どうもこんにちは、フリーレンとついうっかり出会ってしまった4700歳のレノストです。
はぁ、マジで最悪だ。よくある転生ものにありがちな失敗をやらかしてしまった。
なんでオレはあそこでなんの疑いもなく近づいてしまったのか。
これはあれか? よく二次小説でありがちな原作の流れを変えさせない運命力というやつか?
……いや、違うな。あそこでオレがフリーレンと出会っても大して原作に影響があるとは思えない。
つまりあれはただ単純にオレのバカさ加減を証明しただけだ…………よしッ、今も後悔に苛まれているが過ぎたことをあれこれ考えてもしょうがない。
気持ちを切り替えよう。マジで本格的に本編に近くなってきている。これからはより一層、慎重に行動しないとな。
はい、反省はおしまいだ。それより今は目の前の実験に集中しないといけない。
オレの目の前に広がる薬品やフラスコ、瓶の数々。フラスコや瓶の中には色とりどりの液体、魔物のツノや目と言った素材になるものが入っている。
そして今日はフリーレンと出会った森で採取した薬草を使って実験していた。最近……と言っても三桁の年数単位での話だが、オレは魔法や肉体強度、武術の腕といった己自身の強さの成長曲線が緩やかになっていることを日々の鍛錬から実感していた。
確かに強くなるほど、目の前に聳え立つ壁は高くなり、強さを手に入れるのが難しくなってくるというのは身をもって知っている。だが、4000年前の未熟だった頃は、力がどんどん驚くほど身につき、試していた。
あの感覚は言葉でうまく表せないが、そう、オレはもう一度あの感覚を味わいたい。そのための実験の一環。
つまり何がいいのかと言うと、魔法薬を使ったドーピングによる自分自身の強化の試みだ。
魔法薬────それは魔法の力が込められている薬草や様々な液体、動物の死体を刻み、かき混ぜ、調合するといった過程を得て、魔法の力が込められた一種の魔道具とも言えるもの。
ただ魔法薬の優れてるところは一般的な魔道具と違って、使用するときに自身の魔力を必要とせず、摂取すれば半永久的に効力を得られるという点だ。
それが魔法薬と魔道具の違い。まぁ、その利点のせいで不都合なこともある。
魔法薬は、一度服用すればその効力を半永久的に得てしまうので、失敗作だと気付かずに服用すると、どんな効果が体に及ぶかわからない。
その点、オレの肉体はそう言った不都合なことを気にしなくてもいい。これが、オレが魔法薬の研究をするキッカケ、決心となった。
魔族の肉体は人類と比べて有り得ないほど強靭で、更にオレが4000年以上の年月をかけて鍛え上げた肉体はそこらの凡庸な魔族とは一線を画す。もちろんオレの肉体は強靭さだけが取り柄ではなく、他にもありとあらゆる毒への耐性やたとえマグマの中、永久凍土の中であろうと素の肉体のまま生命活動ができるようにした。
故にオレは未知の魔法薬に対する理想的な実験体だった。薬による精神への影響は魔法でなんとかできるし、発狂するような事態にはならない。また、薬が肉体に与える影響も、『魔族の肉体を再生させる魔法』を使ってダメージを受けた部分を切り離し、再生すれば問題ない。
もちろん、このことはゼーリエには内緒でやっている。あいつは優しい、決してその心持ちを表に出すことはないが、数えるのが億劫になるほどの弟子を一人一人覚えているほどのやつだ。
もし、こんなことをしているのだと知ったら怒って、なりふり構わずに止めてくる……… いや、もしかしたら、強さを追い求めるためという理由ならゼーリエも納得するかもしれない。
うーん、わからん……これが知らぬが仏というやつか。意味が合っているかは知らないけど。
「主様、どこじゃ? 早坂がご飯できたと言っておったぞ!」
上から小町の声が聞こえる。ここからオレが声を張り上げても、小町には聞こえないだろう。
なぜなら、今いる場所は普段の研究室の下に、魔法で空間を広げて作った特殊な結界で守られているからだ。こればかりはゼーリエでさえ気付けない。
今日開発した魔法薬は、力を増強するものや、傷を一瞬で治すものなどの効果は確認できたが、どうにも副作用が酷すぎる。
これでは意味がない、失敗だ。今後は、この副作用を抑える魔法薬を開発する必要がある。
かの偉大な偉人、時には経営の神様とも呼ばれた日本の事業家兼発明家の松下幸之助氏が言った有名なセリフがある。
【失敗したところでやめてしまうから失敗になる。 成功するところまで続ければそれは成功になる】────と。
実験とは失敗の積み重ねであり、挑戦の連続だ。それは魔法薬の研究でも、魔法の実験でも、武術の鍛錬でも同じこと。
今日もまた、オレは挑戦し、失敗を重ねていく。
「あれ? 最近、ゼーリエさん、早坂の料理を食べ過ぎて、少し顔がふっくらしてきたような──」
「ほう、このノンデリ。相変わらずお前は学ばないな」
「あ、違うよ? つい、ね?」
「もし仮に、お前の妄言が本当だったらたまらんからな。この後、食後の運動に付き合ってもらうぞ。」
「………はい」
そして今日もまた、オレは失敗し、学ぶのだった。