大魔族の彼は人生を謳歌する   作:HIIRAGISHIYU

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021 魔猫と進化

 

 

 どうも、こんにちは。今年で4500歳を迎えた、レノストです。この挨拶をするのが久しぶりのような感じがしますが気の所為でしょう。

 

 まぁ、そんなことはどうでもいいとして、今はこれだ。

 

「小町、大丈夫か?」

 

 オレの膝の上で体調が悪そうに丸くなっている黒猫。尻尾が二つあるという点とあり得ないほどの長寿であることさえ無視すれば至って普通の猫(魔物)である。

 

 そんな黒猫────小町は今日、朝起きて餌を与えてみたら食欲がないのか餌に口をつけなかった。

 

 かれこれ小町とは3000年以上の付き合いだが、小町の食欲がここまで無かった日は初めてだった。なのでオレは何かの病気かと思い、開発した魔法と不器用ながら女神の魔法で症状を調べていたのだが、小町の体は健康そのもの。

 

 普段は自分から呼ぶことは殆どしないゼーリエを呼び出して一緒に原因解明を手伝ってもらっているが今のところ進展はなし。

 

「ゼーリエ、どう? なんかわかる?」

 

「少し待て、考えている」

 

「マスター、私が記憶しているライブラリーの中には対処できる魔法はなさそうです」

 

「そう……か」

 

 オレは何もできず、小町を撫でることしかできない。

 

 圧倒的な無力感が心内を満たす。そしてトラウマかのように記憶の奥底から込み上げてくる己の不甲斐ないという気持ちはかつての友であったエーヴィヒを亡くした日を思い出す。

 

 そんな暗い気持ちを抱いていると、ゼーリエが伏していた顔を上げ、こちらを見つめてくる。

 

「レノスト、仮説に過ぎないが聞くか?」

 

「何かわかったのか!」

 

「あぁ、おそらくだが小町は進化を遂げようとしている」

 

「進化?」

 

「稀にであるが、魔物は進化することがある。ある魔物が人を騙し、姑息に、効率的に人を食べられるように言葉を話せるように進化したりなどな。それがフランメが定めた言語を話す魔物……魔族。お前だな、レノスト」

 

「うん、そうだね」

 

「小町は本来の寿命を大きく超えて長い年月を生き、そこらの大魔族すら凌駕する魔力を持つ。あり得ない現象、特異点(イレギュラー)だ」

 

「そんな小町だからこそ進化という稀に起こりうる現象が今現在起こっていても不思議ではないということか」

 

「まぁ、今は様子を見るしかあるまい。私らが身につけている魔法や女神の魔法すら小町を健康と判断したのだ。できることなど側にいてやることぐらいしかない」

 

「わかったよ、ゼーリエ」

 

 その日は何もしてあげることができずに終わりを迎えることとなり、翌日の朝────

 

「なんだ!?」

 

 いつも小町が寝床としている場所から膨大な魔力の奔流を肌で感じ、急いで現場まで向かうとそこにいたのは尻尾が3本、艶のある黒毛の猫。

 

「こ、小町か?」

 

「にゃぁ!」

 

 問いかけるオレに元気よく返事をする小町は昨日の不調が嘘だったかのような様子であり、オレが抱えている不安な気持ちが吹き飛んだ。

 

「ほぅ、小町の魔力量が劇的に増加しているな」

 

 声がした方へと目を向けるとゼーリエが早坂を側に仕えさせながら部屋へと入ってきた。

 

 ゼーリエと早坂の今の様子を見ると、早坂がどちらかというとオレの従者というよりゼーリエの従者みたいな感じにいつの間にかなっている。

 

 まぁ、普段身の回りの生活のほとんどはオレ一人で何でもできる。強いて言えば料理と偶に掃除を任せてるくらい。

 

 そんなオレに比べてゼーリエは多分自分一人でも出来るのだろうが、面倒くさいからなのか早坂に身の回りのことほとんどを手伝わせている。

 

 そのせいで必然的に早坂はゼーリエの側で世話するようになったのだろう。

 

 文句があるわけじゃない。こちらとしても別に構わないし。それに原因の一つとして考えるのなら、それを良しとしているオレもオレだからね。

 

 話が脱線したが、今はそんなことより小町だよ。前の小町と変わったところは……魔力探知で調べた感じ、ゼーリエの言う通り魔力が増えている。

 

 そうだな、大体前の倍は増えたかな。それに尻尾も3本になっている。

 

 前は尻尾が2本で猫又みたいだったけれど、今は猫魈って感じだな。

 

 その他にも毛の艶が更に良くなっている。前の小町とは比べ物にならないほどの美人さんになっている。

 

 試しに小町を撫でてみると前のより上質になっているのを肌で感じ取れる。

 

 このまま、この心地よさに身を委ねてしまうと小町を撫でてるだけで一日が終わってしまいそうな予感がしたので、オレは名残惜しいが小町を撫でるのをやめる。

 

「レノスト、小町の様子はどうだ? 健康上は問題ないように見えるが」

 

「オレも同意見だよ、ゼーリエ。小町はいたって健康、問題なしだ」

 

「そうか。この小町の様子から考えるに、やはり私の推察通り、進化が原因だったようだな」

 

「そうだね。経過観察はしばらく必要だろうけど、これで一安心ってところかな」

 

 オレは小町の一応の無事に安堵の溜息を吐き、小町を抱きしめる。

 

「本当に何事もなくて良かった、もう心配させるなよ」

 

 小町に言い聞かせるように、オレは言った。すると────

 

「分かったのじゃ、主様よ」

 

 どこからともなく綺麗で、儚げで、凛とした声が部屋に響く。その音の発生源へと目を向けると、先ほどまで撫でていた小町が目に入る。

 

「やっと主様と喋れるようになったのじゃ。ふむ、進化した影響なのか、出来ることが増えたようじゃな。ならばッ」

 

 オレの視界にハッキリと小町が口を動かして声を発している様子が映った。

 

 このことだけでも驚きなのだが、小町がオレの知らない魔法……いや、オレが魔法と認識できなかった呪いを発動させる。

 

 呪いが発動すると小町の体が光り輝き、徐々に形が変わっていく。そして、光が収まるとそこには────

 

「くくく、これで女狐とやっと同じ土俵に乗れたかの?」

 

 服を一切纏っていない、黒髪長髪猫耳猫尻尾の美女がいた。

 

 オレとゼーリエ、早坂、その場にいた全員が唖然として、言葉一つ出すことができなかった。

 

 




 久しぶりに御話を書いてみたけど、こんなに御話の内容を考えるの難しかったけ? という思いを抱きました。
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