ハクモクレンはアリウスに咲く 作:白栗
──私は、アリウスという狭い世界においては裕福な生き方ができていた1人だろう。
今でもそう考えている。
実際、満腹とまではならずとも、満足して生きていけるだけの食料に、大量ではないにしろ、喉を枯らさなくても良い量の綺麗な水。私の趣味に若干合わないとはいえ、清潔な服。心からは満たされないが、遊んではいられる環境。
カタコンベの外と比べれば、およそ裕福ではないだう。自由に食べ、自由に飲み、好きな服を着て存分に遊ぶ。私の記憶する限り、そんなことは今までになかった。
……だが、当時のアリウスの子供の多数派──それさえも満足に享受できない子供と比べれば、私は確実に、遥かに豊かな生活をしていた。
……少し疎まれてはいたが。
今は随分と色褪せたが──思えば本当になぜこうなったかはわからない。2つ上だったにしろ、姉さんは家族似だったのに、なぜだろうか。
さておき、それが理由なのだろう。おおよそから──主にほとんどの使用人と祖父及び祖母からは避けられて……というよりは、多分忌み子として嫌われていたのだろうが、そんな人たちはどうでもいい。
父親と母親がいる。姉さんもいる。邪険に扱わない使用人もいる。
私自身はまだ20を過ぎた大人ではない。ただそれでも、心情はともかく人生の中では1番に満たされていた時期だっただろう。
きっと違いない。
その満たされていた分、とも言えるのだろうか。私は幼い頃から丁寧に教育をされていた。
例えば2つの字の読み書きや簡単な計算、作法と道徳、そして倫理。
「貴方にはアリウスを導くための正統たる血が遥か古来から継がれ続けています。……統一は、我々には成せませんでした。ですからどうか貴方と姉様で、私たちの悲願を──内戦の終結と統一を成して下さい」
教育係から何十度も
そんなことはあったが……私にとってはいつどこの時よりも幸福な時期だった。
家族と身を寄せ、立派な教育を受ける。不自由だけど遊んでいられる。
外で遊べないだとか、食べる量が少なく感じたりだとかの、幾つか満たされない所はあったけれど──それでも私にとってはとても幸せな、小さい箱庭だけれど幸福な世界だった。
…………私の5歳の誕生日に滅んだが。
──アリウス解放戦線。
独立派、傘下派、統合派。
カタコンベ内で連立していた三大勢力のうち、アリウスの独立を掲げていた当時の最大勢力にして一番の過激思想。
そこの上層部が、いつまで経っても旗色を鮮明にしない私たちの一家に業を煮やし、とうとう我慢の限界を迎え夜襲を仕掛けさせたのだ。
多分「何をやっても良い」と伝えられたのだろう。自慢だった巨大な煉瓦造りの家は荒らされたし、中も燃やされて灰ばかりになった。……10年後に見に行った時にわかった事だ。
当然、家族たちは皆死んだ。使用人、教育係、父親も母親も皆問わず。……これも10年後に骨だけになった骸を見てようやく確信できた。
姉さんもその一人だった。彼らとの違いと言えば……せめて私の目の前で、死んでしまった事だけで。
私の姉は──ヨル姉は、間の抜けた能天気な人で、優しすぎるし感情で突っ走ったりする楽感主義者。
アリウスだと異端な、いっそ気味が悪いくらいにどこまでも普通な、しかし私にはあまりにも眩しい人。
あまり良い目で見られていなかった私を「妹だから」なんて理由でよく甘やかしていたし、自分のものを削ってまで食事と水を分け与えていた。気分の悪い発作を起こした私の事もよく心配していたっけな。
「だって、あたしはお姉ちゃんだから!」
「なんでこんな私を心配するの?」と聞いた時の答え。
