ハルバーの迷宮
十二階層 盗賊のアジト
連中のアジトらしき場所に入ってハインツを見ると、顎をクイっとしゃくられた。
もっと奥に行けということらしい。
みんなで歩きながら、セリーが壁を叩いて小首を傾げた。
「この洞窟には遮蔽セメントを塗ってある、逃げられないぜ」
探索者Lv42が馬鹿にしたように吐き捨てた。
なるほど、色々考えているのだな。
それにしても死体も服も生ゴミも迷宮が飲み込むのに、どういうことだろう? 吸収機能は床だけで、壁は判定外とか?
だったら歴史の長いクーラタルの迷宮は血反吐やらでもっと汚れていそうなものだが……今考えることじゃないな。
遮蔽セメントがどれくらいの範囲に塗ってあるのかはよくわからない。
何にせよこんな大仕掛けしてるんじゃ、やっぱり逃がすつもりはないな。
まあ、一頻り稼いでから放流するくらいはするのかもしれないが。
だが、遮蔽セメントは好都合だ。
これ以上の増援もなければ、逃げられる心配もないということだからな。
魔法を使う場合は1匹たりとも逃がしたくない。
奥に行く俺達と別に、ロクサーヌがその手前に残った。
「シモンはLv67だ。
隙は作る、それまで時間稼ぎに徹しろ」
……納得してくれたのだろうか?
わからないが、微かに頷いたのを確認して、セリーとミリアと部屋の最奥に行く。
ミリアの尻尾がくの字の形になっている。
彼女の尻尾はロクサーヌより感情豊かな気がするが、これはどういう感情なんだろう*1。
「下を、向け……わかるな?」
できるだけ簡単な単語をと気を付けてみたが……どうなんだろう。
ミリアが小首を傾げた後で頷いて、俯いた。
よしよし。
「セリー、ミサンガ作りに使う糸は持っているな?」
午前中にクーラタルの迷宮十一階層でグリーンキャタピラーと戦った時のドロップアイテムはセリーに持たせていた。
ハンナに渡していなければ、そのまま持っているはずだが。
「はい? はい……あっ、はい!」
セリーが〝はい〟の三段活用をした。
最後の1回はしっかり頷いた、言いたいことは伝わったようだ。
……とはいえ、流石にアイテムボックスを出したら警戒されるだろうな。
「さて、始めて良いかい?」
「ああ、合図はそうだな……セリー、アイテムボックスから銀貨を出してくれるか?」
「はい、わかりました」
ハインツが「はん?」と鼻を鳴らすのを無視して、セリーがアイテムボックスの詠唱をした。
何かあった時のために、銀貨10枚は常に持たせてある。
そしてセリーが銀貨と糸を手元に取り、銀貨だけ俺に渡した。
1枚だけ受取り、よく見えるように掲げる。
「この銀貨を放り投げて、地面に落ちたら開始、ではどうか?」
ハインツは「クククッ」と悪役しかしないような笑い声を上げると。
「洒落てるねぇ、イイじゃないか。
……ところで、これが終わったら俺達の仲間にならねぇか?」
「……では、投げるぞ」
俺がそんな反社会的な人間に見えるのだろうか、失礼な奴だ。
西部劇のように指で弾くのは自信がなかったので、普通に下手投げで放り投げる。
そしてコインが地面に落ちるなり、ロクサーヌが駆け出した! ――時間稼ぎはっ!?
余裕綽々のポーズを決めてるシモンは、首筋を狙う切っ先を軽く避けた。
そして同じようにロクサーヌにレイピアを突き出す!
