1~5話(プロローグ/初陣/ソマーラの村/戦利品/ベイルの町)について、説明不足な箇所の加筆、不要な部分の添削を行いました。
――レベルを教えてくれるかな?
「25Lvです」
――随分高いね、冒険者なの?
「村人です」
――村人? あっ……、ふーん。
大きなソファーに座って、質問に答えているのは、筋骨隆々たる体躯を持つロムヤだった。
身体にぴったりつく服でもないのに、三角筋が盛り上がっているのがわかる。
……はて? 俺は何をしているのだろう。
――こういうビデオに
「いや、前もありますよ。ホモから逃げ切ったら10万円ってやつ」
――それ凄いね。逃げ切れたの?
「5人くらい捕まえたよ」
その声は耳元から聞こえた。
身体が動かない! 微動だにしない!
「サンダル泥棒は捕まえなきゃあ、……なァ!」
首に、上腕二頭筋が、食い込む、息……が……、気が……とおく……。
※ ※ ※
「――ゼハぁッ! ……はぁ、はぁ、はぁ」
飛び起きて、周囲を見渡す。
暗い! どこだここは!?
「ミチオ様、ミチオ様……失礼いたします」
村長だ。彼は入ってくると、窓の木戸を開けて採光してくれた。
ここは村長の家、昨日通された客間(?)だ。
「朝食をご用意いたしておりますが、お加減はいかがでしょうか?」
「いや、お騒がせして申し訳ない。
大丈夫です、すぐ支度しますので」
村長は心配そうに振り向きながら部屋を出ていった。
どうも昨日の会話もあって、村長には余計に心配を掛けてしまっている気がする。
果てしなく下らない悪夢を見ただけとは言えない。
……どうにも、村長とは巡り合わせが悪いな。
こちらが脛に傷持つ身であることが悪いのだが。
昨日に続いて、オートミールとサラダ、チーズの朝食をいただく。
まあ、現代地球基準でも毎日毎食別メニューにするのが特別贅沢じゃないのは日本くらいのものらしいしな。
技術レベルも考えれば、こんなものなのだろう。
……だが昼食は欲しいな。
一昔前の学生のような、海苔弁や日の丸弁当でも良いから欲しい。
在宅勤務になって運動量が減ったから、食い溜め出来なくなった分だけ間食が増えるんだ。
そんな思いが通じたわけではないだろうが、村長夫人が焼きたてのパンを持たせてくれた。
その上、村長は丁重に礼金を渡してくれる、まさに至れり尽くせりというやつだ。
……町についたら更に懸賞金まで貰えるのか、勝ったな、風呂入ってくる。
「ミチオ様、おはようございます」
「おはよう! ミチオさん!」
昨日、盗賊の装備を検品したのと同じ場所で、ビッカーと
馬車の荷台にその装備が積み込まれている、装備以外の物資は、町に売りに行く村の産物だろうか。
その後ろには生け捕りにされた盗賊と
……いや、これも商品と言うべきか、割り切ろう。
それにしても、
やたらへりくだってくる村長も特に咎めていないし、謎翻訳の都合で〝様〟になっているだけで、単語としては同じで、ちょっと訛っているだけなのかもしれない*1。
「今日はよろしくお願いする。
確か、目的のベイルの町までは3時間ほどということでしたか?」
「そうですな……、まあ順調ならば、でございますが」
ビッカーは苦笑いして〝商品〟に目配せする。
確かに、ストライキでも起こされたらコトだな。
「まあ、大丈夫さ!
