御伽の魔女の召使い 作:──
「……えっと、だから紅茶の淹れ方を教えて欲しいんだけど──」
「それくらいは先ほどの一言でわかります。なぜ今私に?このタイミングで?」
「だって、有珠も紅茶、好きなんだろ?」
「……っ」
ぴくり、と黒戸の眉が動いた。
そして、大きなため息を吐くと
「いいでしょう。しかし、その理由で教えを乞うなら基礎を教え込んだ後、有珠さま好みの一杯が淹れられるようになるまでレッスンは終わりませんが、覚悟はありますか?」
「あ、ああ。しっかり時間を用意してきたよ」
「そうですか。では、ティーポットと…、私の練習用の安い茶葉を持ってきます。居間で待っていてください」
数分後、いくつかの食器と茶葉を持って居間にやって来た。
そこから始まったのは素人にはかなり厳しく、良家のメイドでも求められないほどの水準を求めるレッスンというよりは訓練、もしくは拷問と言えるレベルのレッスンだったが、草十郎は持ち前の器用さでそれらをなんとか完了し、日付が変わるより前には黒戸が納得する一杯を淹れることができた。
「お疲れ様でした。食器の掃除は私が行いますので、あなたは部屋に戻りなさい」
「俺も手伝うよ」
光もない真夜中、食器洗いを終えた二人は黒戸の誘いでサンルームで紅茶を飲んでいた。
淹れたのは黒戸だ。
「……聞きたいことがあれば、程度によっては答えます。今夜限りですよ」
「じゃあ、一番気になってたことを聞くんだけど……、黒戸さんはどこの学校に通ってるんだ?同い年だろ?」
「そうですね。有珠さまと同い年ですので、おそらくあなたとも同い年です。しかし、
「大学まで終わってるって聞いたっス!さっすがマイ
チチチ、と囀りながら黒戸の周りを飛び回る青い駒鳥。
それにどうでも良さげながらも、軽い反応を返す黒戸。
すると、
「教養もマイ
「……っ!?!?黙りなさいロビン!」
瞬間、とてつもない高温の炎が駒鳥へと飛んでいき、駒鳥は所々炭化しながら地面へと落ちた。
黒戸はまるで草十郎が見えていないかのような狼狽っぷりで顔に手を当てて考え事をしている。
「……えっと、黒戸……さん?」
「な、なんでしょう?」
「さっきのって……」
「聞こえたのですか?」
草十郎が肯定すると、黒戸は
「あの駒鳥は頭が軽くてですね、有る事無い事言いふらすのです。ですから、今のは聞かなかったことに──」
『ウソじゃねぇっスよ!アリスさんの所持品が新品に入れ替わる怪奇現象の犯人だし、この前はアリスさんの髪の毛拾い集めててその中に青子サンのが混じって舌打ちしてたっス!他にも……ぶげら!?』
乙女の闇を夜の闇へぶちまける駒鳥は、哀れにもどこから取り出したのかわからない投げナイフに貫かれ、草十郎の視界の外へと消えていった。
「……えっと──」
「忘れなさい」
「あの──」
「忘れなさい。今日は早く寝るように。私は少し所用を思い出しました」
黒戸はそう言って席を立った。
草十郎は、彼女の言う所用が証拠隠滅では無いことを祈って屋根裏部屋へ戻るのだった。