ジョジョだったかもしれねェ…   作:aka1

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当身「花京院」

 助っ人が犬ってマ?

 今の状況を表すにはこの一文が最適であろう。

 

 新たな仲間が加わるというから一体どんな筋骨隆々な男が来るのだろうかと考えていたのだが、現れたのは犬である。

 どうやらこの犬──イギーは小動物然とした愛らしい見た目とは裏腹にかなり凶暴らしい。

 

 ヘリから飛び出したイギーはポルナレフの頭に張り付き、髪をむしっている。ポルナレフの毛根を全て絶やす勢いだ。髪の毛に何かされたのだろうか。

「ああそうだ、思い出した。髪の毛をむしる時、顔の前で屁を出す下品なやつだった」

 祖父の言葉通り、ポルナレフの頭にしがみついていたイギーはぷす〜っと音を立てて屁を出した。

 

「やめようぜこんなクソ犬連れていくのは!1日で禿げちまう!」

「そうは言ってもな……」

 

 大好物だというチューインガムによって毛根断絶の刑から逃れたポルナレフは叫んだ。

 ナメてかかるからいけないのではないだろうか。きっとポルナレフの侮りを、イギーは察知したのだろう。やっぱり犬って賢い。

 

 ポルナレフにお手本を見せてやろうとイギーに手を差し伸べる。ほらほら〜怖くないよ──イテェーッッ!!!!

 

 差し出した手はイギーの口の中に丸々入っていた。

 

 こ、こいつ……クソ犬だ……!

 

 引っ込めた手をハンカチで拭って、アヴドゥルの顔を見る。

 

 せ、先輩!アヴドゥル先輩!こいつ、アタイらのことナメてますよ!ヤキ入れた方がいいんじゃないすか!?先輩のマジシャンズレッドで何とか言ってやってくださいよ!

 

「犬と張り合おうとするな……」

 

 疲れたような顔でアヴドゥルは溜息を吐いた。どうやらマジシャンズレッドには頼れないようだ。見損なったぞ、先輩。

 というか、噛まれたんだけどこれ大丈夫?イギー、狂犬病のワクチンとか打ってる?

「財団で保護した時に打ってます」

 急に不安になって職員に尋ねると、「安心してください」と返ってきた。ほな、大丈夫か……。

 

 まあ何はともあれ、

 

 イギー が 仲間 に なった!

 


 

 母の容態は良くないらしい。SPW財団の職員の話によると、もってあと2週間ほどだとか。その短さに、空気が張り詰める。

「あと2週間で9人……ちょっぴり疲れるというところか……」

 兄の言葉に、嫌な緊張感が和らいだ気がした。倒せる、倒せないの話じゃなくて絶対にディオを倒す。そんな意思が感じられる言葉だった。

 

 よし。円陣を組もう。

「ここでかい?」

 うん。さあ、並んで。

 意味が分からないという顔の兄と花京院、あまり馴染みがないのか不思議そうな顔の祖父とアヴドゥルとポルナレフを見渡し、彼らを円になるように位置取らせ、肩を組ませた。

 

 では不肖、(わたくし)が掛け声を務めさせていただきます。

 

 仲間を信じー!努力を信じー!感謝の気持ちを忘れずにー!ファイッ、オー!!!

 

「「…………」」

「お、おおー?」

 

 私の掛け声に続いてくれたのは祖父だけだった。やっぱ祖父しか勝たん。おじいちゃん、大好き♡

それに比べて他の男たちは全く……言えよ!!!

 

「……何だか部活の大会前に激励会とかでやるやつに似てないかい?」

 何言っていいか分からなかったから、高校で聞いたやつ言ったんだよね。

「……」

 兄が大きな溜息を吐いた。ついにやれやれだぜも言わなくなってしまったようだ。

 

 

 ねー、ほんとによかったの?私が前に座って。

 首を後ろに向けて尋ねる。私たちは車に乗って移動しているわけだが、イギーが後部座席に陣取っているせいで、兄たちは後部座席の後ろ、荷物置き場に追いやられているのである。

 

「ここにいたら潰れちまうだろ!」

 そんな軟弱ではないけれども。

「それに後ろはシートベルトもないし危険だからね」

 それは私だけに言えることではないのでは?

