加賀道夫さんじゅうななさい   作:ビーバップ八戒

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掲示板の使い方とか、熟れてガイドラインとかできるまではグダグダになりがち。


委任状

 

 

   ※ここはご主人様のメモ欄です。

    今日の昼食は私が担当します。(ロクサーヌ)

    ↑お願いします。

     チョークがなくなってきたので作り足します。(セリー)

    ↑カタリナと手伝います。今度から伝言は注意書きの上に書くようにしましょう。(ハンナ)

 

   春40日

    AM:ボーデ PM:世に平穏のあらんことを

 

 

 

 

   ボーデ 宮城?

 

 ……はて、ここはどこだろう?

 〈ワープ〉を使った先にあるのは、見慣れない場所だった。

 どうやら、城内のロビー……だろうか。

 

 3日前、災害救助の際に〈フィールドウォーク〉で連れられてきた時は、公爵のエンブレムが刺繍された旗か何か目印に、城外の仮称:サンチョの家に出た。

 その時と同じ布が、今俺が出てきた壁に掛けられている。

 となると、空間座標じゃなくて、目印が今ある場所に飛ぶのか……何か悪さ(グリッチ)ができそうな仕様だ。

 

「何か御用でしょうか?」

 

 声に慌てて振り向くと、イケメンがいた。

 ……いや、エルフだ、エルフの騎士だな、騎士団員だろう。

 

「失礼した、騎士団長のゴスラー殿とお約束している、ミチオという者なのだが」

「はい、洪水の時にご協力いただいた冒険者の方ですな。

 団長から、話は聞いております」

 

 ゴスラーから預かったワッペンを見せると、あっさりと話が通じた。

 相変わらずこの城の人々は手際が良いな。

 ロビーから応接間のような部屋に案内された。

 

「団長を呼んで参りますので、こちらでしばらくお待ち下さい」

「よろしくお願いする」

 

 部屋の窓から外を眺めると、若葉が芽吹いた梢が見えた。

 クーラタルより大分日が高いな、こないだは感じなかったが時差があるのだろうか。

 

 ……しまったな、朝に来てくれと言われていたのに、遅かったかもしれない。

 正確な時計がないこの世界の人々は、朝昼夕――つまり日の出正午日の入りを目印をして行動する。

 〝朝に来てくれ〟とは、〝日の出に来てくれ〟という意味だったと考えるのが妥当だ。

 

「おおっ、冒険者殿ではないか」

 

――ヒュッ!

 

 変なところから空気が出た。

 振り向けば公爵閣下のイケスマイルが光り輝いていた。

 光魔法イケフラッシュは外の陽射しより眩しい、すみっこに逃げたい。

 

「ゴスラーはまだ来ておらぬのか、まったく」

 

 まったくだ、何やってんだよ団長!

 ……と、ここで俺が頷くわけにもいかない。

 

「騎士団員の方が、今お呼びしているそうで……」

 

 公爵は「ふむ」と鼻を鳴らすと、

 

「ここでは気楽に話もできんな、ついて参れ」

 

 ……勘弁してくれ、いきなり社長室に通されるようなもんじゃないか、俺は全然気楽にできない。

 なんで俺ばっかりこんな目に。

 無情にも髪とマントを棚引かせてさっさと歩き出す公爵にくっついて部屋を出る。

 一縷の望みをかけて廊下の向こうを見ると、さきほど取り次いでくれた騎士団員が早歩きにこちらに来ていた。

 

「あっ、お待たせして申し訳ありません、ただいま団長が――閣下!?」

「あの、閣下のお部屋に行くことになったので、ゴスラー殿を――」

 

 俺の言葉を聞くまでもなく、騎士団員は慌てた顔で走り出した。

 怜悧なイケメンフェイスも形無しだ。

 

 ……察するに、ゴスラーは公爵を探して遅れているのではなかろうか。

 だが当の公爵はさっさと俺に会いに来たと。

 なんで公爵がそんなにフットワークが軽いんだ、武器を売りに来ただけなのに……。

 