それが彼女にとっての普通な対応だった。
……でも、私にとっては確かに救いで。
嬉しくて。
例えるなら、白黒の写真に色彩を与えられたようで。
だから私は、そんな姉さんが好きだった。
……そんな姉が、ろくに戦いさえ知らなかったくせにたまたま持ってた拳銃で応戦して、数と質で押し潰されて致命傷を受けて。
……バカだ。私の姉さんは本当にバカだ。身勝手で最低なバカの自己犠牲主義者の自己犠牲主義者だ。
大人しく普通に逃げれば良かったんだよ。私なんか心配しないで。
…………そんなバカな姉さんを、ヘイロー付きのくせに大人未満の脆さな私が怪我するのを承知で無理矢理引きずって。
無茶するな、なんて説教されたり──どの口が言っているつもりなのか──、姉さんに謝られたり──謝るべきは私にも関わらず──、昔を振り返っていたり──まるで死ぬ前かのように。
そんな事を長々として、最期に掠れた声で「長生きしてね」なんて言って、ポックリ死んだ。
……私は、ウジ虫だ。
いざと言う時に動けず、誰も守れず。
その癖、誰かに守ってばかりの──屑で、最低な寄生虫。
誰にも手をつけられようのない、どうしようもない汚物。
それを深々と認識した、史上最悪の一夜だった。
──その後は簡単な話だ。
夜襲の成果として、偶然生き延びていた私をこれ幸いとばかりに捕囚。
抵抗する気力も無かった私はそのまま連れていかれ、捕囚者で固められた部隊であるカラード部隊──訳すと「首輪付き」となるそこの一員として内戦へと参加させられた。
元々の運用としては使い捨て。動かすには死んだ家族を人質に使う形で。タチの悪いことに、姉さん以外を使っていた。
目の前で死んだ姉さん以外の安否を知らなかった私は、それに踊らされていた。
ある時はステルスによる敵本拠地での暗殺。
またある時は戦力温存のための一対多。
別の時では内通者や反駁者の処分。
酷い時は敵対勢力や中立であるはずの集落への襲撃。
『人殺しはしない事です。1度すれば、その選択が付き纏います』
──目の前のヘイロー付きは殺した。刃に神秘を乗せて首を刎ねれば、人は呆気なく死ぬ。
……無理だよ、私には。
『同じ所にいる人とは……仲良くしてほしい、とまでは言いません。ですが挨拶は出来る関係でいましょう。お互いに、そちらの方がいいでしょうから』
──目の前の大人は殺した。曰く、「トリニティ統合同盟」──統合派の内通者だったそうだ。
……無理だったよ、私には。
『弱い人を虐めるのは以ての外です。理由なんてご存知でしょう? ……恵まれた生まれなら、誰かのためにと振る舞うのが正しい在り方です』
──目の前の集落は死んだ。中立を謳い続けていたから、確実性の為に毒ガスを撒いておく必要があったと。
……無理なんだよ、私には。
誰かを殺す度、過去に教育係に説かれてきた言葉が思い返される。
「私は屑だ」「生まれるべきではなかった」。そんな言葉が常日頃から過ぎっていて。
だからそうでありながら生きている、というのが──私は本当に苦痛でしかなかった。
殺した時の声が頭の中で反響するのは当然で、殺した人たちの顔が、鮮明に蘇るのだ。
恨みと怒りと、そして死にたくないという感情が入り交じり、目の前の畜生に──私に向ける、あの顔が。
謝りたい。殺してしまってごめんなさいと、懺悔してしまいたい。
──しかし一体、どうすれば彼女たちへ謝ればいいのだろうか?
そもそも殺してきた人を憐れむことは、はたして彼女たちへの侮辱なのだろうか?
憐憫の念を思わせることは、はたして殺してきた人たちへの侮辱なのだろうか?
謝ることは、現実からの逃げなのだろうか?
