加賀道夫さんじゅうななさい   作:ビーバップ八戒

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時差

 

 

   ※ここはご主人様のメモ欄なので消さないでくださ

 

   春35

    終日:ザビルを目指す

    ロクサーヌ達に作業指示(買物・石ケン作り・かまど・他ある?)

 

 

 

 

   クーラタルの街

     道夫の家

 

「あっ、おはようございます。

 ……申し訳ありません、寝坊しました」

 

 木窓を開けて外の空気を吸ってしばらく、ベッドからセリーの声がしたので「おはよう」と返事をする。

 

「今日は探索はしないから、ゆっくりして良いんだぞ」

 

 昨日はメイド2人の奉仕によるめくるめく官能の宴を……とはいかなかった、ロクサーヌの生理が始まったからだ*1

 ドラゴンもまたいで通る魔を滅する者(デモン・スレイヤー)も生理の日には弱体化するし、探索の予定がない日で丁度良かったかもしれない。

 

「いえ、そういうわけには……ああっ、パピルスが」

「あっ、すまん、陽射しはマズかったか?」

「はい、乾きすぎると破れてしまいます。

 といっても、湿気すぎてもカビてしまうのですが」

 

 サイドテーブルに広がった昨夜の成果をセリーが片付け始めた。

 セリーと2人きりという珍しい機会に恵まれたので、改めてジョブについて、それぞれのジョブの条件と派生表をツリー状にまとめてもらった。

 仕事で使うようなロジックツリーを手本に書いて、「こうまとめてはどうだろう?」と提案したところ、セリーは「家系図みたいでわかりやすいです」とすぐに呑み込んでくれた。

 

 他に、以前作ったチョークと黒板についてと、次に作る予定の石鹸の作り方を整理したりした。

 後は足りないものの相談をしたのだが……首掛けバインダーは「便利そうです」と興味を示したが、あれば良いけど別に無くても……くらいの反応だったな。

 ロクサーヌのおかげで不意の遭遇戦がない今の探索は、セリーにとっては随分マッピング作業がしやすいらしい。

 

 ……だがその後、寝室のレイアウトの相談をしたのは失敗だった。

 

 セリーの家は祖父の代までかなり裕福だったらしく、その祖父の部屋にはこの寝室と同様に暖炉があったそうだ。

 そして、暖炉の傍の安楽椅子で寛ぐ祖父の傍らで、寝転がりながら話をせがんだり本を読ませてもらったりしていたとか*2

 ……という話を聞いて、なんだか萎えてしまった。

 ロクサーヌの〝パパ〟は興奮するんだが、〝祖父〟はちょっと……孫の誕生を喜んでいたアランの顔が脳裏にチラつく。

 

 まあ、昨日はセリーとゆっくり話すことができて良かったと思おう。

 

「保管容器とかあったほうがいいかな?」

「いえ、ロクサーヌさんの戸棚を貸していただいてますので。

 ……あ、大丈夫です、ロクサーヌさんには何を書いているかは言ってませんので」

「そうか……まあ、バレてしまったらそれはそれで……ではあるんだが」

 

 できればロクサーヌも、何かやりたいことを自分で見つけてほしい。

 セリーがやろうとしていることを知れば、多分積極的に協力してくれるとは思うのだが、その場合出来上がるのは……。

 

「……ものすごい分厚い俺の伝記とかになりそうだ」

「……もしくは一大叙事詩でしょうか」

 

 いや、ロクサーヌがそれをやりたいと思うのなら素直に応援を…………悪い、やっぱつれぇわ。

 

「では、着替えて参ります」

「ああ、朝食の支度が出来たら呼んでくれ」

 

 ……安楽椅子か、探してみようかな。

 

 こうして雑談したり、ちょっとした待ち時間にゆったり寛げるようにしたい。

 在宅ワークのために奮発してお高い椅子を買っていたから、この世界のリクライニング機能もない椅子ではちょっと寛げない。

 アラフォーデスクワーカーとは、腰に爆弾を抱えているものだ。

 といっても、構造を再現できる気はしないので諦めていたのだが、安楽椅子は悪くない選択肢ではなかろうか。

 

 冬は暖炉にあたりながら、安楽椅子に揺られてホットワインでも……うん、良いな。

 そして膝の上に猫を乗せて……さすがに爺むさすぎるか? でもちょっと憧れる。

 

「……失礼します。

 おはようございます、ご主人様」

「ああ、おはようロクサーヌ。

 ゆっくり休めたか?」

 

 入れ替わりにロクサーヌが入ってきた。

 彼女はふわりと微笑みながら「はい、ありがとうございます」と頷いた後、

 

