虚弱先生の青春物語   作:不透明な水滴

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アンケート、今の所は自由なので今の状態よりちょっと長め位にしときます。今の所は。


水着回、人を知る会話(無意味な虚しさ)

突然始まった水着パーティ、もちろん全員が全員満場一致で決まった訳では無く、反論する者も現れた。

軽い愚痴の混じった女子会?は進んでいたが、大雨が止む事は未だに訪れず、落雷も止まる事を知らなかった。それにその影響で建物の全ての電子機器が停電し、古い建物という事もあって勉強もままならず、多少と言えどストレスは溜まっている。

 

「っていうか待って!流されないわよ!?水着パーティって何なの!卑猥!!」

「授業も出来ないし着る服も無い所までは同意だけど、だったら大人しく部屋で休めば良いでしょ!普通に考えて!」

 

コハルも水着姿で参加しているから説得力は無いが、よくよく考えればそういう手も取れたはずだ。だがそれではいそうですかと引き下がる様な程、ハナコは素直では無い。

 

「あら、ですがこういう時間こそ合宿の花だとは思いませんか?」

「皆で寄り添いあって、お互いの深い部分をさらけ出し合う……雨も降っている上に停電で何も見えませんし、雰囲気は最高です!」

 

ハナコの言っている事は言わば感情論、効率や合理的な考えではなく、今この場、この瞬間でしか出来ない様な特別な事を失う前にやってしまおうという、他とはまた違う大切な要素だ。

立ち上がるコハルを座らせるように手を上下に動かし、コハルを再び座らせると、そう言って多少なりともコハルが納得出来るような説明をした。

 

「うふふふ………♡せっかくの休み時間なんですし、そうやって有意義に過ごしませんか?」

 

そうジリジリとコハルに寄っていくハナコに、コハルはギリギリまで気づいていない様だった。

体育館の上側に付いている窓から雨を眺めるアズサに、会話を繋げようとするヒフミは、どちらかと言うとハナコ派の様子で話を続ける。

 

「あはは……た、確かに合宿の定番という感じはしますね」

 

「なるほど、これがこの水着パーティと」

 

「いやいやいや納得するか!水着と掛け合わせる意味は!?」

「……っていうかハナコ!ちょっとずつ近づいてこないで!」

 

「あら、バレてしまいました……」

「まあまあ、せっかく何ですし、楽しむとしましょう」

 

「そうは言ってもただのお喋りですし、話題も何でもアリという事で♡」

 

ハナコは普段とはまた違う高揚感、特別感で包まれている。そして、その勢いで少しだけリミッターが外れ、多少踏み外してでも自分の思い描く様な話を始めた。そうして始める中でも、ハナコは自分の不思議な気持ちを言葉で組み立てる。

 

「ふふっ♡私はこういう事、すっごくしてみたかったんですよね。なので、ちょっとテンションが上がっていると言いますか……」

 

「ハナコ、ずっと楽しそうにしてたからね」

 

「気持ちは分かる。私も何なら、補習授業部に入って以降ずっとそういう気持ちだ」

 

「あら、そうなんですか?」

 

「うん。何かを学ぶという事も、皆でご飯を食べる事も、洗濯も掃除も、その一つ一つが楽しい」

 

顔こそあまり変わらず、常に感情の分からない様な無表情だが、こうやって言葉を聞くと、アズサにもちゃんとした心や感化、伝えたい事があると感じる。転校してきたという点からこうやって一つ一つを楽しいと言えるのなら、私も安心する。

 

「水着は泳ぐ時にだけ着る物だと思っていたのに、こんな活用方法があるなんて事も初めて知った。知らなかった事を知れるというのは、楽しい事だ」

 

それに関しては先生も初めて知ったと思うし、ハナコ以外思ってもいなかったからそれが正しい反応だよアズサ。

というか良い解釈してるなと感じた。

 

「み、水着の件とは少し違う気が……」

 

「でも、動きやすいし通気性も良い。ハナコはこれを着て学校を歩いていたというのも納得がいく」

 

「そうですよね、だから言ったじゃないですかコハルちゃん」

 

「いやそれで外を歩くのは犯罪だから!納得しちゃダメ!公然淫猥罪だよ!?」

 

