ジョジョだったかもしれねェ…   作:aka1

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畜生ォ…持って行かれた……!

 遂にDIOの館へと踏み込んだ私達。あのにっくきギャンブラー、ダービーの弟と名乗る男に分断されたり、ヴァニラ・アイスとかいうふざけた名前の男に襲われたりするハプニングがあったりしたが、なんとか別れた兄たちと合流する事ができた。

 

 決戦前だからだろうか、全員の闘志が立ち上っているような錯覚が起こされる。特に兄なんかは闘志どころか殺意をその身に纏っているような気さえする。

 というか顔が怖い。指名手配中の凶悪犯も裸足で逃げ出しそうな凶悪な顔をしている。

 

 背後に阿修羅を背負っている兄は、その怒りの感情とは裏腹にただただ沈黙を貫いていた。

 

 あの人怖いんだけど。隣の花京院に視線でそう伝えると、花京院は躊躇いがちに「……無理もないよ」と呟いた。

 気遣わしげな彼の視線は、私の左脚を向いていた。──正確には、左脚があった空間だが。地について体を支えているはずの大事な体の一部位は、ちょうど膝辺りから下がなくなっていた。

 

 まあ、なんというか、ヴァニラ・アイスとかいう男に私の左脚が持っていかれてしまったのである。

 アヴドゥルが異変に気づいてくれなければ、危うく左脚だけではなく全身が暗黒空間とやらに吸い込まれなくなっていただろう。マジでアヴドゥルに感謝。

 流石に私のスタンドも欠損は治せないようで、膝から下が生えてくることはなかった。せめて膝下があればくっつけるなりなんなり出来たかもしれないが、スタンドの主でさえ分からない空間に取り込まれてしまったとなると今後二度と私の膝下を見ることはないのだろう。

 

 痛みはもうない──嘘、割とある。かなり……いや、めっちゃ痛い。が、瀕死でもなんでもないし兄たちもそこまで気負わないでくれ。

 ゴゴゴゴ……とおどろおどろしいオーラを背負っている兄に声をかけるが、黙殺された。前世殺人鬼か何かか?怖いんだけど。

 まあ、兄の気持ちは分からないでもない。私だって兄や祖父が自分の知らぬところで重傷を負っていたら、般若を背負っていただろう。だが今は重大な局面だ。もう少し落ち着いてくれ。

 片足で跳ねながら兄に近寄り、どうどうとその肩を叩くと、花京院が「馬じゃあないんだから……」と溜息を吐いた。

 

 


 

 

 残すはDIOのみ。DIOの元へ向かおうとする彼らに「じゃ、頑張って」と片手を挙げ、壁に寄りかかる体勢を作った私に、十の視線が注がれた。口を開け、間抜けな表情を晒す男達に首を傾げる。何をしているんだ。ここで待っているから、とっとと行ってDIOを倒してきてくれ。

 

「置いていけるわけないだろう……!」

 

 手を振りながらそう伝えると、祖父の大声が鼓膜を揺らした。館に響いた祖父の叫びに皆がうんうんと頷いた。信じられないという視線を向けられる。信じられないはこっちだよ。そこは置いていってくれ。彼らの優しさはありがたいが、満足に動けない者を抱えてDIOと対峙するなんて無理だ。どう考えても邪魔にしかならないだろう。

 

 そこからは連れていく置いていくの押し問答が始まった。彼らも私も譲る気がない以上、時間を無駄にするだけである。

 溜息を吐き、先程から一言も発さない兄に視線を送る。このメンバーの中心は兄だ。兄が頷きさえすれば、この膠着状態も終わりを告げるはずである。

 

 おにいちゃ~ん。皆を説得してよ~。

 猫なで声を発すると、冷たい視線が私に刺さった。ごめんて。

 咳払いを一つ。ふざけた態度を改めて、兄を正面から見つめる。そもそも私達の旅の目的はDIOを倒して、母を助けることだ。ようやくその目的が叶いそうな状況で、こんなことに時間をかけている暇があるのか。いや、ない。置いていったって必ず死ぬわけではない。私のスタンドであれば例えここが戦場になったとしても生き延びることができる。むしろこの状態の私が付いていってDIOが倒せなかった、なんて事態になったらそれこそ死んでも死にきれない。

 頼むよ、可愛い妹のお願いだ。聞いてくれたっていいだろ?

 私が延々と話す様子を兄はただ黙ってじっと見つめていた。かつてないくらいの真剣な「お願い」である。これで駄目ならもう泣き落とししかない。人生二回目の人間による恥も外聞もない泣き落とし、見せてやるしかないぜ。

 

 兄が少しでも首を横に振る素振りを見せたら床にへばりついて駄々こねる準備をしていたが、その気迫が伝わったのか。兄は諦めたように重い重い溜息を吐き、「ここでじっとしてろ」と呟いた。

 

 コ ロ ン ビ ア。

 

 脳内に両腕を天井へと掲げる人間の姿が浮かぶ。勝ったぜ。

 

 こちらを気にしながら奥へと進んでいく兄達を見送る。やっと行ってくれた……。なんだかどっと疲れた。

 疲労からの息を吐き、壁に背を預けて座りこむ。兄達はDIOの元に向かったし、これでなんとかなるだろう。悪は主人公に倒されてめでたしめでたし。母の体調も良くなるだろう。ぼんやりと宙を眺めながらこれまでの旅を振り返る。日本からエジプトまでの旅。長かったようで短かった。兄達だけでもどうにかなっただろうが、私がいる事が彼らの力になっているといいと思う。

 

 兄達はまだ戦闘に入っていないようで、花は枯れていない。できればこの花が枯れることなく、全員が無傷で帰ってきてほしいがある程度の負傷は彼らも覚悟しているだろう。……お腹空いたな。日本の食事が、母の手料理が食べたい。

 母の料理に思いを馳せていると、ぞくり、と全身が粟だった。

 

「ほう、小娘。見捨てられたか」

 

 どこか聞き覚えのある声が降ってくる。背筋に冷たい汗が流れ、喉が鳴った。顔を上げることができない。下げた視線の先には誰かの足元が。

 

「憐れだなあ」

 

 嘲笑を含んだ声色が重なり、視線だけ上げる。見覚えはないが、見た事のある顔が口端を持ち上げ、こちらを見下ろしていた。

 

 …………。

 

 

 わりぃおれ死んだ。




Q.なんでヴァニラ・アイス戦全カットなの?

A.細かく書こうとすると妹ちゃんは死んじゃうので
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