俺は一度死んで生まれ変わった。
しかも、生まれ変わった先はジャンプで連載している呪術廻戦の世界で、御三家と呼ばれる禪院家の家系だった。
今の私の名前は禪院扇。呪術廻戦で未だにアニメで出てきていないキャラだ。
私はアニメ勢なので漫画の方はノータッチなので、この禪院扇がどういうキャラなのかよく知りはしない。
では、何故そんなキャラが原作で登場すると知っているかというと、前世の友人で呪術好きの奴からこっそりとネタバレをくらったからだ。
見せてもらったのは画像だけだが、特に印象的だったのはあの真希さんと真依ちゃんを避難させて「さらば、我が人生の誇りよ」と言って立ち去る画像を見た瞬間、3期のアニメでこの人が出てくるのかと鳥肌が立ったものだ。
あと、何故か鬼滅の刃のコラ画像を多く見せられたが、転生して深く考えてようやく理解した。
呪術界最強は五条悟だが、禪院家最強が恐らくこの禪院扇というキャラなのだろう。
それならば、鬼滅の刃で最強のキャラである継国縁壱をコラ画像に選んだのも納得だ。
友人もこのキャラは炎使いと言っていたし、相性がピッタリだったから使われたのだろう。
あっ、そういえば!確かBLEACHの山本元柳斎重國のコラ画像もあったな!よし、ますますこのキャラのポテンシャルに期待が持ててきた。
今現在、俺の中でこの禪院扇というキャラの分かっている事を纏めるとこうだ。
・五条悟が封印され、弱体化した呪術師側の強化に使われた新たなインフレキャラの1人である。
・娘である双子を愛しているが、アニメでの真希さんの家への態度を見る限り、武人キャラゆえの愛情表現不足な一面を持っている。
・コラ画像から推測するに、炎を刀に纏わせて戦う戦闘スタイル。
以上の3点が禪院扇というキャラの特徴だろう。
実際に漫画を読んでないので、所々間違った部分はあるかもしれないが、それでも大ハズレしているということはないだろう。
それから、私はすぐに修練に取り組んだ。
元々、呪霊や呪詛師を相手に戦う家系、幼い頃から呪術や武術に関する修練は当然のことと認められた。
とりあえず、基礎的な呪術や呪力の教育を受けながら木刀を握り、道場で素振りの日々を送っていた。
最初はどう頑張っても100回にも届かず、途中で木刀を落としてしまう。
その度に落ち込むものだ。やはり自分に才がないのではと……。
才能というのはきっと2種類あるのだろう。身長や筋肉といった目に見える形で肉体に現れるもの。これは鍛えればきっと常人でも追いつきこそできなくとも、足元に迫ることくらいは出来るだろうし、なによりこの肉体は禪院扇の肉体だ。
真っ当に鍛え続ければ一級呪術師に相応しい肉体になるのは必然!
しかし、もう1つの才能……肉体操作能力と呼ぶべきもの。例えば同じ性能差のキャラもプレイヤーが違えば試合結果は大きく変わる。
これは肉体ではなく精神、あるいは魂と呼ぶべきものに起因するだろう。
前世がただの一般人である私ではこの肉体を使いこなせない。
「はぁ、自らの不甲斐なさにため息が出るな」
努力すればするほど、自らの才能の無さに歯噛みする。
しかし、それで諦めてしまう事はできない。
こんな私が禪院扇という強キャラに生まれ変わったのは勿論のことだが、この禪院家では呪術師、それも強い者でなければ虐げられて当然の存在に成り下がってしまう。
実際にこの家に転生して実感したことだが、この家では女や呪力や術式がない者は奴隷のような扱いを受けている。
そのような存在を間近で見ているからこそ、才能がないと自覚していても、私は努力を続けた。
そして、その努力は一年経つと目に見える成果をもたらした。
木刀を使った素振りは100回を超えても続けられるようになり、呪力も安定して扱えるようになった。
父にはまだ及ばないが、呪力量は二級呪術師に匹敵するレベルに達し、剣術では大人でも一部の実力者を除いては負けないようになった。
通常、この年齢で大人に勝てるほど強くなれば、調子に乗るのが普通だろう。
実際、周囲の人々は既に私を次期当主と見なし、騒ぎ立てているが、未来を知る私にとってはそれは笑い話に過ぎない。
だからこそ、私は何度も当主の器ではないと否定しているが、皆はそれを謙遜だとしか受け取らない。
しかし、それはさておき、問題は他の次期当主候補たちだ。
彼らは、子供でありながら確実に実力をつけている私を脅威と見ている。
直接的な誘いはないものの、遠回しに自分の派閥に加わるよう脅しに近い誘いを何度も受けている。
過激な者たちは、稽古と称して、術式を使った実戦形式で私を苦しめようとする。
実戦経験のない私と、何度も任務をこなし、実戦で呪霊を退治してきた呪術師とでは、どちらが勝つかは容易に想像できる。
案の定、私はいつも敗北して地面に倒れていた。しかし、相手も大差なく、倒れはしないものの、地面に膝をつき、体中に火傷の痕を残していた。
未だ禪院家最強に至るまでは程遠く、敗北の苦渋に苛まれながらも、翌日には昨日と同じように再び木刀を振るう。
そんな私の姿を見て恐れる者も家の中に現れた。稽古と称した虐待同然の扱いをされた翌日に平然と昨日と同じことを繰り返すのだ。
まだ9歳の小学生でありながら、そのストイックな態度は異常に映るのだろう。
「扇様、お怪我の具合は?」
「問題ない。それよりも稽古を続けよう」
「しかし、昨日も……」
「私は大丈夫だと言っている。心配は無用だ」
この者は私のお目付け役として父からつけられた分家の人間だ。
ナルトのネジが女体化したような見た目の彼女だが、その年齢は私の倍くらい離れており、小学生に高校生が付き従うという光景は、前世一般人の私からすれば、こそばゆいものに感じるが、ここではこれが日常だ。
今では慣れたもので、堂々とした態度で彼女を付き従えている。
分家ゆえに本家に生まれた私に逆らうことが出来ない彼女にとって私は、どう接していいか分からない相手に見えるだろう。
無茶や理不尽な扱いこそされないものの、守るべき主君である私自身が傷を負いながらも過酷な稽古を続けている。
従者にとって、そのような主君の姿は精神的な苦痛に他ならない。
従者は主君の言葉を絶対とするが、主君が怪我をしたり危険を冒す行為を見過ごすことは、それ自体が問題である。
しかし、そんなことは私には関係ない。
「従者風情が私に逆らうのか?」
「い、いえ!そのような事は!」
私の軽い威圧に分家の彼女は冷や汗を流しながら首を横に振った。
そんな姿に罪悪感を覚えるものの、強くなる為には僅かな時間さえも惜しく感じるのだ。
原作まで時間は充分に存在する。しかし、それまでに才能のない私が原作の禪院扇に追いつけるのか?
何度もそう自問自答を繰り返すが、その度に私は木刀を持ち稽古に励むのだ。