ようこそ一之瀬と過ごす夢のような日々へ   作:ざったなっつ

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ふふふっ、好きなキャラを描けて満足です。

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※13話「朝比奈なずな/綾小路と昼食」

 

 

 数多の一之瀬ファンの脳を破壊しかけた男、南雲(なぐも)(みやび)

 

 一之瀬のことを私物にしようと何度も画策し、その度に綾小路に防がれ、一之瀬のことが好きなのかと思えば、むしろ堀北先輩に対して恋する乙女のような猛アプローチを仕掛ける作中屈指のクレイジーボーイだ。

 

 名は体を表すという言葉を全否定するように(みやび)じゃない行動ばかりとるため、彼のことが嫌いな読者は多かったと思う。

 俺もその例に漏れず、最初は南雲のことが嫌いだった。

 しかし、今は違う。

 当初はかませ犬と言われていたものの、2年生編では主要キャラの一人として活躍。身勝手な行動を取りつつも物語の裏ではしっかりと会長職を務め上げ、OAAの導入といった功績も残している。

 

 そんな理由もあり、原作の2年生編後半を読み始めた時には、いつの間にか南雲のことが好きになっていた。今でもよう実キャラの中で上位に入る部類で好きだと思っている。

 2年生編11巻で綾小路を崇拝する赤髪ツインテが南雲をボコろうとした時は本気で心配したし、その時の南雲の呟きには胸を打たれたものだ。

 

 でも、現時点の南雲はアカンッ!

 

 2年生編後半の南雲ならまだしも、今の南雲は一之瀬に近づいて欲しくない。

 百万歩譲って近づいてもいいけど、一之瀬を私物にしようと変な策略を仕掛けてくることは看過できない。

 そのため、高育に入学したら俺が南雲の興味を引こうと考えていた。

 一之瀬への興味を少しでも逸らすため、俺が定期的に南雲を牽制しようと決めていたのだ。

 

 そう思いつつ、偶然開いていた2年Aクラスの入り口から中を覗き込み、声をかける。

 

「すみませーん!南雲パイセ……先輩はいらっしゃいますか?」

 

 俺の声を聞き、教室に残っていた先輩方が驚いた様子でこちらを見てきた。

 今の時期はクラスポイントの存在を1年に話してはいけないはずなので、後輩の存在に少し過敏なのかも知れない。

 っていうか、あれ?南雲パイセンいなくね?

 

「もしかして君、新入生かな?」

 

 南雲パイセンの不在に疑問を感じていると、制服の上からオレンジ色のカーディガンを纏った快活そうな女子生徒が声をかけてきた。

 

 あっ、あっ……朝比奈先輩だぁあああ!!

 目の前に現れたのは、身勝手な南雲パイセンの行動を諌めるような立ち位置にいる義理堅い系女子、朝比奈なずな先輩だった!

 うっわ、間近で見るとめちゃくちゃ可愛いな。ひまわりの髪飾りもとても似合っている。

 その髪飾り一之瀬にも似合いそうだなぁ。どこで売ってるんだろ?

 

「君、大丈夫?」

「あ、はいっ。大丈夫です。心配をおかけして申し訳ありません」

 

 なんか、会う人全員から「大丈夫?」って言われてる気がする。気を付けよう……。

 

「自分は1年Bクラスの水瀬早手と言います。よろしくお願いします」

 

 そう言いながら深く頭を下げる。

 尊敬する先輩には敬意を表すると決めているのだ。

 

「あははっ。いきなり雅……じゃなくて、南雲に会いに来るなんてどんな子かと思ったけど、意外と礼儀正しいんだね。私は朝比奈なずなだよ。よろしくね水瀬くん」

 

 まさか朝比奈先輩とお近づきになれるなんて……と思いつつ、実はこの展開になることをちょっと期待していた。

 朝比奈先輩はいつも南雲パイセンの隣にいるイメージだったため、南雲パイセンに会いに行けばワンチャンお話しできると思っていたのだ。

 

「ところで、どうして雅に会いに来たの?もしかして、中学時代の先輩後輩だったとか?」

「いえ、赤の他人です。2年生に凄い(身勝手な)人がいると聞いたので、ちょっと話してみたいと思っただけです」

 

 どちらかと言えば南雲パイセンより朝比奈先輩とお話ししたかったから、目的はもう達成されたようなものですけどね!

