御伽の魔女の召使い   作:──

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この愛おしき愚かな従者を如何にすべきか

涼やかな朝。

サンルームには日差しが差し込み、そこで有珠と青子、草十郎の三人が朝食を摂っている。

有珠の横には、いつもいるはずの従者の姿がない。

それを青子が問う。

すると有珠は

 

「……彼女には少し休暇を与えたわ。少し働かせすぎたのかしら、と後悔しているの」

「……?」

「彼女の、部屋の天井一面に私の写真が……」

 

それを皮切りに有珠は自らの従者の奇行を青子に伝える。

みるみるうちに、自らの目の前にある現実を疑うような表情をする青子と、〝ついにバレたか……、南無三〟と過去の駒鳥の発言を思い出しつつ目を瞑る草十郎。

 

「……で?どうするのよアイツ」

「……?どうって?」

「アイツ、有珠の言葉ならなんでも聞くでしょ?だから遠ざけるにしろ解雇するにしろ有珠から言えば一発よ」

「え?」

「え?」

 

変なことを聞いたように聞き返す有珠に、青子はそういう話ではないのかとさらに聞き返す。

 

「クロは無給で働いてくれてるわけだし、少しなら給料の代わりにとも思ったのだけれど、さすがに全てを許すのは良くないでしょう?」

 

そのような調子で有珠が相談をしていると、トントンとドアがノックされ、黒戸が入ってくる。

そして、有珠に紅茶を差し出し、有珠の斜め後ろに佇む。

当然のように出てきた紅茶をいつも通りに飲む有珠。

しかし、その紅茶が今ここにあることの違和感に気がつくと同時に訝しげな顔になり、背後に佇む従者の存在に気がついた瞬間にその表情が困惑に変わる。

 

「………?…………!?……クロ?」

「はい」

「私は今日、あなたに休日を与えると言ったと思うのだけど……?」

「はい。ですので、本日はいつもより楽な格好で、私の趣味として給仕をさせていただいております」

 

よく見れば、黒戸の格好はいつもの給餌服ではなく黒いワンピースで、有珠より少し長いセミロングの髪は整っておらず所々が跳ねている。

 

「……休日とは、あなたの好きなことをする日なのよ、クロ」

「……?ですから給仕を……」

 

有珠は大きくため息を吐く。

 

「私はあなたに休んで欲しいのだけど」

「えぇ、ですので最も心休まる行為を行っております。」

「体も休めるべきじゃないかしら」

「…………わかりました。それでは今日一日、お暇をいただきまして少し出掛けてまいります。──青子さんと二人でお話をするのもいいですが、あまり構われないと拗ねてしまいますからね」

 

頬を膨らませて出て行った黒戸の背中を、見つめた有珠は

 

「今度、埋め合わせをしないといけないわね」

 

と軽く呟いた。

その一方で青子は

 

「……確かに、あそこまでの勤労精神に無報酬ってのも逆に申し訳なくなるわね」

「でしょう?可愛くて勤勉で、私の自慢の従者よ。……ちょっと怖いけれど」

 

有珠は自らの従者が褒められたとみるや、まるで自分のことのように誇らしげに胸を張る。

が、天井一面の写真を思い出して少しだけ目を逸らす。

その様子を見て青子は思う、〝……これ、そんなに気にしてなくない?〟と。

全く気になっていないわけではないだろうが、本人も無意識のうちにこの問題を問題と思っていない部分がある。

ならば、青子は有珠の相談にどう答えるべきか、青子が出した答えは

 

「……写真にルールをつけたなら、それで一度様子を見れば?アンタの身の安全はアイツのモラルに任せても大丈夫だと思うわよ、仮にもここまで一緒にやってきた主従なんでしょ?」

 

有珠の所有物(黒戸)のことを褒めつつ、実質的には問題を先送りにする回答。

 

「……ええ、そうね。……そう、よね?」

 

有珠は少し首を傾げながらも首を縦に振った。

やはり青子の読み通り、有珠は割と黒戸に心を許している。

今回のことも、有珠自身すら気づかないほどの心の隅で

〝でもまぁ、許してもいいかも?〟なんて考えている。

だからこそ、青子の提案にそのまま首を縦に振ったのだった。

そのまま、ぼーっとしながら時々

 

「……本当にいいのかしら?」

 

とつぶやく有珠に、それでいいのだと告げて数時間、玄関が開く音と共に黒戸の声がした。

 

「ただいま帰りました〜」

 

少しゆるい声で帰ってきた黒戸。

その手には……

 

「せっかくの休日でしたので、私のへそくりからマカロンを買ってきました!居間で食べましょ」

 

そう言って、出迎えに来た面々よりも先に居間へと小走りで向かう黒戸。

 

「……はしゃぎすぎね」

 

そう言いながらも自分の口角が上がっていることに気が付かないまま、有珠はその後を追うのだった。

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