加賀道夫さんじゅうななさい   作:ビーバップ八戒

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竜騎士

 

   クーラタルの街

     道夫の家

 

 家に帰って、ふと思い出して確認したらジョブが増えていた。

 

 

   【ジョブ設定】

      遊び人:Lv81

       英雄:Lv49

      冒険者:Lv41

    ものまね士:Lv41

      魔道士:Lv32

       商人:Lv73

       村人:Lv31

       盗賊:Lv31

      探索者:Lv83

       剣士:Lv50

       戦士:Lv30

    薬草採取士:Lv30

       僧侶:Lv53

       農夫:Lv31

     魔法使い:Lv51

      料理人:Lv33

     錬金術師:Lv52

       色魔:Lv40

     奴隷商人:Lv53

     武器商人:Lv53

     防具商人:Lv53

     賞金稼ぎ:Lv52

       騎士:Lv50

      暗殺者:Lv32

       博徒:Lv34

       沙門:Lv31

     付与術士:Lv32

      聖騎士:Lv31

       剣豪:Lv31

       狩人:Lv30

       村長:Lv30

       豪商:Lv1

 

 

「ああっ! 申し訳ございません、御主人様。

 ……どうかされましたか?」

「おおっと、すまんすまん」

 

 こんなことを〈フィールドウォーク〉のゲートに入った時に思い出してしまったものだから、ハンナに追突されてしまった。

 完全に俺が悪い。

 すぐにバランスを崩してしまったハンナに手を貸す。

 

「どうもな、豪商のジョブを得ることができたらしい」

「それは……おめでとうございます」

 

 

    豪商:Lv1

    効果:知力中上昇

      :知力小上昇

      :知力微上昇

   スキル:カルク

      :アイテム鑑定

      :インテリジェンスカード操作

 

 

 探索者との複合派生職の武器商人や防具商人と違って、商人の正当進化って感じだな。

 故に〈アイテムボックス操作〉はないが、〈アイテム鑑定〉がある。

 多分アイテムボックスに入るものを鑑定できるんじゃないかな……とすれば、実質武器防具商人との違いはアイテムボックスの有無だけか。

 

 固定値信者としては、知力上昇一点突破はかなりありがたいジョブと言える。

 豪商ともなると、自分であくせく働くより頭を使って他人を動かす……そんなイメージだろうか。

 まあ、知力が魔法以外に何か影響があるのかというと、正直よくわからんのだが。

 

「……おかえりなさいませ、ご主人様。

 どうかしたんですか?」

「ああ、ロクサーヌも帰ってたのか。

 実は豪商になれるように……」

 

 なったのだと言おうとして、どう考えても玄関で話すことじゃないな、と思い直した。

 ついでにハンナの手を握ったままだったことも思い出した。

 

「ちょっと疲れたな。

 カタリナはいるか? お茶が飲みたい」

「はい、淹れてもらってきます」

 

 居間に移動して、定位置で丸まっているタマの顔を覗いてから椅子に座る。

 ……人の多い場所に長くいると、気疲れするな。

 

「おかえりなさいませ、ご主人様」

 

 ベスタが暖簾をくぐって入ってきた。

 いや、暖簾ではないが。

 ただ、居間の入口よりベスタの方が大きいから、くぐるようにしないと入れないようだ。

 

 彼女が姿を現すと同時に、タマが突然起き出して俺の足元に――というかテーブルの下に入り込んだ。

 そこにいられると踏んづけそうで怖いので、〈オーバーホエルミング〉を使ってサルベージして膝に乗せる。

 

「すみません、どうも嫌われてしま――え? あれ? 今?」

「あー……まあ、そのうち慣れるだろう」

 

 色んな意味で。

 

「お茶が入りました」

 

 ロクサーヌとカタリナも入ってきて、更にはセリーとミリアも『おかえりなさいませ、ご主人様』と声を揃ってやってきた。

 

「ただいま、皆。

 ベスタは、皆との顔合わせは済んだか?」

「はい、ロクサーヌさん、セリーさん、ミリアお姉ちゃん、ハンナさん、カタリナさん、タマさんです」

「……いや、タマはタマで良いだろう」

 

