ジョジョだったかもしれねェ…   作:aka1

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寒い時はこれでキメちゃお♪この夏最新のアイテム☆

 闇雲に探し回ったって時間を無駄にするだけである。餅は餅屋。地元の人間が一番その土地のことを知っている。

 浮浪者にDIOの館の捜索を依頼した私たちは、彼が情報を持ってくるまで待機することになった。

 

 乾いた風が頬を撫でる。長かった旅も終わりが見えてきた。DIOを倒し、母を助ける。そして、血の因縁とやらを絶つのだ。

 祖父の祖父、私と兄から見て高祖父の肉体を持つというDIOも、スタンドを発現しているはず。一体どのような能力なのだろうか。

 

 瞼を閉じる。唸れ、前世の記憶!と念じて数少ないジョジョ知識を捻り出そうとするが、残念ながら無いものは無い。よく見たコマの一場面が思い浮かんでは消えていく。

 しびあこは一部。クールに去るのも違う。だが断るも違うし、嘘をついてる味も……嘘の味ってどんな味なんだろうか。

 思考が脱線していく。駄目だ……絶対に関係ないものばかりだ。

 前世のSNS(ネットミーム)に侵食された私の記憶は、呆れるほど使い物にならなかった。

 

 ぶっつけ本番ということである。私がいることで取り返しのつかないことが起こってなければいいのだが。その答え合わせすらできないのだから、ただ心に靄が溜まっていく。

 

 ……いや、皆強いから大丈夫だろう。なんとかなる。なんとかなるはず。この場にいる全員がDIOを倒す気でいる。私一人が暗くなってどうするんだ。そう、兄たちならできる!やり遂げられる!

 脳内に熱血テニスコーチを憑依させ、自分を励まし、一人で感情のジェットコースターに乗り続ける。待ち時間が暇なのだ。ただ待つというだけの時間は考えなくてもいいことを考えてしまう。

 

 溜息をついてしゃがむと、祖父に窘められる。オブラートに包んでいたが、要は下着が見えるぞということらしい。

 見えないよ。見えたとしても今更だろ。今まで飛んだり跳ねたり駆け回ったりしてんだからパンチラどころかモロだった時もあるんじゃないか。

 そう言って視線を男共に向けると、気まずげに視線が逸らされた。

 

 あ、ガチで見えてた感じ……?半分くらい冗談だったのに。

 居た堪れなくなって立ち上がるとスカートの裾が揺れた。

 日本を発つ時、兄も花京院も制服でいたから私も彼らに倣ったのだが、やはり制服じゃない方が良かったかもしれない。だが出発前の空気がトランクケースに服詰め込んで〜という感じでもなかったのは確かだ。

 若干きまずい空気が漂う。気まずくさせてごめん……よし、兄よ脱げ。

「あ……?」

 その重そうな長ランを腰に巻いておけば、パンもチラすることないだろう。私は気にしなくていいし、皆も気まずくならない。ウィンウィンだ。

 有無も言わさず兄の長ランを追い剥ぎにかかると、大した抵抗もないままあっさりと手に入ってしまった。意気揚々と腰に巻きつけようとして、一つ気づいてしまう。

 

 丈が長すぎて地面に擦る。本来の丈の2倍はあるだろう兄の長ランは私の足の長さをお気に召さなかったようだ。腰あたりに巻くと、地面に布が折り重なっている。

 

 兄はわざわざ改造してこの長ランを着ているくらいだし、きっとこれがお気に入りなのだろう。流石にそれを汚すのは気が引ける。普通に着た方がいいかもしれない。

 袖に腕を通す。日本人離れした上背である兄の長ランは、本当に長い。ワンピースみたいだ。もちろん肩幅は合わないし、袖も長すぎて萌え袖レベル100みたいになっていた。

 

 …………。

 

「何だ」

 

 やっぱり暑いし邪魔だからいいや。返すね。

 

