本話は、以前投稿した1~5話(プロローグ/初陣/ソマーラの村/戦利品/ベイルの町)で説明不足と思った箇所の補足として追加したものです。
ここすきの結果がズレてしまいました、以前投票いただいた方には申し訳ありません。
懲りずに投票いただけると嬉しいです。
【2024/12/22】
原作読み返して、〈エクストリームドロップデッド〉(原作Web版のレベル99デス)はLv1の魔物にも有効だということを忘れていることに気が付きました。
そのうち修正します。
MP消費量が大きいようなので、発動しなかった、という描写に変えます。
【2025/01/19】
上記の通り修正を実施しました。
ソマーラの村
村長の家
「今夜はこの家にお泊りください」
オートミールとサラダ、チーズの朝食をいただいていると、村長が言った。
薄味だがそう悪くない。
味麦も野菜も少し野趣が強い気がするが、雑穀パンなどを好む人間なら全く問題ないだろう。
「重ねて世話になります」
「もちろん、夕食もご用意いたします」
昼食については言われない。
そういう文化なのかもしれない、日本でも江戸時代までは朝夕がっつりで昼食はなかったそうだ。
……そういえば、後北条家には酒は夜に呑むと深酒しやすいから朝に呑みなさい、という訓示があったとか聞いたことがある。
先人の知恵は素晴らしいな、しばらくは気をつけよう。
「明日はベイルの町まで、先程の商人が馬車を出します。
出発は早い時間になるでしょう。
図々しいとは思いますが、ミチオ様にもついて行っていただきとうございます」
「ええ、それはもう」
まあ5人……いや6人の盗賊をドナドナしなきゃならないからな。
盗賊と一緒というのはぞっとしないが、1人じゃどこにも行けやしない。
ためらいなく頷く。
「町まではどれくらい掛かるのでしょう?」
「馬車で3時間ほどでございます」
時計らしきものが見ないが、3時間が地球と同じなのか、とかは考えても仕方ない。
そして農民の感覚の〝早い時間〟だからな……夜討ち朝駆けは覚悟しておこう。
……とはいえ、じゃあそれまで何をするかという話だな。
「その、この村の付近には……モ、モンスターなどは出るのでしょうか?」
「それは……魔物のことでございましょうか?」
「ああ、それです」
魔物というのか、いるのか、良かった。
いや、良くはないが。
でも言ってみれば、君んチって幽霊いるの? って訊いたようなものだからな、くだらんジョーク扱いされなかっただけマシだ。
「森の奥に行けば、スローラビットがおります」
「どのような魔物でしょう?」
いかにも弱そうな魔物だが、知ったかぶりは禁物だ。
「ウサギの魔物でございます。
人に向かってくることをしないので、比較的戦いやすい魔物でございます」
「なるほど」
先制確定とはありがたい、スローラビット先生に稽古をしてもらうとしよう。
何もすることがないと、またぞろウジウジ悩んでしまいそうだからな。
「スローラビットをお狩りになられるのでございますか?」
「戦いやすいということなので……魔物を狩ることに問題がありますか?」
「いえいえ、魔物を狩ることに問題のあろうはずがありません」
良かった良かった、魔物はシンプルに敵、変に凝った設定はいらない。
いや、やっぱり良くなかった。
もうちょっと突っ込んで訊いてみると、「この村の者でも、数人がかりで頑張れば倒せます」ということだった。
……とはいえ、〝問題がありますか?〟とか言った後だしな。
「では、夕食まで……陽が傾いたら戻るようにします」
「ミチオ様なら楽勝でございましょう」
……いや、やばそうだったら逃げるけども。
ここがライフコッド村だったら村人基準の〝比較的戦いやすい〟は全く当てにならないが、そんなに強いとは思えないし、大丈夫だろう。
「ミチオ様、村の若者の中にも、スローラビットの狩猟がしてみたいと考えている者がございます。
できますれば、一緒に連れて行ってはもらえませんでしょうか?」
いや、それは困る。
付け焼き刃が剥がれるし……いや仲間がいた方が安全だが……うむむ。
と、考え込んでいると「もちろん、道案内もさせますので」と村長が押してくる。
初めての森の中……ぐぬぬ。
「……い、いえ、盗賊とはいえ人を殺めて気が昂っているので。
実は魔物退治というのは口実でして、1人で少し気を鎮めたいのですよ」
「なんと……申し訳ございません、気の回らぬことを」
答えに窮して、なんとも気取ったことを言ってしまった。
村長がただでさえハの字になった眉を更に歪めて謝罪してきた。
だが、こっちが弱いとばれたら厄介なことになる可能性もある。
申し訳ないが、ここは慎重にさせてもらおう。
※ ※ ※
朝食を終えて、森の中を歩いている。
幸いそれほど歩きにくい森じゃない。
村人も魔物を狩っているようなことを言っていたし、手入れされているのだろうな。
ともあれ、やっと1人になれたので、色々試してみるか。
「滔々と……、インテリジェンスカード、オープン」
ぼそっと言ってみるが、反応しなかった。
呪文は覚えていないが、〈詠唱省略〉はつけているのでなんとかならないかと思ったのだが……まあ、インテリジェンスカードオープンなんてスキルは持っていないし、当然か。
ジョブとしての村長のスキルなんだろうな。
〈ワープ〉……何も起きないな。
村長の小屋か、馬小屋にでも行けるならと思ったんだが、短距離ワープ系か?