 そのタマは、見慣れたメンツを見て安心したのか膝から降りて定位置に戻ってしまった、残念。

 

 そしてそれで訊きそびれてしまったが、なぜミリアだけお姉ちゃんなのか。

 ……以前ミリアにロクサーヌを『姉とも思って敬うように』と言ったから、次は自分の番だと思ったのかな。

 責任感があって偉い。

 

 しかし、それならセリーのことも『お姉ちゃん』と呼んでくれても良いではないか。

 大きい妹とちっちゃい姉……これはアリだろう。

 何なら肩に乗ることすらできるかもしれん。

 

 ……戸愚呂兄弟が思い浮かんじゃった、やめよう。

 2メートル超えはさすがに大きすぎるよ、人類の女の子が連想できん。

 諸星のきらりだって義星のレイより1cm高いだけなんだぞ。

 

「とりあえず、皆の分も淹れてくれたみたいだし、一休みしよう」

「はい、ご主人様、どうぞ」

 

 セリー用に高い椅子を買ったから、居間には丁度7人分の席がある。

 ミリアが「ベスタは、ここ、です」とお誕生日席にベスタを座らせて、全員が着席した。

 しかしこうして見ると、

 

「……引っ越すか

「えっと、お引っ越しするのですか?」

 

 独り言……というか声に出したつもりもなかったのだが、しっかり声に出ていたらしい。

 ロクサーヌに拾われてしまった。

 

「あー……いや、そのうちにな。

 まだ夏秋冬と契約が残っているが、こういうことは事前に決めておいた方が良いものだ」

 

 7人で住むには、さすがに狭い。

 ベスタ1人増えただけなのに、途端に狭く感じるようになった。

 言い方は悪いが、店頭で選んだ大型家電を配送してもらったら、店で見るより2割増くらい大きく見えるみたいなあれだ。

 家電量販店って天井高いんだよな。

 

「今後はハンナに冒険者としても活動してもらう。

 ハンナには悪いが、他のことをしながら家を探してみてくれるか」

「はい、条件はございますか?」

「冒険者向きで、竜人族でも住めるような広い家、以外は今は思いつかんな。

 皆からも聞き取りをしてもらって……まあ、顧客の潜在的な要望を洗い出すのは得意だろう?」

 

 我ながら無茶振りしてるなとは思うが、ハンナなら無理なら無理と言うだろう。

 実際、「無体なことを仰る」と言いながらも、ハンナは笑っている。

 

「もし近所に大きな貸家があるならすぐに移り住んでも良いが、いずれは新築の家に移りたいしな。

 場所も何もかも任せるから、とにかくいついつまでにいくら必要、みたいな目安を立てておきたい」

「かしこまりました。

 とりあえずクーラタル近郊で借家を探すことから始めて、定期的に報告するようにいたします」

「ああ、任せた」

 

 場合によっては、ハンナの部下として奴隷を用意するのも良いだろう。

 この家に住まわせるのでなくて、他にアパートとか借りても良いわけだし。

 これは明日以降の仕事量を見て、改めて検討しよう。

 ……ハンナの護衛もほしいしな。

 

「さて、ロクサーヌ。

 ベスタの身の回りの品は買ったのか?」

「はい、それは良いのですが、ベッドが……」

 

 ロクサーヌによると、セリーが使わなくなった下段のベッドを使ってもらおうと思ったのだが、足がはみ出してしまうらしい。

 なるほど、とベスタを見る。

 今は座っているが、ドアよりも大きいわけだし、当然だな。

 

「私は地面でも平気ですが」

「いや、それはなしにしよう」

 

 じゃあ買いに行くか、と言おうとしたらセリーが、

 

「一応、先日買っていただいた書斎机の椅子がベッドと同じくらいの高さですので、それで継ぎ足せば大丈夫だと思います」

「そうか、とりあえず今日はそれで凌いでくれ」

 

 ……口癖が「アッポー」で有名な、某ジャイアントなプロレスラーみたいだな*1

 なんにせよ、今日は早く迷宮に行きたいから、なんとかできそうで助かった。

 