「日が昇ったらお出掛けになるかと思い、クーラタルから早めに来たつもりだったのですが、遅かったでしょうか?」

「問題ない、この季節であるからな。

 もう間もなくすると、明るくなってから目覚めるようになる」

 

 ……ああ、時差じゃなくて緯度か。

 南が温暖で北が寒冷なのだから、ここは北半球なのだろう。

 ならば春から夏にかけては、北に行くほど日の出が早い、北極圏なら白夜となる。

 ボーデとクーラタルがどれほど離れているかわからないが……あとは標高も関係しているかもしれないな*1

 

「先だってはその方にも苦労をかけた。

 雨も上がったし、水位も落ち着いてきている、もう洪水の心配はあるまい」

「それはなによりのことです」

 

 公爵がプライベートルームの扉を開けて、中に入った。

 会話で時間を稼ごうとしたのだが、ゴスラーは……まだか。

 

「まあ座れ、今日は妨害の銅剣を持ってきたのであったか」

「はっ」

 

 あの、ほれ出せよ、って感じで手をテーブルに差し伸べられましても……一応武器なんですけど。

 

「――、アイテムボックスオープン」

 

 卑しき小市民の身で公爵閣下の意向に逆らえるはずもなく……妨害の銅剣を5本、テーブルの上に並べた。

 昨日、ハンナが夜なべして手入れしてくれたからピカピカだ。

 重曹酢酸クエン酸を使えば10円玉も輝きを取り戻すのだ。

 

「どのような経緯で手に入れたのだ?」

「はっ、ベイルの迷宮の七階層のボス、パーンに負けた探索者達が遺した物です」

「あいつか」

 

 ハンナも言っていたが、迷宮の下の方では割と登竜門のような扱いのボスらしい。

 全体魔法攻撃をしてくるらしいからな。

 公爵も顔をしかめているから、苦労した思い出でもあるのかもしれない。

 

「うむ、綺麗なものだな、10万ナールであったかな?」

「……あの、武器鑑定を致しますよね?」

 

 なんで〈鑑定〉を持っている俺がこんなことを言わなければならないんだ*2

 

――ドクンッ!

 

 …………〈鑑定〉持ってないよな?

 それに騎士がインテリジェンスカードを見れるのだから、恐らくその上級職であろう聖騎士ともなれば、あるのだろうか。

 いや、ハンナの話では先祖が初代皇帝のパーティーメンバーだったというし、もしかして……。

 

 あるいは、俺みたいな転移者じゃなくて同郷出身の転生者とか。

 貴族なのにやたらと気安く接してくるのも、身分制度が崩れた現代の常識が身についているからではないか?

 こういう距離感のバグってる陽キャは、稀によくいる気がする*3

 

 ……いや、そもそも話しかけた――話しかけてしまったのは俺からだし、ゴスラーが俺の名前を言う前からこのノリだったな。

 考えすぎ……か?

 

「ああ、そうであったな。

 まあ、ゴスラーと一緒に来るであろう」

 

 ……ただのせっかち……だよな?

 まさか公爵に面と向かって詐欺を働く不届き者がいるはずもないと高を括っているだけだよな?

 

「それで……」

「はっ」

 

――ドクンッ! ドクンッ!

 

 狭い部屋だ、手を伸ばせば壁に届く。

 立ち上がって〈オーバーホエルミング〉で走って〈ワープ〉……問題ない、行ける。

 

「それだけか?」

「……は?」

「いや、他に困っていることがないものか、とな」

 

 ……胡麻の油と百姓は絞れば絞るほど出るものとはいうが。

 俺はなんだろう、道化師かな。

 ……困ったことにあるんだよなぁ、頼み事。

 

「……はっ、であれば失礼して。

 東部諸侯の御歴々は、贈り物にペルマスクの鏡を用いることがあると小耳に挟みまして」

「ペルマスクの鏡か。

 確かに、贈り物として領内の者に下賜するには良い品だ」

 