「……やれやれだぜ」

 


 

あの犬(イギー)、どこ行ったんだ?」

 ポルナレフが辺りをきょろきょろと見渡し始めた。

 散歩してるみたいだよ。

 今イギーがいるであろう方角に視線を向けると、皆も同じように視線を向けた。

 

 単独行動して何があるか分からないし、依頼した物乞いがいつ戻ってくるかも分からない。連れ戻してきた方がいいかもしれない。

 イギー探しに行く人〜。

「僕も行くよ」

「……」

 手を挙げながら伺うように五人を見渡す。花京院が手を挙げ、花京院と共にイギーの元へ向かおうとしたら兄が無言でついてきた。

「気をつけて行くんだぞ」

 アヴドゥルの母親のような言葉を背に、三人で並んで歩く。イギーの場所は大体分かるので、道を指し示しながら進み、すぐに合流するはずだった。

 

 きゃあきゃあと黄色い声が上がる。兄が不愉快そうに顔を顰め睨むが、怯むどころか、さらに歓声が上がってしまい、兄の怖い顔は全く効果がなかった。

 既視感に溢れる光景に、花京院と顔を見合わせて苦笑を浮かべる。兄の美貌は海外でも通用するらしい。まあ分かりきっていたことだが、兄を初めて見た人は基本、遠目からぽーっと見ているだけのことが多いので、今兄を囲んでいる女性たちは中々行動的である。

 喧しい鬱陶しい騒ぐな近寄るな!と背後に集中線でも背負っている幻覚でも見るくらい迫真な兄と、そんな言葉聞こえてないかのように桃色ピンクのハートを瞳に浮かべている女性達。

 

 やはり兄は置いて来た方がよかったな。

「助けないのかい?」

 恋する乙女はパワフルなので、君子危うきに近寄らず、だ。

 花京院と二人で囲われた兄を眺める。早く終わってくれねえかな〜と思っていると、兄と視線が合った。

「……」

 ご覧、花京院。あれはなんとかしろって思ってる顔だ。兄のああいった顔は珍しいぞ。

「だから、助けないのかい?」

 ……しゃあねえなあ。全く困ったもんだ、やれやれだぜ。花京院、君にも手伝ってもらうぜ。

「あ、ああ」

 いいか?私は右サイドから攻める。君は左から行け。

「……何をするつもりなんだ?」

 いいからいいから、私の真似をしてくれ。

 

 ヘイ、お嬢さん達。この人私たちのダーリンだから退いてくれるかい?

 声を張り上げ、兄の右腕にぎゅっと絡みつく。花京院が戸惑いの顔で突っ立っていたため、視線で「やれ」と訴える。しばらく視線を泳がしていたが、私の圧に負けたのだろう。兄の左側にそっと寄った花京院は躊躇いながら口を開いた。

 

「すまない、お嬢さん方。彼は……彼は、もう決まった相手がいる、らしい……」

 ちゃんと言えよ。じとっと視線を向けると花京院は目を逸らした。まあいいだろう。

 さあ、これで恋する乙女達が退いてくれればいいのだが。

 視線が武器になるのなら、私と花京院は確実に重傷を負っている。そう錯覚するくらいに刺々しい視線が私を突き刺したが、やがて諦めたのか、恋の狩人たちは帰っていった。

 大勝利〜!である。

 

 よかったな、兄よ。私と花京院に感謝しな。

「……助かった」

「うん……」

 帽子の鍔を下げて呟いた兄の肩に、花京院が労わるように手を置く。顔に疲労を滲ませている兄と花京院は、深い溜息をついていた。男の友情でも感じているのだろう。仲がよくて何よりである。

 


 

 隼狩りじゃあああああ!

 兄めがけてとんでもない速度の物体が飛んでくる。スタープラチナが飛来した物体――隼の攻撃を受け止め、拳を繰り出した。

 行けーッ!目を狙えーッ!翼をもげーッ!