「明日は休日だから、ベッドは明日買いに行くとしよう。

 服も買わなければな」

「先程、先日の古着屋に顔を出したのですが、私達と揃いの服でサイズが合うものはありませんでした」

 

 騎馬民族の民族衣装だというのに情けない。

 モンゴル出身の横綱だって馬にバリバリ乗っているというのに。

 ……いや、上背は横綱よりベスタの方がずっと大きいか。

 

「……あの、休日は今日ですよね?」

「うちは1と6がつく日は休みにしてるんだ。

 まあ、外回りで忙しい日は翌日も休みにしているが」

 

 ベスタは要領を得ない顔で、「はい」と頷いた。

 おいおい慣れていただきたい。

 

「ところで微妙なお時間ですが、昼食はどうなさいますか?

 すぐに摘める程度のものでしたら、ご用意しておりますが」

 

 カタリナが言った。

 そしてベスタは「昼……食?」と首を捻っている。

 そのうち慣れていただきたい。

 

「それはありがたい。

 この後は迷宮に行くつもりだったからな、用意しておいてくれたのか」

「えっと、その……今夜は御懇親(ごこんしん)の場がございますよね?

 それで、軽く召し上がれるものの方がよろしいかと思いまして」

 

 ……ああ、覚えていたともさ。

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

 軽い昼食を済ませて、迷宮探索の準備に取り掛かる。

 ベスタの装備は、ルークから手に入れた素材でセリーに製造してもらった、鋼鉄装備一式だ。

 ルークに売らないなら素材を買い取る必要があるが……あの依頼もこれで最後かな、結構金になったんだが。

 

      鋼鉄の剣      

      鋼鉄の盾      

    鋼鉄のケトルハット    

   鋼鉄のプレートメイル   

    鋼鉄のガントレット    

    鋼鉄のデミグリーヴ    

 

「とりあえず、これを身に着けてくれ」

「あの……先程、皮の靴をいただきましたが。

 それに、サンダルも」

「皮の靴は外出用の、いわば普段着だ。

 サンダルは室内履きだ」

 

 ベスタは数瞬フリーズした後、「わかりました」と頷いた。

 いずれ慣れていただきたい。

 

「それと、これもな。

 これは常に身に着けておくように、身代わりのミサンガだ」

「……すごく貴重な装備品だと聞いたことがあるのですが」

「うちには鍛冶師のセリーがいるからな」

「そうなんですか、すごい鍛冶師なんですね、セリーさんは」

 

 ベスタの賛美の眼差しを受けたセリーが、じとーっとした目で俺を見つめている。

 やめたまえ、穴が空いてしまうではないか。

 今は慣らし運転中だから、どうかわかっていただきたい。

 

 どう考えてもだな、半日やそこらで全部説明しきれんのだ。

 だからとりあえず情報量の波をぶつけてから、後で微調整するのだ。

 セリーの探索者レベルを勝手に上げたように……ああ、だから睨んでるのか。

 

 皆で手伝ったり手伝ってもらったりしながら、全員装備を着け終わった。

 

 

   ベスタ

   <♀・15歳>

   村人:Lv2

   装備:鋼鉄の剣

     :鋼鉄の盾

     :鋼鉄のケトルハット

     :鋼鉄のプレートメイル

     :鋼鉄のガントレット

     :鋼鉄のデミグリーヴ

     :身代わりのミサンガ

 

 

「おおっ、これは見違えたな」

「ええ、頼もしいです」

 

 ロクサーヌも嬉しそうにしている。

 こう、いかにも重戦士って感じの前衛が1人いると、見た目のバランスが良いよな。

 

「盾の、使い方、教える、です」

「はい、よろしくお願いします、ミリアお姉ちゃん」

 

 ミリアも張り切っているな。

 働きには給与を以って応える、誠意は言葉じゃなく金額だと黄金銭闘士(ゴールドゼニント)も説いている。

 明日渡す分は奮発しよう。

 

「セリーさんもプレートメイルなんですね、すごいです」

「まあ、ドワーフもそれなりに力が強いですから」

 

 ……それなり?

