虚弱先生の青春物語   作:不透明な水滴

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やっぱブルアカ最高だよな


爆発は芸術か、美食は神秘か

 

 突如として現れた美食研究会の皆んなは風紀委員会の子達あらかた爆散させた後に、何食わぬ顔で華麗にトラックから飛び降りた。

 もちろん私も困惑はしているが、それ以上に補習授業部の皆んなの方が困惑度が高い。それもそのはず、さっきの子が言った通り今はゲヘナ自治区全体に外出禁止令が出ている。その上ついこの前戦ったばかりであり、一人を除いて全員が逮捕されたはずだから普通に考えればこの場に居れる訳が無い。

 

 困惑の中、リーダーであろうハルナが何がどういった経緯でこの様な状況になっているのかを聞いてきた為、説明すると、ハルナは何かを咀嚼し理解する様に顔を縦に振った。

 

「……なるほど、状況は概ね理解しました。とにかくこの廃墟とやらに行かなければならないと」

 

「そうなんだよね。だから出来る限り大事にはしたくなかったんだ」

 

「事情は分かりましたが、タイミングが悪かったですね……この辺りは今、それなりに大きな騒動になっていますので」

 

 誰のせいだと言いたい所ではあるが、実際ハルナ達が来る前からこの警備体制は作られており、トリニティ生と正義実現委員会の生徒が居るが、私がその場に居ても通す事が難しそうだった。

 と、思っていたが。アカリ曰くゲヘナ所属部活の温泉開発部という部活(?)が市街地のど真ん中で盛大に爆発を起こしたらしく、警戒心最大値の今そんな事が起こってしまい冷静に対応が出来ず、めちゃくちゃな状態なのでと言う。

 

「そのおか……そのせいで、風紀委員会も慌ただしく動いている状況で……まあそのお陰で機に乗じて私達もこうして風紀委員会の檻から抜け出せたのですけれど。ふふっ」

 

「そうですね。それに緊急事態という事もあって、またしてもその場に偶然居合わせた給食部のフウカさんが、部の車を''快く''貸してくれましたし★」

 

 堂々と犯罪発言を目の前で話すハルナに、笑顔で緊急事態という事実を盾に給食部を遠回しに襲ったとアカリが言った。よく聞けばハルナ達の後ろで待機しているトラックのアオリから籠った叫び声が儚くも消えていった。

 

「新しく買ったばかりの車を貸してくれるなんて……これぞ美しい友情というやつですね★」

 

「んんっ!?んーっ!んーーーっ!!」

 

「……この叫び声は……?」

 

「嬉しすぎて叫んでいる様です★」

 

「……その友情のお相手、縛られたままトラックに積まれてません?」

 

「問題ありませんわ、フウカさんはこういう事に慣れていますから」

 

「もはや専門家と言っても過言ではありませんね★」

 

 明らかに友情とはかけ離れてる上に慣れてる事は良い事ではない。後縛られたままトラックに積まれる専門家って何。

 周りを特に気にせず会話していると、アカリのポケットから電話のバイブ音が鳴った。アカリが応答ボタンを押しスピーカーモードにすると、スマホ越しに走りながら叫び声を上げるジュンコとイズミの声が聞こえる。焦りが先行している様ですぐにでも情報が欲しいとジュンコはハルナ達に質問を投げかけた。

 

『ハルナ、アカリ!今どこ!?こっちも包囲を破ったけど、合流出来そう!?』

 

『きゃーーーっ!?風紀委員会がまだ追いかけてきてる!?』

 

 アカリのスマホを借り、トラックの方へと戻りながらハルナはジュンコへ一言言葉を掛ける。

 

「ジュンコさん。救出作戦は取り消しです」

 

『えっ、何で!?』

 

「ふふっ、あの時のお礼という事で、先生とトリニティの皆さんの事は、私達が責任を持ってご案内しますわ」

 

「ですね★今はとにかく乗ってください!」

 

「ありがとう!よろしくね」

 

「え、えっと……それではよろしくお願いします……?」

 

 困惑と混乱が残る中、時間が無い今トラックに乗せて連れて行ってもらえるのなら私達にとってもこれ以上嬉しい事は無い程だった。ヒフミ達はまだ少し不信感を抱いているが、私はそう感じなかった為すぐにでも乗せてもらう様感謝と挨拶を行った。

