ようこそ一之瀬と過ごす夢のような日々へ   作:ざったなっつ

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第1章:入学編
7話「キターーーー(゚∀゚)ーーーー!!」


 

 

 あまり眠れなかったな……。

 そう思いながら朝の支度を終え、高育の制服に腕を通す。

 

 ……っと、ネクタイちゃんと締めるとマジメに見られるかな。少し緩めに……こんなもんか。

 ネクタイを少し緩く締め、入学式に向かう準備を終えた。

 

「……よし」

 

 準備完了だ。

 ついでに言えば、『入学式に向かう前の綾小路ごっこ』も完了だ!

 今の一連の動作と心境とセリフは、漫画1巻冒頭の綾小路を再現したものだった。我ながら素晴らしい出来だと思う。

 入学式当日の朝は絶対にこれをやると決めていたので、無事に目標を達成できて満足だ。数日前から練習していた甲斐があった。

 

「あっ、早くバス停に行かなきゃ」

 

 今日はやらなければならない事がたくさんあるため、こんなところで躓くわけにはいかない。

 数日間お世話になったホテルをチェックアウトし、最寄りのバス停まで全力で走った。

 

 

 

 

 バス停に辿り着いた俺は、高育行きのバスをすでに3本見送っていた。

 入学式まではまだ時間があるため、焦る時ではない。

 だが、この路線で本当に合っているのか、このバス停からの乗車で良かったのか、このままここで待っているだけで本当に良いのか……不安が募っていく。

 

 いや、何度も確認したんだ。きっと合ってるはずだ。大丈夫、大丈夫だ俺。

 心の中で自分にそう言い聞かせながら、次のバスを待つ。

 

 今俺がバスを待っている場所は、『高度育成高等学校前』行きで『西砂二丁目』を通る路線のバス停だ。

 アニメの冒頭で描かれていた情報の通りなら、『西砂二丁目』は例のお婆さんが乗ってくるバス停である。

 つまり、この路線のバスには我らが絶対的主人公、綾小路が乗ってくるはずなのだ!さらに言えば、そのバスには堀北と櫛田と高円寺という超重要キャラクター達も乗車している。よう実ファンとして、そんな夢のようなバスに乗らないなんて選択肢はない!

 そう考えた俺は、綾小路達が乗るバスの路線をすぐに特定。

 『西砂二丁目』から3つ前のバス停近くにあるホテルへ数日前から泊まり込み、この日を待っていた。

 

「……っ!!」

 

 その瞬間は突然訪れた。

 バス停で待機してから4本目のバスが到着した時、優先席付近に見覚えのある金髪の後頭部が見えたのだ。

 急いで乗車口から中を覗き込むと、そこには複数の高育生や一般の乗客と共に……綾小路、堀北、櫛田、高円寺の4人が乗車していた。

 

「あの、大丈夫ですか?」

「あ、す、すみません。大丈夫です」

 

 あまりの感動で思わず立ち止まってしまい、後ろに並んでいた社会人女性(・・・・・)に心配されてしまった。

 バスに乗っている人達からも奇異の目で見られている。イベントが起こる場所ではなるべく目立たないようにしようと決めていたのに、早速やらかしてしまった……。

 

 みんなの視線から逃げるようにバスの奥へと移動し、隣の人に声をかけてから偶然空いていた席に腰を下ろした。

 

「ひっひっふぅ〜……」

 

 深呼吸して気持ちを落ち着かせてから、ゆっくりと車内を見回す。

 車内右側の席には綾小路と堀北が一緒に座っており、中央付近には櫛田が吊り革に掴まりながら立ち、左側の優先席には高円寺が堂々と腰を下ろしている。

 

 まだ心のどこかで、ここが本当によう実の世界なのか疑っている自分がいた。

 一之瀬と実際に会って、高度育成高等学校の存在を知って、確信に近い思いは抱いていたものの、そんな夢のような話があるわけないという思いもあった。

 

 だが、今確信した。

 

 ここは紛れもなく『ようこそ実力至上主義の教室へ』の世界だ!

