大魔族の彼は人生を謳歌する   作:HIIRAGISHIYU

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035 特別一級魔法使いと受験者たち

 試験開始の合図と共に、受験者たちは広大な森の中心部へと転移された。木々が生い茂る静寂の空間。足元には柔らかな草が広がり、木々の間を抜ける風が葉を揺らす。

 しかし、自然の穏やかさとは裏腹に、森の中央に佇む一人の男が放つ威圧感が、この場のすべてを支配していた。

 

 特別一級魔法使いであり、今回の第三次試験の試験官のレノスト。

 

 顔を覆う仮面の奥から、彼は静かに告げる。

 

「さぁ、何処からでもかかってくるがいい」

 

 低く響くその声は、森全体に広がり、受験者たちの鼓動を一瞬止めた。

 

「オレは逃げも隠れもしない」

 

 その言葉に、受験者たちは心臓が一斉に飛び上がり、互いに視線を交わした。

 誰もが悟っている────単独で挑んでも勝ち目はない。全員で挑むしかないのだ、と。

 

 そんな静かな沈黙を破ったのは、老魔法使いデンケンだった。

 

「皆、協力せねば勝てぬ相手だ。力を合わせるぞ」

 

 しかし、彼の言葉を待つまでもなく、ヴィアベルとユーベルが動いた。

 

 ヴィアベルが躊躇なく『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』を放つ。

 白い光線が渦を巻きながら疾走し、レノストを飲み込まんと迫る。

 

 しかし────

 

「まだまだ」

 

 レノストは微動だにせず、片手を軽く上げて防御魔法を展開すると、その白い光線はまるで存在しなかったかのように霧散した。

 防御魔法と『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』の衝突した襲撃音が森に響き渡るが、彼の足元に微塵の焦げ跡どこらか、一片の塵すらない。

 

「不意打ちでも防ぐか……ッ」

 

 ヴィアベルは次に放とうとしていた『見た者を拘束する(ソルガニール)』を秘め、慎重に戦況を見守る。

 

 その刹那────すでにユーベルが迫っていた。ヴィアベルの『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』の方へ意識を向けている間にできた死角に入るように足元を蹴り、その死角、レノストの懐へと踏み込むと、魔力を帯びた斬撃を高速で繰り出した。

 

 その切っ先は空間を裂き、周囲の草木すら斬り落としていく。

 

 だが、それもまた────

 

「いいね、悪くない。でも、気配を出しすぎだ」

 

 レノストは先ほどと同じく一般的な防御魔法でそれを防ぐ。

 見えない斬撃が四方へと散る中、ユーベルの目が細められた。

 

(ちぇっ……全然本気出してないじゃん、こいつ……)

 

 ユーベルの目が鋭く細められる。

 直感的に理解する。こいつは私より遥かに格上の実力者だと。

 

 ここでデンケンは即座に号令を飛ばす。攻撃の流れを止まらせるわけにはいかないと。

 

「全員、同時攻撃だ!」

 

 デンケンの『裁きの光を放つ魔法(カタストラーヴィア)』が発動。

 無数の光の矢が雷鳴のような音を伴って空からレノストへ降り注ぐ。

 

 続いて『竜巻を起こす魔法(ヴァルドゴーゼ)』を展開され、戦場に巨大な竜巻を巻き起こる。

 風が木々を揺らし、地面の小石や折れた枝が吹き飛ばされ空気そのものが震える。

 

 レノストへ視界を遮る中、次々と魔法が襲い掛かる。そして受験者たちは今の一連の流れで理解し、決断した。

 

 ────この男には並の魔法では通じない。

 

 彼らはレノストの規格外な実力を即座に察し、短期決戦を選択した。中途半端な攻撃は無駄な消費を生むだけ。ならばこそ一撃で決めるべきだと。

 

 そのため、一つ一つの魔法に通常以上の魔力量を込めている。普段ならば何度も使える魔法も、今は数発撃つだけで膨大な消耗を強いられていた。

 

 ドゥンストはその暴風に炎を注ぎ込む。炎の竜巻が激しくうねり、戦場を灼熱の檻へと変えていく。

 