……俺の目には、ロクサーヌは何も反応していないように見えた。
ただシモンのレイピアが空を切った、そんな感じだ。
観客はそれを、ロクサーヌが反応できないと見たか、あるいはシモンが服だけを斬ろうとして失敗したとでも思ったらしい、下品に囃し立てている。
だがシモンとやらはそうでないことが分かっているのだろう、距離を取るとレイピアを握り直して顔を引き締めた。
……不愉快だが、せいぜいロクサーヌに注目していると良い。
盗賊とはいえ、最期に良い物を見る権利くらいはあっても良いだろう。
「今ぞ来ませる
微かに詠唱が聴こえた。
セリーの握り締めた小さな手の中から、僅かに光が漏れている。
セリーが俺を見て小さく頷いたので、俺も頷きを返す。
「――防具製造!」
声高らかに詠唱を終え、手を掲げるとマグネシウムリボンを燃やした時のような光が溢れた。
それを視界の端で確認し、
(――ワープ!)
そして俺の眼前にハインツの背中が現れる。
一応〈オーバーホエルミング〉を使ってから、後頭部をデュランダルで一突きした。
周囲を窺うと、どいつもこいつも俯いて目を覆っている。
こんな迷宮に引き籠もっているモグラみたいな連中だ、さぞや眩しいことだろう。
止まった視界で、シモンの喉にレイピアを突き出すロクサーヌが見えた。
シモンは反応出来ていない、これは避けられないだろう。
盗賊Lv48と探索者Lv42はちょっと距離があるので、〈ウォーターボール〉を2発。
探索者の方はそれで〈鑑定〉できなくなった。
ニードルウッドLv11の水魔法でもあんだけ痛かったんだ、不意打ちで後頭部に喰らったらそうもなるだろう。
手近な位置の盗賊Lv28の首を薙いだところで、〈オーバーホエルミング〉の効果が切れた。
こういう時に咄嗟に出てくるのはブラヒム語じゃなくて母国語らしい、どいつもこいつも何を言ってるのかわからん、わかる必要もないが。
さっきの盗賊Lv48はピクリとも動かない……脳震盪にでもなったかな。
時間が流れるようになっても、盗賊連中が反応できていない状況は継続中だ。
――いや、1人反応した。
盗賊Lv12、一番レベルの低いヤツだ。
一番遠巻きに見ていた、というかハブられていたようだがそれが災いした、あるいは幸いしたようだ。
〈オーバーホエルミング〉も魔法もまだクールタイムが明けてない。
立っているのは低レベルの盗賊が5人。
――ズンッ!
セリーのハルバードが振り下ろされて、4人になった。
俺ももう1匹切り捨てる、盗賊Lv12が逃げる。
俺とセリーがもう1匹ずつ仕留めようとするが、間に合わ――
「××ッ!?」
通路に逃げ出す盗賊Lv12の足に、槍が引っ掛かってすっ転んだ。
ミリアが投げた槍が盗賊Lv12の駆け出す足の間に挟まったのだ。
すごいな、絶妙なタイミングだ、漁師じゃなくて猟師でもやっていけるだろう。
「良くやった! ミリア!」
眼の前の盗賊を力任せにたたっ斬る。
転んだ盗賊Lv12はもう一度走り出そうとするが、残念ながらもう〈オーバーホエルミング〉のクールタイムが明けた。
……。
…………。
………………。
シモンは首筋から血を流し、片目が潰れていたが、まだ生きていた。
対するロクサーヌのレイピアは火に巻かれている、〈火炎剣〉だ。
シモンが傷口からあまり出血していないのは、焼かれて止血されているためだろう。
「×××! ×××××××!」
シモンが何か喚いているが、ロクサーヌは意に介していないようだ。
その目はまるで、「苦しんで死ね」と言っているかのようだ。
ロクサーヌはもう一度〈火炎剣〉を使い、シモンを焼き切る作業を続けた、シモンが動かなくなるまで。