 その先生の姿を見たヒフミ達もトラックのアオリに乗る。するとそこには手足を縛られ、口をガムテープか何かで封じられた何かを諦めている少女が居た。よく見るとトラックのドアにはゲヘナの紋章と「給食部専用トラック」と黒文字で書かれてある。

 

「……本当だ。給食部って書いてある。じゃあ失礼するけど……給食部の貴方は本当にそのままで大丈夫か?」

 

 彼女は何も言わず、死んだ様な目でただ一点を見つめていた。そうしている間にトラックにエンジンが掛かる。

 

「ちゃんと捕まっていてくださいね★出発です!」

 

 アカリが勢い良くアクセルを踏みトラックは急加速と共にその大橋を走り続けた。そうして一時間程経った後、別行動をしていたジュンコとイズミがこれまた給食部のものであろうバイクでハルナ達と合流する。

 美食研究会は固まって移動する必要があり、後ろに乗っていたヒフミとコハルがバイクに乗る事となり、そこからまた一時間程移動し目的地を目の前にした時―――――

 

「―――先生、後ろから誰かに付けられている。恐らく風紀委員会だ。数はそこまで多くない、私が対処するから先生達は先に行っててくれ」

 

「アズサ、でも……」

 

「……不安なら、私も行きます」

 

「ハナコ、戦えるのか?」

 

「不安なのは戦闘ではない……そうでしょう、先生?」

 

 追いかけてきている風紀委員会、アズサとハナコが戦うと言ったが、風紀委員会相手にアズサが負けるとは思えないが、果たして指揮無しで無事に生還出来るのかと不安ではあった。

 その考えている事を知っていたかの様に見抜くハナコは、安心して欲しいと私に伝えた。

 

「私は、こう見えても先生程ではありませんが、多少の指揮は出来ます。風紀委員会を相手にしても、無事に帰ってこれる程には」

 

「後、真正面から戦う訳じゃない。陽動作戦、私達が風紀委員会の気を逸らす」

 

「……なら、任せたよ。二人共」

 

「ああ。行こうハナコ」

 

 二人はトラックから飛び降り、風紀委員会の元へ走って行った。その間に逃げようとした数秒後、後ろで大爆発が巻き起こった。

 その大爆発の中から風紀委員会ではない服装をした子達がこちらに向かって全速力で車を走らせる。迎撃しようとコハルが銃を取り出し標準を定めるも定期的に起こる謎の爆発が橋を揺らし、不安定になる。

 

「うわあぁぁっ!?何ですか何なんですか!?一体どうしてこんな事に!?」

 

「ヒフミ、揺らさないで!標準が合わないからっ!」

 

「わ、私が揺らしてるんじゃありません!じ、地面がさっきから揺れっぱなしで……!」

 

 するとまた真後ろで大爆発が起こり、さっきから何故か追いかけている生徒達は「温泉がここら辺にあるって言ってた!開発だぁ!!」なんてよく分からない言葉を叫んでいる。温泉開発部だ。

 

「また爆発しましたぁっ!?」

 

「トリニティの貴方、運転上手だね!」

 

「良いじゃん良いじゃん、頑張れー!」

 

「いえいっぱいいっぱいですけどぉっ!?」

 

「アカリさん、八秒後にまた爆撃が来ますわ。先生は顔を伏せてください」

 

「問題ありません★」

 

「私は問題しかないけどね!?」

 

 アカリがさっきよりもアクセルを強く踏んだ瞬間、さっきよりもデカイ爆発が起きトラックが一瞬地面から浮く程の衝撃と共に空気が押しつぶされる程の圧に襲われた。

 爆発で熱を持った地面の破片が飛び彼女、給食部のフウカの口を塞いでいたものを切り裂き、恐怖と共に大粒の涙を流しながらハルナに訴えかける。

 

「ハルナぁっ!もう車は良いから降ろしてーーっ!」

 

「フウカさんもこうして応援してくれているんですし、もう少し派手にやるとしましょうか」

 

「そうですね、声援を力に★そして速度に♪」

 

