転生モフモフ四兄妹のスローペットライフ   作:corin7121

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新しい家族

鉱山の事件から数ヵ月。仕事の合間に時々海蛇(シーサーペント)のシュラク君(姫命名)に逢いにいったりしているんだけど、どうやらここ最近密猟者ってのが増えているらしい。シュラク君も実はその被害者の一人。珍しい生物を捕まえては物好きな金持ちに売り捌いているんだとか。こういう金持ちってのは後先考えないバカと相場が決まっている。手に負えなくなったらその辺に捨てちまえばいいとか思っているタイプだよ、きっと。偏見かもしれないけど。

 

そう考えると本当に今のご主人に拾われて正解だったよね。今日もこうして姫さん乗っけて自由に散歩ができるんだから。天気もいいし絶好のお散歩日和ってやつですよ。時折吹く風が気持ちいのなんの!さて、今回の散歩ルートですがちょっと遠出をしまして、自宅から西の森に来ております。ゴブリンとか魔物が出るらしいけど自分がいればそう襲われる心配もないわけですよ。なんたって伝説のフェンリルですから!襲われても返り討ちにしてやんよ!

 

というわけで当初の目的地の森の中にある湖に恙なく到着しました。シュラク君もここだったらもうちょっと楽に暮らせたんじゃないだろうか。聞いた話じゃ、ここの地下水脈を辿っていけばそこそこ大きな河にも出られるらしいし。人の手があまり入っていないからか水質も悪くないしね。そして走って走って乾いた身体にはお水が一番なのよ、なんだかんだいっても。あ、でも姫さんはダメだよ。生水なんだからお腹痛くなっちゃうよ?まあそんなことがないように予め紅茶を入れた水筒を持たせてもらっているんですけどね。

 

そして今日ここに来たのは他でもない。姫さんがピクニックをしたかったからここまで来たのである!残念ながら御主人たちは急な仕事があって一緒じゃないけれど、俺がいれば問題ないわけですよ。そしてピクニックといえば最大の楽しみがお弁当ですよ皆さん。今日この日の為にお屋敷の料理人さんが丹精込めて拵えてくれたわけですよ。それが美味しくないわけがないってもんよ!

 

「待っててねシュメー」

 

ええ、ええ待ちますとも待ちますとも!ちょっとぐらいのお預け程度でヘソを曲げる駄犬じゃないですよ俺は!あ、すっごくイイ匂いがしてきた。この香りは俺の大好きな鹿肉を低温調理でいい感じのレアに仕上げてくれてますね。御主人がどっかの酒場から引っ張ってきたらしいけどやっぱりあの人は見る目あるよ。もう匂いから美味しいってわかっちゃうんだもん。これは至福な一時が確約されたといっても過言じゃないね。だからさっきからすぐそこの草むらの陰からコッチを狙っているお前さんは回れ右してどっかに行ってくれないかな?邪魔なんだよ。食事の!

 

「?どうしたの、シュメー?」

 

どうしたもこうしたもあそこに何かいるんですよ。知らない気配ってのがちょっと引っかかるけど。この辺りの魔物だったら俺のちょっとした威嚇で逃げだすのに逃げるそぶりすら見せないとかちょっと顔ぐらい見せたらどうだ?おおん?

 

ガサガサと草むらの一角がざわついた。どうやら俺の殺気に驚いて逃げ出―――

 

「うわー!キツネさんだー!!」

 

したわけではないようで。ひょっこりと顔を出したのは実った小麦色の毛並みを持った一匹の狐だった。ここらでは普段見かけない動物だけど、もしかしたら最近話題の密猟者が関係しているのかもしれない。

 

「キツネさーん」

 

そしてウチの姫様は動物相手だと物怖じしないのなんの。警戒心ゼロで野生の狐に近づいていく。噛まれたり引っかかれたりなんて微塵も思っていなさそう。って、ちょっと待って?あの狐なんだか大きくない?自動車並みの自分と比較したらそりゃ小さいけど、それでも1mぐらいはありそうだ。それに今気づいたんだけど、貴女の手にあるのは俺のおやつですよね?なーんで俺じゃなくてそこの畜生にあげようとしているんです?