「……お疲れ様、ロクサーヌ」
「ありがとうございます、ご主人様」
ロクサーヌは汗ばんで息を切らせていた。
いつでも使えるようにしていた強壮剤を〈パーティライゼイション〉で使うと、もう一度「ありがとうございます」と言われた。
「すまなかったな、ロクサーヌを信用していないわけではなかったのだが」
「いえ、滅相もないです。
あれがなければ危なかったかもしれません」
そうだったのか、傍目には平静そのものに見えたのだが。
その事を言うと、
「首筋に突きが決まった時、これで決まったと思ったのですが、思いの外手応えが悪くて……」
セリーの〈防具製造〉による発光を間近で直視したシモンは、隙だらけだった。
だが何度か突いて斬ってとしても仕留めきれなかったそうだ。
〈火炎剣〉を使ったのは苦し紛れだったが、それで片目を奪うことができたため一方的な戦いになったらしい。
……てっきりハンナやカタリナと同じ目に合わせるために甚振っているのかと思った。
「ふーむ、さすがは名のある盗賊ということか」
「はい、私はまだまだ未熟です」
デュランダルの攻撃力が高すぎるからわからないだけで、攻撃力や防御力にレベル補正でもあるのかな?*2
属性ダメージが加算された分攻撃が通るようになったか、属性ダメージは別勘定とかがあるのかもしれない。
俺もレベル差がある魔物でも魔法攻撃は痛いしな。
……まあ、検証は良いか。
上の階層に行けば盗賊と遭遇することもなくなるだろうし、魔物相手にはじっくりレベル上げしてから挑めば良いことだ。
「……あ、申し訳ありません、ご主人様も素晴らしい采配でした」
「はい、鍛冶師のスキルをあのように使うとは、思いつきませんでした」
「ご主人様、すごい、です」
ようやく興奮が収まったのか、ロクサーヌがさすごしゅを言う時の顔になった。
セリーとミリアも追撃してくる。
「いや、まあ、ありがとう」
セリーが鍛冶師になった時、セリーとハンナが、スキル結晶融合を客の眼の前でやってスキル結晶を騙し取ったという鍛冶師の話をしてくれた。
あの光を見ると、確かに騙される者もいるだろうと思っていたのだ。
そして同じような発光現象は、〈武器製造〉と〈防具製造〉の時にも発生する。
そう説明すると、また口々に褒められたが、
「とはいえ、本来はこんな機転を利かさずに正面から倒せるようになるのが一番良いんだがな」
こういう奇策がハマると脳汁が出るが、これは楽しんではいけないやつだ。
ボタン連打で平押しできる、そんな見所も何も無い作業プレイが一番だ。
「そうでした、早く手首を集めませんと」
「あ、いや、ロクサーヌはさっきの小部屋に戻って、討ち漏らしがいないか確認してくれるか」
そう言うと、セリーが「全員倒したはずですが」と首を捻った。
「総勢10人の盗賊団で、探索者が1人しかいなかった。
ちょっと不自然じゃないか?」
探索者1人なら〈ダンジョンウォーク〉で5人ずつ運搬できる。
最初の小部屋に盗賊が6人、このアジトで待機していたのが探索者含めて4人、ちょっと中途半端な気がする。
ターレの迷宮の盗賊はそこそこのレベルの盗賊しかいなかった、これは1人当たりの取り分が減ることを考えると不自然ではない。
だが、ここの盗賊連中はそうではなかった。
「まあ、外で活動するメンバーとかが居るのかもしれないがな」
「なるほど、わかりました。
ここに居なかった者の臭いがしないか、調べて参ります」
言うがいなや、ロクサーヌ捜査官が駆け出した。
「こっちは剥ぎ取りだな、手首を切り落とすのは俺がやろう」
デュランダルが一番効率よく作業できるだろうからな。