 パラメーターを見ると優に百kmは超えており、それに追いついているヒフミも恐らくそれほどのスピードを出しているだろう。後ろを確認すると色々と訳の分からない事になっていた。

 

「ショベルカーにブルドーザーまで来てる!?何で!?」

 

「ど、どうしてゲヘナの温泉開発部にまで追われているんですかぁっ!?」

 

「やばっ!風紀委員会も来た!」

 

 そうこうしていると、タブレットから通信が送られ、スピーカーモードで応答すると少しザラついているがアズサの声が聞こえる。

 

『こちらチームブラボー、チームアルファ応答せよ』

 

「あ、アズサちゃん!?」

 

『名前を言われると、隠語を使った意味が無い……それはそうとして、ごめん。陽動作戦は失敗した、こっちは包囲されている』

 

「はいぃっ!?」

 

 タブレット越しにも銃声や何かを発射する音が聞こえ、風を切る音と走っている音が聞こえる為、恐らくアズサ達も逃げているはずだ。

 

『前方には火炎放射器を持った温泉開発部、後方はやたら強いツインテールの風紀委員。退路を塞がれた』

『ハナコと私は何とか自力で逃げるから、後で落ち合おう。幸運を祈る』

 

 その言葉を最後に通信が切れ、連続で爆発が起こる。コハルが追いかけてきている温泉開発部をなんとか撃退するが、まだまだ爆発の中から追いかけてくる。

 

「アズサちゃぁぁん!?」

「わ、私達はあくまで、試験を受けに来ただけなのに……どうしてこんな事になってるんですか!?うわあぁぁぁんっ!」

 

 爆発が止む事はなく、連鎖が続き遂に前を走っていた美食研究会と先生を乗せたトラックが通過した瞬間にそこが爆発し、ヒフミが走らせていたバイクは勢い良く爆発の中へと入り込んでしまう。

 幸いにも爆発の瞬間では無かったものの、熱が冷める直前に入ってしまった為熱と衝撃に二人は飛ばされてしまった。

 

「っ……コハルちゃん……大丈夫ですか…?」

 

「うん、私はヒフミの後ろだったから……ヒフミは、大丈夫?」

 

「私は……ちょっと手の平を擦っちゃっただけなので、大丈夫です……それよりも、バイクは……!」

 

 二人が見渡すと、橋の上にバイクの姿は無い。コハルが橋の下、大きな川を見渡すと何かを発見しヒフミを呼んだ。

 

「ヒフミ!あれ!」

 

「……あ、あれは……」

 

 二人が川を見下ろす先には、爆発の影響で故障しているであろうボロボロのバイクだった。まだ目的地には遠く、そこまでは走らなければならない絶望感と、恐らく給食部のバイクである事からフウカへの申し訳なさで気持ちがいっぱいだった。

 だが進む為には前を向かなければならない。ここまでしてしまって目的地に着けなかったと考える前に、必ず目的地に着くという気持ちを胸に抱き、コハルと共に進もうとした瞬間後ろから何かの衝撃音が聞こえた。

 

「……?今のは……」

 

 音のした後ろを振り向こうとした途中、川の向こう側にはゲヘナ自治区のビルが数本見えている。そこに動く何かが見えた。その動く何かをヒフミはじっと見つめていると、それが何なのか気づき声を荒らげた。

 

「あ、アズサちゃん!?」

 

「え?どこ?」

 

「あ、あそこです!あそこのビル!」

 

「え?」

 

 コハルはよく分かっていない表情を見せたが、言われた通りビルを見ると、確かにアズサがビルの壁を走っていた。なんならそこからこっちに向かって飛んできている。

 

「ほ、ほんとだ……というかこっちきてない?」

 

「……え?」

 

 確かにアズサがこっちに向かって飛んできているが、少し変な感じかすると思った瞬間、突然アズサが腕をクロスさせ防御の体勢を空中でした。その刹那、また別の何かがアズサに襲い掛かり真下の川に叩き付けられる。その衝撃で水が橋より高い波を起こす。上を見上げると、アズサの言っていたツインテールの風紀委員がそこに居た。

 

「あれは……ゲヘナの風紀委員会」

 

「流石にやばすぎ……早く逃げよ!見つかったらまずい!」

 

