がった。

 

「遅かったな」

 

「………」

 

「首尾は?」

 

「今の所、計画通り」

 

自分では無表情を貫くが、内心ではギリギリの状態だ。 その空気に耐えれず、私はある事を口走る。

 

「……なあ、もう……辞めな――――」

 

その瞬間、私の目の前には銃を頭蓋に片手で突きつけ、冷たい眼差しを私に向ける。

 

「……今、何を言おうとした?」

 

「……もう……辞めないか」

 

「光に随分と当てられたようだな。だが、お前のその言葉一つで、それだけで私達が辞める理由はどこにある?」

 

「……光を、知ってしまったから……」

 

「言葉を、忘れるなよ」

 

私の言葉を一切聞かず、私はその場を離れてしまった。私が離れ、声すら聞こえなくなった時、彼女は口を開いた。

 

「……計画は順調だが、事情が変わった」

「シャーレの先生……私達が知っている今の情報とは相当違う。計画を変えるにしても、遅すぎる」

 

「ならば……仕方ない。本気で全員を潰しに行くしかない」

「エデン締結の日……その場にいる全員を殺すぞ」

 

光を知らず、闇に染った彼女達は、それ以上の暗闇に手を出そうとしている。

彼女達を縛る闇は、光を染めに進行し始めた。

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