 思わず溢れ出しそうになる涙をぐっと堪え、気配を完全に消してイベント観察モードへと移行。

 一瞬、綾小路がこちらに目を向けた気がしたが、今目が合うと感動して涙を流しそうなのでそっと下を向く。

 今の俺は道端の石ころ。イベントが起こる現場に偶然転がっているただの石ころだ。

 

 それからバスに揺られること約20分。見覚えのあるお婆さんが乗車してきた。

 

 き、キターーーー(゚∀゚)ーーーー!!

 

 バスの中はアニメより混雑している印象なので、状況はおそらく原作寄りだ。お婆さんのビジュアルは……ちょっと判別がつかないな。漫画に雰囲気が近い気もする。

 そんな分析をしながら瞬きも忘れて目の前の光景を観察していると、お婆さんの隣に立っていたOL風の女性が優先席に座っている高円寺を睨みつけながら口を開いた。

 

「そこの君、お婆さんが困っているのが見えないの?」

「実にクレイジーな質問だね、レディー」

 

 キェェェェェアァァァァァシャベッタァァァァァァ!!

 

 続く高円寺とOL風女性の言い合いも原作のセリフ通りだった!

 お婆さんには大変申し訳ないが、この光景が見れて本当に嬉しい。努力が報われた気がする。

 

「あの……私も、お姉さんの言う通りだと思うな」

 

 プリティーガール櫛田のターンが始まった!

 櫛田は少し困った表情で、高円寺を説得しようと試みている。

 

 それにしても、改めて見ると櫛田って相当可愛いな。この世界は可愛い女性が多いけど、その中でも更に整った顔立ちをしている気がする。

 あの顔で言い寄られたらどんなお願いでもすぐ聞いてしまいそうだ。

 ま、一之瀬のほうが可愛いけどな!(あくまでも個人の感想です)

 

 そんなことを考えているうちに、櫛田と高円寺のバトルが終了した。

 大満足だ。朝から良いものを見させてもらった。もうお腹いっぱいです。

 

「どなたかお婆さんに席を譲ってあげて貰えないでしょうか?誰でもいいんです、お願いします」

 

 櫛田が臆することなく、乗客にそう訴えかけた。

 この後は社会人女性が席を譲ってこのイベントは終了する。

 

 そう思いながらしばらく待ってみるが、誰も席を譲らない。おかしいな、どういうことだ?

 小首を傾げながら再び車内を見回すと、とんでもない事実に気が付いてしまった。

 なんと、アニメで席を譲っていたっぽい社会人女性が立ったまま乗車していたのだ!

 ってかあの人、俺の後から乗ってきた人だ!と、という事はもしかして、あの人が本来座っているはずだった席を俺が奪ってしまったのか!?

 だとすれば、席を譲る役目の人がいなくなってしまったことになる。

 まずい!記念すべきよう実最初のイベントが不完全燃焼のまま終わってしまう!

 

 1秒足らずの時間で状況を理解した俺は、石ころモードを即座に解除。おそるおそるといった様子で手を挙げた。

 

「あ、あの、どうぞっ」

「ありがとうございますっ!」

 

 櫛田が満面の笑みで頭を下げると、混雑をかき分けてお婆さんをこちらに誘導してきた。

 俺はお婆さんに席を譲り、櫛田の脇を抜けながら人混みに紛れ、石ころモードを再び起動。完全に気配を消した。

 

 目立つつもりはなかったけど……まぁ、これくらいなら問題ないだろう。

 そう思いながらしばらく石ころのふりをしていると、高育の前に到着。バスを降りてすぐの位置から高育の校門が見えた。

 

 ファーーーーーーーーッ!アニメで見た校門そのままだ!

 校門の奥に見える桜並木も、そのさらに奥に見える校舎の形も、アニメで見た光景にそっくりだった。

 

「あっ、見つけたっ!」

 

 バス停から校門を眺めて感動していると、背後から聞き覚えのある声に呼びかけられた。

 

 






本編開始でございます。
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