加賀道夫さんじゅうななさい   作:ビーバップ八戒

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おっさん主人公だと、執筆中に思いついたくだらない親父ギャグをいくら地の文に入れても心が傷まないのでおすすめです。


またまた奴隷を買う(下)

 

「ゆっくり話せたか?」

 

 代金を受け取ったアランが立ち去ると、入れ替わりにロクサーヌが戻ってきた。

 世話になったという女性に挨拶に行っていたのだが、機嫌も良さそうだ。

 

「はい、ありがとうございました。

 ……あの、服の採寸をしてもらったのですが」

「ああ、以前ロクサーヌが着ていたメイ……侍女服があっただろう?」

 

 採寸までしてくれたのか、まあ短期間とはいえ成長期だからな。

 前のメイド服も買い取るべきだったか? ビフォー・アフターを比べたい。

 ……採寸結果だけでも聞き出せないものか。

 

「あの服を作ってもらうことになった、ただし、侍女服ではなく侍女長の服だ」

「……ということは」

「ああ、あの3人に来てもらうことにした。

 ロクサーヌは一番奴隷となる、面倒を見てやってくれ」

 

 一拍置いて、ロクサーヌが口を引き締めた。

 

「はい、お任せください!」

 

   ※   ※   ※

 

 さすがにいきなり3人は大変だ。

 準備をして、3日後にまた受け取りに来るつもりだとロクサーヌに話し、当の3人ともう一度話をさせてもらうことになった。

 

「そういえばちゃんと紹介していなかった、私はミチオという。

 こちらはロクサーヌ、一番奴隷となる、3人には3日後に来てもらうことになった」

 

 多分セリーも採寸を受けたのだろう、わかっているという顔で「はい」と応えた。

 対して母娘の方は不安だったようで安堵の色が濃いが、母親の方はすぐに立て直してくる。

 

「なんと奴隷だったのですか、てっきり若奥様かと」

「そんな、若奥様だなんてとんでもない」

 

 口に手を当てて驚きを示すハンナに、両手をパタパタとして否定するロクサーヌ。

 ここだけ井戸端会議感がすごい。

 ……ところで、16歳の若奥様って日本では少し前までは合法だったが、犯罪臭がすごいな。

 

 アランが咳払いをして、「それでは契約を行います」と言った。

 おっさんの声にホッとする、なぜなら私もまたおっさんだからです。

 

「……契約が完了しました、年齢もご確認ください」

 

 ……〈鑑定〉結果と相違ない、もちろんセリーもだ。

 俺の方も、所有奴隷が増えているな。

 

「それでは3人は3日後に。

 ……衣装は作るのに時間がかかりますので、10日後にお越し下さい」

「心得た。

 ……では間違いなく受け取りに来る証として……友に応えし信頼の、心のきよむ誠実の、パーティー編成」

 

 

   【パーティー】

   ・加賀 道夫

   ・ロクサーヌ

   ・ハンナ

   ・カタリナ

   ・セリー

 

 

 〈パーティー編成〉に応じる順番になんとなく性格が出てる気がするな。

 ハンナは真っ先に応じ、連れられて娘のカタリナが、セリーは「えっ、いいの?」みたいな感じだ。

 

「お客様はセリー、ハンナ、カタリナの所有者になりました。

 所有者は奴隷に住まいと食事を与え――」

 

 ロクサーヌの時と同じ、定型文の説明だ。

 証云々は方便だ、目的はもちろん――

 

(――パーティージョブ設定!)

 

 

   【パーティージョブ設定(ハンナ)】

 

   セットジョブ

     商人:Lv28

     効果:知力小上昇

       :精神微上昇

    スキル:カルク

 

   所持ジョブ

       ▶商人:Lv28

      探索者:Lv30

       村人:Lv5

       剣士:Lv1

       戦士:Lv1

    薬草採取士:Lv1

      料理人:Lv1

 

 

 おっほほほっ、商人Lv28! 探索者Lv30! そして……料理人!?

 ジョブ効果が気になるが……慌てることはない。

 まずはLv28の〈知力小上昇〉がどれほどのものか、確認させてもらうとしよう。

 

 

   【パーティージョブ設定(カタリナ)】

 

   セットジョブ

     商人:Lv1

     効果:知力小上昇

       :精神微上昇

    スキル:カルク

 

   所持ジョブ

       ▶商人:Lv1

      探索者:Lv1

       村人:Lv5

       剣士:Lv1

       戦士:Lv1

 

 

 まあ無難だな。

 だがLv1ということはレベルアップも早いだろう、今後に期待だな。

 俺のジョブ効果で精神とMP最大値が上がるから、3日後に経過観察させてもらおう。

 

 

   【パーティージョブ設定(セリー)】

 

   セットジョブ

    探索者:Lv10

     効果:体力小上昇

    スキル:アイテムボックス操作

       :パーティー編成

       :ダンジョンウォーク

 

   所持ジョブ

      ▶探索者:Lv10

       村人:Lv3

    薬草採取士:Lv1

 

 

 思った通り、村人Lvが低いな。

 できればこの場で変えたいが、アランに露見するかもしれない、我慢だ。

 〈体力小上昇〉だって決して無意味じゃない、母娘の治療に役立つかもしれない、体力は全ての基本だ。

 

 アランの説明が終わった。

 3人に身体を大事に、とか、ブラヒム語をよく学ぶように、とか声を掛けておく。

 彼女らはそれぞれ、慇懃にお礼をして下がっていった。

 

「それでは、またのご利用をお待ちしております」

 

 帰り際、いつもの立ち居振る舞いで別れを告げるアランに質問をしてみる。

 気になっていたことがあった。

 

「一つ訊きたいのだが、アラン殿。

 ……セリーが性格的に荒事に向いてないと言ったのは何故だろうか?」

 