「コハルと一緒に勉強するのも楽しい」

 

「っ!?き、急に何!?何でそんな急に恥ずかしい事を!?」

 

「あらあら………♡」

 

アズサの純粋な眼差しと言葉に耐えきれず、顔を赤らめながらも「楽しい」という言葉に対しては、否定的な言葉を勢いと言えども口に出す事は無かった。その代わり、普段より少しだけ威勢が良くなった。

 

「ま、まあ、私みたいなエリートと一緒に勉強して、タメになる事は多いと思うけど?」

 

「うん、本当にそうだ」

 

「〜っ!そ、そう……それは……もちろん、だけど……」

 

あまりに純粋過ぎてコハルの勢いが落ちていっている。これは流石アズサとしか言いようがない、無自覚系人たらしだ。

 

そうして、話題は代わりながらも、パーティはまだ終わっていない。

 

 

 

 

︎✦︎︎✦︎︎✦︎︎✦︎︎✦︎

 

「アズサちゃん……最初はあまり表情の変化も読み取れなくて心配でしたが……良かったですっ」

 

「もちろんヒフミもだ。本当にいつもお世話になってる、ありがとう」

 

「っ!あ………あ………」

 

純粋で真っ直ぐな想いをそのままヒフミに伝えると、ヒフミは数秒固まった後、目元からぽろぽろと涙を流し、そのまま流れに任せアズサに抱き着いた。

 

「あ、アズサちゃんっ!!うわーん!!」

 

「んぅ……ひ、ヒフミ、少し息苦しい」

 

「もう絶対に離しません!アズサちゃんずっと大好きですっ!!」

 

「わ、分かったから……苦し………ぅ」

 

「ヒフミ、ヒフミ……?ちょ、もうそこら辺で……ヒフミ?」

 

 

 

 

︎✦︎︎✦︎︎✦︎︎✦︎︎✦︎

 

「そう言えば先生って、どういった経緯でキヴォトスに?」

 

「え?う〜ん……気が付いたら居たからね……」

 

「そ、そうだったんですね……」

 

自分としても気になる所ではあった。どうやってここに来たのか、何故来れたのか、何故居たのか。問題を出せば幾らでも出せる様な状況で、特に違和感なく生活出来ている。よくよく考えればおかしな事ではあるが、まあ結果良ければ全て良しという感じで今を生きている。

 

「まあ、今居る事に、嫌な事は一度も無いから……あんまり気にしてないかな」

「仕事は大変だけど、それなりの報酬は貰えるしね☆」

 

「先生……今日はテンションが高いな」

 

「え?あ……うん」

 

そういうつもりではなかった。

 

そんな事もありつつも、時間はゆっくりと……時間をかけて、補習授業部の話に花を咲かせた。

 

 

 

 

︎✦︎︎✦︎︎✦︎︎✦︎︎✦︎

 

「そう言えば今トリニティのアクアリウムで「ゴールドマグロ」という希少なお魚が展示されているらしいですね」

 

「なにそれ」

 

「あ、私もそれパンフレットで見ました!「幻の魚」と呼ばれているんですよね?」

 

「それ幻なの?」

 

まあ確かにパンフレットに載っている時点で幻と名付けて良いのかとは思うが、まあお客さんを惹き付け―――興味を持たせる為にはこういうやり方もあるんじゃないだろうか。後普通にそのマグロ気になる。

 

「見に行きたいのですが、入場料も安くやいので……」

 

「海、か……そういえば、一度も行った事ないな」

 

「そ、そうなんですか!?一回も……!?」

 

アズサは海に行った事が無いのか、なら今度連れて行ってあげようかな。そこで一回アズサとしっかり話してみようかな。

 

︎✦︎

 

「それで、とっくに潰れたアミューズメントパークなのにも関わらず、夜になると何やら騒がしい音が聞こえてきて……」

 

「そ、そんな訳無いじゃん!聞き間違えよ!」

 

ハナコが言うには噂話と聞くが、どうもリアリティのある話だ。

 

「でも、人が集まる所っていうのは怨念とかそういうのも溜まり易いっていうのもあるよね」

 

「そうですね。まあ、私もそういう噂としか聞いていないので」

 

