ある反奴隷主義者の手記   作:無職のプーさん

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サボってた分は書けたので次からは月1更新に戻します。
サボってたこととは関係ないんですが、最近Rimworldにハマってます。MODが豊富でなかなか飽きが来ないですね。特に表情を追加するヤツがお気に入りです。これは絶対外せません。
自拠点に攻めてきた敵対NPCが瀕死の状態で野に晒され、涙を浮かべて顔色がどんどん悪くなっていくそいつをしぶしぶ救命するも結局助けられず、めっちゃモヤモヤしながら墓を作ってやった段階で「何で俺がこんな気持ちでここまでしてやらなきゃいかんの! 悪いのは攻めてきたコイツだろ!?」と画面に向かってガチギレするまでがワンセットです。いやあ、最高ですね(←??)
なお、上述の話はサボってたこととは全く関係な)ry




18

 

 古代帝国が滅びてからというもの、多くのスケルトンが迫害から逃れるため、人の手の及ばぬ僻地へと移り住んだ。

ここブラックデザートシティも、そうした場所のうちの一つである。

 

生物の住めない魔境を人工的に造り出しているという説もあるようだが、それはさすがに極論だろう。

確かにこの大陸各地の環境は地形学的に極めて奇妙と言わざるを得ないが、それでも二足歩行の知性体如きが天地を意のままにするなどあまりに恐れ多い考えだ。

 

こう書くと私が信心深い男(オクラン教徒)に聞こえるかもしれないが、別にそんなことはない。星に寄生するダニかノミのような存在に過ぎぬ我々が、身の丈を越える所業に手を出すべきではないという話をしているのである。

 

ガットいう過酷な地に長く揉まれていた私にとって、天地というものは神かそれ以上の何かだ。そうとしか説明できない事象に出くわしたことも一度や二度ではない。

我々の想像を絶する超自然的な意思に似た何かが、おそらくこの世界にはある。

 

 

 

 

 

 だいぶ話が逸れたが、とにかく私は仲間たちより先にスケルトンの街に辿り着いた。

 

何百年と続くスケルトンの街と聞くと、失われた古代の技術に彩られたきらびやかな景観を想像するかもしれないが、とんでもない。びっくりするほど物寂しい場所だ。

金属や廃材で作られた黒い建物が電灯の無機質な光に照らされ、降りしきる灰色の雨の中のっぺりと浮かび上がっている。

大通りに人(機械人)は少なく、歩哨と思しき者が数人立っているだけだ。建物の窓から漏れてくる明かりもほとんどなく、皮剥ぎ盗賊の拠点の方がまだ活気があったような気さえしてくる。

 

通りを過ぎようとしたちょうどそのとき、一人のスケルトンが唐突に声をかけてきた。

 

「食〜べちゃ〜うぞ〜〜」

 

……いや、これは声をかけるとは言わないかもしれない。

ただのつまらない悪戯だ。しかし皮剥ぎ盗賊がトラウマとなっている私にとって、この悪戯は実に効果的だった。

 

「ひいっ!?」

 

私は情けない悲鳴を上げて尻もちをついた。腰を抜かしてしまったのだ。

 

「……ごめん。そんなにびっくりするとは思わなかった。大丈夫か?」

 

その歩哨のスケルトンは手を貸そうとしたが、私はなんとか自力で立ち上がった。まったく心臓に悪い(こいつは絶対に許さない)。

 

別の者に仲間たちを見たかどうか訊ねたが、望ましい返答は聞けなかった。

「ニンゲンがここまでやって来ることは珍しい。第二帝国が滅びてからというもの……」と、何やら長い昔話が始まりそうな気配がしたので、早々にその場を後にした。

 

この酸性雨だ。防具が完璧に近いとはいえ、若者の敏感な肌は絶えずひりつくだろう。まずは屋根のある場所に避難しようとするはずだ。

私はこう考え、たまたま付近にあった機械義肢の店に入った。

 

蛍光灯の青白い光に照らされた店内は清潔感があり、金属の棚には義手義足がぽつぽつと展示されている。商品の多くは盗まれないようにしまわれているのだろう。鍵付きのロッカーやコンテナには重厚感が漂っている。