 アランの商館の裏口を破壊した夜を思い出す。

 あの扉の修繕費いくらだったんだろ、枠ごと逝ってたけど……表口よりグレードが低いとは思うが。

 

「さて、ではパーティー編成を……あれ、ロクサーヌは一旦抜けていたのか」

「はい、先程フィールドウォークを使いましたから」

 

 周囲に人が多かったからか、全然意識していなかった。

 じゃあなんで俺が帰ってきた時に一番に迎えてきたんだと思ったが……まあ、ロクサーヌだしな。

 

「あの……ロクサーヌさんのパーティーに入るのでは?」

「いや、ロクサーヌは普段は獣戦士なのでな。

 基本的には俺のパーティーに入ってもらう」

「……そう……なの、ですか」

 

 ロクサーヌを獣戦士に戻して、〈パーティー編成〉を全員に使う。

 ハンナ抜きの6人パーティーか……いずれこうなることはわかっていたとはいえ。

 

「あの……今、詠唱が、ええと……?」

 

 もう諦めていただきたい。

 

 

 

   ベイルの迷宮

     一階層

 

 いきなり迷宮に〈ワープ〉して戸惑うベスタを、ロクサーヌが「ご主人様ですから」で封じ込めた。

 もうそれでいい。

 

 まずはこちらの戦い方を見てもらうという名目で、上の階層でさっさとベスタを村人Lv5にした。

 戦士や剣士のジョブ取得条件でもあるし、多分種族固有ジョブも同じだろう。

 ロクサーヌ達も公爵達も、村人Lv5以上になってるからな。

 

「ご主人様、あちらです」

「ああ、俺にも見えた」

 

 

   ニードルウッド

     Lv:1

 

 

「ではベスタ、この剣を使ってあいつを斬ってくれ」

「す、すごい剣のようです」

 

 渡すのはもちろん聖剣デュランダルだ。

 別に鋼鉄装備でも勝てる気はするが、あの奴隷商人の言う事を粉砕したいという気持ちがないと言えば嘘になる。

 まあ、どちらにしても早い方が良いだろう。

 

「では、やってみます」

 

 ベスタは戦った、そして勝った。

 

「すごいです、一撃で倒せてしまいました。

 ええと……しかし、どうすれば良いのでしょう」

 

 俺とロクサーヌの顔を交互に見ながら、ベスタが混乱している。

 こんなすごい剣があるなら俺か、もしくは同じ両手剣を使うロクサーヌが使うべきなのでは……そんな感じか。

 

「うむ、それはだな……」

 

 

   【パーティージョブ設定(ベスタ)】

 

   セットジョブ

   竜騎士:Lv1

    効果:体力中上昇

      :体力小上昇

      :体力微上昇

   スキル:二刀流

      :クリティカル発生

      :ダメージ軽減

 

   所持ジョブ

   ▶竜騎士:Lv1

     村人:Lv5

     農夫:Lv1

    探索者:Lv1

     戦士:Lv1

     剣士:Lv1

 

 

 よしよし、やっぱりだな。

 装備なんか関係ない、問題なのは村人Lv5だ。

 

「ベスタは今から竜騎士になったということだ。

 これからの働きに期待しているぞ」

「なるほど、1人で魔物を倒す、それが竜騎士の条件ですか」

 

 セリーがマイペースにメモを取り始めた。

 しっかりしてるな。

 

「その……申し訳ございません、何が何やら……」

「いきなりすまない。

 だが、ベスタが竜騎士になったのは本当だ」

 

 すぐにロクサーヌを騎士にして、「インテリジェンスカードオープンをやってくれ」と頼んだ。

 どう考えても怪しい俺より、ロクサーヌがやった方が幾分マシだろう。

 

「はい、わかりました。

 ベスタ、左手を出してください」

 

 ロクサーヌが騎士になれるようになったのは、暗殺者のついでだ。

 俺も自分のインテリジェンスカードをゆっくり確認したかったし、ついでに村長のジョブも欲しかったので〈任命〉を使ってもらった。

 結局何もわからなかったし、村長のジョブ効果も大したものではなかったが。

 