 下賜するのか、とすると装飾のついている物の方が良いだろうか。

 まあいいや、しょうがない。

 

「先日ペルマスクへ行ったところ、貴族からの委任状があれば枠などをつける前の鏡本体を売ってくれるとのことでした。

 これならば、ある程度安くなるので」

「ほう……前に余と会ったのは確か3日前であったが、その後に行ったのか?」

 

 事前に想定した問答ではなかったので一瞬戸惑ったが、その通りだったので「はい」と頷く。

 すると、公爵は喉を鳴らすように笑った。

 

――コン コン

 

「失礼いたします! 閣下ッ! ……閣下?」

「おおっ、ようやっと参ったか、ゴスラー。

 ……余の勝ちだな」

 

 部屋に入ってきたゴスラーが、俺と勝ち誇った表情の公爵を見比べて困惑している。

 後ろにいるのは……比較的若いエルフの武器商人だ、こちらも戸惑っている。

 だが多分、一番狼狽しているのは俺だ。

 

「この冒険者殿はな、ペルマスクに不自由なく行けるそうだ」

「ペルマスクまで」

 

 不自由なくなんて言ってないぞ、勝手に付け足すな。

 ……まあ、話の流れ的にそう取られても仕方ないか。

 

「ぼ、冒険者ギルドの定期便と組み合わせて、それに2日も使ってようやくという形ですが」

 

 実際、定期便と組み合わせれば問題なく行けると思うんだがな。

 俺は東西の時差だけを考えていたが、ハルツ公領からまっすぐ南に行けば朝の定期便に順繰りに乗り継いで行けそうだ。

 そこから東へ……とはいえ、時差について理解が進んでいないようだから、難しいのかもしれない。

 多分、緯度に対する理解も同じようなものだろうしな。

 

 ……まあ、そもそもそんな都合の良い位置に冒険者ギルドがあるかもわからないか。

 それに、高緯度地域では別の理屈で定期便が出ているのかもしれない。

 白夜の時とかどうするんだって話だしな。

 

「いえいえ、それでも大したもので……ボーデからペルマスクまで行ける冒険者は騎士団にもいません」

「ふふん、さすがに優秀な冒険者であろう。

 余が見込んだだけのことはある」

 

 ゴスラーは素直に感心している。

 ……ところで、さっき公爵が言った〝余の勝ち〟ってなんだ?

 俺がおもしれー男かどうかで賭けでもしたのか?*4

 

「……あの、とりあえず妨害の銅剣の鑑定をお願いできませんか?」

 

 さっきから所在無げに視線を巡らせている武器商人が視界に入ると切なくなる。

 多分、この城の人々はこのせっかちな公爵に振り回されているのだろうな。

 ゴスラーのほつれた髪の毛からも、日頃の苦労が窺えるようだ。

 

 その後、妨害の銅剣を引き換えに10万ナールを受け取った。

 〈買取価格30%上昇〉は使っていないが、多分1本辺り幾らという交渉をしないと〈カルク〉を使わないから、どのみち意味がなかったろうが*5

 まあ、これ以上は貪るというものだろう。

 

 というか、さっさと済ませて帰りたい。

 この部屋にいるだけでスリップダメージで神経(MP)がすり減る気がする。

 ……ロクサーヌ、僕はもう疲れたよ。

 

「それにしても、鏡本体だけか」

「タルエムで枠を作り、コハクで飾りつけては如何でしょう。

 我が領の特産としてもよろしいのでは」

 

 武器商人との取引の間、よくわからん単語で公爵とゴスラーが盛り上がっている。

 そして、うむうむ、と頷いていた公爵が突然こちらを見て、封蝋をした書状を渡してきた……ところを、ゴスラーがブロックする。

 

「ミチオ殿、値段は如何程になりましょうか?」

「鏡を手に入れるには貴族からの委任状が必要ということで、まだそこまでは……」

「うむ、書いておいたぞ」

 

 公爵のフットワークが軽い、手も軽い。

 だが、その書状の価値は下々の者には重すぎるということを、どうかご高配賜りたい。

 ……ゴスラー殿に委任状をもらえれば良いと思ってたんだがなぁ。

 

「値段については、装飾のついていない鏡なら1万数千ナールというところでしょうか。

 さすがに2万ナールを超えるようだと困りますが……」

 

 そこまでいかないのであれば、というところだった。

 だが、枚数は多めだ。

 業者に渡して枠を発注する必要があるということで、当座は10枚ほど、大きさは様々なバリエーションが欲しいという。

 商品サンプルのようなイメージだな……え、ってことは今後も鏡の取引は続くのか?

