ようこそ一之瀬と過ごす夢のような日々へ   作:ざったなっつ

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15話「一之瀬の独白/網倉先生のアドバイス」

 

 

 入学初日の夜。

 私は自分の部屋で布団に包まりながら、今日の出来事を反省していた。

 

「うぅ、失敗した……」

 

 カフェで水瀬くんとの認識のズレが発覚した時、人目を憚らず感情のままに彼を責めてしまった。

 彼の転校に絶望して、彼に3年以上会えなくなると覚悟して、彼に相応しい存在になると決意した。そんな思いが全部無駄になってしまったような気がして、色んな感情が溢れてしまったんだと思う。

 彼と再会した時は桔梗ちゃんが隣にいたこともあって逆に冷静になれたけど、カフェで真実を知った時は感情を抑えきれなかった。

 

 ただ、冷静に考えるとあの感情の高ぶりは大きな間違いだったと思ってる。

 彼が同じ学校にいても、私の決意は変わらない。むしろ、彼と一緒に過ごしながら自分を高めることができる。私が成長する姿を彼に見てもらうことができる。

 それに、私の絶望と覚悟は払拭されたのだから、結果的には良いこと尽くめだ。そもそも、彼の話をちゃんと聞いてなかったことが原因だから、私に彼を責める資格なんてない。

 

 どうしてあんなに感情的になってしまったのかと、今更ながらとても恥ずかしく思う。

 

「……よしっ」

 

 反省タイム終わりっ!もう絶望なんてしないように、誰よりも特別な目で私を見てもらえるように、改めてこれからも頑張ろう!

 そう考えながら飛び起きた私は、寮でのルールが書かれたマニュアルに改めて目を通した。

 寮の家賃だけじゃなくて、水道代もガス代も電気代も全て無料だと書かれている。

 やっぱり、どう考えてもおかしい。

 支給された10万円分のポイントから家賃や光熱費を払うなら、生活費のやりくりを学ばせるという意味でまだ納得できる。でも、そんな必要もなくただ10万ポイントが貰えるなんて違和感しかない。

 明日の朝一で星之宮先生に質問したいところだけど、朝は水瀬くんと一緒に登校する約束をしている……むぅ。

 

 部屋の中をウロウロしながら悩むこと約1時間……断腸の思いで、水瀬くんとの登校を諦めることにした。

 話が長くなる可能性も考えて朝早くに登校するつもりだから、時間を合わせてもらうと水瀬くんの迷惑になる。それに、この疑問を放置して後から取り返しのつかない事態が起きてしまったら、同じ学年のみんなが困る可能性もある。そう思っての決断だ。

 私はすぐにメッセージを送って、水瀬くんに明日一緒に登校できなくなることを謝罪した。

 

 

 

 

 入学2日目の夜。

 私は自分の部屋で布団に包まりながら、今日あった出来事を思い出して項垂れていた。

 

「うぅ、水瀬くん……」

 

 最初の出来事はお昼休みに起こった。

 一緒にお昼ご飯が食べられないことを残念に思っていると、水瀬くんが他クラスの男子生徒と一緒に食堂へやってきた。

 最初は、もう他のクラスの生徒と仲良くなってて凄いと思った。でも、水瀬くんの目を見た瞬間、私は驚きのあまり言葉を失った。

 

 水瀬くんが向けていた目は、私も初めて見る目だった。

 そこにどんな感情が込められているかは分からないけど、強いて挙げるなら、水瀬くんがボムダムの主人公について熱く語っていた時の目。それに近いと思う。たぶん、憧れとか羨望とか、そういう感情の混じった目だ。

 入学初日は基本的にずっと一緒だったから、あの男子と水瀬くんが接点を持ったのは2日目になってからだと思う。

 それなのに、あんな特別な目を向けているなんて……一体何があったんだろう?あの男子生徒のことが気になった。

 

 私の視線はすぐに気付かれてしまったけど、それでも観察することをやめられなかった。

 何をすれば水瀬くんからあんな目を向けてもらえるのか、知りたかったからだ。

 その男子は視線に敏感みたいで、何度もこちらを気にしていた。

 今思えば、私の視線のせいで食事の邪魔をしてしまったのは本当に申し訳なかったと思う。あの男子生徒と話す機会が訪れたら、今日のことはちゃんと謝ろう。そう心の中で誓った。

 

 

 次に驚いたのは放課後のこと。

 友達と部活動の説明会に行こうとした時、水瀬くんの名前を呼ぶ他クラスの生徒がやってきた。

 

 物凄く美人で、落ち着いた雰囲気の女子生徒。でも、私が驚いたのはそこじゃない。

 水瀬くんがその子に向けた目にも、憧れや羨望のような感情が混じっていたからだ。先ほどの男子生徒に向けていたほどではないけど、似た思いが込められているのは確かだと思う。

 焦った私は、桔梗ちゃんに二人のことを教えてもらった。

 二人ともDクラスの生徒だったから名前はすぐに分かったけど、桔梗ちゃんも少ししか話したことがないみたいで、どういう生徒なのかは分からなかった。

 

 水瀬くんと二人の間に何があったのかは分からない。でも、水瀬くんが2人に特別な感情を抱いていることだけは分かる。

 

「綾小路清隆くんと、堀北鈴音さんかぁ……」

 

 筆箱に付けたひまわりのキーホルダーを弄りながら、静かに呟く。

 

「……私って、魅力ないのかなぁ」

 

 その疑問に対する答えは、どこからも聞こえてこなかった。

 

 

 

 

 入学してから数日が経ち、この間にも色々な出来事があった。

 神崎や柴田や浜口といったBクラスの主要男性陣と仲良くなったり、南雲パイセンに呼び出されたけどクラス会があったので断ったり、様々な部活動に顔を出してプライベートポイントを稼ぎまくったり、とても濃い数日間だった。

 しかし……割愛!

