ある反奴隷主義者の手記   作:無職のプーさん

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 タグにおねショタを追加しました。
大体は小汚いおっさんが独り言ブツブツ呟いてるだけの話なんですけどね。



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 リーバー盗賊団の壊滅により、彼らの元から逃げ出した多くの捕虜が荒野を彷徨うことになった。まだ洗脳が完全でない非戦闘員であり、鎖で繋がれ『実習』として犬のように連れ回されていた哀れな連中だ。

 

農村は彼らの保護に積極的だった。無論反対する者も多かったが、一部の若者たち(少年含む)が声を上げ、近場で行き倒れた者を中心に介抱していった。

私はもちろん反対したかったが、村の方針に口を出すのもどうかと思ったので何も言わずにおいた。

 

結果的にそれは正解だったのかもしれない。元捕虜たちは感謝を示すために熱心に働き、少なくとも人手不足に喘ぐことはなくなった。

 

 

 

 

 そのころ私は供のハイブ人を連れ、荒野での死体漁りに執心していた。彼の足腰が悪いというのがウソだと分かったので(薄々察しはついていたが)、遠慮なく使い潰すことにしたのだ。

 

身体を労るような動きから年寄りだと勝手に決めつけていたが、どうやら私よりもずっと若いらしい。ハイブは見た目で歳が分からないため、同情を誘うようあえて年寄りぶる者が多いとのことだ。

 

彼らなりの処世術らしいが、私に言わせればそれは甘えだ。奴隷らしくこき使ってやる。彼は命の恩人ではあるが、それはそれ、これはこれだ。

 

 

 

 

 あの夜以来、リーバーたちの亡骸は荒野のあちこちで見られるようになった。大方敵対勢力に襲われたのだろう。連中に取って代わろうとするクズどもなど掃いて捨てるほどいるからだ。

 

彼らはたいてい文無しだが、クロスボウと矢束はそこそこの値で売れる。腰に差した細身の鉈剣も、時たま上等な物を見つけられた。

 

死体漁りなどクズの所業だ。無論自覚はあるが、言うまでもなく私はクズだ。クズがクズの所業をして何が悪い。誰にも咎められる筋合いはない。

ただ、通りかかるたびに屍にハエが湧く景色など見たくないので、埋めることくらいはしてやっていた。これで私はクズの中でも、比較的マシなクズというわけだ。

 

カニは死体をつまもうとするので、少年たちに預けることが多くなっていた。正直あの惨劇の後だと、たとえ子ガニでもしばらく視界に入れたくない。

 

 

 

 

 ある日の気まぐれで、私は農村を一望できる崖の上に登っていた。

夕日の光がガットの入り江の鮮やかな青と混じり合い、染み入るような紫の色が海岸一帯を包み込んでいる。

畑に沿って並び立つ小さな小屋に一つ、また一つと小さな灯りが灯っていき、風に乗って香ばしい夕食の香りが漂ってくるような気がした。

 

そうしてふと横を見て、私は心臓が飛び出すほど驚いた。ノスタルジックな気分が台無しであった。そこに無造作に転がっていたのは、バラモンの生首だったのだ。

 

あれからすでに一週間は経っているが、腐敗の兆候は現れていない。屍肉であれば選り好みしないウジたちも、この男には文字通り歯が立たぬのだろう。

干涸らびてやや黒ずんではいるが、人相がはっきり確認できる状態だ。

 

「こんなところまで飛ばされていたのか」

 

私は思わずそう口にしていた。その表情は獰猛な笑みに歪んだまま固まっている。死ぬことなどまるで恐れていない顔だ。

 

 

 

 

 彼は間違いなく狂人だが、思慮深い一面もあった。自身の死を想像できなかったはずもあるまい。あのときあの状況で様々なことを天秤にかけたのち、シェクご自慢の闘争心に身を委ねたのだろう。

 

その結果は惨々たるものだった。「私から勇気を学べ」などと最期に言っていたが……彼のそれは勇気ではない。無謀と言うものだ。

 

だが確かに学びは得た。やはりこの地で最後に生き残るのは臆病者だ。慎重で卑怯な者ほど長生きできる。この鬱屈とした世界に、勇者の出る幕はないということである。

 

 

 

 