「いやだっ!絶対嘘!全部誰かの悪ふざけ!」

 

怖いのかコハルは頑なに信じようとはしていないが、少しだけ声が震えている。さっきの話が相当怖かったみたい。

 

︎✦︎

 

「水着で街や学園の中を歩くのは別に、そこまで変な事じゃないですよ?」

 

「そんな訳無いでしょ!?勝手に常識改変しないでっ!」

 

「ですが、これは私がシスター達から聞いたんですが……どうやらキヴォトスどこかの無法地帯では、水着姿で覆面を被ってる犯罪集団があるらしいですよ?」

 

「み、水着に覆面……!?ド変態じゃん!?なにそれ!?」

「っていうか「犯罪者集団」なんじゃん!そんなもの何もしてなくたって、見た目からして既に犯罪よ!」

 

「そういう集団があるくらい、他の地域では普通なんですよ。ですからコハルちゃんも今度一緒に―――」

 

「いやっ!何言い出すか分からないけどとりあえず嫌っ!!」

 

︎✦︎

 

「アズサちゃんはもっと、夜はきちんと寝た方が良いと思いますよ?」

 

さっきの話とは全く違う心配の声がハナコからアズサに向かって伝えられると、アズサは前深夜に起きていて、それをずっと続けてしまっていた事、今日の朝起きるのが少し遅れてしまった事を謝罪した。

 

「……うん。今朝は寝坊して迷惑をかけてしまった」

「慣れない場所で寝坊なんて、これまでほとんど無かったのに……」

 

目を閉じ、少しの間静寂が訪れると、アズサはゆっくりと目を開け、皆の顔を見てしっかりと言葉にする。

 

「……もうここは、「慣れない場所」じゃないかもしれないな」

 

「………とにかく、もっとしっかり寝た方が良いです。深夜の見張りは減らしていただいて」

 

多少言葉に詰まりつつも、アズサに寝た方が良いと伝えるハナコ、そして深夜の見張りについてコハルは気になっていた。そんな話言われた事も無いし、見た事もない。

普段自身より早く起きている姿しか見ていないせいか、そんな事をしていると信じ難い。

 

「何、見張りって?」

 

「あぁ、毎晩夜中にちょっと見張りを……」

 

「ハナコも、ずっと心配してたからね」

「もしこの場所が「慣れた場所」になっているのなら、寝ても良いんじゃない?」

 

「そう……か、ずっと心配されて……ごめん」

 

「そんな、謝る事じゃ……」

 

「実は、見張りは言い訳で……ブービートラップとかを設置していたんだ」

 

話が変わってきたな。

マリーが尋ねてきた時に扉に手を掛けただけで何かが爆発したのはあれが原因だったのか。

ハナコが何故そんな事をしているのかと聞くと、アズサはしっかりと答えた。

 

「心配しないで、ここに悪意を持って侵入しようとするルートだけ設置してるから。普通の生活をする上では、安全面に問題は無い」

 

せめて場所を教えてくれないと先生死んじゃいます。

 

「なるほど……ですが、それならそれで教えてくれると嬉しいです。どうしても、心配しちゃいますから」

 

「……そうか。うん、これからは気を付ける」

「私のせいで、先生と皆が被害を受けるのは望むところじゃないから」

 

「ありがとう、アズサ」

 

皆の安全の為、と言われれば責めることは出来ない。普段自分の感情を表に出さないアズサが、私や補習授業部皆の為を想ってやっているのなら、感謝を伝えなければと思いいざ伝えると、アズサが珍しく照れていた。

 

「なっ……こ、子供扱いしないで、先生」

「私は別に……そんなのじゃない」

「だってこの世界は、全てが無意味で、虚しいのものだ。だから、もしかしたら……」

 

「私はいつか裏切ってしまうかもしれない……皆の事を、その信頼を、その心を」

 

「それでも、良いよ」

 

「え……?」

 

少しづつ顔が曇っていくアズサは、今の自分へ、また別の自分が洗脳する様に、何かを言い聞かせていた。

世界、無意味、虚しい……そう言ったアズサに、他の三人は掛ける言葉が見当たらなかった。

だからこそ、私が受け止めなければいけない。

 