 

 それらの出来事を語るより、何倍も重要な問題が発生しているためだ。

 

「ちょっと聞きたいんだけど、水瀬くんは帆波ちゃんが元気ない理由って知ってる?」

 

 一之瀬が教室にいないタイミングで話しかけてきたのは、紫髪のポニーテールを靡かせる快活美少女、網倉(あみくら)麻子(まこ)だ。

 原作で一之瀬の親友になる女子生徒なだけあって、休み時間に仲良く談笑している姿をよく見かける。

 

「俺も気になってるんだけど、教えてもらえなくて……」

 

 現在起きている重要な問題とは、一之瀬の元気がないことだ。

 一之瀬とは毎朝一緒に登校しているため、最近様子がおかしいことには気付いていた。しかし、雑談の中で探りを入れても「全然大丈夫だよ〜!」としか答えてくれないため、理由は未だに分かっていない。

 

「網倉さんは何か聞いてないか?」

「私も何も聞いてないんだよね。でも、心当たりがないわけじゃない、かな」

「な、なんなんだそれは?教えてくれっ!頼む!」

「ちょっ!水瀬くん近い近いっ!」

「ご、ごめん」

 

 思わず網倉に詰め寄ってしまった。申し訳ないことをした……。

 自分の未熟さを反省しながら質問を続ける。

 

「そ、それで、心当たりっていうのはなんなんだ?」

「あくまでも私の予想でしかないんだけど……人間関係、かな」

「人間関係……?」

 

 一之瀬と南雲パイセンはまだ接触していないはずだ。白波が告白したという話もまだ聞かない。ということは、彼らが原因ではないだろう。

 まさか、龍園がもう動き出したのか?俺の知らない所で嫌がらせを始めてるとか!?

 龍園のことも好きだから実力行使はしたくないけど、一之瀬のためなら容赦せんぞ!

 

「多分だけど、水瀬早手くんっていう人が原因だと思う」

「水瀬、早手……?」

 

 網倉が妙なことを言い出した。水瀬早手?そんなやつは原作に出てこなかったはずだ。ということは、モブキャラの誰かか?……いや俺か!!龍園、疑ってごめん。

 

「そ、その犯人に至った理由は?」

「う〜ん……その前に一つ確認したいんだけど、水瀬くんは帆波ちゃんとホントに付き合ってないんだよね?」

「ホントに付き合ってないです」

「なんで?」

「えっ、なんでって……」

 

 それは、一之瀬が俺なんかとは釣り合わない存在だからだ。

 一之瀬は性格も能力もルックスも、どれをとってもこの世界でトップクラスの美少女である。恵まれた環境を得て自由気ままに生きてきた俺なんかが釣り合うはずないし、そんなやつを好きになるわけがない。

 そんな説明を網倉にした。

 

「……帆波ちゃんが悩むのも無理ないわ」

「えっ?」

「超絶鈍感残念イケメンの水瀬くんにアドバイスを与えます」

「えっ、あ、はい!」

 

 超絶鈍感残念イケメン?最後は褒めてくれてる。ちょっと嬉しい。

 

「帆波ちゃんと二人っきりで、じっくりと話し合う機会を作ると良いでしょう。できればデートに誘いなさい。さすれば道は開かれます」

「は、ははぁ〜。ありがとうございます」

 

 網倉先生のありがたいアドバイスに、深々と頭を下げて感謝した。

 何故それで道が開かれるのかは分からないが、今は網倉先生の教えに従うべきだろう。

 入学初日の放課後にデートの約束は取り付けてあるため、あとは予定を決めるだけでOKだな。

 

「あ、帆波ちゃん戻ってきたよ。善は急げだよ」

「りょ、了解っ」

 

 網倉先生は考える時間を与えない教育方針のようで、背中をグイグイ押して容赦なく一之瀬の方向へ誘導してくる。

 覚悟を決めた俺は手と足を一緒に出しながら、自力で一之瀬のほうへ歩いた。

 

「き、奇遇だな一之瀬」

「にゃ?えっと、奇遇だね水瀬くん」

 

 一之瀬の背後に移動した網倉先生が、「奇遇ではなくない?」とでも言いたげな目でこちらを見てきた。

 自分でもおかしなことを言っている自覚はあるけど……すでに約束しているとはいえ、デートのお誘いは緊張するんスよ。

 

「実はその、入学初日にカフェで約束してた件について話したいんだけど……」

「あっ……あの話、だよね」

 

 事情を知らない網倉先生が小首を傾げているが、気にせず話を続ける。

 

「その、次の休みの日とかどうかな〜と思いまして」

「い、行きたいっ!けど……その、無理はしなくても大丈夫、だよ?」

「えっ……?」

 

 全然無理はしていないのですが……。

 

「お互いにお詫びし合おうっていう話だったから、何もし合わなくても大丈夫なのかなーとか、ちょっと思っちゃったりして……水瀬くんっ!?」

 

 俺はその場で膝から崩れ落ち、目のハイライトを消した。

 

 





プロットを変える予定はないのですが、単純な好奇心でお聞きしたいので回答していただけると嬉しいです。

  • オリ主と一之瀬、いい加減付き合えやぁ!
  • 恋愛は過程じゃ!まだ焦らせやぁ!
  • ここから別のヒロイン狙えやぁ!
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