俺も無事にペルソナを覚醒"させた"。だが現実世界に戻ると黒髪と金髪の姿はとっくになくなっていた。家に帰ったか? なら俺も帰るか……帰る家は無いが。
だからって野宿は無いだろう? 安心してくれ。異空間という家がある。何故能力を現実でも使える? そんなこと俺に聞かれても困る。ご都合ってやつだろ。
4月13日放課後。
黒髪と金髪はどうやら昨日の異世界でみた、体罰されていた奴らの顔と同じ顔の人間に、聞き周りをしていた。ドタバタと教室や廊下を走り回って心底煩えったらねぇ。
つーか昨日は偶然異世界言ったんだよなぁ。んー、自分で異世界のゲート開くことも出来るけど、座標が分からねえとどうしようも無いんだよなぁ。明日や明後日にでも大きなイベントこねーかなぁ!!
4月14日放課後。
たまたま中庭で煙草吸っていると痣だらけの女が通り過ぎ、ちょうど黒髪と金髪が来た。流石に金髪は俺に怪訝な視線を向けて来た。
「お前って確かあっちの世界にも……」
「いたよ。同じ学年同士よろしくな。俺は最上」
「俺は坂本だけど……てか何で堂々と煙草吸ってんだよ!?」
「チクったらお前も教師も殺す」
「お、おう……。蓮、どうやらここには俺らよりひでぇ奴がいるようだ。陰口なんて気にせずいこうぜ」
つまり俺はお前らのヘイト管理という訳か。それはとても結構。むしろ歓迎しよう。学生が煙草吸っている所なんて見つかったら即退学確定だからな。流石にそれは避けたい。
いいや、退学させられるならもっと派手なこと起こしたい。学校の歴史に刻まれるような。
「それはそれとして……クソッ! どいつもこいつも白きりやかって! どうしても誰も体罰のことを話したがらないんだ! これじゃあ手詰まりだ……。他に方法は無いのか?」
「城主を懲らしめる……とか?」
「城主って……まさかあっちの鴨志田のことか?」
こいつらは何をしようとしているのか。まさかここで起きている体罰の真相を調べて鴨志田を摘発とかしようと思ってんのかねえ……。そんなことしなくても、警察に通報すると脅してから、吐きたくなるまで拷問すれば良いだろうに……。
そこでどこからともなく別の声が聞こえてきた。だがそれは異世界で生きてきた俺にならば、今現れた黒猫が喋っていると瞬時に理解する。
「蓮の言っていることは正しい。まさかその答えに辿り着くとは、やはり吾輩の目は間違っていなかったようだな」
「あ? 今なんか言ったか?」
「吾輩はここだ。おーい!」
黒髪と坂本は黒猫の動きに合わせて喋る姿に驚く。
「モルガナ!? なんてお前ここにいんだよ! つーかその姿……現実でも猫じゃねぇかよ」
「仕方が無いだろ! こっちにきたらこうなってたんだよ」
恐らくこれから異世界の鴨志田を倒す話でもするんだろう。俺は他にやる事があるのでその場を去ろうとするが……。
「そこのお前。俺たちとパレスで、あっちの世界で会わなかったか?」
猫に呼び止められた。
「喋る猫に呼び止められると変な気分だな」
「っ……吾輩は猫じゃないが、お前もペルソナを覚醒させたはずだ。出来たら俺たちと協力してくれると嬉しいんだがな」
「じゃあやめておく。お前らと馴れ合うつもりは無いんでね。俺は人助けとかマジで興味無いんだわ。それじゃあな」
どうせ異世界の鴨志田を倒せば現実にも影響があるとかそんな話だろ。それなら興味ねえ! むしろ鴨志田を味方に付けたいくらいだ。今すぐ異世界に行って協力交渉をしなくては……。
と、猫と別れてから思い出す。異世界への行き方を聞くのを忘れたと。
んまぁ、異世界は学校をまるごと変化させてるし? ちょっと開けば行けねえかなぁ? と、俺は座標もろくに調べずに適当に異世界ゲートを開いた。
しかしその先には鴨志田の城とは全く別の、真っ青な壁と床に囲まれた円形状の牢屋の部屋だった。
「あぁれぇ〜? ここどこ〜?」
その部屋の中央にはぽつんと一つだけ、小さなテーブルと椅子に、真っ黒のタキシードを着込んだ細身でめっちゃ鼻の長い男が一人と、全身青色の看守服を着た二人の双子の子供がいた。
「外からの客人とは珍しい。ここは本来、我々が招待した者以外は入ること以前に認識すら出来ない筈なのだが……たまにはイレギュラーも起こり得よう」
とてもドスの聞いた低い声が空間全体を響かせる。鴨志田の異世界とは比べものにならない程に異様な雰囲気があり、最早次元すら違うんじゃないかと思うくらいだ。
「ここはベルベットルーム。精神と時の狭間に位置する場所であり、招待者の心のあり様が部屋の形状を変える。済まないな。もうこの空間には先客がいるのだ」
精神と時の狭間……? なんかすげーとこに来たんだなぁ……。
「しかして、どうやらお前にも更生の余地があるようだ。近い未来に壮絶な破滅の光景が見える。その破滅がどのような物かは詳しくは知らないが、もしお前が避けたいと思うならば、今ここで囚人になってみるか?」
「はぁ? 急に何を言い出すのかと思えば更生だと? そんなこと全く興味無いな。破滅ならいつでもどんと来いってんだ。余裕で覆して、逆に利用してやる」
「おい!! 貴様が誰だか知らないが、主人に対して言葉を弁えろ!!」
双子の内の羊みたいな巻き髪をしたクソガキがこの俺様に口を挟みやがった。
「クソガキは黙っていろ」
「っ……!? 貴様、今何と言った!? 今ここで貴様を破滅させてやっても良いんだぞ」
「カロリーヌ。口を挟むな」
「はっ! 申し訳ありません!」
主人と呼ばれた長鼻の男は、子供の名前をカロリーヌと呼んで制した。
「へぇ……マジでここ牢屋みてぇだな。テメェは看守長とでも言ったところか? つーかここってなんなんだ? 先客がいるとか言っていたが、要はそいつも何らかの方法で此処にくるんだろう?」
「私の名はイゴールだ。どう捉えてもらっても構わない。ここでは覚醒させ、若しくは獲得したペルソナを『処刑』をもって合体。強化することが出来る。しかし、本来ペルソナとは一人に一つ。ワイルドの素養を持つ者にしかそれは実現出来ない。どうやらお前は……」
「ワイルドの素養? それがあれば複数のペルソナを所持出来るってことか? まさか俺には無えって今言いかけただろ。んなもん作れば良いだろうが!!」
俺は頭上で指を鳴らして能力を発動する。
「ほう? まさか本当に自身にワイルドの素養を
俺はどんな物でも作れるし、不可能も可能にする力を持つ。つまりやりたい放題ってやつなんだよなぁ……! 存在自体がイレギュラーか、面白れぇ。先客はなんとなく予想は付いている。イゴールに一つ頼み事をしよう。
「イレギュラーなら、相応の動きを見せないとな? イゴール。その先客が来たらこう伝えろ。『どうやらお前の更生の道に邪魔者が現れたようだ』と。それからは俺のことをどう伝えるかは自由だ」
「定めに抗い、
イゴールがそういえばベルベットルームにけたたましいベルの音が鳴り響く。なんの時間か知らんが、どうやら強制帰還のようで。これに抗うことも出来なくは無いが、無理やり押し出されるようにして俺は現実へ戻った。
次回、最上。先手必勝。
次は高巻杏と例のシーン書きます!