手近な位置のシモンの手首から始めると、セリーが焼け焦げた装備を見て「これは使えませんね」と首を振った。
「そいつは鋼鉄の盾を持っていたな。
セリー、盾を持って付いてきてくれ、手首をそこに乗せてしまおう」
「なるほど」
そして手首をサクサク刈り取って、
結果、極めてなにか生命に対する侮辱を感じるオブジェが出来上がった。
エフィジーかな?*3
「……しかし、思い掛けず手強い盗賊だったな」
「申し訳ありません、軽率なことを申し上げました」
じっと見ているとSANチェックが発生しそうだったので、思いついた言葉を適当に口に出してしまったが、セリーは自分の判断が責められたと思ったらしい。
「いや、セリーの判断は間違いなく合理的なものだった。
俺も余裕だと思っていたしな」
思い起こせば公爵やゴスラーもそうだった。
公爵達はボーデの新迷宮はしばらく人でごった返すこと、良からぬ輩が入り込むことも考えられることを警告していた。
なにしろお膝元であるボーデ最寄りの迷宮だ。
金を持っている者も多いだろうし、盗賊だってそういうところを狙うだろうというのは合理的な判断だろう。
だが盗賊に遭遇したのはターレとハルバーの迷宮だった。
セリーは十三階層の盗賊より十二階層の盗賊の方が弱いはずだと言った。
だが罠を掛けていたのは遥かに高レベルで人数も多い盗賊だった。
これが十四階層だったら、もう少し慎重に検討しただろうか。
「まあ、合理的な判断が、必ずしも正解というわけではないというわけだな」
盗賊が非合理な存在というより、真っ当な判断をする真っ当な貴族や騎士団を相手にするには、定石を外さないと出し抜けないということなのだろう。
これは何が合ってるとか間違ってるとかの話ではないと思う。
「おっ、死体が消えたな。
ミリア、装備を、拾って、渡してくれ」
手近にあった硬革のブーツを拾いながらミリアに頼むと、「はい!」と元気の良い返事が返ってきた。
とりあえず、全部まとめてアイテムボックスに放り込んでしまおう。
「大掛かりな仕掛けをしていた割には、あまり大した装備でもないようだな」
「十二階層であまり良い装備をしていると目立ちますから、どこか他所に隠しておいたか、アイテムボックスに入れていたのかもしれません」
「なるほど、そういうものか」
このレベルの盗賊たちにとっては、この階層に出てくる魔物や探索者は大した相手ではないと思う。
使ったら損耗だってするだろうし、どっかにカチコミに行く時のために一軍装備を温存していたとしてもおかしくはないか。
……うーん、ブラヒム語を喋れる盗賊Lv28だけでも残すべきだったかな。
ハンナの旦那から奪った装備も残っていたかもしれないし。
「目を引くのは、この決意の指輪だな」
「年季が入っている品のようですし、その決意の指輪という装備は伝世の装備品だと思います」
セリーの説明によると、ギルド神殿では固定という祝福を受けることができるのだそうだ。
その名の通り、ジョブを固定するという意味らしい。
固定すると転職できなくなる代わりに、強くなったり強い装備が出てきたりする。
決意の指輪
・攻撃力強化
・対人強化
……これはボーナス装備と同じものだよな。
ボーナスポイントを〈アクセサリーⅡ〉に割り振ると新品の指輪が現れる……うん、間違いないな。
とすると、固定の話はボーナスポイントと関係ありそうだな。
普段浮いているボーナスポイントが、ランダムで割り振られるとかな。
〈アクセサリーⅡ〉を解除すると、ピカピカの指輪が消えた。
なんやかんや上手くすればボーナスポイント3点分ちょろまかせたりするか?
