ジョジョだったかもしれねェ…   作:aka1

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墜落確率0.0009%

 飛行機は席が二席隣り合っている組が二組、中央席の通路側が一席という組み合わせになった。どうやら一列で取れなかったようだ。

 この中で一番いい席は、孤立した一席である。二席隣り合っている方に座ってしまうと、フライト時間いっぱい隣のムキムキに圧迫されることになるからである。搭乗する前から意識的に誰よりも前へと進み、当然のように一席孤立した席に座る。

 これで飛行中の安眠は私のものだぜ!

 

 

 

 静電気のような痺れが体を駆け抜け、意識が覚醒する。誰だ、私の安眠を妨げる者は……と目を擦ると花京院が虫――クワガタだろうか――にスタンドを出している姿が視界に入った。

 瞬きをする。彼はスタンドを出すほど昆虫が駄目な人なんだろうか……いやいや、そもそも機内に昆虫が飛んでる方がおかしい。つまり、

「起きろ!敵のスタンドの攻撃を受けている!」

 そういうことである。

 私に呼び掛けた兄は空中に浮かぶクワガタから目を離すことなく、その動きを見逃さまいと注視していた。

「体調は!?」

 続けざまに発せられた祖父の言葉に首を捻る。特に何ともないが、何故急に体の調子を尋ねてきたのだろうか。

 彼らと同じように機内を喋り始めたクワガタに視線を合わせながら、どこも悪くないということを伝える。

 

「それはっ、良かったっ!」

 花京院がそう叫ぶと同時に緑の触手のような物体が蠢き、クワガタを捉えた。触手に拘束されたクワガタは、無残にもその体躯をバラバラにされ、次の瞬間何故だか通路に倒れていた老人の舌が割けた。

 ……何が起こったんだ?

 起き抜けなので、状況についていけない。敵のスタンドに襲われ、花京院が倒したという事は理解できたが……。

 なんだか解決したようなので、もうひと眠りするかと座席に腰を下ろす。目を閉じようとすると、男たちがわらわらと近寄り、一斉に口を開いた。

「どこか違和感があったりしないか?」「体調は本当に悪くないのか?」「怪我はしてませんか?」「気分は?」

 何なんだよ一体。私は聖徳太子ではないので一気に話されても分からない。一人ずつ順番に話してくれ。

 

 一人ずつ話を聞くと、どうやら先程のクワガタによって兄と花京院が攻撃を受けたが何ともない、とのことらしい。怪我無いならいいじゃん。

 

「お前の花が枯れて、消えた」

 

 兄の指摘に、彼らが気にしている事が理解できた。兄と花京院が負うはずだった傷は、私のスタンドが肩代わりしたのだろう。そのフィードバックが来ていないか、ということを彼らは心配しているのだ。

 全くもって無問題(モーマンタイ)。熟睡中に起こされてちょっと眠いくらいである。大丈夫。逆立ちだってできる。

「逆立ちはしなくていい」

 そっかあ……。

 

 

 敵のスタンドを倒し、めでたしめでたし。とはいかず。パイロットが全員殺されていた。恐らくあのクワガタと老人が原因だろう。このままでは墜落してしまう。

 操舵席に座る祖父が、これで乗った飛行機が墜落するのは三回目だ、と独り言ち、重苦しい沈黙が流れる。

「テメーとは二度といっしょに乗らねぇ」

 兄の言葉はこの場にいる全員の心情を端的に表していた。

 

***

 

 飛行機では大勢の人間を巻き込んでしまう。空路ではエジプトに向かうことが困難になり、陸路か海路かに選択を絞られた私達は、中華料理屋の席についていた。腹が減っては戦はできぬという訳である。

「しかし、お前は小さいの~」

 もっと食べろ、と次々に注文しようとする祖父に慌てて待ったをかける。そんなに食べられるわけないだろう。

 そもそも私は小さくない。160後半はある。日本人女性の平均身長を優に上回っているし、世界的に見ても高い方だ。恐らく、兄が隣にいるせいで相対的に小さく見えるのだろう。祖父も兄と同じくらい大きいし、余計にだ。

 中学前半くらいまでは、私と兄は同じくらいの背だったはずだ。むしろ私の方が大きかったまである。それが気づけば、中学3年生で並び、高校に入る頃には抜かれていた。筍のようににょきにょきと伸びた兄が、成長痛に時折顔を歪めていた事を知っている。

 

 お皿に料理を盛ってこようとする祖父とそれを阻止する私の無言の攻防が暫く続いたが、「静かに食え」という兄のごもっともなお叱りによって終わりを迎えた。ごめんて。

 

 美味しい食事でお腹も膨れ、花京院によるちょっとした雑学を聞いていると、突然人が話しかけてきた。どうやら、フランスからやってきた観光客らしい。

 ……しかし、髪型がすごいな。見事に重力に逆らっている銀の髪は、一本も乱れることなく天井へと足並みを揃えていた。あまり人の容姿でどうこう言うのは良くないとは分かっているが……、それにしたって目を引く髪型である。奇抜な前髪(花京院)を経た私に驚くものはないと思っていたが、そうでもないらしい。

 世界の広さを実感していると、銀髪の男はディオの関係者だということを仄めかすと、スタンドで攻撃してきた。皿から現れたスタンドは、騎士のような容貌をしている。祖父の義手が貫かれ、アヴドゥルのスタンドが場に現れる。

 どうやら私達は食事の時間さえ心休まることができないらしい。

 

 

「名乗らしていただこう……J・P・ポルナレフ」

 

 !?

 ぽ、ポルナレフだって!?お前、ポルナレフなのか!?

 

 銀髪の彼の名を知り、私の数少ない原作知識が雄たけびを上げている。名前だけふんわり聞いた事があったが、まさか彼がポルナレフだったとは。

 こういう感じなんだ……。いや、知ったとして特に何かあるわけでもないが。

 私が名前を知っているのだ。恐らく彼はただの刺客ではなく、何かあるのだろう。多分、きっと、メイビー。

 

 いやでも、めちゃくちゃこっちに殺意向けてますけど。もしかしてここでやられるタイプの人?何となく知ってただけで、ディオ打倒の旅に全然関係ない?

 

 教えてくれ、お前は一体誰なんだ!?*1

 

 私の無言の懇願は誰も答えることなく、ポルナレフとアヴドゥルが外で戦うことになった。

 

 このままだと誰か分からずに死んじゃうよ!

 

 ポルナレフが!

*1
ポルナレフである




なんかサクサク書けて楽しい
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