大魔族の彼は人生を謳歌する   作:HIIRAGISHIYU

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006 アニマルセラピーって偉大

 

 

 どうも、今年で1900歳の誕生日を迎えるレノストです。

 

 あの悲しい出来事から随分な時間が経ってしまった。

 

 大抵のことは時間が解決してくれるとはよく言ったもので、あの日から400年以上の年月が経ってしまうと悲しみは薄れて、儚くて美しい思い出として記憶に残ってくれていた。

 

 

 そんなオレは天脈竜の背中にある我が家に帰って、長い時間を引きこもりみたいな生活で過ごしていた。

 

 まぁ、家では筋トレとか魔法の開発、魔法の実験を繰り返すだけの毎日を送っている。

 

 その引きこもり生活のおかげで完成した魔法がいくつかある。

 

 例えば『思考を加速する魔法』、『並列に物事を考えられる魔法』やらの作業効率を上げる魔法ができた瞬間、魔法開発がかなり楽になった。

 

 この魔法たちがあれば戦士としての特訓中に集中して思考実験を行えるので魔法開発が捗るといった感じだ。

 

 そして今日、ついにまた一つ完成した魔法がある。

 

 エーヴィヒにかけられていた魔法、もとい呪いに対する対策として完成した魔法。

 

 その魔法の名前は『呪い返しの魔法(ミステイルジーラ)』。

 

 そう! 原作でゼーリエがマハトに対して使っていた魔法だ。

 

 イメージは原作を見ていたので完璧、あとは術式なのだが正直言ってめちゃくちゃだ。

 

 『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』の術式構造が人類でも理解し扱えるほど洗練された術式構造ならば、この『呪い返しの魔法(ミステイルジーラ)』はその逆。

 

 ありとあらゆる魔法の論理的な法則をいくつも合わせることによってできる複雑さのみで、『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』の術式構造みたいな分かりやすくて綺麗な感じではない。

 

 正直難解すぎて習得だけでも三桁の年数がかかることは間違いない。

 

 それに複雑な術式構造だから魔力消費量もバカにならないし、マジで長命種のような魔力量が莫大なやつ専用のものだ。

 

 我ながらゴリ押しな魔法をつくってしまった。

 

「お、もう昼か」

 

 時計を見れば、短針は12時を指していた。

 

 オレは時間なので、『猫の餌を出す魔法』で餌待ちしている猫型の魔物に餌をやる。

 

 オレが餌を用意しているのが目に入ったのか近寄ってくる可愛らしい黒猫。

 

 真っ黒な毛皮に、赤色の瞳孔。尻尾が2本ということを除けば、至って普通の猫である。

 

 分かりやすく表現するなら前世で言う有名な妖怪である猫又のような姿といえばイメージしやすいのではなかろうか。

 

 この黒猫は200年前に鳥型の魔物が掴んで持ってきたのか、天脈竜の背中で傷ついた様子で倒れていたのを見かけて、魔法で治したら懐かれてしまった。

 

 それ以来、一緒に暮らしている。

 

「それにしてもお前、意外と長生きなんだな」

 

 オレに撫でられながら飯を食べているこの黒猫(魔物)。

 

 名前は小町にした。

 

 特に意味はない。ただあの某ラブコメアニメの妹みたいな癒し、アニマルセラピー的な効果を得たかっただけだ。

 

 オレは一応妹萌えというものがわかる。

 

 前世では弟こそいたが、妹はいなかったので憧れてしまう。

 

 オレもあんな妹が欲しかった。

 

 何かキュンとするようなことを言われて、今の小町的にポイント高いとか言われてみたかった(CV.悠木碧)。

 

 だが、オレの胸奥に潜む邪悪な心が耳元で囁いてくるのだ。

 

 現実にはあんな妹はいないのだと、存在するわけがないのだと、夢見てんじゃねーよと。

 

 そう心の奥底で思ってしまっていても、オレの憧れは止まらないぞ!

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 かつて魔王と呼ばれる魔族が台頭するより前の時代。

 

 神話の時代から存在すると謂われる最古の魔獣がいた。

 

 誰にも縛られず、誰にも靡かない、孤高の大魔獣。

 

 いつしか人々はその魔獣を魔猫卿と呼ぶようになった。

 

 人類のみならず、魔族すら畏怖するその存在に手を出すものは愚か者か蛮勇者しかいない。

 

 もしかしたら、その手を出してしまった者の中には愛らしい黒猫の姿に騙されて、つい魔が差してしまっただけの者がいたのかもしれない。

 

 だが、その小さな体に秘めている魔力量は神話の時代から生きていると言われるだけあって膨大だ。

 

 そして何より厄介なのは魔猫卿が扱う『炎を操る魔法』である。

 

 それもただの炎ではない。

 

 炎といったら赤色というのがこの世界の常識であるが、かの魔猫卿が扱う炎は青色であり、触れたものを一瞬で灰にしてしまうのだ。

 

 現代でも魔猫卿の目撃情報は出回っているが、どれもこれも突拍子も無いものばかりである。

 

 空に竜らしい影を見えたと思ったら、空から黒猫が降ってきたなど。

 

 その魔猫卿らしき大魔獣の隣に人影ありなど。

 

 孤高の大魔獣が人とつるむわけがないというのに。

 

 そんな荒唐無稽のホラ話ばかりであり、魔猫卿が今も生きているのかは誰も知り得ない。

 

 

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