よし、おまえら、出発するぞー!」
ベイルへの街道
「×××!」
「×× ××××!」
「×××× ×××× ×××!」
……またか、これで3度目だ。
後ろから盗賊達の推定不平の声と、ロムヤの怒声が響く。
隣に座るビッカーと目があう、切なそうだ。
「ビッカーさん、ちょっと歩いてくるよ、……揺れで尻がね」
「私は尻の痛みは慣れましたが、最近腰が……」
お互いに苦笑しながらするこの会話も、似たようなことを3度目だ。
だが苦労を分かち合うと距離が縮むらしい、ビッカーの反応も随分気安いものに変わってきたと感じる。
30過ぎの男が二人、何かが起きることもなく、通勤列車みたいに完全な赤の他人ならどうでもいいが、中途半端に知り合いだと息が詰まる。
だが、こうしている間も〈鑑定〉は忘れない……おっと。
「スローラビットがいるな」
「――!? わかるのですか?」
「まあ、昨日倒したのでな」
木や草や岩、馬と一緒に移動しているダニとは別に目に入ってきたものがあった。
スローラビット
Lv:1
俺の言葉に緊張が走ったのは気の所為ではないだろう。
「ス、スローラビットなら安心でございます。そのまま通り過ぎてしまいましょう」
「いや、しかし……」
俺が言いたいことがわかったのだろう、ビッカーが苦々しい顔をした。
スローラビットは積極的に襲いかかってこない魔物だが、状況の変化を願って、破れかぶれでちょっかいを出す輩が出ないとも限らない。
「先行するので、後ろからついてきてくれるか」
後ろに睨みを利かせているロムヤを見ると、重々しく頷いてきたので頷きを返す。
と、まあもったいぶるようなこともない。
平和そうにのそのそしているウサギに近づき、デュランダルで一太刀すれば片付くのは昨日実証済みだ。
「なんと、一撃とは!」
後ろの6人への牽制もあるのだろうが、ビッカーは大げさに思えるほど喜ぶ。
が、まだ気になるものがある。
「更に向こうに、グミスライムがいるようだ」
「ぐ、グミスライムは向こうから襲ってくる魔物です!」
ビッカー曰く、この辺りで最も強敵ということだ。
捕まると身体が溶かされるという、マスコットキャラクターにならないタイプの本格派スライムなのだな。
ビッカーよりも、後ろの6人が恐れ慄いているのが印象的だった。
どうにか迂回しよう、という話になろうとしたところで、
「まあ待ってくれ。
さっきはミチオさんに良いところを見せてもらったからな、ここはオレに任せてくれ」
ロムヤと監視役を代わると、彼は颯爽と駆け出した。
まあ、6人のうち5人は俺が捕まえた連中だし、こっちは大丈夫か。
遠目に見守っていると、ロムヤの持つ剣が炎を纏った。
グミスライムはそれほど動きは速くないようだ、斬り・突き・払いと繰り返し、後ろに回ってさらに追撃する、上手いものだ。
「……無事に終わったようだ」
「お、おぉ……いやぁ、どうも取り乱してしまってお恥ずかしい」
ビッカーが馬車を進めるのに合わせて、6人に歩くように促すと、めいめいに歩き出した。
あれがロムヤの得物――ほむらのレイピアのスキルということか。
……うーむ、正直カッコいいな、あれ。
「ビッカーさん、またキュピコもらっていいかな?」
「え、ええ、もちろんですよ」
昨日畑で貰った果物だ、これも町に出荷するらしい。
「どうだい、ミチオさん! オレもなかなかやるもんだろう? グミスライムに剣は効き難いが、この〈火炎剣〉ならこんなもんよ!」
「おみそれしたよ、ロムヤさん。
1本どうだい?」
このキュピコ、酸味が強いから、喉が乾いている時に抜群に良い。
ロムヤも同感だったのか、嬉しそうに受け取るとパキっとむさぼり始めた。
グミスライムは、いわゆる物理耐性があって属性攻撃に弱いタイプの魔物なのだろう。
デュランダルだったらどうなるのか、気になるがこんな時に試すことではないな。
お通夜ムードの6人を見る。
「お前たちも、町についたら1本ずつ分けるよう頼んでみるから、さっさと町に入ろう。
折角生き延びたのに、こんなところで魔物の餌になってもつまらんだろう」
そう言おうとして、そもそもこの連中にブラヒム語が通じないことを思い出した。