 

「一度にどれだけ運べるかわかりませんが」

「もちろん、何度かに分けていただいて構いません」

 

 そこまで話したところで、書状が渡された。

 不思議だ、いつの間にか2枚に増えている、公爵は増殖バグの使い手か?

 

「ペルマスクに行かれるのでしたら、コハクを売るのも良いかと思います」

「なるほど、(かさ)が小さいと」

「はい、我が領の特産です。

 ペルマスクでの相場は知りませんが、安く買い叩かれるようなことはないと思います」

 

 そら公爵の書状を持った人が現物持ち込んだらそうよ。

 思った以上に話が膨らんでしまったが、有るに越したことはないな。

 ……というか断ることなんてできん。

 

「ボーデにある業者をご紹介しましょう、当家とも取引のある、確かな業者です。

 冒険者ギルドのすぐ隣にあります」

 

 といっても、ボーデには城にしか来たことがないな。

 まあ、誰かに聞けばすぐわかるか……と思っているところで、ゴスラーも気付いたらしい。

 

「ああ、ミチオ殿は城に直接来られたのでしたな、騎士団員に案内を――」

「て、手前が案内しましょう。

 か、帰り道ですから」

 

 ……武器商人の人、まだいたのか。

 

 

 

   クーラタルの街

     道夫の家

 

 城から戻って、相談したいことがあった俺はそっとハンナを玄関に呼び出した。

 彼女たちには俺がいない間、チョーク作りをしてもらっていたが、ハンナ1人抜けるくらいは問題ないだろう。

 

 別に3人に聞かせても問題はないのだが、ロクサーヌに先入観を植え付けるのは何となく嫌な予感がする。

 それに、直接口にはしていないがセリーはエルフのことを仲買人と同じくらい警戒……というより毛嫌いしているようだし。

 

「貴族が鑑定を使うことができるか、でございますか?」

 

 無論、この場合の鑑定とは、〈武器鑑定〉や〈防具鑑定〉、はたまた三国志の許劭(キョショウ)*6のような歴史上の偉人がやった人物鑑定のことではない。

 

「公爵家の秘伝などでは、手前程度には到底知る由もないことですが……。

 御主人様がそのような懸念を持たれた経緯を教えていただくことはできますか?」

「ああ、そうだな……」

 

 先日の緊急依頼の時から、公爵とのやり取りを順を追って振り返る。

 できるだけ客観的に、極力個人的な所感は排して。

 

「……思うに公爵閣下は御主人様のことを、極めて優秀な冒険者でお忍び姿の公爵閣下のことを見分けることが出来る者*7何処(いずこ)かの御家中(ごかちゅう)……それも公爵家と親交のある御家(おいえ)の、名のある冒険者とでも思われているのではないでしょうか?」

「御家中……騎士団員とかか」

「もしくは傍流の者や次男、三男以降の部屋住みなどでしょうか。

 ……そうした人物が、他家の災害救助依頼に応じて、加えて常ではない姿の公爵閣下を見つけて挨拶をする……」

 

 なんだか時代劇みたいな話になってきたぞ。

 だがわかりやすい、俺の脳内の公爵閣下が、宗十郎頭巾*8姿で城を抜け出して城下を散策するイメージが浮かぶ。

 

 そして、そんな――例えば他家におけるゴスラーのような者であれば、やんごとなき身分の御歴々がお忍びで城下を行幸したりする姿も見知っているだろう。

 つまり俺は、そんなところで目立つ行いをしたわけで……。

 

