第2次試験が終わり、合格した受験者たちはしばしの休息を与えられた。迷宮攻略を突破した者たちは、それぞれのやり方で試験の合間を過ごしていた。
宿屋で静かに魔力を回復させる者、酒場で情報を集める者、模擬戦を行いながら新たな戦略を練る者。次なる試験に備え、各々が限られた時間を有効に使っていた。
しかし、その時間はあまりにも短かった。
大陸魔法協会の職員からの呼び出しがかかると、受験者たちは再び試験会場へと集められた。彼らの表情には緊張がにじんでいる。第3次試験がどのような内容になるのか、それを知る者は誰もいなかった。ただ、ここまで生き残った者たちは皆、それなりの覚悟を持っていた。
第2次試験を乗り越えた者の中には、すでに一級魔法使いに足を踏み入れつつある実力者もいる。だからこそ、彼らの間に動揺が走ることになる。
「第3次試験は、特別一級魔法使いが担当する」
大陸魔法協会の職員からその言を告げられた瞬間、受験者たちは一斉にざわめいた。
特別一級魔法使い────その称号を聞いたことがある者は多かったが、実在するとは誰も思っていなかった。それは、あまりにも長い間、ただの伝説として扱われてきたものだったからだ。
「特別一級……?」
「確か、大陸魔法協会が設立された初期に制定された称号のはず……」
「けど、実際にその称号を持つ者が表に出たことはないはずだよな」
受験者たちは互いに顔を見合わせ、困惑の色を浮かべる。一級魔法使いの称号ですら、並の魔法使いには手の届かぬ高み。そのさらに上となれば、存在すること自体が疑わしい。
歴史の中でその称号が記されたことはあれど、その人物が表舞台に立ったことは一度もない。大陸魔法協会においても、特別一級魔法使いという存在は実在せず、称号はただの形式的なものではないかとさえ囁かれていた。
「……まさか、本当にいたのか?」
ある者は驚きに息を呑み、またある者は訝しげに眉をひそめる。これまで何人もの魔法使いが一級の座を目指してしのぎを削ってきた。だが、その頂点にいるはずの特別一級魔法使いが、どんな存在なのかすら知られていないのは異常だった。
その存在は権威だけを持つ虚像なのか、それとも────。
フリーレンは静かに目を伏せ、考え込んだ。
(なぜ今になって、特別一級魔法使いが試験を担当する?)
一級魔法使い試験の前にフリーレンはフェルンと共にその存在を調べた。だが、出てきた情報はあまりにも乏しかった。
その存在は大陸魔法協会創設以来、一度も表舞台に立っていない。協会の運営に関与することもなく、ただ静かにその権限を持ち続けていた。
それがなぜ、今になって試験官として姿を現すのか。
(ゼーリエの意向か……?)
フリーレンは一瞬、その可能性を考えた。ゼーリエは大陸魔法協会の創設者であり、一級魔法使い試験においても絶対的な発言力を持つ。
だが、ここで疑問が思い浮かぶ。
ゼーリエが試験の監督や評価に関わることはあるが、試験官という立場で関与することはほとんどない。もし彼女がこの試験を主導したのなら、その目的はより明確であるはずだ。しかし、特別一級魔法使いが前に出る理由が、彼女の意向だけでは説明しきれない。
(そもそも、特別一級魔法使いという立場は、協会の運営にもほとんど関与してこなかったはず……)
大陸魔法協会の記録を見る限り、特別一級魔法使いの名が歴史に登場することはほとんどなかった。ただ存在だけが示され、何をしているのか、何を目的としているのかは記されていない。ゼーリエが試験に関与するのはまだ理解できるが、これまで沈黙を守っていた特別一級魔法使いが試験官として表に出てくるというのは、あまりにも異例すぎる。
(やはり、この試験官……特別一級魔法使い本人の意思か)
フリーレンは静かに考えをまとめた。大陸魔法協会の判断ではなく、ゼーリエの指示でもなく、この存在自身が何らかの目的を持って試験官を引き受けた。その可能性が、一番しっくりくる。
フリーレンは僅かに目を細める。
(だとすれば、彼の目的は何だ? なぜ、今このタイミングで表に出る? そして、何を試そうとしている?)