「でも、ちょっと寂しかったです」

 

 と身を寄せてきたので、軽く抱き寄せて髪と耳を撫でる。

 ……昨夜色魔を外しておいて良かった。

 

「あー……そうだ、散歩ついでにパンでも買ってこようかな、一緒にどうだ?」

「はいっ、お供いたします」

 

 ついでに安楽椅子と猫について相談してみるか。

 

   ※   ※   ※

 

「では、今日は俺はザビルを目指す……1日でどれくらい行けるかわからないが」

「はい、中継地点はこちらになります」

 

 セリーがパピルスを用意してくれた。

 ドホナ、ドブロー、サボージャ、アイエナ……うん、なんとか覚えてる。

 まあ、読み方がわからなくても、文字を見比べればなんとかなるだろうが。

 

「ハンナとカタリナは体調はどうだ?」

「はい、今のところ問題ありません」

「お気遣いありがとうございます」

 

 2人は――というか、今は俺がパーティーから抜けて、セリーを探索者にしてパーティーを組ませた。

 冒険者に〈フィールドウォーク〉をしてもらうには、俺が別パーティーに入る必要があるからな。

 

 それだけでなく、カタリナはLv5の村人になってもらっている。

 さっきロクサーヌが言ってくれたのだ「巫女は精神が上がらないようですが大丈夫でしょうか?」と。

 いつだったかロクサーヌには、色魔の〈精神中上昇〉がカタリナに抑うつ状態を和らげているのではないか、という話をしたからな。

 俺としては、MPが上がるのだから多分大丈夫だろう、と楽観視していたのだが、ロクサーヌとセリーが近くに居られる時に試しておくのは悪くない。

 

 というか、それを2人きりの時に言ってくれて助かった。

 パーティーメンバーが色魔になったおかげで体調が良くなったとか、考えたくもないだろう。

 例えば俺が十代の頃に親父にそんなことを言われたら、家出するか自殺していた自信がある。

 

「では、ハンナは装備の売却を頼む」

「かしこまりました」

 

 昨日の助平連中の装備は、妨害の銅剣以外は売ることにした。

 〈詠唱遅延〉が付与された銅の剣は初心者向けとしては優れた装備品で、パーンのような特殊攻撃をしてくるボス相手に有効だという。

 ワンドもあったから、魔法使いもパーティーにいたはずだ、結構金持ちなパーティーだったのだろうか……まあ、品性は金で買えないよって言うしな。

 

「妨害の銅剣はもう1本手に入ったら売りに出す……で良いか」

「はい、6本セットなら必ず高値が付きます」

 

 騎士団などでも人気の装備らしい。

 ばら売りなら1本で1万5千ナールほどが相場だが、一気に放出すると相場が下がる。

 しかし、1パーティー分6本セットで必要とする人に売れば、10万ナールは堅いとか。

 ルークが伝手があるらしいので、彼に売ることになるだろうか。

 

「ウサギのスキル結晶を手配いたしますか?」

「……うーん、売るためだけに銅の剣にスキル融合するというのもな」

 

 弱い武器だし、勿体ない気がする。

 〈詠唱遅延〉で上手いことやれば、スキルの発動を遅延させ続けたまま完封できる……という上手い話はないようで、魔物がスキルの発動をやめてしまうこともあるそうだ。

 となれば、〈詠唱遅延〉より〈詠唱中断〉の方が確実だ。

 実際、昨日あれからもう一度パーンと戦ってみたが、ロクサーヌがデュランダルを使えば一度もスキルを発動させることなく倒すことができた。

 

「まあ、ウサギに限らず、相場でスキル結晶が手に入りそうなら仲買人と話をつけてくれるか。

 今は、色々試してみたい」

「あのっ! ……まずはご主人様の身代わりのミサンガを用意するべきではないでしょうか」

 

 ロクサーヌが強い口調で主張した。

 

 ……そうだった、致命攻撃を身代わりしてくれる身代わりのミサンガは、もしもの備えに必要なのだった。

 ひもろぎのロッドで狩りが楽になったから、ちょっと油断していたかな。

 〈スキル結晶融合〉をするセリーには負担をかけることになるが、カタリナを〈MP小上昇〉がある巫女にすれば、ゆとりが出来るだろう。

 

「芋虫のスキル結晶だったな、多少割高でも良いから、仲買人と交渉してくれるか」

「はい、かしこまりました」

 

 そして、提案してくれたロクサーヌはまだ物憂げな顔だ。

 そうか……これから別行動で遠征することになるから、不安なのかもしれないな。

 