「売り込み中の冒険者とでも思われたか、間抜けな話だ」

「そこまで卑下なさることは……」

「さっきもな、妨害の銅剣を手に入れた経緯を訊かれて答えた、ベイルの七階層で拾ったと――」

 

 言い訳が思い付かなくてそのまま話したが、ちょっと身構えてはいたのだ。

 緊急依頼の件で、既に高レベルの冒険者と思われていたはずだからな、そんな階層で何を? と言われやしないかと。

 その場合は、ベイルの迷宮は新しい迷宮なので……と言えばおかしくないだろうと思っていた。

 

 そう、全くおかしくない。

 

「――むしろ、迷宮討伐を狙う野心的な冒険者と思われたのではないだろうか」

「それは……いえ、そのようなことはないかと思います。

 ベイルの迷宮は町のすぐ外なのですよね? 迷宮を討伐して諸侯に列せられるのは、領外の迷宮の場合ですから。

 ……一応の御確認ですが、御主人様はベイルの領主閣下とご関係は」

「一切ない」

 

 それに関してはいくら探られても怖くもなんともない。

 ……とりあえずは問題ないか。

 

 改めて考えてみると、公爵は災害救助に協力してくれた礼として、君の売り文句(プレゼン)を聴いてあげるよ? みたいな感じだったのではないだろうか。

 なのに俺は仕官を断った。

 だから、じゃあ困ったことでもあるのかな? と訊いてみたら、今度は妨害の銅剣だのペルマスクの鏡だのの取引を持ちかけられた、と。

 

 ……もしかすると、俺以上に公爵が困惑していたのかもしれないな。

 

 だが……悪くない、なにしろ商売の話しかしていないからな。

 騎士として仕えろと言われても困るが、御用聞きの商人くらいの距離感でお付き合いするなら幾分気楽だ。

 もちろんレベルは上げたいが、色々な場所に行けるようにしておくのも良い、いざって時に逃げ出せる場所があるだけで随分違うからな。

 そのついでに、手に入った文物を公爵の下に持っていくのも良いだろう。

 

 なんなら石鹸や黒板とチョークも、「遠国で手に入れたものでして」とでも言って持ち込んでも……いや、結構儲かりそうな気はするが、さすがにやりすぎだろう。

 

「御心は晴れましたか?」

「ああ、助かった。

 1人で考えていると、悪い方へ悪い方へと考えてしまっていけない」

 

 楽しいことを考えよう。

 

「なんにせよ、鏡も手に入りそうだ、なにしろ公爵閣下の委任状だからな。

 ……姿見は、この玄関に置こうかと思う、2階から下りる時と、出かける時にも見やすいしな」

「さてさて、ロクサーヌさん達にもお伺いしなければ」

 

 何気なく言った後で、傷跡や火傷痕があるからもしかして鏡は嫌だろうか、と今更になって気付いたが……うん、嬉しそうだな。

 まあ、そういう痕跡を上手く隠せているかとかも確認したいだろうしな。

 外回りの仕事を頼んでいるハンナは特に。

 

 ……となると、ロクサーヌ達とハンナ達は部屋が別だし、いっそのこと手鏡は2つ、別々にあった方が良いかな。

 

「あとは、脱衣所にもあったほうが良いかな?」

 

 ひげ剃りは床が汚れるから風呂でやる派の俺からすると、脱衣所に鏡がある必要性がよくわからんのだが、女性陣にとっては違うかもしれない。

 そのひげ剃りも、こっちではロクサーヌにやってもらっているから鏡はいらない。

 

 ……いや、風呂場に鏡があっても良い。

 湯船に浸かりながら、色んなアングルのロクサーヌとセリーが見れる。

 

 いやいやいや、だったら寝室に置いても良いな。

 特に理由はないが、贅沢品なんだから主人たる俺の部屋に置いたって良い。

 特に理由はないが、ベッドサイドに置くのも良いかもしれない。

 特に理由はないが――

 

 