「甘えておけばいいだろう」

 まあそれはそうなんだけど。

「……ジジイがトチらないよう見張っとけ」

「何じゃと!?」

 

 あんな狭い空間に体格の良い男たちが四人。見てるだけで窮屈になってくる。

 1ムキムキあたり何c㎡だろうか。とにかく狭そうだ。おしくらまんじゅうしたってあんなにぎゅうぎゅうにならないだろう。見てるだけで暑苦しいぜ。

 男四人……狭い室内……何も起こらないはずがなく……。そんなナレーションが聞こえてきそうな絵面だ。

 まあオープンカーなので室内でもなんでもないが。

 

 

 

 オープンカー、砂がめっちゃ顔に当たる。乾燥してるし、微妙に痛い。サングラスでも買っておけば良かった。

 

 少しでも砂の被害を減らそうと顔を背けていると、突然視界が明滅した。自身を支える事ができなくなり、席にもたれるようにして体重を預け、目を閉じる。

 

「おい、どうした」

 後ろから兄の声が聞こえる。

 

 ……SPW財団の職員が何者かに襲われた。

 致命傷、というかもしかすると、もう死んでるかも。

 

「何っ!?」

 私の呟きに、まず隣にいる祖父が反応した。声に焦りが滲んでいる。

「どこにいるか分かるか?」

 

 ちょうどこの先を進んだ所で行方は途切れている。そう伝えると、祖父はアクセルを踏み込んだようだ。先程よりも頬に当たる風が強くなった。その勢いに比例して、砂が肌に当たる強さも増す。人命がかかっているから文句は言わないが、何故オープンカーにしたのか。祖父に後で問い詰めよう。

 

 ゔっ!

 

 突然の急ブレーキ。背もたれに体重を預けていたせいで、体が前のめりになる。シートベルトがなかったら吹っ飛んでいたかもしれない。助手席に座っていて良かった。

 

 一体何が起こったんだと瞼を開くと、半壊したヘリと、倒れた職員が視界に入った。一人は既に絶命していて、機体に彼の爪痕が残っていた。余程の力で引っ掻いたのだろう。

 

 まだ息があった職員に駆け寄る。

 

「み……みず……」

 

 水?水が飲みたいのだろうか?

 祖父が水筒を近づけると、それを見た職員は絶叫し、次の瞬間その首が水筒の中に引き込まれた。

 無関係の人間が殺されたことに歯噛みしつつ、水筒を取り囲むように距離を取る。

 間違いない。カイロで確認された不審人物の内の一人の仕業だろう。

 

 ポルナレフと花京院が水筒への攻撃を押し付けあう攻防を横目で見ていると、

「こ……これはッ!」

 

 水が砂の上を蠢いていた。独りでに動く水は人の手のような形になり、花京院へと襲いかかった。その瞬間、体の内側から張り手をされたような感覚が走る。顔を顰めたのが見えたのだろう。祖父から声がかけられた。

 まあこれくらいなら大丈夫である。以前のように気絶するなんてことは起きないだろう。

 

 どうやら敵のスタンドは音に反応するらしく、近くにいる花京院やポルナレフではなく、タイマーの音を鳴らした職員の方へと向かった。

 厄介なスタンドだ。本体は遠く離れた所からこちらを攻撃しているようだし、音がトリガーとなる以上うかつに動けない。

 

 動かないと現状を打破できないが、動くと場所によっては即死級の一撃が飛んでくる。なんというジレンマッ……!

 

 まあ私は動くが。

 

「おい、やめろ。そこを動くな、止まってろ」

 川柳?

 急に詩を詠み始めた兄は鋭い目つきで私を見ていた。

「……」

 オッケーオッケー、分かったからそんな睨むなよ。怖くて震えちゃうだろ。

 

 

 まあ聞くとは言ってないがな!

 

 兄の目が見開かれる。私の行動を制止するかのように出された手は当然の如く届かない。

 

 さあどこにいるかも分からないスタンド使い!我慢比べしようぜ!

 

 足を一歩動かすと、途端に水が鋭利な刃となり襲ってくるが、無駄だ。これくらいなら耐えられる(・・・・・)

 

 

 やめろだとか止まれだとか聞こえるが、そんなん叫ぶよりもこの状況を打破するために思考を回して欲しい。誰が体張って囮やってると思ってるんだ。

 とりあえず兄たちから離れればいいだろうか──

 

 っ!

 

 スタンドの攻撃を受けながら進む私の首に鋭い衝撃が与えられる。首──脊髄に走った小さな痛みはいとも容易く私の意識を刈り取る。

 

 遠のいていく意識の中で、最後に耳にしたのは

「当身」

 と呟く花京院の声だった。

 

 いや、当身する時「当身」って言う奴、おりゅ?




当身花京院が心残りだったと供述しており──
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