どうもこんちは、今年で4200歳を迎えたレノストです。
最近はゼーリエもよく来てくれて、フランメもたまにであるが
他にも『壊れた物体を修復する魔法』とは別の新しい魔法を研究……いや、魔法と言っていいのか分らないな。
なぜなら今、オレが研究しているのは女神様の魔法なのだから。
ことの発端はそういえばいつの間にか女神様の魔法が地上で広まっていたなと思い出して女神様の魔法を今更ながら研究し始めたことである。
地上では女神を信じている者とそうでない者で分かれている。オレはどちらかと言うと信じている方だろう。
オレ、転生したし。だから超高次元存在はいてもおかしくないだろ、と思う。何より夢物語であった魔法があるのだ。
魔法もあるのだから、女神くらい存在するだろうがっていうのがオレの考えだ。
まぁ、だからと言って女神に祈るとか、懇願するとかはしない。その存在自体はいるのだろうと漠然とした思いでいるが、その存在を崇めるといった気持ちは有していない。
まぁ、この世界に転生させてくれた存在がこの世界の女神様だというのであれば今すぐにでもオレは敬虔な信徒になるだろうが。
それだけオレはこの世界に転生させてくれた存在に感謝しているのだから。
これだけ長い年月を生きたというのに辿り着けない魔法の極致。前世は適当に生きて、心底夢中になれるものがなかったのに、この世界では魔法という心踊る未知があった。
故にオレはこの未知と会わせてくれた存在がいたとしたら、その者に感謝し、讃えるのもやぶさかではないと思う。
閑話休題。
話を戻すが、まず異世界があり、その異世界にオレという
神なる存在、もしくは神と呼ばれるに相応しい力を持った存在がいることは確か。それが意思ある存在かは知らないがな。
それと主にオレが女神……超常の存在を信じる理由はハイターの言葉を借りるのなら、存在するのだと信じた方が都合がいいからであろう。
いないとして否定するより、いるとして信じた方がいいに決まっている。なぜなら、もし存在していた場合、否定した時のデメリットが大きすぎるのだ。
実に不敬な信じる心の在り方だろうが、所詮はそんなもん。
人は目にしたもの、経験したものしか心の奥底から信じることができず、世界と自己を切り離して、自己との関係性を問わず、世界を認識できる範囲も常識というものが無意識に邪魔しているので限りがあると思う。
本当に全ての存在に神の実在を信じて欲しくば、実際に目に見える形で奇跡を起こせという簡単な話なのだから。
少々熱く語ってしまったが、つまりオレが言いたいことは女神の存在を信じてはいるが、女神に祈ったり、崇めているわけではないということだ。
だが、やはり神が皆が信じる全知全能で善なる超常存在であるのなら、なぜ人に希望や願望を抱かせるようにしたのかなど自分でも理不尽だなと思える考えが浮かび上がる。
言われなくても分かっているさ。希望や願望は明日を生きる活力になる。だが、そのプラスな面があるのと同時にマイナスな面もあるのだ。
叶うことはないと自分で理解しているのに抱いてしまう希望や願望がかえって、自分自身をとても辛くさせてることを。
今の状況を鑑みたら、より一層そう思ってしまうのだ。
それはいつもの日常の日々での合間の出来事。
今日も今日とて魔法開発に励もうと研究室に向かって研究の続きをしようとした時、ゼーリエが玄関前に転移してきたのを魔力探知で察知した。
ゼーリエが『空間転移の魔法』を扱えるのはオレが戦闘中に使っていたのを見て盗んだのだという。
いやはや、時空間の膨張と収縮のワープバブルのイメージをどうやって構築したのか、はたまた別のイメージを持って空間転移を実現させたのか。彼女の頭の中が実に気になるところだ。
そしてオレも『空間転移の魔法』を使って彼女の元へ向かうといつもより……というより、それどころか初めて見る今にも泣きそうな表情。
確かに今までは寂しいことや、悲しいことはあったのだろうが表情には出ず、彼女の言動や行動の節々から読み取るしかなかったというのに。
そんなゼーリエが表情を表に出しているのだ。オレは何があったのか彼女に問おうと思い、口を開きかけたところで止まった。
なぜならゼーリエが頭をオレの胸に預けてくるような形で寄りかかってきたからだ。
何かあったの? なんて野暮なことを聞かなかった。
オレは察したのだ。
つい数十年前、フランメの夢をくだらないと言いつつ微笑みながら語り、フランメが孫弟子を連れてきたと嬉しそうに語り、その孫弟子に欲しい魔法はないかと言うといらないと返ってきて表情には出さなかったが、ちょっと悲しそうに語ったゼーリエの姿が脳裏に過ぎる。
フランメと会った日はもう50年も前、そして彼女は人間だ。この時期にゼーリエがこんな弱々しい様子を見せる原因などあれぐらいしかない。
一つ、文句があるとするならば、オレも最後ぐらいは遠くからでも弔いをしたかった。フランメにとって、魔族であるオレからの弔いなんて恥なだけかもしれないがな。
この様子から見るにやはりゼーリエにとってフランメは大事な弟子でもあり、母が娘に向ける感情と似たようなものを抱いていたのかもしれない。
オレはそんな彼女を慰めるように頭を撫でた。普段なら嫌がる様子を見せるはずなのに全く反応がなく、されるがままだ。
「温かいココア、飲む?」
ゼーリエはオレの胸の中で頷く。
オレはゼーリエを家へと招き入れ、服についた涙の跡に気づかない振りをしたままココアを準備するのだった。