『散々人を殺しておいて、どの面下げて哀れんでやがるっ……人を被った、最低未満の殺人鬼め……!』
あの声が、今でもついて離れない。
──でも本心をいえば、ごめんなさいなんて、言い出して、目の前の事から逃げ出したいのが本当で。
でも確かに、私が殺したのだから、それと向き合わなければいけないのも事実で。
そうやってうじうじと悩んで、しかしただ生き延びるためにも成功はさせていたら、いつの間にか下らない2つ名が付いていた。
──黒い犬。
姿を見られるな。話しかけるな。体に触れるな。
どれも死に至る理由となる。
……下らなくてしょうもない、反吐の出るような2つ名だ。
ただそれでも、彼女、もしくは彼らたちにとって恐れるには十分だったのだろう。
暗殺に長け、命令が下されたとあれば味方殺しも厭わない。
恐ろしく思い、嫌われ、遠ざけるのも当然だったろう。
…………ただ、そんな下らない2つ名を気にしない。そんな友人も……たった一人だけだが確かにいた。
──
アリウスにのさばっていた傭兵部隊「フォスフォロス」。そこにいた、特別強い同年代の子供。
──私の、たった一人の友人。
そして、2つ目の色彩。
こんなどうしようもない私を、正面から見てくれた。
普通に話してくれた。
──それに、ある作戦で瀕死になった私を助けてくれた。
「戦友。……遠ざけたい気持ちはわかっている。それでも私は、キミを良く思っているんだ。……私は、簡単に死にやしない。だから、キミの友達にさせてくれ」
その言葉を聞いて、ようやく……気が楽になった気がした。
それに、薄々抱いてもいた。
姉さんのような、近くにいてくれると安心するような温かみとは違う……でも、心を許してずっといて欲しいと思えるような、そんな温かみ。
センとの隣なら、少しばかり気が楽になれた。
私は確かに、それを白光センに抱いていたのだ。
……ああ、殺したくないな。この人と、ずっと一緒にいたい。大きくなっても……大人になっても。
……だが、命令をされたのであれば、例えセン相手だとて殺さないといけない。
……必要なら。
そんな必要なんて、私が死ぬまで訪れないでほしい。
そんな感情の渦の最中、時は過ぎて。
ある時、敵対勢力の拠点を殲滅するようにと命令を下された。
その時は最早疑問にも思わず作戦区域へと向かったのだが……今に思えば、あまりにも情報がなかった。
騙し討ちをするための、偽の作戦だったのだろう。
……その結果があれだ。
拠点で待ち構えていた敵諸共騙し討ちしようとした軍勢を戦闘不可能にするか殺し──そして、ある事を聞いた。
この作戦が嘘であったこと。
私は解放戦線の側でも恐ろしく思われ、疎まれていたこと。
──そもそも私の家族なんて最初から死んでいたこと。
……そう言っていたヘイロー付きは多分夜襲に関わっていた一人なのだろう。解放戦線の犬、殺すしかできない凡愚という最後の罵り言葉に混じっていた。
一つ一つ聞いていく度に、背筋が凍りつくような感覚が伝い、吐き気を覚え。瞳がどこか褪せていく気がして。
……気づけば周りは瓦礫と死体──それも酷くみじん切りにされたものばかりがそこらに転がっていた。
そして死体のボロ切れに付いた紋章──アリウス解放戦線のそれを見て、私は察した。察してしまった。
──私は一抹の感情で、戦火に油を注いでしまったのだ。
…………アリウス統一。その直前の話だった。
……ここで終わりではなかったというのは、最大の不幸中の僅かな幸いだった。
もう自分が嫌で、嫌いで。
いっそ死にたい。こうやって苦痛なだけの命なら生まれたくなかった。
そんな事を考えて座り込んでいれば、ふと声がした。
「──貴方が、かの首輪付きですね」
声のした方向を見上げると、1人の大人。
外見こそ機械仕掛けや動物らとは似ても似つかないが、ヘイローが無いことから大人であることがわかった。
当時の私は無気力だった。無意味どころか、余計に戦火に薪を焚べることをしたから当然だったにしろ。
大人のただ聞かれたことに首肯して。
「貴方には新しい世界を築ける能力を持っています。共に内戦を終わらせましょう。築きましょう、新たなアリウスを──理想のアリウスを」
──その時私は、光を見た。
こんな灼けた、最低な所にも目を向けてくれる誰かがいてくれるのだと。
こんなろくでもない私にも、救いの手は差し伸べられても良いのだと──しでかした責任を取る機会が与えられるのだと!
