4月15日、学校で授業中。
教室廊下側に座っている生徒が一人、ふと廊下越しに窓の外を見た時、突然立ち上がった。
「……? アレ鈴井じゃね? おいおい、まさか飛び降りるつもりか!?」
「おい授業中だぞ! 座れ!」
「はぁ!? 飛び降り!? マジかよ鈴井!」
一人の生徒が叫べば、次々と席を立ち上がり、最後にはほぼ全ての生徒が教室を急いで出て、中庭と屋上が見える窓を覗く。
きたきたきたきたきたああぁ!! 大イベントだああああ!! イヤッホオオオウ!
俺はその場から鈴井とか言う、これから飛び降りようとしているであろう者がいる屋上に瞬間移動する。
そこには既に柵を乗り換え、足のつま先をはみ出して、屋上のギリギリに立っている。体操服で、身体中ボロボロの、女生徒がいた。
なので俺はちょっとだけ心配するフリをして声を掛かる。
「なぁお前……、別に止めはしねえけどさ。本当にそれで良いのかよ」
「誰……?」
「そんなボロボロになるまで耐えて来たんだろう? どうしてそこまで耐えられたんだ? なにか支えがあったからなんだろう? お前はそれを見捨てるってのかよ!」
「もう耐えられない……」
「そうか……。話は全く知らねえし分かんねえけど、なぁ、今そこに立ってどんな気持ち? そこから飛び降りたら死ぬかもしれないんだぜ? どう? 怖い? ねぇ?」
「どうでも良い……」
「もし今のお前に勇気とか。面倒くせぇものがあったら俺が背中を押してやる。耐えられねぇってんなら……さっさと俺の言葉なんか聞かずに飛び降りろよ!! さぁ、はやく!! 背中ぁ、押すぞ〜ほらほら」
俺はタイムリミットを鈴井に課すように。そろりそろりと背中を押そうと近づく。その時だった。
「杏……私もう無理……」
鈴井は俺の前から消えた。
飛んだあああああ!! どう? どう? 死んだ!?
急いで俺も柵を乗り越えて下を覗く。バイタリティチェック……、OK。あっちゃあ〜! 生きてるじゃねぇかよぉ〜打ち所が良かったなかなぁ〜。
という訳でしっかりイベントを堪能した所で教室に瞬間移動してみんなの騒ぎを聞く。
「飛び降りだぞ! 中庭だ!」
「志帆……嘘でしよ……志帆!!」
一人は血相を変えて廊下を走り、中庭へ向かって行った。その後を俺も一応追うが、尋常では無い人だかりが出来ている中庭の奥へは入らず、遠くて様子見をする。
そうしていると、人だかりから離れた位置にいた同じくあざの多い男がその場から逃げるように去っていった。
きっと鈴井の飛び降りになにか知っていることがあるんだろう。いちいち校内の走り回るのが面倒なので、地獄耳のスキルを使って追って行った黒髪の坂本の会話を聞く。
「飛び降りてんだぞ!!」
「やめてくれ! い、痛いよ!」
「何か知ってんだろ? 悪いようにはしねぇから……」
ダメだ周囲のガキ共の声のせいでまともに聞こえねぇわ。まぁ、なんとなく話は分かった。どうやら逃げていった奴が最後に鈴井と会話した人間のようだ。それで坂本がブチ切れたようで、鴨志田がいる体育教官室に向かった。
なので俺は先回りして、坂本と同じタイミングで部屋に入り、ほぼ同時に痣の男と黒髪も入ってきた。
「テメェ! あの子に何しやがったッ!」
「なんだ? いきなり……」
「しらばっくれんな!!」
「あれが指導なもんかよ! 俺はここに鈴井を呼べって言われたんだ……きっと鈴井ここで……!」
「いい加減にしろ!! 証拠もないことをペラペラと……要はレギュラーになれない当てつけだろう!」
え、そんなことで坂本もコイツもブチ切れていたのかよ!? 浅ぇなぁ……。
「百歩譲ってお前の想像通りだとして、何がどうなるんだ? 今病院から連絡が入った。意識不明で回復は絶望的、そんなやつが何を訴えるつって!? もう回復の見込みは無いってよ。可哀想に……」
「ウソ……だろ」
「テメェ……!」
「またそれかよ。ならもう一度『正当防衛』が必要だなぁ」
「うっせぇんだよ! このクソがぁッ!!」
何がうるさいのか分からないが、坂本は痺れを切らして思いっきり拳を振りかぶり、鴨志田の顔面に向かって拳を突き出す。かと思えば、背後に立っていた黒髪がそれを寸前で止めた。
何止めてんだよ黒髪ぃ! 殴るときに止められると一番イラつくのくらいは分かってるだろ!?