そして店主のスケルトンは私を一瞥するなり、びっくりするようなことを言い出した。

 

「今なら手足を捥ぐサービスもやってるよ」

 

「な、なに?!」

 

私は息を呑んで後ずさった。

過呼吸気味になった私を見て、店主は少し間を空けてからぽつりと呟く。

 

「そんなに驚かなくても……冗談だよ」

 

「そ、そうか」

 

私はほっと胸を撫でたが、次に気になって訊ねた。

 

「いささか物騒すぎやしないか? どういう類の冗談なんだ?」

 

「いや、うちの義肢は生身よりずっと性能が良いからさ。わざわざ自分の手足を落としてから買いに来る人がけっこういるんだよ」

 

「そんな話聞いたことがないぞ?」

 

「あんたが知らないだけさ。よくあることだよ」

 

店主は肩をすくめてから「で、捥ぐのは右腕で良いかい?」と問い、再び私を仰天させた(こいつのことも一生許さない)。

 

 

 

 

 

 スケルトンジョークはつまらないという話をしばしば耳にするが、概ね正しいように思える。彼らは全身鉄の塊で文字通り表情がないため、発言が本気か冗談かの区別がつかない。

おまけにジョークのセンスも良いとは言えず(少なくとも私には合わない)、周りを凍りつかせることも多々あるのだろう。

 

結局義肢店でも少年たちとは会えなかったので、次はBARに顔を出してみた。一階は酒場、二階は宿となっているやや大きめの建物である。

 

結末から先に言うと、彼らはしばらく経ってからそこに来た。私が街中をうろつき最後にここに入ったことを歩哨の者たちから聞き出し、私を見つけてくれた形だ。

 

では、それまで私が何をしていたかと言うと、黒っぽい外装が特徴的な一人のスケルトンと話をしていた。

彼は何というか……平たく言うと、私と馬が合った。物事をどこまでも悲観的に見る男(厳密にはスケルトンに性別はない)で、口を開けば言葉の先と後に溜め息を吐くような調子だ。

 

こんなことを書くとどう思われるか分からないが、ここまで話が合う人物は今までにいなかった。

逆境にもめげぬ者、理想を語る者、他者を傷つけることしか頭にない者、そもそも話の通じぬ者(これが一番多い)。長く生きれば多種多様な人間と会うことになるが、いずれも私にとってはストレスでしかなかった。

 

愚かで醜悪な弱者を相手にする価値はもちろんないが、他者を助けるために生きているような強く賢い者たちとつるんでいてもそれはそれで気が滅入る(その者が私より若ければ尚更だ)。

やはり人間関係においては、適度に馬が合い適度に見下せる人種が友人として望ましい。私にとって彼はまさにそういう類の男だった。

 

ゆえに少年が彼を仲間に誘ったとき、私は内心小踊りしたい気分だった。

彼は「自分など何の役にも立たない」「何の意味もない」などとゴネたが、横から私も説得に加わり、どうにか仲間になることを承諾させたのだった。

 

私がスケルトンという存在に慣れることができたのは、彼の存在に依るところが大きい。そういう意味でも貴重な友人だ。

彼はサッドニールと名乗り、溜め息とともに重い腰(文字通り)を酒場の椅子から上げたのだった。

 

 

 

 

 

 あとは復讐者の女の義手についてだ。あやうく書きそびれるところだったが、元はと言えば当初の目的はそれである。

 

農作業と鉱石採掘に精を出したおかげで、少年はそれなりに金を持っているらしい(ならまず私に借りてる金を返せ)。

しかしスケルトンの扱う機械義手は高価なものだ。本来であれば一山当てた冒険家や貴族でなければ手を出すことは叶わない。低品質の格安品ならどうにか手が届くが、それならわざわざここまで足を運んだ意味もない気がする。

 

どうするつもりなのかと思っていたが、復讐者の女が中古の処分品(ワケアリ品)に目をつけていた。工業用のリフターアームと呼ばれる物らしい。

黒い金属を基調とした無骨なデザインで、鉄筋と駆動部が剥き出しの荒削りな代物である。

見た目通り出力はかなりのものだが精密な動作に難があり、おまけにけっこうな重量がある上サイズも大きめだ。

 