ちょっと離れた地面を見つめて〈ワープ〉……駄目だな。
MPが足りない系だろうか*1、……まあ次だな。
……ええと、ボーナス呪文は他に、〈自爆攻撃〉、〈等価交換〉、〈メテオクラッシュ〉、〈ガンマ線バースト〉、〈エクストリームドロップデッド〉か。
試してみるか。
キャラクター設定
【ボーナス呪文】
ワープ
メテオクラッシュ
ガンマ線バースト
エクストリームドロップデッド
ボーナスポイントを調整して設定してみた。
〈等価交換〉は、何を交換するのかわからないと試すのが怖いのでやめておく。
……〈自爆攻撃〉? 俺のログには何もないな。
そうして〈鑑定〉を使いながら森の奥へ歩いていると、
スローラビット
Lv:1
ようやく第一森人、いや魔物を発見した。
膝下くらいまである大きなウサギがのっそのっそ歩いている。
というか、魔物もレベルがあるのか。
それもLv:1、これなら安心だろうか……いや、村人が数人掛かりだったか。
外していた盗賊をサードジョブに設定する……これで俺が3人分になるってことになりませんかねぇ。
……いや、そもそもLv:1の魔物も倒せないなら、この世界で生きることなんてできやしない、遅かれ早かれ野垂れ死にだ。
行け! 行こう! 行くのだ!
木陰から出る! 走る!
こっちを見た! 立ち上がった! 逃げない!
――ドッ!
盗賊の首を突いたように、ウサギに切っ先を突き入れる。
やがて魔物は音もなく煙になった。
……なんだか現実感がない、感触も……上手く言えないが妙だった気がする*2。
ウサギの毛皮
いわゆるドロップアイテムというやつだな、ますます現実感がない。
……まあ考えても仕方がない、つい剣で斬ってしまったが、今度こそボーナス呪文を試してみよう。
その後も歩き回って、5匹のスローラビットを見つけた。
多分3時間くらい歩き回ったと思う。
まだ余裕で陽は高いが……喉乾いたな。
そろそろ村に戻るか。
〈メテオクラッシュ〉と〈ガンマ線バースト〉はそもそも発動しなかった。
だが、色々試すと詠唱文が頭に浮かんできたので、設定はされているのだと思う。
MPが足りないのだろうか……せめて〝MPが たりない!。〟と表示してくれれば良いのに。
ついでに試した英雄ジョブのスキル、〈オーバーホエルミング〉も同じだ。
〝しかし なにも おこらなかった!。〟、だ。
〈エクストリームドロップデッド〉も以下同文だ。
エクストリームを日本語に訳すと、〝極端な〟とか〝極限の〟とかになると思う。
だから最小値であろうLv:1も極限値と言えると思うのだが、そもそも発動自体していない感じだ*3。
【ジョブ設定】
村人:Lv2
英雄:Lv1
盗賊:Lv2
そして盗賊のレベルは上がっても、ボーナスポイントは増えなかった。
ファーストジョブのレベルしか反映されないのか……ボーナス武器や経験値上昇系のボーナススキルはあっても、この世界で強くなるのはなかなか大変のようだ。
※ ※ ※
どうにかこうにか村に戻った。
村の裏手? だろうか、なんてことのない畑が広がっている。
村長の家とは全然違う、大分目測を誤ったが、帰れただけ良かったと言うべきか。
……というか、よくよく考えなくてもサンダル履きで森とか有り得んわ、アホか。
「これはこれは、ミチオ様」
ビッカー
<男・32歳>
商人:Lv6
「あ、ビッカー殿か、ここはあなたの畑か?」
様付けとかで呼ばれると、つい身構えてしまうな。
殿とか、時代劇かよ、今どきメールの文面くらいでしか使わないよ。
……と呑気に考えていて気付いた、そもそもこの商人の名前は開示されていたっけか、と。