 

「そんな理由で2年の教室に押しかけるなんて、凄い度胸だね。もしかして、雅に何か聞きたいことでもあった、とか……?」

 

 そう言いながら、朝比奈先輩が探るような視線を向けてきた。

 クラスポイントの仕組みに気付いたのか探っているのかな?

 もしそうだとすれば、この状況は好都合だ。今日は本当に運が良いな。

 

「聞きたいことは特にないです。支給されるポイントの仕組みについては大体把握したので、南雲先輩とは普通に雑談したいと思っていました」

「えっ?ちょ、ちょっと待って。ポイントの仕組みについて把握したって、どういうこと?」

 

 良かった。食い付いてくれた。

 

「えっと……お店に無料の商品などが置かれていたことから、毎月10万ポイントが固定で支給される訳ではないと思いました。監視カメラの数から考えて、普段の生活態度などの評価に基づいて支給ポイントが増減されるのかなと思います。3年間クラス替えがないということは、クラス単位で支給ポイントが決定されるのではとも考えました。先生も毎月10万ポイントが固定で支給されるとは言っていなかったので、支給されるポイントが変動することだけは間違いないと思います」

「……」

 

 朝比奈先輩だけでなく、聞き耳を立てていた他の先輩方も唖然としている。

 この様子なら大丈夫そうだな。

 まるで自分で考えたかのように原作知識を披露したが、これも南雲パイセンの興味を引くためだ。おそらく、後で南雲パイセンの耳に今の話が伝わり、面白そうな1年がいると思ってくれるだろう。そうなれば、パイセンのほうから接触を図ってくる可能性は高い。

 

「ちょっとびっくりしちゃった。その考えが合っているかは……」

「大丈夫です。先輩方に箝口令が敷かれているであろうことも理解しています。朝比奈先輩の迷惑になるのは嫌なので、ここで答えを聞き出すようなことはしません」

「そこまで把握してるんだね……」

 

 気を遣って言った言葉だったのだが、若干引かれてしまった。

 朝比奈先輩とはこれからも仲良くしたいので、これ以上引かれる前に退散したほうがいいかも知れないな……。

 

「それでは、そろそろお暇させていただきますね。朝比奈先輩と話せて良かったです。これからもよろしくお願いします」

 

 そう言いながら、再び深く頭を下げた。

 

「あ、うん。またね、水瀬くん」

「はい。失礼します」

 

 最後は可愛い後輩を見守る目ではなくなっていた気がするけど、気のせいだと思いたい。

 

 

 

 

 用事が思いの外早く終わったので食堂に向かうと、入り口から興味深そうに中の様子を覗いている生徒がいた。

 

 入らないのかな?

 疑問に思いながらすれ違い様にその生徒の横顔をチラッと見ると……我らが絶対的主人公、綾小路(あやのこうじ)清隆(きよたか)殿でござった。

 

「あばばばばばばばっ」

「……?」

 

 想定外の事態に泡を吹きそうになっていると、綾小路が少し驚いた様子でこちらを見てきた。すぐさま自律神経に喝を入れ、心を落ち着かせる。

 俺は木、俺は木だ。木は動揺しない……。

 

「大丈夫か?」

「あ、あぁ、大丈夫だ。ちょっと食堂に入るのに緊張して、変な声が出てしまった」

 

 また「大丈夫か?」と心配されてしまったことを反省しつつ……あまりの嬉しさで小躍りしてしまいそうになる気持ちを鎮め、平静を装った。

 やってて良かった精神統一。

 

「あっ、俺は1年Bクラスの水瀬早手だ。よろしく」

「オレは、1年Dクラスの綾小路清隆だ。こちらこそよろしくな」

 

 うわぁぁ……感動だ。こ、これはもうお友達ということでよろしいんですよね?僕達もう友達だよね?