彼女の疑問が確信に変わる前に、その存在は現れた。
突如として、魔力の霧が立ち込める。足元から這い上がるように、ゆっくりと、しかし確実に濃霧が広がっていく。その魔力の霧は、まるで闇が滲み出すかのように空間を浸食していった。
「……っ」
誰かが息をのむ。急激な空間魔力の変化。皮膚を刺すような冷たい空気。異常だ。
────何かが、近づいてくる。魔力の霧の向こう、ぼんやりとした輪郭が見える。黒い影。長いコートのような衣装が揺れながら、ゆっくりと歩いてくる。やがて、姿がはっきりと現れた。
黒い燕尾服に、シルクハット。漆黒のコートの内側には、深紅の裏地が見え隠れする。どこか古風な装いでありながら、その存在感は圧倒的だった。
しかし、それ以上に目を引いたのは顔を覆う、無機質な仮面。
────ガイ・フォークス・マスク。
口元に皮肉げな笑みを刻んだ白い仮面は、不気味なほど感情を感じさせなかった。受験者たちは誰一人として言葉を発することができなかった。ただ、その圧倒的な存在感に呑まれるように見つめる。
沈黙の中、仮面の体格的に男────特別一級魔法使いが、ゆっくりと口を開いた。
「これより、第3次試験を開始する」
その声音は、穏やかでありながら、どこか底知れぬ余裕を感じさせる。
「合格条件は………日没までに私を殺すこと」
瞬間、場が凍りつく。
「なっ……!?」
「殺す!?」
受験者たちは動揺を隠せない。だが、それだけではなかった。
「故に、受験者同士の戦闘および殺害は禁止とする」
更なる驚きが広がる。
「どういうことですか?」
「試験官を殺せって……正気かよ」
動揺の声が次々と飛び交う。これまでの試験、否。大陸魔法協会創設以来、行われてきた試験全てと比べてもあまりにも異質な内容。
相手は、特別一級魔法使いという謎めいた存在。
どれほどの実力を持つのかも分からない相手を、たった一日で殺すことが試験内容とは受験者の脳裏には存在しなかった未来。
魔法協会の試験として、本当にこんなことが許されるのか。受験者たちの顔には、不安と警戒、そして戸惑いが色濃く浮かんでいた。
彼は受験者たちの戸惑いを眺めながら、軽く肩をすくめた。
「ルールはシンプルだろう? 君たちは私を殺せばいい。ほら、簡単な話じゃないか」
冗談めいた言葉に、誰も笑えない。受験者たちは彼の底が見えないことに、より一層の警戒心を抱く。
その時、特別一級魔法使いが、静かに片手を上げた。
「……では、試験を始めよう」
────眩い光が足元に広がる。受験者たちは、自分の足元から光が伸びていくのを見た。次の瞬間、視界が歪む。
気づいたとき、そこはどこまでも広がる森だった。青い空。澄んだ空気。森の木々が揺れ、鳥のさえずりが聞こえる。しかし、誰もがわかっていた。
ここは、試験官が作り出した戦場なのだと。
そして、すでにそこにいた今回の第3次試験管たる特別一級魔法使いが、ゆっくりとシルクハットを直し、静かに告げる。
「……試験開始」
今回の投票に関して、全てのキャラクターの魅力を十分にお伝えすることができない、私の力不足を感じております。そのため、もしかしたら“このキャラの活躍が見たかった!”というご感想もあるかもしれません。そんな方々には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。しかし、私ができる限りの力を尽くしてお話を進めていきますので、どうか温かい応援をいただけると嬉しいです。
また、追記として、私個人の本心としましては、ドゥンストへの投票を控えていただけると非常に助かります。その点についてもご理解いただけますと幸いです。
引き続き、よろしくお願いいたします!
この度、戦闘シーンに登場するキャラクターが多いため、皆さんにどのキャラクターに焦点を当てて欲しいかを投票していただきたいと思います
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フリーレン(簡)
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フェルン(簡)
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メトーデ(難)
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カンネ(難)
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ユーベル(簡)
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ラント(難)
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ヴィアベル(中)
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エーレ(中)
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シャルフ(中)
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デンケン(中)
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ラオフェン(中)
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ドゥンスト(超超超難)