……やめておくか、ハンナの旦那の遺品かもしれないし。
それに、上手くいったとしてもグリッチだろうしな。
ボーナスポイントをくれた何某かも気分は良くないだろう。
すっかり忘れて調子に乗り始めた頃にBANされたり、法務部にキャン言わされるかもしれない。
コンピュータ様、私は幸福です。
「それにしても、対人強化なんていうスキルがついた代物が、よりにもよって盗賊の手に渡るとはな」
「そんなスキルが付与できるスキル結晶のことは聞いたことがありませんから、やはり伝世品ですね」
なるほど、そういうスキルもあるのだな。
あるいはもっと上の方の階層の魔物のスキル結晶から得られるのかもしれないが。
そうこうしているうちに、ロクサーヌが駆け足で戻ってきた。
ロクサーヌはセリーが持っている冒涜的な何かを見て一瞬首を傾げた後、こっちに向き直った。
「申し訳ありません。
特にそれらしい痕跡は見つけられませんでした」
「いや、ロクサーヌが探してもわからないなら、そんな者はいなかったということだろう」
少なくとも〈ワープ〉や魔法を使うのを見ていた盗賊は殲滅した。
それで十分だ。
「ご主人様、インテリジェンスカードが出てきました」
「そうか、これで14枚になったな」
死体から出てきたインテリジェンスカードには、何も書かれていない。
そして俺はどの手首が誰の手首か把握していない、死体は鑑定できないからな。
つまりどれが誰のカードかわからないわけで……探索者のカードは多分懸賞金が出ないよなぁ。
こんな盗賊団にLv42になるまで所属して盗賊落ちしていない探索者が一番嫌らしいと思うんだが……まあ、一応持っておこう。
「このレイピアと決意の指輪、インテリジェンスカードはハンナに渡そうと思うが……」
こういう時にどうするべきか自信がなかったので確認すると、ロクサーヌが「それがよろしいかと」と同意した。
セリーも頷いている。
ミリアは……そもそも事情を説明していないから仕方ない。
「では帰るか、みんなご苦労だったな」
『ありがとうございます』「……ます」
ベイル亭 食堂
「2人きりにしておいて良かったのでしょうか?」
「……正直に言うとわからん」
回収したレイピアと決意の指輪、インテリジェンスカードを、留守を守っていたハンナとカタリナに渡した。
泣き出した2人をそっとしておいた方が良いかと思って、今日は宿を取ることにした。
……本当はどうして良いかわからなかっただけだ。
泣き喚いたりするなら宥めたりもできただろうが、無言ではらはらと涙を流しているのは……なんともなぁ。
「――はいおまちどう、白身の香草焼きだ。
あと、部屋の準備も出来たんで、鍵も置いておくぞ」
と、旅亭が軽い調子でやってきた。
午後遅めの時間にいきなり来たのだが、なんとか6人部屋を取ることができた。
宿が寂れているわけではなく、今日まで泊まっていた客が丁度出て行ったタイミングだったらしい。
ベイルの迷宮が出来て以来、6人部屋は人気があるのだろう。
だが迷宮目当ての客は飯にあまり金を掛けないそうで、食事を頼むと喜んでいた。
「ウチはそういう宿じゃないんで、シングル6つだ、悪いな」
旅亭が顔を寄せて囁いた。
漏れ聞こえたらしい隣席のセリーが顔を赤くしている。
……セリー君は何を考えているのだろう?