   【ジョブ設定】

      探索者:Lv35

       英雄:Lv33

     魔法使い:Lv35

       僧侶:Lv20

       色魔:Lv30

     防具商人:Lv26

       村人:Lv10

       盗賊:Lv15

       商人:Lv30

       剣士:Lv15

       戦士:Lv21

    薬草採取士:Lv26

       農夫:Lv1

      料理人:Lv24

     奴隷商人:Lv1

     武器商人:Lv1

     錬金術師:Lv28

 

 

 ――危ない危ない、疲労回復のために滋養強壮薬(色魔)を付けているのを忘れていた。

 

「ご主人様、お食事の用意ができました」

「チョーク作りも、あとは乾燥させるだけです」

 

 俺のお気楽極楽な声を聴いて話が終わったと察したのだろう、ロクサーヌとセリーが台所から出てきた。

 

「では、食事をしたら鏡を買いに行く話をしようか」

 

 なにしろ10枚以上は仕入れなければならないから大変だ。

 どこに置くとかはその後する話だ、色ボケている場合ではない。

 

*1
 クーラタルとボーデの距離は不明ですが、原作で中継地点を挟んでいる様子がないので恐らくあまり離れていない……割には緯度や寒暖差がかけ離れているように思います。

 シンプルに最初にボーデに連れてきたエルフの冒険者が高レベルであり、道夫君自身のMPも増えているため中継地点を必要としていないという可能性もありますが、本作では標高差の影響も大きく距離自体はそれほど離れていないものとします。

*2
 説明しよう! 元エンジニアの道夫さんは、納品物をちゃんと検収してもらえないと不安になるのだ!

 問題というのは大抵、発見が遅れれば遅れるほど大問題になるが故に!

*3
普通はいないがいるところにはいっぱいいるの意。

*4
 原作の道夫君は、ゴスラーが一介の冒険者に話しかけた公爵を窘めたのに対し、公爵があの冒険者は優秀だと反論したという、いわば売り言葉に買い言葉ではないかと推測しています。

 原作で委任状を受け取った時、ゴスラーは〝ミチオ殿〟呼びから〝冒険者殿〟呼びになっていたことを考えると、ゴスラーにとって道夫君はあまり印象に残る人間ではなかったと思われるので、この推測は当たっているでしょう。

*5
原作の道夫君は、ルークときっちり1本当たりの値段交渉をすることで〈買取価格30%上昇〉の対象としている。

*6
 中国後漢末期の人物批評家。

 その影響力は絶大で、彼に称賛された者は出世し、称賛されなければ没落の道を辿ったといわれる。

 一方で、私情を交えた不公平なものだという批判もある。

*7
現時点では未登場ですが、お忍び公爵の見分けがつく上に帝国解放会のメンバーではないこと、というのも興味を惹いた理由の1つでしょう。

*8
 時代劇でお忍びの殿様がするようなイカみたいな形をした頭巾。

 歌舞伎役者の初代澤村宗十郎(1685年-1756年)が用いた姿がイカしているということで武家を中心に流行した。




 原作よりイベント進行を早めた結果、ペルマスクと2日で往復できると思われてしまいましたが、ペルマスクに行けるだけで驚かれているので、本作ではそれでも並の冒険者ではできないことだと仮定して進めます。
 そんな冒険者がごろごろいるなら、鏡やコハクを使った商売をやっている冒険者が他にもいるだろうと思われるためです。
 冒険者ギルドの渡りの運賃や、水害時の日当(1000ナール)のことを考えると、冒険者といっても実入りはそれほどでもないようですから。
 実際、水害時に公爵領内の村と城の移動で苦戦している冒険者がいるくらいなので、長距離移動は苦労が伴うと思います。

 なお、原作の道夫君は委任状を受け取ってから毎朝鏡を届けてるようなので、更にやべーやつだと思われていることでしょう。
 ただし、1枚ずつ届けているので1人で運んでいる(さすがに他人を運ぶまでことまではできない)とも思われているかもしれませんが。
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