 ……本当はミリアが戦士Lv30になった時点で出来たのだが、なんとなく嫌な予感がしたのでやめておいた。

 ready perfectly、俺は慎重な男だ。

 

滔々(とうとう)と流るる霊の意志、脈々息づく知の調べ――インテリジェンスカードオープン。

 さあ、ベスタ……」

「本当に……竜騎士になっています」

 

 ベスタは呆然としながら、「こんなに簡単になってしまって良いのでしょうか……」と呟いた。

 セリーがうんうんと頷いて、ベスタの肩――は届かないので腰を叩いている。

 ……セリー君はなにやら常識人ぶっているようだが、真っ先にジョブになる条件を記録し始める君はこちら側だよ?

 

「効果は体力中上昇、体力小上昇、体力微上昇の一点張りだな、これがパーティーが安定すると言われる所以だろう。

 スキルは二刀流、クリティカル発生、ダメージ軽減……これはすごそうだな」

「スキルは全て自動発動するものでしょうか?」

 

 ほぉら……すぐ話に乗ってくる。

 

「ベスタ、戸惑っているところすまんが、今から言う言葉を繰り返してくれ。

 二刀流、クリティカル発生、ダメージ軽減……とな」

「は、はい……二刀流……クリティカル発生……ダメージ軽減。

 申し訳ありません、なにもわかりません」

「いや、それで良いんだ」

 

 つまり、全てパッシブスキルということだ。

 

 〈二刀流〉は、両手剣を左右の手で持てるようになることを指すのだろう。

 〈クリティカル発生〉は、博徒と同じ名前だし同じものだろう。

 〈ダメージ軽減〉は、〈物理ダメージ軽減〉と〈魔法ダメージ軽減〉のスキルがあるから、それを併せ持ったものだと思われる*2

 

 セリーの持つスキルについての知識と、皆が持つ竜騎士というジョブの特長を合わせて考えた結果、このような結論となった。

 つまり……超強い。

 ベスタは皆からの賛美の視線に、居心地悪そうな顔をしている。

 

「戸惑う気持ちはわかる、納得しがたいという気持ちも。

 だが、これから鍛えることで竜騎士に相応しい実力を身につける……そう思えば良いのではないかな」

「は、はい! 精進いたします」

 

 よしよし、良い話風になったな。

 これまでの疑問は、全て竜騎士の話で誤魔化せただろう。

 

「…………」

 

 だからセリーはこっち側だってば。

 

 

 

   クーラタルの迷宮

     十一階層

 

 超強いとはいえ、ついさっきまで村人だったのだ。

 いきなりランク3の魔物相手に前衛をさせるわけにはいかないし、といって一階層ずつ上がっていくのは大袈裟すぎる。

 

 ということで、またちょっとだけレベル上げしてから、以前ミリアをパーティーに迎えた時と同じカリキュラムをやらせることにした。

 まずは、

 

 

   グリーンキャタピラー

      Lv:11

 

 

「グリーンキャタピラー、です。

 体当たりしてくる、糸を吐く、です。

 下の方、で、一番、強い、です」

 

 ミリアが説明したがったので、ひとまず任せてみた。

 大分喋れるようになってくれたものだ。

 

「体当たりと、糸に気をつければ良いのですね」

「そう、です」

「その装備では、まだ糸を避けるのは難しいかもしれません。

 まずはしっかりと攻撃を受け止めることを考えましょう」

 

 ロクサーヌが補足……のような重い期待のような言葉をかけた。

 正直、金属甲冑フル装備で避けるのは将来的にも無茶だと思うのだが。

 

「今までも見せたように、基本的に魔物は俺が魔法で倒す。

 その間の時間を稼ぐことを考えてくれればいいから……あとは、頭を打つのだけは気を付けてな」

「はい、やってみます」

 

 ベスタは戦った、そして……

 

「……大丈夫か?」

 

 糸に巻かれた状態で胸の辺りに体当たりを受けたベスタに、一応そう尋ねる。

 いや、本当は一撃受けたら魔物を倒すつもりだったんだが、首を傾げて「今何かしたか?」みたいな反応をするものだから……。

 