 

「お、お昼がまだなら一緒に食べないか?」

「いいのか?」

「是非是非」

 

 そう言うと、綾小路が嬉しそうな表情をした……気がした。

 そういえば、この頃の綾小路って友達を欲しがってたな。そう考えると、内心では本当に喜んでくれているのかも知れない。ポーカーフェイスが上手過ぎてよく分からないけど。

 

「それじゃあ券売機で何食べるか選ぶか」

「そうだな」

 

 こうして、綾小路と一緒に昼食を摂ることになった。

 朝比奈先輩とお話した後に綾小路と昼食を摂れるとは、嬉しいイベントが起きすぎて心臓が破裂しそうだ。

 

「結構色々あるんだな……」

「水瀬は何にするんだ?」

「ん〜……これかな」

 

 券売機の一画に君臨する高育名物、無料で頼める『山菜定食』を指差しながら言った。

 

「ポイントを節約してるのか?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど、単純に興味があるんだ。どんな味なのか気にならないか?」

「確かに、少し気になるな」

 

 結果、二人仲良く山菜定食を注文。

 ほどなくして料理が出来上がり、席を探すこととなった。

 

「もう結構埋まってるな」

「そうだな。二人分の席が空いてる場所は……ん?」

 

 食堂を見回すと、見覚えのある集団がいた。

 

「Bクラスのメンバーがいる」

「Dクラスの生徒もいるようだ」

 

 なんと、一之瀬率いるBクラスの面々と、平田率いるDクラスの女子軍団が一緒に昼食を摂っている。

 Bクラスの男性陣に平田と女子軍団の一部が混ざり、残りの女性陣は一之瀬がまとめているようだ。

 何だあれ、凄いな。

 

「まだ入学2日目なのに、大規模なクラス間交流が始まってる……」

「オレには真似できない芸当だ」

「俺にも絶対無理」

 

 余談だが、一之瀬の横には櫛田が座っており、圧倒的コミュ力×圧倒的コミュ力という夢のコラボによって女性陣の空気を完全に支配していた。すげぇ……。

 

「なんか楽しそうだな……」

「勇気を出してあそこに混ざるか?」

「いや、それはいいかな。俺は綾小路と交流できるだけで満足だ」

「同感だ」

 

 そんなことを話しながら一団に背を向けて席を探していると……綾小路が少しだけ目を見開き、勢いよく後ろを振り返った。

 

 何だ?まさか、ホワイトルームからの刺客か!?

 そんなことを思いながら綾小路の視線を追うと、櫛田……ではなく、一之瀬を見ているようだった。

 俺の視線に気付いた一之瀬が手を振ってきたため、両手が塞がっている俺は笑顔だけで答える。

 

「……水瀬の知り合いか?」

「ああ、Bクラスの子で一之瀬って言うんだ。中学が同じだったんだよ。もしかして、気になるのか?」

「……少し、な」

「えぇっ!」

 

 ま、まさか一目惚れか!?

 たしかに、あの容姿なら一目惚れするのも無理はないけど、原作では綾小路が一目惚れする展開などなかったはずだ。

 あっ!でもこの時期の綾小路って、カップ麺を見て堀北の胸の大きさを考えるくらい多感だったな。一之瀬に出会うタイミングが早まったことで一目惚れした可能性は充分あるか……。

 

「水瀬が思っているような理由じゃないと思うぞ」

 

 考えが顔に出ていたようで、真顔で否定された。

 

「視線を向けられたと思って少し気になったんだが、自意識過剰なだけだったようだ。水瀬を見ていた視線と勘違いしたのかも知れない」

「なんだ、そういうことか」

 

 びっくりしたぁ。入学2日目でストーリーがめちゃくちゃになったのかと思った。

 それにしても、綾小路の気配察知能力は凄いな。

 入学前に山奥で鍛えてきたから、自分に向けられる視線の察知には結構自信があったのに、一之瀬が視線を飛ばしていたことに気付けなかった。まだまだ修行が足りないな……。

 

