大魔族の彼は人生を謳歌する   作:HIIRAGISHIYU

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017 お兄様には憧れる

 

 

 どうもこんにちは、レノストです。今年で4180歳を迎えることとなりました。

 

 天空で平和に過ごしているオレとは対照的に地上では全然終わる気配が見えない魔王軍と人類の熾烈な戦争が繰り広げられている。

 

 未来の結果を知っているとはいえ、基本的に魔王陣営が優勢だと本当に大丈夫かなという気持ちが湧いてくる。

 

 ……本当に大丈夫だよね。

 

 オレという特異(イレギュラー)が生まれたことで魔族が勝つ未来になってしまったら、どうしよう。

 

 ……不安だ。

 

「レノスト、何を不安がっている。魔王が死ぬまで地上への干渉は最小限にすると自分で言っていただろ、忘れたのか?」

 

 そんな弱々しい姿のオレに呆れたように言ってくるゼーリエ。

 

 ゼーリエからも地上への干渉は最小限にしろと小言を言われている。ゼーリエが言うに、なんでも今のところは魔王陣営が優勢ではあるが、上手いことバランスが取れているらしい。

 

 それを規格外の戦力であるオレやゼーリエが介入した場合、そのバランスが崩れて魔王陣営と人類陣営のどちらにも良い結果が残らないとのこと。

 

 オレにはよく分からなかったが、ゼーリエがそう言っているんだ。オレもゼーリエと長い付き合いであるから身に染みて理解している。

 

 ゼーリエの直感はいつも正しい、と。だからオレは不安な気持ちを胸に抱きながら、今は魔法開発に勤しんでいるのだった。

 

 そして現在、開発している魔法は『物質を分解する魔法』である。

 

 元ネタは“さすおに“で有名な某現代魔法もののやつである。やはりあの格好良さは憧れてしまう。

 

 だが、いざ開発し始めると面倒くさすぎて挫折しそうだ。物質を分解するにはその物質が構成する成分、原子を全て理解して術式を構築しなければならない。

 

 その面倒くささといったら、超ヤバい。オレの語彙力もヤバいが、マジでヤバい。

 

 疲れる、頭痛い、体がだるい。

 

 冷静になって考えてみると『物質を分解する魔法』なんてなくとも、魔法を行使した結果を想像したら別に『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』で事足りる。

 

 確かにすごい魔法になるんだろうが作るだけで使う場面がない魔法となることは容易に想像できる。

 

 事実、ゼーリエに魔法の詳細を話したら同じようなことを言われた。別に他の魔法で同じような結果が残せるだろうがってね。

 

 でもさ、何度でも言うがやっぱりカッコいいじゃん。憧れてしまったんだ、正論なんていらない。

 

 それに、どっかの藍染さんも憧れは理解から最も遠い感情だよって言ってた。全然意味違うと思うけど。

 

「フハハハハ、オレの憧れは止まらないのだ!!」

 

 研究室に引き篭もって20徹目、テンションもそろそろ……とういうか既におかしくなってきて笑い方も一昔前のどこぞの魔王みたいになってしまっている。

 

 まぁ、絶対にオレはこの世界の魔王になんぞなりたくないけど。

 

 だって将来死んじゃうし。そして何より(オレを除く)魔族は非社会的動物であり、社会性はほとんど無く、社会を運営するために必要な道徳や良識は皆無。

 

 そんな奴らが所属する組織を運営し、唯一の上下関係の表し方が魔力量だけだなんて蛮族かよ。

 

 その魔族を未来視を持つシュラハトが腹心としているとはいえ、はたから見ればなんとなく、まとめ上げている魔王はやはり頭のネジが数本外れたイカれ野郎なのだ。

 

 そう言う観点から見れば魔王はある意味尊敬すらできる。誰も成し遂げられると思っていなかった魔族を統べる王に君臨できたのだから。

 

 そう言えば数十年前ぐらい前から魔王がエルフを皆殺しにしろという命令が発せられていた。

 

 魔王が何かを危惧したのか……いや、どちらかというとシュラハトが何かの未来を見て、魔王に進言したのか。原作を読んでいてもそこら辺の理由がよくわからないよな。

 

「ちょっ、ヤバ……」

 

 あ、余計なことを考えていたせいで『物質を分解する魔法』が暴走して研究室の一部が分解した。

 

 魔法実験は度々、こういったことが起きる。例えば今のように余計なことを考えていたり、術式の構成が間違えていたり、魔力を込め過ぎたりと。

 

 理由は様々だが、魔法実験するにあたって、こういったことは日常なのだ。

 

 オレは壊れた壁に向かって手をかざし、魔法を発動させる。

 

「レパロ」

 

 レパロなんて言ってみたが、実際に使うのは昔に作った『壊れた物体を修復する魔法』だ。昔、研修室を壊しまくって開発した魔法だ。

 

 とりあえず、崩れた壁を『壊れた物体を修復する魔法』で直していると上からドタドタと足音を立てながら研究室に突っ込んでくる早坂。その後ろには“またか”みたいな表情をして呆れたかのように溜息を吐いたゼーリエが続いていた。

 

「レノスト、またか」

 

 ゼーリエは表情通りのことを口にした。

 

「いや、ごめん。別のこと考えてた」

 

「はぁ、魔法開発の時は気をつけろと何度も言ったろ……今晩はスイーツを二つにしろ」

 

 そう言ったゼーリエはオレの隣に立って、部屋の修復を手伝ってくれた。辺りに散らばった物品やレポートなどは早坂が片付けてくれていた。

 

「分かった。手伝ってくれて、ありがと」

 

 それ以上のことは言葉に出さずゼーリエとオレは黙々と魔法を使って研究室の修復を行なった。

 

 

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