例えば、主人と使用人のスペースが分かれていないことを謝罪している可能性だって否定できないではないか。
いや、期待に応えるのも主人の務めというものか。
仕方ない、嗚呼仕方ない、仕方ない。
「それにしても、白身があって良かったな」
最近はめっきり足が遠のいたベイルの迷宮だが、白身を落とすマーブリームが出現する階層まで攻略が進んだらしい。
ベイル亭では白身料理推しだった。
いつだったか食べたクーラタルの旅亭ギルドより上だな、コクと酸味というか、果物や野菜を使ったソースが美味しい。
「美味しい! ……です!」
ミリアもご満悦だ。
今日は初めて尽くしのなか、よくやってくれたものだ。
たっぷり食べさせてあげよう。
「白身も良いが、別の魚も食べたいな。
前にロクサーヌが調べてくれた、ハルツ公領で魚が捕れるというのはどこの話だったかな?」
「えっと、確かハーフェンですね」
そうだったな。
地引網とかやってる漁村だったか。
「今度ボーデの冒険者ギルドで行ける冒険者がいないか探してみよう」
「コハク商で訊いてみても良いかもしれませんね、猫人族の方ですから」
「それも良いな」
ロクサーヌとミリアはバーナ語で話している。
ハーフェンの話をしているのだろう、ミリアの目が輝いていた。
こういう洋風な料理も良いが、シンプルな干物とかも食べたいな。
美味しいものを食べながら次に食べたい物のことを考える。
欲望というのは尽きないものだな。
……。
…………。
………………。
食堂で食後のデザートと香茶までしっかりいただいた後、お湯を全員分もらって宿の部屋に入る。
部屋には旅亭が言った通り、シングルベッドが6つ、2列に並んでいた。
結構手狭だ、衝立もない。
もしかすると、元々4人部屋だったのを迷宮が出来てから6人部屋に改装したのかもしれないな。
「ご主人様、お身体をお拭きしますね」
自然と言葉が少なくなる中で、ロクサーヌが言った。
初めての時を思い出すな。
あの時と違うのは、お互いもう手慣れているということだな。
何も言われなくても顎を上げたり腕を開いたり、ロクサーヌが次にどこを洗おうとしているかがわかる。
「ロクサーヌもな」
「はいっ、お願いします」
それはロクサーヌの方も同じだ。
ついでに胸を念入りに拭く。
お互い裸だから、ふるふると揺れる尻尾が太ももに当たってくすぐったい。
「次はセリーだな」
「お、お願いします」
セリーが家に来た時にはもう風呂があったから、こういうのは初めてだ。
コトが始まった後はノリノリになるセリーだが、それまでは照れ照れだ、ここが可愛いところだな。
場所も変わると気分も変わる、こっちも新鮮な気持ちでセリーの身体を一から探索するつもりでじっくりと磨き上げた。
「では、ミリア」
「はい、お願い、します」
ミリアは身長もそうだが、身体つきもロクサーヌとセリーの中間という感じだ。
スレンダー寄りのアスリート体型というか。
上から拭き始めて形の良い乳房に登頂し、下山しようとするとミリアの尻尾が足の間に挟まって前から飛び出していることに気付いた。
……これはどういう感情なんだろうか。
「ミリア、×××××××」
「×× ×××××」
ロクサーヌが何事か言うと、ミリアの身体から力が抜けて、尻尾も垂れ下がった。
警戒というか、防御姿勢だったのかな。
正直、あの姿勢はものすごくエロく見えてしまうのでまたやってほしいくらいなのだが、そういうわけにもいかないようだ。
もう一度、今度はゆっくり優しくを心がけて身体を拭き取っていく。
これで少しは緊張が解けると良いのだが。
「ではご主人様、よろしいですか?」
「もちろん」
ロクサーヌをベッドに寝かせてキスをする。
息が苦しくなるまで舌を絡ませた後、愛撫しようとしたら小さく首を振られた。
早く、ということらしい。
俺も我慢できないので、ロクサーヌの中に入る。
こっちの動きに合わせてくれるのが嬉しい。
そしてこっちが果てるタイミングもお見通しのようで、その瞬間になるとロクサーヌの足が腰に回る。
こないだ避妊具の話題になってから、いつもこうするようになった。
俺とロクサーヌは異種族だから、避妊具を使わなくても子供ができることはない。
それでもあんな頑なだったのは、もしかしてちゃんと子供を作ってほしいという意思の表れだったりするんだろうか?