 バラモンには50000Catという懸賞金が掛けられていた。死体なら半額の25000Cat。いずれにしろ高額には違いない。都市の憲兵所に持っていけば、確実に大金が手に入る。

 

「……重いな」

 

私は彼の首を持ち上げ、また独り言を呟いた。

しばらくの間迷っていたが、結局やめにした。すっかり忘れていたが、私自身もいちおう賞金首だ。賞金首が賞金首を届けに行って捕まるなんて冗談にもならない。

 

他の者を使えば済む話ではあるが、その当てもなかった。

少年は道徳的に嫌がりそうだし、復讐者の女にはそもそも首を見せられない(消えかけた火に油を注ぐようなものだ)。私の隣にいるコイツ(ハイブ人)だと金を持ち逃げされそうだし、舌のない方は喋れないので憲兵と交渉ができない。

 

 

 

 

 結局私はその場で穴を掘り(ハイブにも手伝わせた)、付近の手ごろな岩を使って簡単な墓を作ったあと、手を合わせずに立ち去った。

 

死後の平穏まで祈ってやる義理はない。どうせ行く先は地獄(ナルコ)だろう。そんなものが本当にあればの話だが。

 

むしろ天国も地獄も、神さえもいない方がいい。

綺麗事の通じぬこの世界において、清廉潔白な人間などいやしない。いたとしても、そういう人種は若いうちに死ぬか、あるいはとっくに絶滅しているはずだ。

罪の有無で人を量ることが出来ぬのなら、天国と地獄に何の価値があるだろう。

 

そしてそうした罪なき優しい人々の生を守れぬなら、神の存在にもまた意味はない。

 

 

 

 

 それから数週間が過ぎた別の日のこと。私は舌のないハイブ人に連れられ、農村からやや離れた(どちらかと言えばブラックスクラッチに近い)渓谷に向かっていた。

 

少年が彼を使って私を呼び寄せるのは珍しい。

手紙を運ばせることはあるが、用があるときは大抵本人が出向いてくる。

おそらく急ぎの用に違いない。そのときはたまたま暇を持て余していたので、駄々をこねずにすぐ彼の後を追うことができた。

 

 

 

 

 渓谷の切り立った崖の上に辿り着くと、そこには二つの人影があった。一人は例の少年、もう一人は農村の住人である若い青年だった。

彼らは目立たぬように地面に伏せ、青年の方は狩猟用クロスボウのスコープを覗いている。

 

「アイツらが見えるか?」

 

青年の問いに、私は顔をしかめて前方に目を凝らした。眼下に広がる荒野の陰に、蠢く小さな人影が見えた。規則正しく隊列を組み、川沿いに沿って進んでいるように見えるが、それ以外のことは分からない。

視力には自信があるが、それでもこの距離から肉眼ではっきり捉えるのは厳しかった。

 

「何者なんだ?」

 

私が問うと、青年は一言、忌々しげに呟いた。「『皮剥ぎ盗賊』だ」

 

私はしばらくぼんやりと彼の後頭部を見つめていた。思い出すのにしばらく時間を要したからだ。

確かスケルトン(機械人)で構成された武装集団で、その名の通り人間を捕まえて生きたまま皮を剥ぐという。

 

正直に言って、このときは彼らにそこまで怖ろしさを感じていなかった。ガットやその近辺で遭遇することは今までになかったし、何よりインパクトに欠けると思った。

 

皮を剥ぐから何だと言うんだ。生きたまま喰われることが日常茶飯事のこの時代、生皮を剥ぐくらいどうということはないだろう。好きなだけ剥がせてやればいい。何に使うのかは知らないが(このときの私に何に使うのか教えてやりたい)。

 

「最近、この辺りでも連中をよく見るようになった。リーバーどもの縄張りに入り込んできてるんだ。普段ならバラモンが黙ってないが、アイツはもうこの世にいないからな」

 

青年は溜め息を吐き、スコープから視線を外した。

 

「キリがないよな。あんたらの努力も虚しいもんだ。クズは何処からともなく、いくらでも湧いてくる」

 

「……そうだな」

 

私は適当な相槌を打ちつつ、私が一体何か努力をしただろうかとしばらく思い返していた。

 

「こんな村いつか絶対に出ていってやる。ガキのときからそう思ってるんだが、なかなか良い機会がないんだ」

 

