ジョジョだったかもしれねェ…   作:aka1

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被害総額は億以上

 この旅にとってものすごく大切な男に会いにいく、と言う祖父の言葉によってエジプトに向かうはずだった進路を少々変更して、私たちは小さな島に上陸した。

 

 何もなさそうな島である。本当に人がいるのだろうか?

「おい、その陰から誰か見ているぜ」

 兄の指摘により、草陰に潜んでいたらしい人物が草を掻き分けて走っていく。皆で後を追いかけると、小さな家にたどり着いた。

 庭には鶏が3羽ほどいて、コッコッコッコッと鳴きながら動き回っていた。

 マイケル。プリンス。ライオネル。鶏の名前らしい。1羽1羽名前を呼んで餌を与え始めた男の背中を見る。

「丸々太っておいしいニワトリになるんだぞ……」

 食用に名前つけてるんだ……いや、違う。そうじゃなくて──

 

 あれ、アヴドゥルだよね?

「帰れっ!話は聞かんぞ!」

 声がアヴドゥルすぎる。

「アヴドゥルの父親だ……」

 アヴドゥル本人だよね?

「わし一人に任せてくれ。父親と話をしてみる」

 私がおかしいのか?

 

 兄も祖父も花京院もアヴドゥルのことを知っているのに、何だろうこの茶番は。

 一人精神的なダメージを受けてどっか行っちゃったポルナレフが可哀想だろ!

 

 本当に何これ?

 

 祖父の袖の裾を引っ張って尋ねると、「サプライズじゃよ」と教えてくれた。

 さ、サプライズかあ……そっかあ……。下手したら友情が崩壊しかねないと思うが、マイナスなサプライズじゃないだけいいのかな。

 まあちょっとした遊び心はどんな状況でも必要だよね。心の余裕の表れだし。

 そう考えて自分を納得させた。

 

 しかし、アヴドゥルと会うのは2週間ぶりくらいだろうか?あれからまだ半月しか経っていないとは。立て続けに事が起こったため、それ以上に時間が経過している気がする。

 

 遂に合流するんだな、と考えているとぴりと背筋に小さな痺れが走った。

 

 ……皆……聞くのです……ポルナレフが攻撃されています……。

 

「「「なっ!?」」」

「そういう事は早く言え!どっちだ?」

 

 あっち。指を指した方へ兄たちが走っていく。その足の速いこと速いこと。特にアヴドゥルなんかはあっという間に見えなくなってしまった。

 

 私が彼らに追いつく頃には、既に戦闘は終わっていた。お待たせしました。皆速いね……。

「お、お前も知ってたのか!?」

 うん。ごめんね、口止めされてたんだ。

 こちらに詰め寄るポルナレフに、謝る。「お、俺だけ……?」とショックを受けたような様子だった。

 ほらー、やっぱり伝えたほうが良かったって。ポルナレフショック受けちゃってるじゃん。

 

「すまんな。どうしても敵にバレるわけにはいかないからのお」

 言外に口が軽いと伝えられたポルナレフは口を噤み、大きな溜息を吐いた。

「ま、いいぜ……俺の3つ目の願いは叶ったんだからよ」

 3つ目の願い?

「……何でもない」

 ポルナレフを見るが、言うつもりはないのか肩をすくめられる。無意識にか、微笑みを浮かべているので悪い事ではないのだろう。

 

 ところでアヴドゥルの父親のくだりはなんだったの?

 へー、買いたいものがあったから変装していた、と。変装……?できてたか……?完全にアヴドゥル本人だったような。

 まあバレてないということは少なくとも敵のスタンド使いたちにはアヴドゥルの変装が分からなかった、ということだろう。……DIO陣営が心配になってきた気がする。

 


 

 アヴドゥルがした買い物とは、潜水艦のことだったらしい。買い物のスケールがデカ過ぎて、ひっくり返りそうになった。

 潜水艦……初めて乗るな。この旅は初めてのことばかりである。DIOを倒すという目的がなければもっと楽しめたと思うと、少し惜しい。

「DIOを倒したらまた一緒にいけばいいじゃろう」

 ま、それもそうか。祖父の言葉に頷き、潜水艦へと乗り込んだ。

 

 

 潜水艦の操縦はアヴドゥルがするらしい。ポルナレフが「運転できるのか?」と笑いながらやじを飛ばした。

「わしもできるよ!わしも!」

 自身を指差し、祖父がそう主張する。

 あなたは二度と乗り物の操縦をしないでくれ。特に飛行機。

「……」

 しょげちゃった……。

 

 あまりにも落ち込んでいるものだから、段々と悪い気がしてきた。

 おじいちゃんごめんね。ほら、元気出して。コーヒーでも飲む?