「はい、私の菜園でございます。
まあ、村の者なら誰でも持っているような小さいものですが」
……いや、特に気にしている様子はないな。
いや、さっき村長に紹介されたような……どうだったか。
だが、よくよく慎重になるべきだろう、なぜか名前を知っている危ない奴と思われるより、いつまで経っても名前を覚えない間抜けと思われた方がマシだ。
「いやいや、見事なニンジンで」
「……ええと、こちらはキュピコという果物でして」
……そうだよ、ニンジンは根菜だよ。
だがこのキュピコ? はビッカーの胸の下くらいまでの高さの茎からニョキニョキと実っている。
こっちに来て一番ファンタジーな光景かもしれん、初魔物はウサギだったし。
「いずれはこの村の特産にしたいと考えておりまして、よろしければ是非お召し上がりを」
パキっと金時人参のように一際赤く色付いた実をもぎ取って、ビッカーが渡してきた。
……まあ、朝食もそれなりだったし、大丈夫か。
40年近く生きてりゃ、もっと変なものだって食べた、ハギスとか。
「では、失礼して」
……あっ、結構美味い、いやかなり美味い。
酸味の強いサクランボって感じか、見た目はあれだが、渇いた喉に染み渡るわ*4。
「いや、美味しいですな」
「おおっ、ありがとうございます」
俺の反応を見て、言う前からわかっていたのだろう、ビッカーが綻んだ。
「すみません、もう1本いただけませんか? 森を歩いたら喉が渇いてしまって」
「もちろんでございます、どうぞどうぞ」
食べながら、俺も農作業をすれば農夫になれたりするんじゃなかろうか、とか今更思いついたが……明らかに素人丸出しな発言をしてしまった後だ、やらせてくれとも言い難い。
まさか〝素人は黙っとれ〟とは言われないだろうが、趣味の家庭菜園というレベルではなさそうだし。
……うーん、まだ酒が残っているのかもしれない、頭が回転が追いついていないな。
「森の中と言いますと……おや、そちらにお持ちなのはウサギの毛皮、ウサギの肉まで!?」
その後、探り探り話をした結果、毛皮はビッカーが1個10ナールで買い取ってくれた。
どれくらいの価値かわからないが、銅貨だった。
驚いていたウサギの肉は、10匹倒して1回ドロップするかどうかという代物らしい、それなりに幸運だったようだ。
こちらは160ナールだ、すごい……のかどうかよくわからん。
「……ええと、アイテムボックスの空間があれば保存ができるのですが……。
折角ですし、ミチオ様のお夕食にされてはいかがでしょう?」
「……1つだけ持って行くのも、なんとも心苦しいですが」
そうさせてもらうか。
それにしても、アイテムボックスは食料の保存もできるのか、万能か。
その後、ビッカーはベイルの町の商人ギルドで商人になったこと、農夫は農夫ギルドでなれることなどと世間話ついでに聞き出した。
さっきロムヤが言っていた冒険者だの探索者だのはアイテムボックスがあるらしいが、町に行けばどちらのギルドもあるらしい。
そこに行けば俺もアイテムボックスが持てるのだろうか。
会話を終えてから、〈買取価格30%上昇〉を試せば良かったと気付いた。
やっぱり頭回ってない……慣れないことをして疲れてもいるだろうが、二日酔いかな。
だがまあ、食料と金を手に入れることができることはわかったから、少なくとも生きていくことはできるだろう。
あとは程々にやれば良いか……日本で、地球でそうだったように。
基本的に原作を覚えている方には不要な内容ですが、道夫君(17)に比べて道夫さん(37)は現地適応能力とかが落ちているだろう、という内容です。