彼のこの言葉に、少年は意外そうな顔をした。「出ていきたいの?」

 

「いずれはな」

 

青年は上体を起こし、片膝をついた姿勢でいったん静止した。きょとんとした様子の少年に気づくと苦笑し、彼の頭を軽くポンポンする。

 

「でも、最近はそこまで悪くないとも思えるんだ。あんたたちが来てくれたおかげかもな」

 

 

 

 

 その後、少年に農村の防衛について相談され、私は「砲兵を雇うべきだ」と助言した。

鉄壁とまでは言わないが、村は強固な壁に囲まれている。周囲の吹き晒しの地形も悪くない。もっと射手を増やせば野盗どもの迎撃は容易になる。そう判断してのことだった。

 

「それなら凄腕を一人知ってる」とクロスボウを背負った青年が口を挟んだ。アイソケットにいるシェク人の砲兵が、私たちのお眼鏡に適うとのことだ。

何でも昔からの馴染みであり、彼に射撃のイロハを伝授した一流の狙撃手だとか。

 

怪力と打たれ強さが自慢のシェクが砲兵?

彼らに射撃の適性があるなど聞いたことがない。本当に凄腕なのか。

 

私は胡散臭く感じたが、少年は信じることにしたらしい。村に戻るなり手早く荷物をまとめ、アイソケットに旅立っていった(復讐者の女も慌てて後を追った。最近よく置いてけぼりを食うらしい)。

 

 

 

 

 そうして私はキャンプに戻る途中、またもや仰天するものを見つけた。コバルトブルーの砂浜に打ち上げられた、巨大なカニの死骸である。

地に伏しうなだれたような頭部には、血錆に塗れた大剣が突き立ったままであった。

 

やはりあの一撃は致命傷だったのか。

しかし以前の夜とは異なり、頭部の剣以外にも大小様々なリーバーの武器が甲羅や腹部に刺さっていた。果たしてどれがトドメを刺したものなのか。カニ本人にも知る由はあるまい。

 

流れ着いた大型動物の死骸は天の恵みであり、ご馳走だ。すぐにビークシングたちに貪り食われるだろう。私は逃げ出したい衝動を抑え、甲羅に足を掛けてどうにか大剣を引き抜いた。

 

見た目よりは案外軽いが、それでも武器としては規格外の代物だ。ハイブと一緒に二人がかりでその場を離脱し、岩場がちの丘のキャンプまで何とかそれを持ち帰った。

腹を空かせた恐ろしい首長竜の群れと危うくすれ違うところだった。

 

 

 

 

 そして後日、大剣は崖の上のバラモンの墓まで運び、墓石代わりにしてやった。誰かに盗まれるかもしれないが、そのときはそのときだ。束の間の供え物だと思えば良い。

 

「どうしてここまでしてやるんすか? 売った方が金になりますよ」

 

ハイブの胡乱げな問いに、私は答える言葉を持たなかった。

 

確かにここまでしてやる義理はない。彼には危うく攫われるところだった。連中の隠れ家に連れて行かれていたらどんな目にあっていたか。考えるだけで恐ろしい。

 

しかし相手が敵であれ怪物であれ、死者に対する敬意というのは持つべきだ。

それが私がクズの中でも比較的マシなクズであるために、必要なものなのである。

 

それに、こうしておけばリーバーどもの亡霊が私に感謝し、死体漁りを大目に見てくれるかもしれない。死人に恨まれることが減れば、天国への道だって開けるだろう。

 

そんなものが本当にあればの話だが。

 

 

 

 

 

 

 




登場人物紹介
『クロスボウを背負った青年』
農村の若者。名もなき村人モブその1。
物腰穏やかで冷静。しかし年相応に都会に憧れている側面もある。テックハンター志望。
今まで「若い村人」で一括りにされていたが、基本冷静な言動してたのは大体コイツ。とびきり美形でも男前でもないが、やたらと女にモテるタイプ。
モテるヤツってなんかこう、常に余裕あるのよね。モテるから余裕があるのか、余裕があるからモテるのか……(因果性のジレンマ)
さりげないボディタッチができるのも強い。俺が頭ポンポンとかやったらその場で通報されるからね。
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