 どうも俺にはよくわからなかった。

 いくらセリーを知識奴隷として売りたいといっても、価値を下げるようなことは言う必要はないはずだ。

 

 アランが顎に手を当てて、「彼女は、頭が良いでしょう?」と今更なことを言ってきたので、訝しみながら頷きを返す。

 

「しかし、彼女自身は自分が頭が良いとわかっていない、あるいは信じていないようなのです。

 恐らく、鍛冶師にもなれず、巫女にもなれず、自信を喪失したからだと思いますが……」

 

 巫女? ……まあいい、話に集中しよう。

 こう聞くと、セリーが戦闘奴隷として売り込んできた理由も理解できる、彼女は自分の頭脳に自信がなかったのだ。

 更にアランの見立てでは、セリーはブラヒム語を喋れないのではなく、喋らないのではないか、ということだ。

 

「本来、喋れない言葉を聞き取ることは難しいものです。

 セリーは恐らく、不完全な状態で喋る己を良しとできないのでしょう。

 自分に厳しいことは決して欠点ではありませんが……そういう者は、往々にして他人にも厳しいものです」

 

 なるほど、自尊心がない人間は、自分にできるのだから他人にもできるはずだと思うものだ。

 ……耳が痛い話だ。

 俺は多分、高卒であることにコンプレックスがあった。

 だから大卒で年上の後輩に、後から考えると心無いことを言ってしまったことがある。

 

「学のない主人では、そんな彼女を扱いきれないでしょう。

 そして、無自覚のままに主人を、周囲の自尊心を傷つけることになる。

 ……ですので私は、彼女をどこか商家に売るつもりでした*1

 

 そうか、商人なら博識だろうし、〈カルク〉もある。

 ……さて、俺に彼女を扱いきれるだろうか?

 

「しかし、ミチオ様はセリーを見て戦闘奴隷に向いていないとは感じられなかった……それが答えなのだと思います。

 人非人と眉を(ひそ)められることも多いですが、人と人とを巡り合わせるのがこの仕事。

 ……前回に引き続き、今回も良い商いをさせていただきました」

「……いや、そう言ってもらえると、俺としても心強い、またよろしく頼む」

 

 俺はアランと握手をした。

 ……次に買い物をする時は〈値引交渉30%値引〉を使う必要がないくらい金を貯めてから来よう。

 

 

 

   ベイルの迷宮

     四階層

 

 アランの商館から引き上げて、ついでにそのまま迷宮に行くことにした。

 というより、魔法の威力を早く試したかった。

 

 

    ミノ

   Lv:4

 

 

 

    ミノ

   Lv:4

 

 

 

    ミノ

   Lv:4

 

 

 俺の祈りが通じたのだろうか、お誂え向きに3匹の団体を見つけた。

 ロクサーヌからは逃げられない、ミノが3匹だが見逃し三振(ミノサン)とはいかないのだ。

 

「ファイヤーストーム」

 

 火の粉を纏い、まるでファラリスの雄牛のようになったミノが一斉に突進してくる。

 ロクサーヌが前に出る、1頭、また1頭と襲い来るミノの角をこともなげに避ける。

 遅れた1頭がロクサーヌに迫り来るが、そろそろクールタイムが終わる。

 

「ウォーターストーム」

 

 水滴が叩きつけられると、ミノがつんのめって煙となる。

 魔物が3匹一斉に消え去るのはなかなかの爽快感だ、水蒸気爆発のようだ。

 

「……2発だ、思った通り、強くなっている」

「ご、ご主人様、これはいったい……?」

 

 そういえば、つい気が急いて説明も何もしていなかった。

 ハンナとカタリナという商人をパーティーメンバーに入れたことで、〈知力小上昇〉の効果により威力が上がっていることを伝える。

 カタリナの方はLv1だが、全く無意味というわけではないだろう。

 

「なるほど! そのようなことをお考えだったとはっ!」

 

 ロクサーヌが驚き混じりの歓呼をあげた後、一転沈んだ様子になった。

 

「……正直に言いますが、ご主人様があの母娘まで買うのは反対でした、いくらご主人様が慈悲深いとはいえ、そのご負担はいかばかりかと。

 ですが、あの2人を活かすことまでお考えだったとは思いもよりませんでした」

 

 そうだとも、慈悲などではない。

 俺もあの2人を利用する、あの2人も俺を利用すれば良い、打算ある互恵関係こそ持続可能な関係だ。

 ……だからロクサーヌよ、そのキラキラとした()()(まなこ)で俺を見るのはよせ。

 

「……三階層より人が多いから苦労をかけるが、四階層の魔物も2発で倒せるなら、結晶化促進ではなく、ドロップアイテムで稼ぐことができる。

 経験値上昇するようにして、上を目指すとしようか」

「大丈夫です、お任せください!」

 

 目に見えて効率が良くなると楽しくなるな。

 そうだ、どうせ今日はベイルに来たのだし、

 

「夕暮れまでこのまま狩りをして、夕食は久し振りにベイル亭で食べようか」

「それは良いですねっ」

 

 ロクサーヌが尻尾を揺らした。

 

*1
原作でも当初アランはセリーを積極的に売り込もうとしていなかったように見受けられたので、本作ではこのような理由付けとします。また、原作で道夫君がたまに無知なところを見せた時にセリーが冷たい目をするのも、こうした理由ではないかと推測(捏造)します。




アランのキャラ設定をかなりマイルドにしてありますが、原作でも商館の居心地が良くて奴隷として売られるよりずっと店にいた方が良いと思っているやる気のない女奴隷が出て来るので、やっぱり奴隷商人としてはかなりマイルドな方なんじゃないかと思います。

※キラキラとした曇り(まなこ)は矛盾表現ですが意図的です。
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