私は他のにしろと言った。日常生活に支障が出るし、お前には使いこなせないと。

これは嘘ではないが、本音とも言い難い。

 

彼女のセンスはずば抜けている。それは周知の事実だ。

もし何かの間違いで使いこなせてしまったら? 手に負えない盗賊皆殺しモンスターの完成だ。そうなったら目も当てられない。

 

奴隷ハイブも「体幹が狂いますよ」と真っ当な助言をしていたが、女は馬鹿なので聞かなかった。

少年も「荷運びに便利」と反対しないし、舌なしハイブはしきりに首を横に振ったり縦に振ったりを繰り返し、もはやどちら側の意見なのかも定かではない(反対していたらしい)。

 

結局は彼女が我を通す形でリアクターアームの購入が決まった。いかんせん値段のわりに物が良いというのが決め手だった。

まあ私が着けるわけではないし、金を出すのは少年だ。そこまで必死に反対する理由もない。

彼女の人生だ。彼女の好きにすればいい。後で後悔したとしても、私には関わりのないことだ。

 

 

 

 

 

 義肢装着のための施術を終えて(びっくりするほど簡単なものだった)店の外に出たとき、空は変わらず分厚い黒雲に覆われていた。

 

日の光が地上に届かぬこの地では昼夜の区別がない。

しかしそこらのスケルトンに時刻を訊ねると、「午前2時33分51,324秒だよ」と頼んでないレベルで正確に教えてくれた。

 

ひとまず宿で腹を満たし(人間用の食べ物は売られてないので持参の携帯食料を分け合った)、女の腕の具合をほんの少し気にかけたあと、ニ階のベッドを借りて眠りについた。

 

 

 

 

 

 次の日の早朝、身支度を整え宿を出た私たちだったが、道の真ん中にスケルトンが一人ぽつんと立っているのに気づいた。

歩哨の者ではない。彼らは建物の入り口の警備をしていることがほとんどで、あんな位置に直立不動でいるのはおかしい。かといって旅人のようにも見えないし、何か妙な感じがした。

 

「何をしているんだ?」

 

もっと自分の直感に耳を傾けるべきだった。嫌な予感はしていたのだ。

しかし私は間抜けにも、そのスケルトンに話しかけてしまった。

 

緑のボロを腰に巻いたそいつは、ものすごい勢いでこちらに振り返った。「……マスター!??」

 

「ひぃえっ?!」

 

私は情けない声を上げて後ずさった。

しかしそいつはたった一歩で瞬時に距離を詰め、私の顔を間近で見つめる。縦に並んだ頭部の点滅灯が、狂ったようについたり消えたりを繰り返していた。

 

「マスターだ!!」

 

「い、いや、違うぞ。人違いだ。私は……」

 

「マスター!!!」

 

「……」

 

私は半ばヤケクソになり、両腕を広げてこう返した。「……ああ、そうだ。私がマスターだ。久しいな、我がスケルトンよ」

 

「マスターーーッ!!!!」 

 

私とそいつは熱い抱擁をかわし(あばらが折れるかと思った)、結果として、旅の道連れが一人増えることになったのである。

 

奴隷ハイブは「さっすが旦那! 人徳がありますね」と感心していたが、どうにも皮肉にしか聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 





登場人物紹介
『サッドニール』
ブラックデザートシティで仲間にできるスケルトン。ステータスは最低値だがスケルトンなので育てれば化ける。超絶根暗。
スケルトンは定期的に記憶容量をクリーンアップすることでCPUの寿命を延ばしているが、彼は何らかのエラーで悲しい思い出だけを忘れることができないでいるらしい。
余談だがこのゲームの開発者の妹さんが一番好きなキャラなんだとか。
なんか分かる気がする。母性本能をくすぐられるというか。俺もこの子を連れ回してkenshi世界の汚い光景をたくさん見せて辛い思い出をいっぱい増やしてあげたい(それは母性じゃねえよ)。
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