 シャルフは鋼鉄化した花弁を無数に放ち、風に乗せて豪鉄の雨のようにレノストへ降り注がせる。

 

 メトーデは魔力の鎖を地面から幾重にも展開し、レノストの四肢を絡め取るように狙う。

 

 カンネは『水を操る魔法(リームシュトローア)』を使い、なぜか近くにあった池から水を集め、それを刃のように鋭利な水弾を変化させた。魔力を帯びた水刃が疾風の如く舞う。

 

 エーレは『石を弾丸に変える魔法(ドラガーテ)』を発動させて、巨大な岩を浮かせて砕き、それを超高速の石弾として投射する。

 

 ラオフェンは『高速で移動する魔法(ジルヴエーア)』で超高速移動しながら、戦場を縦横無尽に駆け抜け、『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』を撃ち込む。

 

 ラントは多数の分身を作り出し、電撃の魔法を四方から乱射して放つことで攪乱を試みる。

 

 しかし、レノストはそれらすべてを余裕を持って冷静に防ぎ続ける。

 

「なるほど、いい連携だな」

 

 戦場は混沌とし、さらなる攻撃の嵐がレノストを飲み込んでいく────かに見えた。

 

 ドゥンストの炎が尽きた瞬間、デンケンは『風を業火に変える魔法(ダオスドルグ)』を唱え、業火を巻き込んだ特大の火災旋風を生み出した。

 

 そしてカンネとエーレの連携攻撃で生じた超高密度の水弾と超高速の石弾が、レノストの足元で炸裂し、わずかな隙が生まれる。

 

「フェルン、行くよ」

 

「はい、フリーレン様!」

 

フリーレンとフェルンの『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』が同時に炸裂する。そしてさらに高速に『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』の連撃を放つ。

 

しかし────

 

「惜しいな」

 

 レノストは一瞬のうちに防御魔法を展開し、攻撃を完全に相殺した。

 

 受験者たちは魔力の急激な消耗により、呼吸が荒くなっていた。

 この短時間での膨大な魔力消費によって限界が近づいていた。

 

「……くっ」

 

 デンケンが膝をついた。

 

「クソ……ッ!」

 

 ヴィアベルが歯を食いしばるが、魔力の枯渇により再び『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』を放つことができない。

 

 シャルフの花弁も消え、カンネの水刃も霧散し、エーレの石弾も撃ち尽くされた。

 

 そして次々と、受験者たちは魔力切れによる戦闘不能へと陥っていく。

 

「ちぇっ、ここまでか」

 

 ユーベルが立ち上がろうとするが、その体は限界を迎えていた。

 

 レノストはそんな彼らを見下ろしながら、静かに呟いた。

 

「残ったのは……やはり君だけか」

 

 見据えた先に立っているのは、ただ一人────フリーレンのみだった。

 

「そうだね」

 

 フリーレンは静かに杖を構えた。

 

 森の静寂の中、二人の間に漂う空気が変わる。

 

 ここからが本当の戦いの始まりだった。

 

 




読者の皆様へ

今回、初めて複数人が同時に戦う場面を書きましたが、とても難しく、至らない部分があったかもしれません。読者の皆様の期待に十分応えられているか、不安な気持ちもあります。

また、前回の投票にご協力いただき、ありがとうございました。一番多くの票を集めたのはフリーレンでしたので、次回は彼女の活躍をしっかりと描いていきたいと思います。フリーレン以外のキャラクターに投票してくださった方には申し訳ありません。全員の活躍をバランスよく描くことが自分にはまだ難しく、力不足を感じる部分もありますが、少しずつ成長していきたいと思っています。

それでも、これからもこの作品を楽しんでいただけると嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。

この度、戦闘シーンに登場するキャラクターが多いため、皆さんにどのキャラクターに焦点を当てて欲しいかを投票していただきたいと思います

  • フリーレン(簡)
  • フェルン(簡)
  • メトーデ(難)
  • カンネ(難)
  • ユーベル(簡)
  • ラント(難)
  • ヴィアベル(中)
  • エーレ(中)
  • シャルフ(中)
  • デンケン(中)
  • ラオフェン(中)
  • ドゥンスト(超超超難)
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