どうもこんにちは、今年で4900歳となったレノストです。
最近の地上は100年前に比べたら静かすぎるほどだ。まさに嵐の前の静けさといった感じ。
……あ、100年前といったら昔から研究し続けてきた封魔鉱の加工技術の確立ができたわけだけど。
最近、また一つ、長年の研究がついに形になった。それは魔法の一種で、あの「実」を再現する能力。自然を操る力を持つあの「実」の能力、つまり「自然界そのものを体現する力」を使いこなす方法を、オレは開発することができたのだ。
もともと、オレが目指していたのは不死や永遠の命ではなかった。まぁ、魔力による身体強化をする限り、半永久的に生きられる体にはなっているが。
だが、この魔法が誕生した瞬間、正直に言って、少しばかりの野心が芽生えた。あの魔法を使いこなすことができれば、オレの肉体そのものが変わるかもしれない、もう魔法薬に頼らなくても良くなるかもしれない。そんな予感がしたんだ。
魔法の詳細を説明しよう。オレは何千年もの間、物質と魔力の関係性を研究してきた。魔法を発動させるために必要な物質界の変化を引き起こすにはどうすればよいのか、そういった問題を解決し続けてきた。そして、ついに、自然界の力を完全に操る自然系魔法に辿り着いた。
某有名な海賊漫画からとって『
その魔法は、あらゆる自然元素を変換し、その実体に変えることができる。例えば、火や水、風、土。さらには、雷や氷、さらには大気そのものすらも、自分の体の一部に変えることができるのだ。
だが、問題が発生したのは、その魔法を実際に発動させた時だ。オレは試しに、その能力を自分の体に応用してみた。一応、何かあった時用に『魔族の肉体を再生させる魔法』を待機状態にさせておく。
魔法を発動させると体内に流れる魔力と自然元素を結びつけていく。その瞬間、異変が起きた。
────その魔法の影響が、オレの脳にまで及んでしまったのだ。
「しまっ、意識が……?」
突然、視界が揺れ、思考が止まりかけた。そのまま意識が薄れていく。
だが、それは一時的なことだった。待機させていた魔法が、保険が働いた。
オレが目を覚ました時、すでに周りにはゼーリエ、ジブリール、早坂、小町の姿があった。彼女らは慌てた様子でオレを取り囲み、心配そうに声をかけてきた。
「レノスト! 目を覚ませ!」
ゼーリエの声が、オレの耳に届いた。しかし、その声はいつもの冷静なものではなく、驚きと焦りが混じっている。そして目元を見れば涙が浮かんでいた。
「主様!」
小町がオレの胸に飛び込んでくる。
「マスター、生きていますか?」
ジブリールの声も震えている。
「レノスト様?」
早坂がオレの顔を覗き込む。
オレは軽く目を開け、状況を把握するために周囲を見渡した。どうやら、意識を失ってからかなりの時間が経過したようだ。
「ゼーリエ……ジブリール、早坂、小町……オレは……」
「ああ、良かった……」
ゼーリエは深い息をついて肩の力を抜いた。
「いったい何をやっているんですか、マスター。こんなことになるなんて、どうして気づかなかったのでしょうか」
「ジブリール、落ち着け」
ゼーリエが冷静に言った。
「ごめんな、みんな。魔法の影響が、脳にまで及ぶとは思わなかった」
早坂も心配そうに手を差し伸べてきた。
「こんな危険な実験、あなた一人でやらないでください……!」
オレは彼女らの言葉を耳にしながらも、少しずつ体を起こす。そして、冷静になった自分が言った。
「本当にすまない。心配かけた。だが、今回の実験は成功だ。自然系の能力を体現できる魔法の再現に成功した。ただ、思った以上に脳への影響が強かっただけだ」
ゼーリエは眉をひそめながら言った。
「はぁ、お前の言う『成功』がどれほど危険なことか、理解しているか?」
「もちろん、分かっている。」
オレは平静を保ちながら答える。
「ただ、これを制御できれば、さらに強力な魔法を生み出すことができる。それが、次なるステップだ」
ジブリールは少し首をかしげて言った。
「ですが、レノスト様。脳に影響が出るなんて、やりすぎだと思われます。安全を最優先に考えるべきです」
「全くもってその通りだ。だが、これは夢なんだ」
オレは少し真剣な表情で続けた。
「昔から実現したかった夢の魔法の一つなんだ。もう少し頑張らせてくれ」
ゼーリエは黙ってオレを見つめていたが、やがてゆっくりと息を吐きながら言った。
「レノストの言いたいことは分かる。魔法使いは生涯をかけて望む魔法を追い求めるものだ。だが、無理をするなよ。お前が無事でいることが一番大事だ」
オレはあのゼーリエからの言葉を受け入れ、再び気を引き締めた。
「分かった。次はもっと慎重に進めるよ」
ゼーリエはしばらく黙っていたが、ついに口を開いた。
「ただ、次回からはもっと早めに報告してくれよ? 今回のように心配をかけられるのは、もうごめんだ」
オレは苦笑しながら答えた。
「わかった。次からはもう少し周りを気にするようにする」
だが、ゼーリエの目には依然として心配の色が浮かんでいた。その瞳を見つめながら、オレはふと思った。彼女がこんなにも心配してくれるのは、最初の頃のようにオレの力だけを見ているからではない。彼女自身が、オレという存在を大切に思ってくれているからだと、心の底から理解した。
「ありがとう、ゼーリエ。」
その一言が、オレにとっては何よりも重要だった。