だから私は、即座にかの大人──今のマダム──ベアトリーチェへと忠誠を誓った。
……あの虐殺以来は顔を合わせていなかった戦友とは、最後に会う機会があった。
「……そうか、戦友。キミはそっちを選んだか。……選ぶことはいい事だ。人は選ばなければ、何もできないからな」
──さようならだ、戦友。次に会うときは敵同士だ。
その言葉以来、白光センと対立する立場になった。
あの大人は信用できない。きっと将来に恐ろしい事をしでかすという理由で少数先鋭化した白光派──「アリウス独立軍」。
長く続いた内戦を集結させられるんだ。これ以上戦わないために戦うという意見に満ちた多数側のベアトリーチェ派──新生アリウス。
それでも、希望が見えていたから頑張れた。
ようやく、こんな最低でどうしようもない、無意味な内戦を終わらせられるのなら、なんて思って。
それに、ベアトリーチェがいた。
──私を人とみなし、意思を尊重し、助けてくれる大人がいた。
その恩義に報いるために、とにかく全力を尽くし続けた。
本拠地を崩し、物資を鹵獲し、各個撃破を続け、──アリウス独立軍をようやく壊滅させて。
私たちの悲願だったアリウスは、ようやく統一された。
それでめでたしめでたし、だ。
………………。
…………時々、思い出すことがある。
白光センを殺した時を。
センは最後の最後まで抵抗するつもりだった。
それこそ、アリウス独立軍が崩壊してたった1人になっても。最早逆転の可能性の一抹さえ無くとも。
だから最後に、私へ挑戦状を突きつけたのは彼女なりのワガママだったのだろう。
「……お互いとも考えを変えるつもりは無いんだろう、戦友?」
「キミはあの人に付き、こんなしみったれた内戦を終わらせたいと願った。だが私は将来の破綻を恐れ、だからこそ私たちだけの力で自立すべきだと考えた」
「最早私しかいない事はわかっている。それでも──譲れないもの、というものはある。……戦友。キミと同様に、な」
──だから、最後は殺し合いで決めようか。
それをきっかけに始まり、殺し合いをして。
致命傷を負わせて、そこで殺し合いそのものは終わった。
……殺し合いそのもの、は。
自分自身の血溜まりに沈むセンは、私の顔を見てこう言った。
「……せん、ゆう。さいごは……わらっておくってくれるんだな、せんゆう」
──私が、笑顔で?
…………ち、違う、違うっ!
違う違う違う!
私は殺したくて殺したんじゃない!
私は、ただ必要だった、必要だったから、そうしないといけなかったから……!
だから違う! 違うったら違う!
望んで殺した訳じゃない!
認めたくない事実を受け入れられず、心の中でずっと言い訳を言い連ねて動けなくなっている中。
──「ありがとう」なんて言って、センのヘイローは砕け散った。
…………なんで。
なんで、ありがとうなんて言うんだ。
なんでありがとうなんて言った!
なんで殺した当の本人に、恨み言の一つさえ!
なんで私を、こうもなっても戦友だなんて!
なんで私なんかが生きている!
生まれるべきじゃなかった!
私なんて生まれるべきじゃなかったんだ!
姉さんとセンの代わりに野垂れ死ねば良かった!
今まで殺してきた人達の代わりに苦しんで死ねば良かったんだ!
……もう、疲れた。
もう疲れたんだよ。
誰でも良い。
誰でも良いから、終わらせてほしい。
どうして私が生きている?
どうして私が何も報いを受けずに生きている?