「喧しい!黙ってな!」

 そうは言っても、動けないから野次を飛ばすくらいしかできないのである。

 

 足元に視線を移す。見事なまでに凍り付いていた。隼のスタンド攻撃によって、下半身が凍らされてしまったのである。不幸な事に手も巻き込まれている。ちべたい。早く倒してくれないと凍傷になっちまうぜ。息を吐くと、白い息が空気中に溶けていった。

 

 イギーを見つけたのはいいのだが、なんと隼と交戦中だった。今にも鋭い嘴で貫かれそうなイギーの体を花京院のスタンドによって救い出し、今に至る。

 超速で縦横無尽に飛び回る弾丸のような隼は手強く、スタンドも厄介で、兄も苦戦しているようだった。動けない私のフォローに入っているのも中々仕留めきれない原因だろう。氷なんてアヴドゥルがいたら一瞬なのに。

 

 完全な足手纏い……ッ!紛うことなきお荷物ッ!情けなくて体が震えてしまう*1

 

 悔しさに打ち震え心の中で滂沱の涙を流していると、いつの間にか隼が兄達に追いつめられていた。

 愚者が視界を塞ぎ、法皇の緑が動きを封じた所で、スタープラチナの拳が隼の胴体を捉えた。空へと打ち上げられた隼の体は地面へと打ち付けられ、微動だにしなかった。

 倒したようだ。さす兄。さす院。さすイギーである。このメンバー、強いッ!!

 拍手をしたいところだが、生憎今は手どころか腕すら動かないので、彼らに万雷の拍手を送るのは無理だ――というか、この氷消えないんだけど?

 スタンド保有者が消えたにも関わらず、私を拘束している氷塊は消える様子がない。低体温症になっちゃうよ~。

「アヴドゥルさんを呼んでくるよ」

 なるべく早く頼む。冷たいとか通り越して体の感覚なくなってきたからさ。そう伝えると、花京院は神妙な表情をして頷き、アヴドゥルたちを呼びに走っていった。

 

 しかし動けないというのは不便だな。怪我を負った兄達も治療できないし。空を見上げるくらいしかやる事がないので、天を見上げていると顔に軽い衝撃が加わり、視界が塞がれた。

 

 わー!?何!?敵襲!?うぉーっ!助けて、助けて兄さん!!

「……落ち着け」

 頭上から兄の呆れたような声が聞こえる。視界に青い空と兄の顔が映った。兄は制服を着ておらず、その手に長ランを持っていた。先程私の視界を塞いだのはこれか。

「寒いなら巻いとけ」

 そう言って兄は私の首に長ランをぐるぐると巻いた。長ランマフラー、新しすぎる。まあ正直、焼石に水どころかマグマに水滴だが、兄の心遣いは素直に嬉しい。ありがとうと伝えると、帽子の鍔を下げ、ふんと鼻を鳴らした。

 兄が私の背後から離れる様子がなかったので、そのまま上半身を預けるようにして暖を取ろうとした。戦闘直後ということもあり、私よりも遥かに温かい。

「……おい、何をしている」

 いいじゃんか温めてくれよ~寒いんだよ~。

「そっちじゃねえ」

 そっちとはどっちだろうか。眉を寄せて兄を見ると、彼も不可解そうに眉を寄せていた。兄の視界からは私の頭から生えた花の茎が兄の方へと伸びている様子が見えているらしい。

 

 頭のこの花伸縮可能だったの!?

 新たな発見である。

 そんな機能あったのか、と呆けていると、隼の攻撃によって頬にできた兄の傷が突如として治った。兄と共に目を見開く。枯れてる?と尋ねると頷かれた。

 そういう治し方もあるんだ……。

 

 わざわざ花を摘み取る必要がない。つまり、一工程なくなるということだから、これはかなりの発見ではないか。凍らされた甲斐あったかも。

*1
体温低下中

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