「っ……でも、アズサちゃんが!」

 

「アズサなら大丈夫!アズサを信じて、行こう」

 

「コハルちゃん……分かりました。アズサちゃん……無事でいてくださいね」

 

 コハルのお陰で何とかバレる事無くその場を去る事が出来た。だが、あの一瞬での移動、そしてあの威力。ゲヘナの風紀委員会で戦闘力ならNo.2と言われているのは間違いでは無かった。そう感じざるを得なかった。

 

 

★★★★★

 

 

「……っん」

 

 水が流れる音、何かが沈む音で目が覚めた。目を開けると、そこにはさっきまで居たであろう大橋と、隣にフウカが眠っている状態だった。

 

「ここは……何があって……」

 

「先生、目が覚めましたか」

 

「……ん?」

 

 声のする方を見ると、さっきまで乗っていた川にゆっくりと時間を掛けて沈んでいっているトラックと何故か動じず私の心配をするハルナがそこに居た。なんならもう体の半分位は川に沈んでいる。

 

「だ……大丈夫?」

 

「私の心配はいりませんわ。それよりも、隣にいるフウカさん。近くに休めるベンチがあると思うので、そこに寝かせておいてください。私は今動けませんので」

 

「……それくらいなら、いいけど……」

 

「ありがとうございます。フウカさんには悪い事をしましたね……これでは車も駄目でしょうし、恐らくバイクも駄目になったでしょうから」

 

「フウカが起きたらしっかり謝りなよ」

 

「ええ、もちろんです」

 

 気づけばハルナの首元まで沈んでおり、最後にハルナは私にある事を伝えたいと言った。

 

「先生……目的地まではまで遠い、間に合わないかもしれません。ですが、近くにタクシー会社があると思うので、そちらを使った方が良いかと」

 

「うん……ありがとう、ハルナ」

 

「いえ、私は先生の事情を知りませんし、寧ろこうして巻き添えをしてしまってすいません」

 

「私は大丈夫……あの子達も、きっと大丈夫。というか、ハルナは自分の心配をしな?」

 

「もうそろそろ完全に沈みますので、最後に……何があるかは分かりませんが、先生。頑張ってくださいね」

 

「……うん、その言葉。しっかり皆んなに伝えてくる。ありがとう、ハルナ」

 

 最後にそう伝えると、ハルナは今日一番の笑顔をしたままゆっくりと沈んでいき、最後には親指を立てて完全に川へと沈んでいった。

 そういえばハルナ以外の美食研究会の子達が居なかったが、ハルナの事だし全員を逃がしてから自分だけ沈んでいったのだろう。

 

「……さて、行こうか」

 

 フウカを近くのベンチに横たわらせ、着ていたコートを胸元まで掛けてあげた。これで、夜風に苦しむ事は無いだろう。

 アズサ達やヒフミ達の心配もあるが、私じゃあるまいしよっぽどの事が無い限りやられる事は無いだろうと思い込み、私も目的地へ向かう為、タクシー会社へと歩き出した。

 

 

★★★★★

 

 

 通信を切り、ハナコに渡す。陽動作戦を開始し、温泉開発部などのイレギュラーが介入した結果失敗。そしてやたらと強いツインテールの風紀委員があらかた温泉開発部を撃破した後、私達の元へとやって来た。

 

「……規則違反者共、全員やられる覚悟はあるな?」

 

「話し合い……は、無理か」

 

 さっきの戦闘を見て分かった。この風紀委員、ただ強い訳じゃない。相手の急所を一箇所一箇所正確に狙える程の実力がある。あれ程の力を持つ実力者は、あの時以来だとアズサは実感する。

 

「覚悟しろ……全員、委員長の前に突き出してやる!」

 

「ハナコ、先に行ってて」

 

 巻き添えを起こさない様ハナコを先に目的地へと向かわせ、風紀委員と私の一体一の空間となる。

 今回の目的はあくまで逃走を目的とし、出来るだけ攻撃をいなし避け、逃げ切る事とする。そして、その瞬間ときがやってきた。

 

ゲヘナ風紀委員会戦闘士官―――――銀鏡しろみイオリ

 

VS

 

トリニティ総合学園補習授業部―――――白州しらすアズサ

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