盗賊達の怯え混じりの視線を避けて、誤魔化すように俺もキュピコを齧って、御者台に戻ることにした。
ベイルの町
「見えてきましたね」
「……おおっ」
町というからどれほどのものかと思っていたが、なんと城塞都市だった。
海外に出たことがないので、城塞都市は見たことがない、日本に城塞都市は現存してないからな。
恐らく、高さや一辺辺りの長さで言えば、日本一の長大団地である
城門は閉まっておらず、誰何されることもなく町に入れた。
「魔物を防ぐための城壁ですし、統制しようにも移動呪文がありますから」
ということらしい。
移動呪文……ボーナス呪文である〈ワープ〉と同じものかどうなのか、要調査および検証事項が増えていく……急募――リマインダー。
「今日は5日に一度の市が立つ日ですが……それにしても随分人通りがありますなぁ」
その、町の中心で立っているという市も気になるが、まずは一番の大荷物である奴隷を売るために奴隷商にいくことになる。
治安の悪いスラム――ロムヤの視線が厳しくなる――を通る、奥には娼館などもあるようだ*2。
奴隷商というと、やはりいかがわしい場所にあるのだろうか。
賭場で負けが込むと翌日には店頭で陳列されたりしそうだ、パチンコ屋にATMやサラ金があったりした日本も大概だが。
目標の奴隷商は、中世ヨーロッパと言われて多くの人が思い浮かべるであろう、いわゆる
同じくらいの建物は珍しくないから、人口密度はなかなか高いのではないか。
あの窓から見下ろして、「どうだ、売れ残ったらあのスラムで残飯漁りに逆戻りだぞ」みたいな感じで言うことを聞かせて、奴隷に過酷な教育を施したりするんだろうか。
いや、さすがに道から眺めている限りでは、ちょっと寂れて手入れが行き届いていない程度で、何も窺い知ることはできないのだが。
正直、しょっちゅう暴動が起きてるパリだのロサンゼルスだのの方がよっぽど怖い気がする。
「何かご用でしょうか?」
「奴隷身分に落とされた犯罪者と、生け捕りにした盗賊を引き渡しに参りました。ご確認ください」
先入観もあるが、高級ソープランドのボーイのような印象の従業員が出てきて、奴隷を引き渡すとそのまま中へ案内された。
一度に6人連れてきたからだろう、裏から武装した人間が出てきて連行していった。
ほとんどヤクザの組事務所だな……とすると、荷台に大量の武器を積んで奴隷を売りにきた俺達は武器商人か何かか……あまり楽しい想像ではないな。
さて、ここからが重要だ。
(キャラクター再設定!)
キャラクター設定
【ボーナススキル】
買取価格30%上昇
さすがに人の身柄そのものが、そう安いということはないだろう。
更に30%ともなれば、期待できるはずだ。
「奴隷は私が売ることにしておこう。
色々あったとはいえ、村のものを手ずから差し出したとなると、余計な恨みを買うかもしれない」
「なるほど、お気遣いありがとうございます。
……それでは、こちらの村長からの委任状をお持ちになって下さい」
応接間に通される。
さっきの武装した従業員を見たからか、ロムヤは護衛役として、帯剣したまま後ろで控えることにしたようだ。
5分か10分ほど待たされただろうか。
「お待たせいたしました。
当家の主、アランでございます*3」
アラン
<男・51歳>
奴隷商人:Lv44
過去最大レベル……対戦開始だな。
37歳なので17歳の頃よりさすがにもっと処世術を心得ているというか、コミュ力があることを描写したかったのですが、窃盗すると盗賊になってインテリジェンスカードに記録される世界で、盗品を身に着けたまま平然と話すのってよく考えると難易度高くないか?
ってことでこんな感じになりました。
歳を重ねて臆病になる、というところは誰しもあると思います。
多分村長とは、ミチオさんが自分で靴を買って証拠隠滅したら平然と話せるようになるでしょう。
ロムヤの名前は、ホモから逃げ切ったら10万円っていう有名なコピペの>>668をもじったものです。
ロムヤは、というか村人Lv:25の男に関しては、Web版『午後の農作業』の後書きでその生涯について書かれていることに後から気づきましたが、漫画版の鑑定結果と年齢が違うので実質オリキャラとして書いています。