「挑発にのるな」
「けどよッ!」
「ほう……お前が止めるのか。意外だな……。遠慮しないでやれよ。あ、そうか。やれないか。ハーハッハッハ! そうだよばぁッ!? ……?」
「これは坂本の分だゴラァ!!」
俺は鴨志田の言葉を途中で遮るように左頬を思いっきりぶん殴り、坂本の分と称して、右頬へもう一発殴る。
「なんだおまぁああ゛ッ!?」
「代わりに殴ってやったぜ坂本。これでスッキリしたろ! 正当防衛がなんだぁ? こういうのはやったもん勝ちなんだよ。先手必勝ってなぁ!」
「あーあーあー! 鼻血が出てるじゃないか。これは正当防衛の決定的な証拠になるなぁ」
俺は鴨志田の胸倉を掴んで言う。
「おう! また一発いっとく? 次は頭蓋粉砕してやろうかぁ? あぁっ!?」
「……はぁ。ここにいる奴ら全員退学だ。次の理事会で吊るしてやる」
おっと……やりすぎたかな? ここで口封じとして殺してもいいけど、人を殴殺するのってかなーりグロいんだよなぁ……。コイツらはそこまでグロに耐性はなさそうだしぃ〜どうしよう〜。
「そんなこと簡単に決められるわけ……!」
「こんなクズ共の言うことなんて誰が本気でとりあうか。三島! 一緒に脅迫してきたお前も同罪だからな」
え!?
「え……?」
「才能もないのに、部に置いてやった意味を分かっていなかったとはな……それに一緒に被害者面しているが、前歴のことバラしたのお前だろう? ネットに書き込みしたんだよな? ひどい話だよ」
あまりの衝撃の事実に坂本は三島の方を振り向いて酷く驚いた表情を見せる。
「三島……?」
「三島ぁ!!」
俺は三島のみぞおちに渾身のボディブローを抉るように打ちこむ。
「ごっはぁッ!!??」
「何してんだよ! お前がそんなやつだとは……。つーか初対面か。うん。悪ぃ。俺、人の話良く聞く前に理由もなく人を殴る癖があるんだよ。大丈夫? 割と本気で打ち込んだけど」
「う、うぅ……い、言われて仕方なく……」
「さ、もういいだろ。お前らは退学、退学だ。お前らの将来、俺に奪われて終わりってわけ。分かったんならさっさと出てけ!」
やっぱりコイツこの場で殺そうかな。なんか腹立つし。
「クソ……こんなやつのせいで……」
「撤回させよう」
「お前……そうだ! アレか!」
なんだ……??? もしかして鴨志田を暗殺する手でも浮かんだ? ならば聞かせて貰おう。懲らしめるんじゃなくて殺すつもりなら大歓迎だぜ?
「はぁ? あたまどうかしたか? クズの言うことは良く分からんが、やれるもんならやってみろ。処分を待つしか無いだろうがなぁ」
「おうよ、首を洗って待ってろクソ野郎。しっかりお前の首取ってやるからなぁ! ギャハハハハハ!」
俺はそう言い残して誰よりも先に体育教官室を出て、すぐに透明化のスキルを発動。黒髪と坂本を後をついていくことにした。まさかあの二人はいつの間にか殺しの覚悟を得ていたとは。流石じゃないか。
次回最上、新しい仲間を手に入れる!
次回は高巻のペルソナ覚醒と、カモシダパレスの攻略に入ります。そして行けるなら恐らく改心までいくかなぁ? 程度です。