 肩を軽く叩いて尋ねると、こくりと頷かれる。声を出せないほどショックだったのだろうか。

 

「あ、なら僕が淹れるよ。ちょうど飲もうと思っていたし」

 お、ありがとう。でもいいよ。私はコーヒーには一家言あってだね……。

「へぇ。コーヒー飲むんだね?おすすめの品種とかあるかい?」

 いや、豆の種類とかは知らん。

「何だあ、そりゃ!」

 言ってる事が無茶苦茶だ、とポルナレフが呆れたような視線を向けた。

 淹れ方の話である。母も絶賛してくれたので期待してくれて構わない。

 

「あのアマは何でも大袈裟に褒めるだろうが……」

 確かに私たちに甘々の母は割と何やっても、何だったら失敗しても褒めてくれるが。

 でも、私の淹れるコーヒーは普通に美味しいだろ。

 味にうるさい兄が私のコーヒーを黙って飲む事をこちらは知っているのだ。

「……」

 まあ、豆を挽くとかじゃなくて普通にドリップなのだけれど────ここにあるの、全部インスタントだな。

 

 ……よし、解散!花京院、美味いコーヒーを淹れてくれ!

「はは……」

「やれやれだぜ……」

 

 

 花京院は全員分コーヒーを淹れてくれたようで、カップは7つあった──7つ?

 

「なっ」

 

 祖父が持っていたカップが変形し、襲いかかってきた。私のスタンドによって祖父の腕が傷つくことはなかったが、場が動揺に支配される。

「スタンドだと!?」

「いつ潜り込んでいた!」

 

 アヴドゥルが言うには、鉱物を操る事ができる女教皇と呼ばれるスタンド使いがいるらしい。スタンドってほんとうに何でもありだな。

 

 乗り込む前ならいざ知らず、私たちは既に潜水艦に乗ってしまっていて、周りは海水である。船体はスタンドによって開けられた穴から浸水していて、先程海底に激突した。もうこの船はダメだろう。

 アヴドゥルが変装してまで購入したのに……儚い命だった。

 このままここに居続けても、いずれどこから襲ってくるか分からないスタンドに殺される運命が待っている。海上へと逃げるしかない。

 

「……これを使って脱出するぞ」

 祖父の指差す先にはスキューバダイビングの機材が人数分あった。

「おれ経験ないんだよね、これ……」

 私もである。

 

 経験者が祖父だけとなると不安が勝つが、四の五の言ってても状況は変わらない。

 スキューバダイビングにおいての心がけや器具の説明を聞く。皆真剣な表情だ。まあ内臓破裂したら嫌だしね。

 ハンドサインを示す祖父にアヴドゥルがスタンドで話したらいい、と提案した。

 スタンドで話す……?どうやって……?

 思わず頭を触る。この花が喋ってくれるんか……?

 

「ハンドサインならおれも一つ知ってるぜ」

 スタンドで話せるという新事実に瞬きをしていると、ポルナレフがそのハンドサインとやらを見せ始めた。

「パンつーまる見え」

「YEAAAAH!!!」

 何故ポルナレフ(フランス人)がそのハンドサインを知っているんだ。というか花京院とポルナレフ、仲良いな。

 

 学生のノリで戯れる二人に祖父が叱責をいれ、ポルナレフがあわやという場面もあったが、遂に潜水艦の外へと脱出した。

 

 

 海底の美しさに思わず目を奪われる。追われている最中ではなければもっとこの景色を楽しみたいところだが、残念ながらそうはいかない。

 

 上陸のために向かった海底トンネルは、女教皇が化けていたもので、人の顔の鼻に相当する部分だったらしい。私たちは開いた口に飲み込まれてしまった。

 

 どうやら兄の顔は敵にすら通じるらしい。流石だ。

 兄が女教皇の好みのタイプと聞いて何かに気づいた様子のポルナレフが兄へと耳打ちする。

「……一度あんたの素顔を見てみたいもんだな。おれの好みのタイプかもしれねーしよ。恋に落ちる、か、も」

 

 ──!

 

 思わずノズルを噴き出しそうになった。あの兄が女性を口説いている。学年一可愛いと言われた女の子を、学祭のミスコンで優勝した先輩を、逆ナンしてきた美人ギャルを、大人の色気を振りまくお姉さんをすげなく振ってきた兄が、である。

 泣かせた女は数知れず。高校では半ば生ける伝説となっている兄が、女を口説いている。しかもかなりやる気がなさそうに。何だよ「か、も」って。もっと腹から声出せ。

 こんな時に笑わせないでほしい。

 

 一人一つ彼女を褒めなければいけないルールでもあったのか、男たちが順々に女教皇を讃える言葉を紡いでいく。

 込み上げる笑いを噛み殺していたら、5人の視線が集まっていることに気づいた。

 

 あー、褒めなきゃいけない感じね。オッケーオッケー、任せて。……女の私でも惚れちゃう声かも!

 

「適当言ってんなあああ!?ぶっ殺す!!」

 

 無理ぽ。

 

 激昂した女教皇に兄がダイヤモンドと同じ硬度らしい歯ですり潰された──かのように見えたが、兄はオラオラ言いながらスタンドで歯を掘って出てきた。鉱夫かな?

 

「やれやれ。ま……確かに硬い歯だったが叩き折ってやったぜ……ちとカルシウム不足のダイヤモンドだったようだな」

 

 誰がうまいことを言えと。

 

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