波の立つ音が聞こえる。
快晴、一段と暑い日だとニュースになっていた。太陽がギラギラと輝くその下、私は真っ直ぐに広がる大海を見る。
「………暑い」
無論、出てくる言葉は現実を見せられるものばかりだが。
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第三次特別学力試験を終え、エデン条約締結まで空きの時間があった。その為時間を使いトリニティの手伝いや正義実現委員会の手助け等を行っている今日、再びハスミから連絡が送られ、その場所へ向かうとそこは既に戦場と化していた。
と言っても、一番前線に出ているツルギがトリニティも知らない様なスケバン達を一方的に倒して行っているだけだが、数はそこそこ居り、流石にツルギだけでも対処に時間が掛かりそうだと判断して連絡が送られてきたのだろう。
暫く指揮を取っていたが、その目で見ても今日はどうにもツルギの様子が変に見えた。
奇声はいつも通りの事だが、肝心なのはその叫んでいる内容だ。
「きえええぇぇぇぇぇぇ!!!夏なのに!!!最後の夏なのにいぃぃ!!!夏!!友情ぉ!!青春!!海ぃ!!水着ぃぃぃぃぃーーー!!!」
「何処に!!一体何処にいぃぃぃぃぃぃぃ!!!私の青春が、何処にも無いぃぃぃぃぃ!!!」
そう言いながらビルの何棟か貫通し遠回りをして敵を蹂躙している。その上ずっとそんな言葉を叫び続けており、攻撃も少し荒々しい。
そんなツルギの状況を気にしているのは、私だけでは無かった。拳を振るうツルギの姿を見ると、私の近くで遠戦していた一年生、マシロが私に声を掛けた。
「ツルギ先輩、最近ずっとあの調子ですね」
「……うん、流石におかしいよね」
「正直、連日の任務疲れもありましたが、あんな姿を見せられて、私も弱音を吐いている暇はありません。私も先輩を見習って、もっと頑張らないと!」
「ん?」
マシロなら気付いていると思ったが、ツルギを憧れの対象にしているのだろうか、寧ろ目をキラキラさせより戦力になろうと力を入れ始める。その瞬間、私が見間違っているのかと思ったが、ふとツルギの近くを確認すると、ハスミが何やら心配そうな目でツルギを見つめているのを見つけた。
ハスミなら私の気持ちを理解してくれるかもしれない。そう思いながら、その日は無事に制圧し終了した。
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その日は随分と平和な日だと『思っていた』
トリニティ付近の事務所で仕事を行っていると、突然シャーレの電話が鳴った。何事かと出てみれば一言『正義実現委員会の部室に来てください』とハスミから云われた。
最初は公式からの依頼と思ったが、理由を聞いてみればその瞬間、すぐにでもシャーレを出る事となる。
『阿慈谷ヒフミさんと白州アズサさんが無断で戦車を連れ出そうとし、その衝撃で数人の正義実現委員の人達が傷を負ったからです』
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扉に手を掛け、腕を引く。
「あ、先生!」
「先生!」
開けて早々、中で律儀に座って待っていたヒフミとアズサが私を見てすぐに近付いて来た。
最終試験が終わり、補習授業部全員が生徒として再認定された。そのお陰で部活は解体、生徒として身を自由に出来たはずだが……。
「………何してるの?」
「あうぅ……すいませんでした」
一言目には謝罪。その後、ヒフミから何故こうなったのかの経緯を教えて貰った。
アズサは海を見た事が無い。それを知ったヒフミは『何故か』対戦車兵器PIATと言う名の戦車を『許可を取らず』使用し犯行がバレた正義実現委員会と『再び何故か』交戦。ハスミの介入で事はツルギや上に届く前に終わったものの、結果として出した二人の記録では以下の通りだ。
正義実現委員会のメンバー三十人余りの重軽傷。
東学園広場の半壊による損害。
第十二校舎の全壊、その影響による第十一校舎の半壊と第十三校舎の軽破損。
その他。
聞いている限りでも明らかに大人数での犯行、もしくはそれに匹敵するレベルの実力者が暴れない限り出ない様な被害、そして一番に驚くべき所は、それをヒフミとアズサのたった二人だけで成し遂げたと言う所だ。