「まあ、今日は冒険者ギルドを渡り歩いて、MP回復する時に最寄りの迷宮の一階層に行くくらいだ。

 滅多なことにはならないだろう」

 

 ロクサーヌはじっと俺の顔を見た後、「はい」と頷いて引き下がった*3

 ……ふぅ、緊張した。

 

「ロクサーヌ達3人は、裏庭の竈造りをしておいてくれ。

 昼食の頃に戻るつもりだが、時間は前後すると思うので軽く摘めるものを用意しておいてくれれば良い」

 

 クーラタルとベイルの間でも時差があるのだから、ザビルへの道中はもっとずれるだろう。

 きっかり正午に戻れるとは思えない。

 

「あとは、石鹸作りの材料調達と黒板の追加注文、チョークも追加するか……」

 

 黒板は同じサイズのをもう1つ、今のはカレンダーとして使って、自由に議題が書き込めるものをもう1つだ。

 あとは半分ほどのお手頃サイズを1つ、これは俺の文字の練習に使いたい。

 黒板についてはセリーが前のめりで欲しがっているので、任せることにする。

 

「……黒板消しも増やしませんか?」

「そうだった、毛糸は手に入らないか?

 多分、チョークの粉を繊維で巻き込むように消せると思うのだが」

「なるほど、試してみます」

 

 結局色々と注文してしまったな。

 

「ザビルまで行くのに何日掛かるかわからんし、別に今日1日で終わらせる必要もないからな。

 くれぐれも安全優先で頼むぞ」

 

   ※   ※   ※

 

「ドホナに行きたいのだが」

「正午の定期便までお待ちになりますか?」

「いや、できればすぐに行きたい」

 

 冒険者ギルドの受付嬢がハンドベルを鳴らすと、すぐに冒険者がやって来た。

 冒険者ギルドは朝昼夕の定期便で各都市を結ぶインフラのような存在らしい。

 定期便からあぶれた客は、こうして手すきの冒険者が拾うわけだな。

 

「ドホナに行く方、他にいませんか?」

 

 ただし、定期便と料金は同じだが、ある程度運ぶ人数が集まるまで出発してくれない。

 だがそこはさすが帝都というべきか、5分程で他に3人集まったところですぐに運んでもらえた。

 もう1人集まるまで粘るより、さっさと仕事を終わらせて次の客を取りたいのだろう。

 

 一方、ドホナの冒険者ギルドには受付に人がいなかった。

 掲示板の張り紙を確認するが、次の中継地点であるドブローの名前は……ないな。

 〈鑑定〉で確認したところ、丁度同い年の冒険者がいたので訊いてみる。

 

「ドブローに行きたいのだが、ここはドホナの冒険者ギルドで合っているだろうか?」

「そうだ、しかし、ドブローは遠い」

 

 ふーむ、セリーの情報が抜けていたのかな。

 掲示板には近場の、言ってみれば隣駅の名前しかないらしい。

 

「銀貨2枚で行ける距離ではないな。

 オレは行ったことがあるから連れて行けるが……銀貨8枚でどうだ?」

「渡り4回分か」

「2枚なら、ドブローに一番近いのはシュポワールの町だな。

 だがシュポワールに行っても、次にドブローまで行けるかわからんぞ」

 

 東に行くほど栄えてないようだから、冒険者の数も減るだろう。

 もっともらしいことを言われているようだが、足元を見られているような気もするな。

 

「……このドホナとシュポワール、ドブローには、近くに迷宮はあるか?」

「ああ、どこも近くにあるぞ」

「ではこうしよう、8枚払うから、ドホナの迷宮、シュポワール、シュポワールの迷宮、ドブロー、ドブローの迷宮に運んでくれないか?*4

 

 ザビルの聖職ギルドに行く時には、セリーとカタリナの3人で行く必要がある。

 MP消費量が心配だから、こまめにMP回復しながら移動しなければならない。

 最寄りの迷宮の位置は押さえておきたい。

 

「おいおい! 5回もフィールドウォークを使えってか?」

「近くなのだろう?」

 

 男は自分が言ったことだから言い返せないらしく、盛大に舌打ちをした。

 町から町への渡り1回銀貨2枚は基本料金のような感じだが、近場ならもっと安くやっているのは、他の冒険者の様子を見てもわかることだった。

 

「ここの迷宮はフィールドウォークを使うまでもねぇ、北門を出てすぐだから、自分で歩いて行け。

 お前さんが行ってる間、オレはエールでも飲んでる、エール代も寄越せ」

 

 ……ま、いいか、それくらいなら。

 ついでに一階層の魔物を訊く、グリーンキャタピラーだそうだ。

 

「……人気がなさそうな迷宮だな」

「だから人が少ねぇのさ」

 

 なるほど、仕事が少なくて暇なのかもしれない。

 世知辛いな。

 

「じゃあ行ってくる」

「おう、ゆっくりで良いぞ」

 

 他の乗客が来ないか、待ちたいのかもしれないな。

 言われた通り、迷宮はすぐに見つかった。

 中に入って近くの小部屋を確認してから、歩いて冒険者ギルドに戻る。

 その間、他の冒険者も探索者も見当たらなかった。

 

 いや、冒険者はいるな。

 

――帝都に行く方、他にいませんか?

