【姉の子】   作:双子の妹

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誰の為

正直に言って、マイがアイのふりをすると言うのは初めから破綻していることだった。

それは星野アクアと星野ルビーが転生者、中身である精神が完全に成熟していたことに加え、母親発言をしたその翌日に双子はアイの葬儀に参列しているのが原因である。

いくらアイとマイが似ているとは言っても、これでは母親に成り代わることすら難しい。逆にこれで何故勘違いされたままなのかと問い掛けたいぐらいだ。

 

「はぁぁぁぁ~疲れた。早く帰ろう!ママ!」

「お前……何言ってるんだ?」

「なにが?」

「何がって……死んだんだぞ!アイが!!!?」

「うん。で?」

「だからっ!何でマイさんの手を握ってるんだよ!この人は関係ないだろ!」

 

「ん~?何言ってるの?」

 

きっと()()なったのは、精神的疲労もあったのだろう。転生者とはいえ幼少期から殆ど入院していた前世と今世を合わせて20にも届かない。大人を経験したことがない純粋無垢な子供……人生経験の少なさが影響していたのだろう。

マイの腕にしがみつき、呑気な顔をしたルビーは首を傾げる。

 

「ママはここにいるでしょ?いや~凄いよね。いくらアイを死んだことにしないといけないからって特殊メイクで人形をあんなに本物みたいに作れるなんて」

 

「違う。違うんだ。マイさんからも言ってくれ。あれは、偽物なんかじゃない……あれは本物の」

「じゃあここにいるママはなんなの?」

「ミヤコさんからも聞いたろ。この人はアイの双子の妹だ」

「それ本気にしてるの?私たちも双子でママも双子だった?なにそれ。そんな漫画みたいことあるわけないじゃん」

 

現実は小説より奇なり。そんな言葉があるが、残酷な真実より、甘い嘘の方が都合が良かった。

本当は気づいているのだろう。けれどそれを認められないと口早に捲し立てる様をアクアは見ていられなかった。

 

そんなアクアに代わり、少し無理をして外出許可を貰ったマイは、体調と精神。その両方が優れない顔をしてルビーと向き合う。

 

「ねぇ、ルビーちゃん。お母さんとはちゃんとお別れ出来た?」

「っぅ……なんのこと?ママがママでしょ?」

「……そっか。まだわかんないか。いや……それとも私のせいなのかな」

「ま、ママは悪くない!」

「うん。貴方のママは悪くない。悪いのは貴方を騙した私だよ」

「違っ!違くて!ママは私たちとずっと一緒でしょ!?どこにもいかないって言ったじゃん!」

 

「ごめんね。私バカだから、傷つけちゃったんだよね。何が正解で何をやっちゃいけないのか………医者の卵なのに、何言ってるんだろ」

 

泣きそうな顔をする彼女の胸にルビーはしがみついた。

 

「やめて!そんなっ!やだよ、もういなくならないでよ!」

 

一度目でも身を裂かれたような痛みだった。それをまた、()()も味わいたくないと彼女は叫ぶ。

 

「ルビー……」

 

しがみついたルビーを引き離し、マイは目を合わせた。

 

「もしさ。もし……二人が良かったらなんだけど、うちの子にならない?」

 

 

 

「「えっ?」」

 

 

てっきり、この歪な関係を終わらせるつもりなのかと思った。

アイと双子とはいえこの人に自分たちの面倒を見る責任はない。あったとしてもとても背負いきれるものではないだろう。

だからルビーは離れたくなくてしがみついたのに血色の悪い顔をした彼女はアクアも呼んで三人で円になる。

 

「順当に行けば二人はお父さんが引き取ることになるんだろうけど………あの人、海外出張で年末ぐらいにしか帰ってこないしさ。これからいろんな人と話し合って、それでも、私を選んでくれるなら二人の家族になったらダメ?」

 

アイを失った自分よりも生気のない瞳。

子供から母親を奪ってしまったかもしれないという罪悪感。もしかしたら彼女はルビー以上に精神的に追い詰められているのかもしれない。

その決断をさせてしまったアクアは血の気が引いた。

 

 

不味い。自分はともかくルビーがそんなことを言われたら―――。

 

 

「なる!なって!偽物でもいいから!ママでいて!」

 

 

 

 

「……うん。分かった」

 

 

 

その日のうちにマイは大学を辞めた。

数少ない友人から止められ、何故か退学には出来ず、休学扱いになったが復学することは考えていない。

それなりに楽しかったし、それなりの夢であったが、子育てとの両立は無理だと判断したからだ。

それになにより、医学部は金がかかる。

 

「仕事探さないとな~」

 

この時、何も出来なかった自分をアクアは一生悔み続けた。

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