「いえ、それが全然衝撃がなくて。

 ……すみません、糸がうまい具合にクッションになったのでしょうか」

「そんな効果はなかったはずですが……」

 

 同じように糸巻き状態で攻撃を受けたことがあるセリーが首を傾げた。

 とりあえずそのまま見ていても仕方ないので、魔法でグリーンキャタピラーを片付け――

 

「すみません、次は私が試してもいいでしょうか?」

 

 ――ようとしたら、セリーに止められた。

 

「そうだな……以前とは装備もレベルも違うが、一番比較にはなるか」

 

 ベスタの胸くらいの高さはセリーの頭部にあたるわけで、見てると怖いのだが。

 まあ、事前にわかっているなら気をつけてくれるだろう。

 

「ではベスタ、代わりますね――フンっ!

 

――ゴッ!

 

 セリーが丸まったグリーンキャタピラーをハルバードでホームランすると、芋虫は天井と壁と床にきれいに1回ずつバウンドして遠くに飛んでいった。

 これで死なない魔物という存在が怖い。

 ……セリーはもっと怖いけど。

 

 そして距離を取った状態で、セリーがグリーンキャタピラーの前に立ち塞がる。

 しばらく通せんぼしていると案の定糸攻撃をしてきて、セリーが糸で巻かれる……直前でハルバードを生贄にして糸攻撃を避けた。

 追撃の体当たりを、両手を前に構えて受け止める。

 

「痛……くはないですね。

 多少衝撃は感じますが、それくらいです」

「そうか、よくやってくれた」

 

 今度こそグリーンキャタピラーを片付ける。

 ご協力感謝。

 

「やはり竜騎士の体力が上がる効果だろうか」

「仰る通り当時と状況は違いますが、そう考えて良いと思います」

 

 当のセリーがそう思うなら、そうなのだろう。

 

「話に聞いていた通り、竜騎士がいるとパーティーを安定させるというのは本当だったようだ」

 

 ベスタの方に向き直って、彼女が身代わりのミサンガを巻いた方の脚に視線を向ける。

 

「実のところな、身代わりのミサンガは俺達にとってもそれなりに貴重なものだ。

 だがミサンガを惜しんでベスタを喪い、それが原因でパーティーが崩壊しては意味がない。

 ベスタを守ることはパーティーを守ること、それは当然俺自身を守ることでもある」

 

 ベスタの肩を叩いて「これからよろしくな」と声を掛けた。

 

「はい! 全力で皆さんを守ります!」

 

 良かった、もう完全に吹っ切れてくれたようだ。

 これで戦闘に関しては問題ないだろう。

 

「さて、次は……」

「ミノ、です」

「あ、ミノでしたら外で戦ったことがあります」

「ならいいか、じゃあ次は……」

「グラスビー、です」

「そうだったな」

 

 本当に、頼もしいパーティーメンバーを迎えることができたものだ。

 

*1
 元プロ野球選手という異色の経歴を持つプロレスラー。

 身長208cmの巨体はベッドに収まらないため、ビールケース等を積み上げてベッドメイキングするのが付き人の仕事だったという逸話がある。

 プロレスラーとしての活動期間は1960年から1999年。

 布団の長さが210cm以上で標準化されたのが男性平均身長が170cmを超えた1990年代以降と言われるので、恐らく当時は全く身体が収まらなかったのだと思われる。(210cmあっても寝難いでしょうが)

 なお公式「僕はアッポーなんて言ってないよ」

*2
 〈魔法ダメージ軽減〉のスキル結晶が原作で開示されておらず、それを持つ装備もマジカルアーマーという固有装備っぽいものでしかわかっていません。

 しかし、スキルが存在することは原作小説9巻71ページでセリーが口にしているので確定情報となります。

 どのスキル結晶が適当か判断つかず、当面は伝世品のマジカルアーマーでしかつかないスキルであり、スキル結晶融合の対象ではないこととします。

 そうしないと色々修正が必要になってしまうので、そういうことにしてください。

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