 

 既に4人集まっている。

 あと1人来たら出発するのだろう……あ、集まった。

 うーん、さすがは帝都だな。

 

「……戻ったか、じゃあ行くぞ」

 

 結局、ドブロー方面に行く他の乗客は見つからなかったようだ。

 俺が声を掛けなかったら、帝都行きの便は彼がやっていたのかもしれない。

 心なしかしょぼくれてるおっさんと2人パーティーで〈フィールドウォーク〉の黒い幕を潜り抜ける。

 

 シュポワールの迷宮は街から多少距離があるらしい、すぐに「行くぞ」と言われた。

 次の瞬間には森の中だ、目まぐるしい。

 

「シュポワール南の森の迷宮、一階層の魔物はエスケープゴートだ」

 

 あの魔物、初心者探索者に倒せるのか?

 体感、残りHPが半分以下になると逃走(エスケープ)するから、決定打がないと確定で逃げられるような……。

 

「では、ここも人気がないのではないか?」

 

 迷宮の入口に探索者がいないから、探索者ギルドが管理している迷宮でもないようだ。

 

「穴場ってとこだな、エスケープゴートは数で囲めば割かし安全に狩れる。

 それに、あいつのスキル結晶は高値で売れっからな」

 

 なるほど、色々考えられているらしい。

 ここで難儀した初心者探索者同士が、パーティーを結成して高みに上っていくこともある……そんな話を聞かされた。

 英雄譚の序章のようで、想像すると結構楽しい。

 ……ただ、生存性バイアスでコミュニケーション弱者は淘汰されるか余所に行ってるんだろうな、と頭の片隅で思ってしまう俺は本当につまらん男だ。

 

 ここドブローは街のすぐ近くに迷宮があるようで、またおっさんに歩いていけと言われた。

 終点だからもうその必要はないはずだが、またエール代を要求された。

 ……まあ講談を聞いた代金と思えば良いか。

 旨そうに「プハァッ!」と息を吐くおっさんを尻目に、冒険者ギルドを出る。

 

 ……うっすらバナナのような香りがする、多分ヴァンツェン*5だな、久しく呑んでない。

 とはいえ、これから迷宮に行くのに酒を呑むわけにはいかない。

 臭いで絶対ロクサーヌにバレるし。

 

 そんなことを考えながら迷宮に行って戻ると、さっきはビールに気を取られて気づかなかったが受付に人がいた。

 一応掲示板も確認しておく。

 サボージャの名前は……うん、今度はあるな。

 

「サボージャに行きたいのだが」

「正午の定期便はさっき行ってしまいましたので、担当の者が……」

 

 いつの間にか正午過ぎになっていたらしい、時差のせいか。

 

 ……なるほど、東の方が人が少ないのってこれが原因かな?

 朝昼夕の定期便は、多分どこの冒険者ギルドでもやっているのだろう。

 冒険者は探索者Lv50になるような上澄み層なのだから、そういう安定した仕事でも斡旋しないと冒険者をギルドに常駐させられないだろうからな。*6

 だから西へ西へ行く場合は、定期便を乗り継いで行けば値段交渉の必要もなく流れ作業で運んでもらえるが、東に行く場合は定期便だけでは1日3駅しか進めないことになる*7

 そして乗客が集まらなければ冒険者も仕事をしたがらないから、ますます人が減ると……悪循環だな。

 

「定期便以外の冒険者は……いないようだな」

 

 さっきのおっさんも、もう帰ったようだ。

 

「もう少しすれば、担当の冒険者が戻ってくるはずです、あとは交渉次第となりますね」

「わかった、ありがとう。

 出直してくるとしよう」

 

 さて、クーラタルもそろそろ昼だろう、一度戻るか。

 〈フィフススジョブ〉をつけて、探索者以外を英雄、魔法使い、色魔、僧侶のMP上昇効果があるジョブで固める。

 そして〈MP回復速度二十倍〉を設定して、MP特化のビルドにした。

 

