ジョジョだったかもしれねェ…   作:aka1

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空前絶後で超絶怒涛のエンヤ婆

 太陽の光すら届かなさそうな濃い霧の中私たちはとある街に立ち寄っていた。これだけの濃霧だ。車で運転するのは危ない。今日はここで宿を取る事になるだろう。

 

「しっかし、無愛想な店主だったな~」

 ポルナレフが頭の上で腕を組んで、取り付く島もないといった様子だったレストランの店主についてぼやく。確かに、例え祖父の挨拶が下手で不快に思ったとしても、あの対応は接客業としてどうかと思う。あれじゃあ観光客は寄り付かないだろう。

 

「あそこで座ってる男に聞いてみようぜ」

 笑みを浮かべ、男の顔を覗き込んだポルナレフの動きが止まる。男は目を見開き、口から舌を出すという苦悶の表情で固まっていた。

「死んでいるッ!」

 

 霧が濃い街の中で、苦悶の表情を浮かべて不可解な死を遂げている男。街の住人はどこか様子がおかしい。さ、殺人事件だ……!この街でッ、事件が起こっているッ!これだけで2時間くらいのミステリードラマが作れそうである。

 

「なっ……この傷は!?」

 男の肌に10円玉くらいの大きさの穴が空いている、と祖父が言った。血が一滴も流れていない異様な傷跡に誰かの唾を飲み込んだ音が聞こえる。

 

 新手のスタンド使いの仕業かもしれない。考えたことは皆同じらしく、お互いが顔を見合わせる。男の傷を調べようと、服を脱がせると

「……!!」

 男の肌に穴が一目では数えきれないほどに空いていた。ホラーだ。

 

「この街から脱出するぞ!」

 男の姿を一目見た祖父がそう叫んで、笹食ってる場合じゃないパンダのような勢いで何かを飛び越え、

「な、なにぃ!?」

 スタンドを使って空中で暴れ始めた。何をしているんだ祖父は。ご乱心か?

 車に乗ろうとしたらしいが、車は私達の後方に停めてあるはずだ。

 ま、まさかついにボケ――

「年寄扱いするなと言っておるだろう!まだ現役だわい!」

 違うらしい。皆、困惑の表情で祖父を見つめている。本当に大丈夫か?とヒソヒソしていると、通りすがりの老婆が私達に向かって会釈をしてきた。思わず全員で会釈をし返すと、老婆は話しかけてきた。

 

 どうやら老婆は民宿を経営しているらしい。今晩は泊まって行かれたらどうですか、と尋ねられ、その言葉に甘えることにした。

「さ!ジョースター様。あれがわしのホテルですじゃ」

 杖をつきながら歩く老婆の跡を付いていくと、隣を歩いていたはずの兄が足を止める。

「……待ちな婆さん。あんた今ジョースターという名を呼んだが、なぜその名がわかった?」

 老婆を見つめる兄の瞳は警戒に満ちていた。

「……」

 

 老婆は数秒黙り込んだあと、にこりと笑い、ポルナレフが祖父のことをそう呼んでいたのを聞いたと言った。突然話を振られたポルナレフは「おれ?」と自身を指差している。

 

 ……いや、言ってなかったよ。

「ほほ、そんな訳ないですじゃ。この耳でしっかりと聞いて──」

 そもそもポルナレフっておじいちゃんのことジョセフさんって呼ぶし。そう口にすると兄の視線を感じたので、こっそりと片目を瞑った。任せとけって。

 

「なっ……!?」

「え?」

 目を見開く老婆と首を小さく傾げるポルナレフ。老婆の口から「そんな馬鹿な」という呟きが溢れる。

 

 ま、嘘だけど……でも間抜けは見つかったみたいだね。

 

「……!」

 

 老婆は俯いて、彼女の杖を持つ手がぶるぶると震え始める。次の瞬間、

「死ねーっ!!」

 カッと目を見開くとそう叫んだ。老婆の直球すぎる罵倒に呼応するように、ぞろぞろと人が現れた。その中には、体に穴を開けて死んでいた男も混じっていた。

 

「こいつら、いつの間に!?」

 濃い霧に隠れていたのだろう。あっという間に囲まれてしまった──が。

星の白金(スタープラチナ)!」

銀の戦車(シルバーチャリオッツ)!」

 兄のスタンドが老若男女平等パンチを繰り出し、ポルナレフのスタンドが手足を狙って次々に襲い掛かる人々を無力化していく。彼らは遠慮も無駄もない攻撃にばたばたと倒れていく。しかし、

 

「なっ……倒れないだと!?」

 

 どれだけ拳を受けようと、手足を傷つけられようと立ち上がってくる。まるでゾンビのようだ。目を見開く私達に、老婆は声を上げて笑い、杖を振り翳した。

「さあ、奴らを襲うのじゃ!!」

 

 倒しても倒しても起き上がり、襲いかかってくる人々に兄の舌打ちが響く。

「くそっ、キリがねえぜ」

 霧だけに?

 小声で言ったつもりだったが、ばっちり聞こえたらしい。兄は目に見えて分かるくらい顔を顰めた。

「今はそんな時じゃないだろう!」

 花京院に窘められる。ごめんって──痛い!

 

 何かに刺されたような衝撃に視線を落とす。足の辺りに赤ん坊が張り付いていた。

 えぇ、赤ちゃんまで敵なのかよ……。

 恐らく老婆のスタンドか何かで操られているのだろう。傷はすぐ治ったが、赤ん坊まで使う性根に眉を寄せていると、老婆が突然狂ったように笑い出した。

 なんだなんだ。急にどうした。

 

「傷を負ったな!?もうお前はわしのスタンド(ジャスティス)から逃れられん!」

「傷……?そうか、それがトリガーか!」

 どうやら、先程赤ん坊に負わされた怪我がよくなかったようだ。というか、今ジャスティスって言わなかったか。正義とは……?

「自滅して死ね!」

 

 …………。

「……」

 

 何も起こんないね。

「何故だ!」

 何故だと言われても……あ、傷が治ったから?

「こんの……ビチクソがぁああ!!!」

 老婆がとんでもない形相でこちらを睨む。口が悪いな、落ち着けよお婆ちゃん。

 

「……驚かせやがって」

「ガッ……!」

 

 老婆に接近していた兄が直接拳を叩き込み、老婆は気を失った。途端に霧が晴れ、私達を取り囲んでいた人々の姿もなくなり、

「うわ!なんだ、これは!?」

 足元には人骨が転がっていた。それだけではない。発展していた街並みが、荒野に様変わりしている。

 

「幻覚を見せられていた……?人を操るだけではなかったのか」

「うむ……霧が晴れてる所を見るに、あの霧がスタンドの本体だったんじゃろうな」

 

 街全体を霧で作り出し人も操るなんて、対峙してきた刺客の中でも一、ニを争うくらい強かったと言えよう。

 

 

 

「げっ!この婆さん連れていくのか?」

 

 出発前に伝えられた老婆の処遇に、嫌そうな顔をしたポルナレフが叫んだ。今は気絶しているが、彼女が目覚めたら襲いかかってきそうだし、私も反対である。

 

「このバアさんからDIOのことを聞き出せたならわしらの旅はそれだけゴールに近づく」

 

 ……いやまあそりゃそうだけど。

 

 結局、老婆を車に乗せて次の目的地に向かうことになった。寝首をかかれないようにしないとね。

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