 

「おいしーよ?」

 

そりゃあ美味しいだろうよ!丹精込めて作ってもらった特製ジャーキーなんだもん!おい、食うなよソレ!?食うんじゃねーぞ!?食ったら喰うぞ!!?わかってんのか!!!?

 

「わー!食べたー!」

 

よーし、今日のおやつは生キツネ肉だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパ、飼ってもいい?」

「いいよ!」

「やったー!」

 

少々時間を進めて帰宅してすぐのこと。餌付けに成功してしまったキツネを屋敷で飼う許可を御主人に相談、バカ親というか親バカな御主人は深く考えもせずに二つ返事で許可しやがった。ねえ、魔獣の自分が言うのもなんだけどもうちょっとよく考えない?キツネだよ?犬猫じゃないんだよ?寄生虫を持っているかもしれないんだよ?狐の寄生虫は洒落にならないよ??

 

「お名前何にしよーかなー♪」

 

ハイ、姫様。新参者の名前の候補としてクソ野郎というのはどうでしょうか。

 

「きーめた!あなたの名前は『ロッゲン』!よろしくね!」

 

ロッゲン(ライ麦)かー。確かにそれっぽい毛色をしているけど何でライ麦なのよ。夕飯にライ麦パンは出ていたけどさ。

 

「シュメーもロッゲンと仲良くしなきゃメ!だよ?」

 

ええーって言いそうになった。というか自分はまだ認めてないよ?この屋敷のペット枠は俺一人、一匹?いや一頭?で十分でしょ?新規参入枠なんて認めないよ?第一、エンゲル係数とか大丈夫なの?ただでさえ自分の食費がバカにならないことぐらい知っているからね?ちょっと一狩り行って食い扶持稼いでねとか言ってきたら流石に怒っても許されると思います!

 

「パパー。シュメー怒ってる?」

「大丈夫大丈夫。ほら、シュメー。よーしよしよし」

 

怒ってはいないよ、まだ。腑に落ちていないというだけで。幾つか釈然としないところはあるけど一ペットな自分には拒否権ってものは無いんだよね、悲しいことに。というわけで今夜にでも牽制ぐらいはしておきますか。()()()()()()()()ハッキリとさせておこうじゃないか!

 

 

 

 

 

 

というわけで夜中になりました。姫さんは既に御就寝あそばれております。そして自分はというと姫さんのベッドのすぐ傍にて待機しています。それはもう騎士の如く四方八方を警戒しているんですよ。何故かって?あの新入りが気掛かりだから。それ以外に理由があるとでも?

 

『・・・・・・』

 

今のところ室内に敵影無し。問題のロッゲンは今は別室にいるんだけど正直気が気でない。というのも、別室にある昔まだ人並サイズだった自分用のケージに入れられた時なんてあまりにも素直に中に入ったのがちょっと不自然に思ってしまったから。普通警戒したりするでしょ?そんな素振が一切なかったんだよ。

 

怪しいにも程がある。何か変なことをする前に一度話ぐらいは付けておこう。そう思って軽く伸びをした時遠くで「カチャッ」と微かに金属音が聞こえた。え、まさか脱走した?そう簡単にケージは開けられないはずなのに。餌付けが原因で姫に懐いてしまったとはいえ、ほんの数時間前までは野生の畜生。何か粗相をする前にここのルールってのを教えてやらにゃいけないみたいだ。

 

『・・・・・・?』

 

できるだけ物音を立てないように廊下に出たが一瞬何か見てはいけないもんが見えたぞ?お化けとかそういう類になるかもしれないけど、でも普通は出ないでしょ。室内に火の玉なんて。廊下の角を曲がって行ったみたいだけど、え?このお屋敷って事故物件じゃないよね?というかここに住んで長いけど一度も見たことなかったぞ?

 

ちょっと心配だから様子を見に行きますか。ただの見間違いだったらいいんだけどな・・・。

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