ハスミも私と同じ様に困惑しているらしく、武装集団や大型兵器の損害かと疑っている程だった。勿論それも無理は無い、マシロ曰くハスミが到着するまでは『PIAT』を確保する事を目的とした結果、恐らくアズサの戦術に為す術なくやられ、動きを止める事が出来なかった、その結果、こんな様な被害を出したと考えられる。
「ぬ、盗もうと思った訳では無くて!ちょっと借りて、また戻しておこうかなって……」
「世間ではそれを「盗む」と言うんですよ」
「……見れば見る程信じられないな」
幾らアズサが強いとは言え、やろうと思えばトリニティを襲う事だって――――
『トリニティくらい、半日で転覆させられますよ♡』
あの時ハナコが言っていた言葉、今なら理解できるかもしれない。確かに、今のアズサにとっては造作もない事だろう。
だからと言って許される訳では無いが。
「今回は見送らせてもらいます……」
「先生!?見捨てないでくださいぃ〜!」
「そんな事言われても……どうしようも無い………」
擁護する言葉をかけようにも、あまりにやった事がデカすぎると言うか、何を言っても無駄な気がする。
マシロもハスミも二人の処罰を決める為席を外そうと立ち上がった瞬間、部屋が少し揺れた。
「地震……?」
「……弱いので、止まるまで待ちましょうか」
そう言い二人は再び席に着くが、部屋は少し揺れたままだ。
座ったまま揺れが収まるのを待っていると、ある事に気が付いた。それは、時間が経つにつれて少しずつ揺れが大きくなっていっている事。
「……何か、揺れが大きくなってる気が……」
「………確かに」
「確かに、少しずつ揺れて……っ!?」
突然、驚く程部屋が揺れる。
全員がしゃがもうと少し席を立った瞬間、部屋に大きな衝撃が起こる。突然部屋の壁が衝撃と共に崩れ、破壊された。
「きへへへへへへっ!!」
「っっ!?!?」
通路側でもなんでもない壁から突然現れたのはツルギだ。
人によっては見るだけ気絶しそうな笑顔を魅せながら壁を突き破りそのままの勢いで真っ直ぐに走り奥の壁すらも破壊しようとする。次の瞬間、ツルギの目の前にはハスミが立っていた。
「何してるんですか、ツルギ!」
「きえぇぇぇぇぇぇっっ!!!」
突っ込むツルギを両手で掴み止めようとするハスミ、だが勢いは衰えず寧ろハスミを押して行った。
「ッ力が強い……!」
「きゃぁぁぁぁぁっ!!!」
「っ、まず……!?」
一瞬体勢を崩したハスミはそのままツルギに押され、二人とも奥の壁を突き破り外へと吹き飛ばされた。
吹き飛ばされた数秒後、トリニティ全体に響き渡る大きな音で辺りは静かになり、数分後、ボロボロになったハスミと明らかに拳骨を貰い頭にタンコブを付けたツルギが部屋へと戻ってきた。
「………お騒がせしました」
「あ、うん……大丈夫だよ。というか、ハスミの方が大丈夫?」
「私は大丈夫です……そんな事よりツルギ、貴方何してるんですか?」
「………すまない」
「いやすまないでは済まされませんよ。と言うか貴方今部屋が連結している壁から来ましたよね?ここ貴方が来たであろう部屋の真反対なんですけど、全部壊して来たんですか?」
「……すまない」
「もう一発入れましょうかね」
今にも怒りが爆発しそうなハスミを爆発する前に何とか静め、再び爆発しないよう先にツルギはヒフミの隣の椅子に座らせた。座らせた後、ヒフミは何故か隣にいるツルギをチラチラと見ては怯えている様子を見せたが。
落ち着きを取り戻したハスミは不思議そうな表情でツルギに問い掛ける。
「お二人の処罰は後でしっかりと決めるとして、ツルギは何があったんですか?」
「あ……アズサちゃん………席って変わってくれたり……?」
「どうかしたのか?」
「え……?いや、えっと……こ………怖い……です」
「………怖い?」
状況を見たハスミは何か考えた後、ある答えに辿り着く。
ハスミは一度ツルギだけを呼び出し、別の壊れてない部屋へと連れて行った。
数分後、ツルギの姿は無く、そして何故か笑顔になっているハスミが私達の元へと戻ってきた。
「皆さん、突然ですが……お願いがあります」