 どれくらいの距離があるかわからないので、一応各駅停車で帰る。

 帝都を挟んでベイルとクーラタル間は何度となく移動しているので問題ないとは思うが、念の為だ。

 中央線だって東京―高尾間と高尾―甲府間では、後者の方が駅間距離は長くなるからな。

 

 そうしてクーラタルの自宅に戻る。

 ロクサーヌに確認すると、まだ正午手前だそうだ。

 帰り時間を考慮すると、ドブローとの時差は1時間弱といったところだろうか。

 

「すみません、簡単なものですが」

「いや、充分だ。

 ありがとう、ロクサーヌ」

 

 朝買ったパンに、香味野菜のシェーマ、根菜の酢漬けの輪切り、ベーコンを挟んだものだ。

 ……俺も昼間っからエールをがぶ飲みしたい。

 

「……ん? なんか焦げ臭くないか?」

「今、セリーが竈で燻製を作っています。

 保存が利くようになりますし、今後外で作業しているのを見咎められても、料理をしていると言えますから」

「なるほど、やることに卒がないな。

 楽しみにしていると、セリーに伝えておいてくれ」

 

 竈で燻製か、キャンプ動画とかで見たことがあるな。

 ベーコン、ソーセージ……いや、ヴァイツェンに合わせるならもっとあっさりしたものの方が……。

 

「なにか食べたいものがありますか?」

「そうだな……ゆで卵とか?」

「伝えておきますね」

 

 いぶりがっことか久しぶりに食べたいけど、さすがに無理だよな。

 ……いや? コイチの実のふすまは多分麦ぬかのようなものだと思うから、もしかしていけるか?*8

 寒い季節になったら試してみよう。

 

 ……それまでに通常のぬか漬けを実験してみるか。

 在宅勤務になった頃に試したことがあるが、失敗してセメダインみたいな味になってしまった。

 こっちは気候が乾燥しているから、俺でもできるかもしれない。

 それに、失敗したら全部迷宮に投棄してなかったことにしてしまえばいい、そう思えば気楽なものだ。

 

 そんなことを考えながら、その日はアイエナまで行くことができた。

 帰りは1駅飛ばしで〈ワープ〉を使い、MP消費量に問題がないことを確認した。

 

*1
 小説及び漫画版ではカットされていますが、Web版では春の34日にロクサーヌが生理になるイベントがあるので本作では採用します。

 道夫さんも年だし、たまには休みたいでしょう。

*2
漫画10巻の第二十二章・禁欲攻撃⑥の扉絵のイメージです。

*3
 原作道夫君はロクサーヌとパーティーを組んだ時点で既に1人で迷宮探索してレベルが上がっている状態でしたが、本作道夫さんは初迷宮からロクサーヌと一緒です。

 また、言うまでもなく加齢分もあるので、道夫さんの近接戦闘能力に対するロクサーヌの信頼度は、原作よりやや低いものになっていると思います。

*4
 このおっさん冒険者は、原作書籍版5巻で道夫君にも渡りの代金銀貨8枚を持ちかけた冒険者です。

 道夫君の値切り交渉ですぐ銀貨5枚に値下げしているので、ふっかけているのは間違いないでしょう。(結局道夫君は信用できずにシュポワールまでしか頼んでいません)

 技術系サラリーマンだった道夫さんは無茶な納期を押し付けられたり人件費削られたりと苦い思いをした経験も豊富でしょうから、値切り交渉自体したがらないと思います。

 ただ、払った分だけの仕事はするように要求はするでしょう。

 原作道夫君の方が財布の紐はしっかりしていると言えるでしょうが、道夫さんの場合は確実に他の冒険者を捕まえられるかわからないので確実性を取っています。

*5
 一般的な大麦麦芽を用いたビールと違い、小麦麦芽を50%以上材料とするドイツの伝統的なビール。

 バナナのような香りがする、苦みが少ないフルーティーな味わいが特徴。

*6
 本作オリジナル(捏造)設定。

 原作でははっきり定期便があることを明記しているのはザビル―ペルマスク間だけでしたが、本作ではこのような設定とします。

 理由は左記の通りです。

*7
 本作オリジナル(捏造)設定。

 ただ、時差の概念が理解されていない(これについてはセリーが知らない以上、確定情報とします)ことと上述の朝昼夕の定期便設定とを組み合わせると、このように発展するのではないかと思います。

*8
いぶりがっこ(もしくはいぶり漬け)は燻製にして干した大根のぬか漬け。




この世界の一般冒険者はどんなことをしているのかな、とか考えてるの楽しいです。
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