……訊く勇気はない。
「つ、次は私でよろしいでしょうか?」
ロクサーヌが口で掃除してくれた後、セリーが言った。
もちろん、ダメとか言えるわけない。
ロクサーヌがベッドを立って、入れ替わりにセリーが入ってきた。
そして始めると、隣のベッドでロクサーヌとミリアがこっちを見て話していた。
やり方を教えたりしているようだ。
暗がりの中で丸々と見開かれた目がランランと輝いて、こっちを、いや俺とセリーの接合部を見ている。
……セリーの時を思い出すな、ミリアも好奇心旺盛なのかもしれない。
セリーも思い出しているのだろう、真っ赤な顔を壁側に逸らしている。
だが、うん、そうだな、初めてで不安もあるだろうし、よく見させてあげるべきだろう。
「セリー、こっちへ」
「え、あの……」
セリーを抱き起こして、そのままベッドの脇に腰掛け、セリーを膝の上に乗せる。
「こ、これでは丸見えですっ!」
「まあミリアも初めてだし、よくわかるようにな」
セリーが両手で顔を覆っている。
だが真っ赤な耳を甘噛みしながら挿入すると、しっかり身体の動きは合わせてくる。
背中をこっちに預けて反らして、天井のコリコリしたところを当ててくるような動きだ。
これをされるとこっちも長くは持たない。
終わった後は、ちょっと恨めしそうな目をされながら口で掃除してくれた。
床に膝をついたセリーにしてもらうの、王様感があってすごいわ。
寝室のベッド脇のラグは、もっと生地がぶ厚いやつにしよう。
最後にミリアだ。
「ふ、不束者ですが、よろしくお願いします」
ミリアはしっかり挨拶すると、膝に座ってきた。
……えっと、
「ま、まあ最初は普通にな」
言って、ベッドに座らせる。
「普通に……」
セリーのどんよりした呟きが耳に入った。
……俺は悪くない。
全部、色魔ってジョブの仕業なんだ。
そしてミリアを抱きかかえてベッドに――
「あっ」
今度はロクサーヌが呟いた。
……もしかして抱っこされたいのか、君は。
ものすごくやりにくい。
ミリアをベッドに寝かせて口づけする……ちょっと舌がざらついてるかな、体質だろうか。
口から首に、首から胸にと下げつつ下に触れると、もう準備万端という感じだった。
先輩2人の痴態をまざまざと見せつけられたからだろうか。
大分リラックスしているようなので、ミリアの膝を掴んで広げると、すごい広がった。
「だ、大丈夫か?」
「大丈夫、です」
思わず心配してしまった俺の言葉を、ミリアは〝自分で足を開けるか?〟と解釈したらしい。
自分で膝を抱えると、膝がぴったり肩口の辺りまでくっついた。
膝と膝の間で胸が窮屈そうに押し潰されている。
……素晴らしい、恥ずかしそうに横を向いているのもポイントが高い。
猫人族は関節が柔らかいのだろうか、I字バランスとかできそうだな。
密着感があるロクサーヌと、キツめで押し返してくるようなセリーと違って、より深く入るような感覚があった。
早く終わらせないと辛いかなと思ったが、我慢できず深めにグラインドしているとあっさり達してしまった。
ベッド脇に座って息を整えていると、ミリアがセリーがしたように膝をついて掃除を始めた。
「……きれい、ですか?」
「ああ、もう大丈夫だ」
多分、〝奇麗になったか?〟と訊いてくれているのだと思う。
頭を撫でて返事をすると、ミリアが隣のベッドに戻った。
アランのところに預けて良かった、片言でもまあまあ通じる。
「……喉が乾いたな。
ロクサーヌ、水をくれないか?」
「はい、ご主人様」
ロクサーヌは水差しを手にすると、何故かそのまま水を飲んだ。
あれ? と思ったら、そのまま膝に座られて口移しで水を運んでくれた。
……これは抱っこしてベッドに横たえるべきなのだろうか、あるいはこのままするのが正解なのだろうか。
漫画版では鑑定画面に続きがあるような表記になっていたので付与されている可能性はありますが、本作ではグレーとします。
飛行機事故から生き残った主人公が、見知らぬ森の中で襲い掛かる食人族に立ち向かい、共に飛行機事故に遭って生き別れとなった
この主人公は、何故か殺した食人族の死体から〝部品〟を解体し、冒涜的なオブジェ――エフィジーを作ることができる。