「お願い?」
「はい、簡単なボランティア活動とでも言いましょうか。処罰の代わりにやっていただきたいんです。諸経費は勿論、戦車も正式にお貸しします」
「ぼ、ボランティアですか……?」
困惑する私達に「詳しい説明は明日話す」と言われ、その日は特に何かをされた訳でも無くそのまま返され、その後ハスミには私の協力も必要と連絡がきた。ハスミにしては珍しいと思いながら私はその時すぐに承諾したが、それがまさかあんな事になるなんて思いもよらなかっただろう。
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数日後、ハスミから紙を渡され、海辺まで出張している。
ヒフミ達の処罰、そして日を追う事におかしくなっていっているツルギを対象に行われたこの出張、それはハスミから提案された言葉通りの『ミッション』だ。
「ツルギと一緒に海に行って、リストに書かれた事をその通りに実行してきてください……と、証拠として、写真を撮って提出するように……か」
「私達の二人では上手くやれる自信が無かったので先生を連れていきました………うぅ、何も言い返せません………」
その説明文を見て大体理解はした。
直後、ツルギの異変について私個人に送ると云われた連絡が来る。
内容を見てみると、これまでツルギが云っていた言葉も、最近ずっとツルギの様子が変だったのも、三年生の最後の夏でありながら学校事や依頼、仕事ばかりに縛られ少しも夏を楽しめていなかったせいであり、心の優しいツルギは誰かに言える訳もなく溜めて貯めて溜め続け、最終的に爆発してしまいああなったと語っていた。
そうハスミに云われれば、確かにツルギの聞いてきた叫びは夏や青春に関連する言葉ばかりだ。ツルギは三年生で学生としての最後、最後ぐらい青春や夏を謳歌したいと言う言葉を聞けばすぐにでもそうしてあげたかったが、立場的にツルギは早々抜けれる訳が無い。
だが、それもハスミのお陰で解決しそうでもある。
そうとなれば、ツルギの為にも、ヒフミ達の為にも動く事が先生としての役目だ。
「と言うか、ツルギが言ってくれれば当番の日を変えたって良かったのに……」
「理解した、こっちは監視役だな。私達が逃げ出さない様に見張るつもりか。流石正義実現委員会、抜けが無い」
「……いえ、別にそういう訳では無いのですが………」
振り返るとアズサが何かを理解したのかマシロを方を向き構えを取りながら警戒していた。恐らく思い違いだろう。
「ツルギと一緒にマシロも来たんだね」
「ん?はい、ハスミ先輩にどうせならと云われ……ですが、これも任務、やるからにはきちんとやってみせるつもりです」
「任務……まあ、リストを見る限り凄く平和な感じだけど」
「そうとも限らないぞ、先生」
アズサは本来の意味を教えてくれた。実は正義実現委員会にしか伝わらない言葉を隠語として隠しているや、油断させた隙に襲う為の囮だと云う。
「……アズサは、正義実現委員会の事をどう思ってるの?」
「過去のトリニティでは、人の爪を剥いだり、ゲヘナにも劣らない伝説を聞いた事がある。幾ら時代を超えたとは言え、名残が残っていてもおかしくはない」
「そうだったんですね」
マシロは理解した様な口調で云っているが、目が丸くなってるから恐らく分かっていない。
一通りの説明が終わり、改めてミッションを開始させようとふと水辺を見る、そこには水着姿のツルギが周りに居る人達に声が上がる程怖がらせていた。無言のまま笑ってるだけなのに。
ヒフミもその姿を見て少し後退っている。どうしてもツルギに怖い印象があるらしい。
「……まあ、大丈夫だよね」
今までもそうやって、乗り越えてきたから。
最悪なタイミングで低迷期に入ってしまい長らく作成が出来なかったんです……投稿遅れました、あと一話あります、恐らく次回も相当遅れます。申し訳ない。
私が沼ってる間にブルアカも四周年ですね。私は三周年から始めたのでもうすぐ一年になります、時の流れは早いですねぇ。
セイアやリオ、C&Cの実装、デカグラマトンの追加など要素ありまくりなので、四周年を祝いつつ共に楽しんでいきましょう。ブルアカを愛せ。
ありがとう、そしてこれからも。