ある反奴隷主義者の手記   作:無職のプーさん

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ウェブ小説の書き方の勉強のつもりでやっていきたいと思います。



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 あの女は本当に人使いが荒い。

いきなり私を呼びつけるなり、何か同胞たちに勇気を与える本を書け、と無茶ぶりしてきた。

 

人を勇気づける才など私にはない。本などというのも書いたことがない。

あの女、反奴隷主義の顔役みたいに振る舞っておきながら、自分が一番人を奴隷みたいに扱いやがる。

 

とはいえ、私も使ってもらっている立場だ。文句を言っても仕方があるまい。

できる限りのことをしていきたいと思う。

 

 

 

 

 しかしながら前述した通り、私には人に勇気を与える才などない。およそ勇気とは無縁の人生を送ってきたからだ。

大国を相手取る危険な活動に身を置いているのも、言ってみればただの成り行きでそうなったに過ぎない。私の中に信念や大義などというものはこれっぽっちもないのである。

 

 

 

 

 私の半生についても、語って面白いことは何もない。

かつては都市連合の貴族であり、若いときはそこそこ顔立ちも良く、周りからチヤホヤされていた。何かにつけて担ぎ上げられては、老獪な者たちに政治の駒として利用され、そしてある日突然、用済みとなって捨てられた。

濡れ衣を着せられ、謂われのない罪で高い懸賞金をかけられ、命からがら逃げ出したのだ。

 

国を出た後のアテなど、そのときの私には何もなかった。身内や親戚たちは私の財産を奪い合うのに必死で、匿ってくれるはずもない。

富こそが唯一の正義である都市連合では、それも当然のことだった。

 

 

 

 

 北にも東にも、連合の支配は果てしなく広がっている。西には酸の雨が絶えず降るスケルトンたちの黒い街。その先には、あの恐ろしい拝火の神国があるだけだ。

ひとまず南を目指すしかない。信じていたもの全てに裏切られ混乱していた私は、ひとまずそう考えた。

 

連合の有能な憲兵や奴隷商人たちの手を掻い潜り、幼い頃より見慣れた赤い砂丘をいくつも越え、天から神の光線が降り注ぐ(実際に目にするまでその存在を信じていなかった。あの近辺で暮らしている連中の気がしれない)荒野を死ぬ気で走り抜け、今となっては懐かしいあの地、ガットに辿り着いた。

 

 

 

 

 ガットは鮮やかな青い砂地に、エメラルドグリーンの波が寄せる幻想的な入り江だ。一生に一度は見ておくべき光景かもしれない。

 

しかしながら、念のため述べておく。

居を構えるのにもってこい、開拓初心者におすすめの地とうそぶく連中(死んでしまえクソども)がもし貴方の周りにいるなら、そういう輩とは今すぐ縁を切った方がいい。

確かに土地は肥沃だが、ガットの砂や海の綺麗な色合いは鉱石の毒物が溶け出したものだ。そこで育てた作物が、果たしてどれほど有害なものをその実に溜め込むかは未知数である。

 

加えて獰猛な肉食竜、ビークシングの存在は無視できない。連中の傍若無人ぶりときたら、皇帝陛下も裸足で逃げ出すレベルである。

あの長い首を振り下ろす嘴による攻撃は脅威の一言で、まともに喰らえば人の骨など簡単に砕けてしまう。

 

逃げれば良いと言う者もいるだろうが、それもおすすめしない。その巨体と短足に反し、彼らの走りはめっぽう速い。よほどの健脚でなければ振り切ることはできないだろう。

 

ビークシングの群れに囲まれた哀れな放浪者が、生きたまま喰われていくのを何度も目にした。

助けようなどとは思わなかった。私の首に掛けられた賞金は高額だったし、街に情報を流されるだけでも厄介だ。

僻地とはいえ、ガットも都市連合の領地。誰も信用できないし、そもそも人を助ける余裕も力もない。

私の武装は一本の錆びかけた長剣(連合貴族のステータスシンボル)のみ。対人戦ならともかく、あのような化け物にとってはこんなナマクラ、つまようじ以下の代物だろう。

 

私はただじっと息を潜め、肉食竜の食い残しを漁り、地を這いずる臆病な虫のように岩陰に潜んで暮らしていた。

 

 

 

 

 そうして最初の数年が過ぎた頃、一つ奇妙なことが起きた。ビークシングたちが私を見ても攻撃してこなくなったのだ。

縄張り意識が強く、食欲も旺盛な彼らに何故そのような変化が起きたのか。

 

いや、おそらく変わったのは私の方だろう。かつての若く逞しい容姿は、そのときにはすでに見る影もなかった。

汚らしく伸びきった白髪と髭に、赤いボロを纏う痩せ細った身体。痩けた頬に、落ち窪んでギョロついた目。

翠色の水面に映る私の姿は、かつて連合の大都市で人々から羨望の眼差しを浴びていた貴族とは似ても似つかない。

 

意外に思われるかもしれないが、この容姿の変化は個人的には好ましかった。

周辺の農村にすら私の手配書は出回っていたが、この姿で私を特定することは困難だろう。人相書きの私の顔は、かつての精悍で美しい頃のままだったからだ。

大都市直属の兵ならまだしも、そこらの田舎勤めの憲兵に私の正体が分かるはずもない。

老けようが禿げようがこの姿は使える。それ以外の感想は浮かばなかった。

 

極限状態に置かれていたせいもある。しかし結局のところ、今も昔も私は恥も外聞もなく、ただ惨めな生にしがみついている。

世捨て人を気取っている方が気楽だし、性に合っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 





登場人物紹介
『私』
今作の主人公。浅黒い肌に白髪。年齢は四十代前半くらいのイメージ。かなり老けている。世捨て人を気取るシケたおっさん。
身だしなみをちゃんとするとそこそこイケメン(という設定)。追放系なろうキャラっぽい雰囲気がある気がする。
本名は不明だが、手配書での呼び名はノーフェイス。懸賞金15000Cat。ゲームではこのおっさんを奴隷商人に売ったり買ったり繰り返してるとビークシングと仲良くなれる。
バックボーンの半分くらいは妄想で書いているが、たぶんこんな感じで合ってると思う。彼を追放した貴族はおそらくクズだが、このおっさんもおっさんでまあまあのクズ。
もし俺が死んでJKに転生したら、こういういたいけなおっさん相手にパパ活したい。思わせぶりな態度をとって年甲斐もなく純情な心を弄びたい(異常性癖)
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