「あそこの席が空いたようだな」

 

 修行不足を痛感していると、綾小路が座れそうな席を見つけてくれた。食事を終えた生徒が立ち上がったことで二人分の席が空いたようだ。

 すぐさまその場所を確保し、綾小路と一緒に山菜定食を口にする。

 

「いただきまーす……おっ、意外とイケる」

「普通に食べれるな」

 

 アク抜き等の処理はしっかりとされているようで、嫌な苦味は感じない。

 使用している調味料が少ないため薄味な気はするけど、山籠りの時に生で食べてた山菜に比べれば何倍もマシだ。これ、普通に毎日食べれるな。

 

 そう考えながら山菜定食を堪能していると——

 

「本日、午後5時より、第一体育館の方にて、部活動の説明会を開催いたします。部活動に興味のある生徒は、第一体育館の方に集合してください。繰り返します、本日……」

 

——可愛らしい女性の声と共にそんなアナウンスがされた。

 おぉ、原作通りだ。部活動の説明会、これを聞きに行かない選択肢などない。

 

「水瀬は部活動に興味はあるのか?」

「興味は——」

 

 もちろんある。と言いかけた瞬間、衝撃的な事実を思い出した。

 そういえば……原作における入学2日目は綾小路と堀北が一緒に昼食を摂っていたはずだ。

 そして、今の校内放送で部活紹介に行かないかという話になり、生徒会長である堀北先輩との初邂逅に繋がる。

 アニメでは入学式が堀北先輩との初邂逅だったが、入学式に堀北先輩の姿はなかった。つまり、今の流れは原作準拠だ。

 綾小路と一緒に部活紹介を見に行きたいと先ほどまで思っていたが、そんなことをすれば堀北兄妹の関係に違和感を覚えるというイベントがなくなってしまう。

 一体どうすれば……あっ、そうだ!もうこのまま一緒に行ってしまおう!

 

「——もちろんある。綾小路がよければ、一緒に説明会に行かないか?」

「それは良いな、よろしく頼む。そしたら待ち合わせは……」

「放課後になったらDクラスへ迎えに行くから待っててくれ。すぐ行くから!」

「あ、あぁ、わかった」

 

 よし!ここからは賭けになるが、綾小路を迎えに行った時に堀北も説明会へ誘うとしよう。「堀北生徒会長が生徒会の説明をするらしいよ〜」とか言えば、堀北兄をひと目見るために乗ってくる可能性は高い。

 

「そういえば、綾小路はアニメとか見る?」

「アニメか、これといって見たことはないな」

 

 堀北に関してはなんとかなるだろうと考えた俺は、気を取り直して聞き上手な綾小路に機動従士ボムダムの見どころを語った。

 2年生の時に行われる無人島サバイバル試験で綾小路をほんのちょっとだけ苦しめる存在のため、注意喚起の意味も込めて初代の第十三話『燃えろボムダム』については特に熱く語っておいた。

 知らない知識に興味を持ったのか、綾小路の食いつきは悪くなかった気がする。

 

 余談だが、雑談の最中も綾小路が時折一之瀬の方向を気にしていた。その気持ちはよくわかるよ。可愛いからつい見ちゃうよね。

 あと、綾小路とは学生証端末で連絡先もしっかり交換した。

 ふふふっ、これはもう間違いなく友達と言っていい関係だろう。異論は認めない。

 

 

 

 

 そして待ちに待った放課後!

 一之瀬が「一緒に説明会行かない?」と誘ってくれたが……「ごめん、一緒に行く約束をした人がいるんだ」と言い、身を切るような思いで断った。

 この時期の堀北はそこら辺の野生動物より警戒心が強いため、太陽の化身である一之瀬を連れて行けば驚いて巣に帰ってしまう可能性が高い。

 非常に残念だが、今回は一之瀬を連れて行けないのだ。

 

 そう考えながら綾小路を迎えに行くために席を立とうとしたところ——

 

「水瀬早手くんはいるかしら?」

 

——平穏なBクラスに堀北が襲来した。

 

 

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