「それって……」

 

「良いんだよ、裏切っても……アズサが裏切ったとしても、私達はずっとアズサを待ってるから、何時でも帰ってきて良いんだよ」

 

雨の音が少しづつ弱くなっていき、声がより聞こえやすくなる。私とアズサが見つめ合う中、突然体育館の照明が全て灯された。

 

「あ、電気が……」

 

「直ったみたいですね」

 

「あ、雨もいつの間に……!」

 

「そうですね。では、もう一度改めて洗い直しましょうか」

 

「……うん、じゃあ、第一回水着パーティはここで閉幕か。二回戦も楽しみにしてる」

 

「二回戦とか無いから!こんなの最初で最後だからっ!」

 

全員が照らしている明るさに安堵し、三人はそのまま体育館を出ようとするその時、アズサはふと私の方を振り向いた。

 

「先生……さっきの答え……」

 

「ん?答えって……何?」

 

「ぁ……いや、何でもない」

 

そのままアズサも三人の後ろに付いていき、洗濯を終わらせその日は休息を取る事にした。

………と、思っていたのだが。

 

「いいえ、まだです!このまま一日が終わりだなんて、そんな勿体ない事はさせません!」

 

皆ベッドで寝転がっていると、突然ハナコが起き上がってそんな事を宣言(?)した。

 

「な、なに!?急に飛び上がって、ビックリした……」

 

「突然の事でしたが、せっかくのお休みじゃないですか。皆裸で交わったのに、このままはいお休みなさいなんて――――」

 

「勝手に記憶を捏造しないで、裸じゃないから!」

 

「それそともかく、このまま寝てしまうのは勿体ないです。まだ火照っているといいますか、物足りないと言いますか……」

 

「具体的には?」

 

そうアズサ聞くと、ハナコは待っていたかのように優しい笑みを浮かべた。

 

「合宿といえば、やはり合宿所を抜け出す事……それも一つの醍醐味だと思いませんか?」

 

「え……?」

 

「さあ!今から皆でこっそり外に出て散歩しましょう!」

「トリニティの商店街は夜遅くまで営業している店もありますし、食べ歩きとかショッピングとかも出来ます!」

 

「そ、そんなの校則違反じゃん!ダメっ!」

 

「細かい校則は知りませんが、結構皆さんこっそりやってると思いますよ?意外とそういう方周りにいませんか、ヒフミちゃん?」

 

話をヒフミに振ると、ヒフミは少しドキマギしながら話を濁す。

 

「あ、あはは……そ、そう、ですね……?」

「で、ですが普段であればまだしも、今は補習授業部の合宿中ですし……良いんでしょうか……?」

 

「大丈夫ですよ、ね?先生?」

 

「ん?あぁ……うん、私は何も見てないよ」

 

「ほら、先生も言っていますし」

「遠出する訳でもありませんし、すぐそこですよ。コハルちゃん、いかがですか?楽しそうだと思いません?」

 

そう聞かれると、コハルは少し興味を持ちつつも、正義実現委員会(?)としての立場で板挟みにされている。

 

「え、っと……きょ、興味はある、けど……」

 

「はい、ちょっと行って戻ってくるだけなので大丈夫ですよ」

 

「私も楽しそうだし行こうかな」

 

「せ、先生まで!?」

 

「準備は出来た。もうすぐにでも出発できる」

 

さっきまでハナコ以外体操服だったのに、知らぬ間にアズサも制服へと着替えていた。

一緒に行くと決めた私に驚くコハル、着替えるスピードに驚くヒフミ、その後ろでハナコは散歩をしに行く事を楽しみにしていた。

 

「さあ、早く準備していきましょう!楽しくなってきましたね、深夜に裸で散歩……!」

 

「さりげなくすり替えないで!服は着ろ!」

 

そう言いながらも、コハルもついて行く事となり、全員制服へと着替え、深夜の散歩が突如として始まった。

そうして深夜、同じ時にある人と出会う事になる――――




皆さんガチャは引きました?え、引いてない?………え?

私はもちろん前イベから欲しくて危うくセミになる所でした。間一髪ですね。無事確保致しました……何連したかは、ご想像にお任せします。
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