これが伝わっているのなら、ああ、誰か。
──わかっている。
こうして、生きていることが罰であることなんて。
でも、どうか。どうか。
──こんな私を、どうか「これで終わりなんだ」などと思わせないで。
どうか一瞬で、終わらせてくれ。
──……眠気が少し払われたような感覚を覚える。
それに身を任せ少し目を開いてみれば、もう朝の時刻らしい。
…………夢、か。
普段の見る夢と比べれば、今日はやけに鮮明だった。──その分、何か強烈に印象に残るもの──子供の泣き声だとか、死に方だとかは出てこなかったけれども。
睡眠導入剤と怠惰由来の眠気を振りほどきながら周りを見渡せば、そこはいつも通りの光景──椅子とサイドテーブルだけの全く無機質な部屋が目に映る。
灰か砂になりたい。死にたいという気は起きないのだが、出来ることなら気が済むまで灰になっていたい。
そんな怠慢をほざく身体に鞭打って椅子から立ち上がり、着替えている最中に寝間着と手袋の境界からちらりと見えた、既にはめ込んでおいた左腕──当たった光が真鍮の色に鈍く光る筋電義手に気を向ける。
私の左腕の、肩より下は義手だ。
戦友──センと殺し合った時、彼女のプライマリウェポンであるアサルトライフルで吹き飛ばされたというのが理由でだ。
無駄に高い生命力でどうにか帰還した後、それを見かねたベアトリーチェが用意し、以後は身体の成長ごとに更新されつつも使い続けている。
……特段、慣れた訳ではない。
生身の右腕と比べて反応に0.2秒の遅れがあり、また握力も生身の部分と比べて非常に弱まっている。
──あるいはそもそも、私自身が衰えたからなのかもしれない。
以前は指二本で銃身を気楽に曲げられたというのに、今では全力でやらなければできなくなった。
出せる速度の上限も格段に落ちた──厳密には再現できなくもないのだが、骨が確実に砕けるだろうし──高い再生力で誤魔化せると言えど──そうした所で全盛期とは程遠い。
身体自体もより痩せ細り、またより高くなり、しなやかさも小回りの良さも落ちた。前のようには決していかない。
……しかし、腕を擬似的にだが二本維持していられて、左腕のみに限れば脆すぎる身体もマシになっている。
そもそも私の殺しというのは、暗殺だ。
対象が無意識であるうちに殺し──あるいは発覚されようとも、ミスディレクションとステルスとを駆使して仕留める。
それに握力も壁のディンプル──窪みに指を掛ける程度はまだできる。
速度とて相手が一瞬見失う速度はどうにか維持できており。
つまる所、大きな差し支えはないのだから、憂うだけ損であるのだろう。
4時半手前を示す時計を見やりつつ、焼け爛れた左半分の顔以外を短く切った、灰と白の2色と化した髪を中折帽で隠し、首には5歳の誕生日にもらった手編みのマフラー──随分と擦り切れ、スカーフのようになりかけているそれをきつく締める。
ベアトリーチェが言うイタリアンスーツで上下を揃え、その上には3つの紋章と様々な仕込みが施された特注の──192センチメートルの背丈に合わせられたトレンチコートを羽織る。
靴は底と先端に鉄板の仕込まれたロングブーツ。
戦友のアサルトライフルを肩がけに、右の腰には遺品のサブマシンガンを、左の腰には解放戦線の支給品だった大鉈を。
内戦以前から使い続けてきた拳銃と、かのベアトリーチェから渡された中折式の拳銃を片方ずつ大腿部に装着し。
こうして黒犬部隊──規律違反者に懲罰や粛清を行い、また生徒たちに殺人の技術を教育する部隊──その総長としての姿を形取った。
──4時半。訓練を仕掛けるにも仕事をするにも、まだ早すぎる時刻か。
……ならばと、私は慰霊墓へと向かうことにした。
内戦が終わった後、ベアトリーチェがアリウス分校の中に立てたものだ。
所詮は人でなしのやる所業だ。形だけしかできないし、仮に祈った所で、私は皆のいるだろう天国ではなく地獄に行く。
……だからこれは、私の醜く愚かな自己満足だ。
その戒めを反芻し続ける。
──【
──だったらせめて、どうか私の定義する【
ただ、その一心で。